ミュージカル『刀剣乱舞』~三百年の子守唄~ 横田龍儀 インタビュー

©ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会


前回よりも少しでも成長した姿を見せたい

 

いま、話題沸騰中の『刀剣乱舞』。第69回NHK紅白歌合戦の出場者として名前を耳にした人も多いのではないだろうか。名だたる刀剣が戦士の姿になった“刀剣男士”たちが、歴史を守るために戦う大人気ゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」(DMM GAMES/Nitroplus)を原案とするミュージカル『刀剣乱舞』(通称・刀ミュ)は、これまでにも世界遺産・嚴島神社での特別公演やパリ公演を成功させている2.5次元作品屈指の人気シリーズだ。
2019年1月に上演される「三百年の子守唄」は、刀ミュシリーズ3作目として2017年春に上演した作品。変えられた歴史の流れを元に戻すため、刀剣男士たちが徳川家康の一生に寄り添う物語が綴られる。初演時が2.5次元ミュージカル初出演だった物吉貞宗役の横田龍儀は、当時を「とにかく全力で食らいついていました」と振り返る。

横田「2.5次元作品は原案や原作があって、元々出来上がったキャラクターがいるのですが、それをモノマネするだけではダメ。声や顔が似ていれば成り立つのかなと思っていた自分がいたのですが、そんなことは全然なかったです。演出の茅野イサムさんはとても愛がある方で、こんなに怒られたのは人生で初めてというくらい怒られましたが、公演を終えてからそのありがたみに気付きました。茅野さん始め、振付の本山新之助さんや色々な方のおかげで今があります。芝居をやりたいとずっと思っていたものの、役者という仕事は簡単ではないということを知りましたし、僕にとって人生のターニングポイントになった作品です」

 

刀ミュシリーズは、初々しいキャストからキャリアのある俳優まで、幅広く出演している。それぞれ際立つ技や味を持ち、刺激し合っている様子が見える。

横田「切磋琢磨しながら高め合える、良いカンパニーです。三百年の子守唄に出演しているキャストは経験者が多くて、大人の落ち着いた雰囲気。一度、僕が本番でセリフを飛ばしてしまったことがあったのですが、どうしようと焦ったその時、千子村正役の太田基裕さんが場面をつないでフォローしてくださいました。“舞台ってひとりじゃないんだ”と思いましたし、次の公演では助けられた部分もお返しできるように、少しでも成長した姿を見せたいと思っています」

 

本作では、戦国時代に所縁のある刀剣男士が多く登場する。横田が演じる物吉貞宗は、徳川家康の愛刀として知られている。

横田「学生時代は歴史の授業が苦手で、テストの点数も良くなかったです(笑)。でも前回の公演の時に徳川家について調べて、初めて歴史って面白いなと思うようになりました。自分たちより前に生きていた人たちの考えを知ることができますし、調べれば調べるほどバックボーンが見えてくる。今、自分たちが生きていられるのは、昔生きた人たちが争いながらも、その中でひとつの答えを導き出してきたからなんだと思いました。刀ミュは歴史に詳しくないお客様にも分かりやすいコンテンツだと思うので、その面白さも伝えることができればと思います」

 

刀ミュは1部がミュージカル、2部がライブという二部構成。ライブは新たな楽曲と衣裳、ステージングでパワーアップする予定だという。

横田「新しくなるのは怖くもありますけど、ワクワク感も大きいです。お客様の反応も楽しみですし、早くお稽古に入りたい。物吉貞宗くんは人に幸運を運びたいと常に思っている笑顔が可愛らしいキャラクターですが、2部のパフォーマンスではギャップを出していきたいと思っています。カッコいいナンバーではカッコよく!お客様が求めていることをやることももちろん大切なことですが、さらに自分がトライしたいことを乗せてみることも大事かなと。ファンの方の思い描くキャラクター像も様々でしょうし、僕も視野は広く持っていたいと思っています」

 

この冬には『真剣乱舞祭2018』にて、日本武道館や大阪城ホールなど全国5ヶ所で大規模ライブを開催。華やかな活躍で注目を集めている刀剣男士たちだが、横田の姿勢は真摯な役者そのもの。

横田「僕は考え過ぎてしまうタイプで、アウトプットがままならないところもあります。でも考えないよりは考えた方がいいと思いますし、このカンパニーは本当に学ぶところが多いんです。茅野さんが他の方を指導されているのを聞いていても“そういう見せ方があるのか!”と吸収することばかり。でも他の人の真似になってしまってもやっぱり良くないんですよね。先日、茅野さんから“可愛いをつくろうとすると可愛くなくなるものだ”と言われました。まずこの素晴らしい脚本に本気でぶつかっていって、真摯に芝居に向き合うことが大事だと思っています」

 

インタビュー・文/片桐ユウ

 

※構成/月刊ローチケ編集部 12月15日号より転載

掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布

 

【プロフィール】
横田龍儀
■ヨコタ リュウギ 第25回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで審査員特別賞を受賞。代表作に舞台『MOJO』『青の祓魔師』島根イルミナティ篇など。