PGF生命 presents『ニューイヤー・ミュージカル・コンサート 2019』リハーサルレポート

左から アリス・リプリー/ロベール・マリアン/ダニエル・ウィリアムソン/アダム・カプラン/トニー・ヤズベック

東急シアターオーブのお正月恒例となったミュージカルの祭典『ニューイヤー・ミュージカル・コンサート 2019』。今年も豪華なキャストが揃い、見応えは十分だ。

アリス・リプリーはブロードウェイを代表するベテラン女優。オリジナルキャストとして『サンセット大通り』ベティ役や『サイド・ショウ』ヴァイオレット役など大役を務め、『ネクスト・トゥー・ノーマル』ダイアナ役でトニー賞最優秀主演女優賞を受賞。
ダニエル・ウィリアムソンは若手注目株。ブロードウェイで『メンフィス』フェリシア役を、『天使にラブ・ソングを…(シスター・アクト)』デロリス役、『ウィキッド』エルファバ役、『ノートルダムの鐘』エスメラルダ役など演じてきたパワープレイヤー。
アダム・カプランは2016年『キンキーブーツ』来日公演で主役チャーリーを演じて人気に。ブロードウェイの『ニュージーズ』でメインキャスト、『ブロンクス物語』では主人公カロジェロ役に抜擢された。
ロベール・マリアンはブロードウェイ、ロンドン、パリ、モントリオールで『レ・ミゼラブル』バルジャン役を演じてきた。『ノートルダム・ド・パリ』フロロ役としても知られ、このコンサートシリーズの常連。
そしてトニー・ヤズベックは、ブロードウェイの主役級俳優。『シカゴ』ビリー・フリン役、リバイバル版『オン・ザ・タウン』ゲイビー役、『ファインディング・ネバーランド』主演バリ役などで観客を魅了。タップの名手であり、名ダンサー。今回も素晴らしいステップで私たちを虜にしてくれそうだ。

互いの声を合わせてリハーサルした後、キャスト5名にインタビューしました。


――今回、自身が歌うナンバーから、ぜひ聴いてほしい一曲を教えてください。

アリス「『コーラスライン』の「愛した日々に悔いはない」です。私の十八番の歌ですが、アメリカでは歌う機会がなく、絶対にキャスティングされない役でもあるので、日本で歌えて嬉しいです。あのオーケストラの音色を聴いたら、楽しみで仕方ないわ!『コーラスライン』は最初に恋した作品で、出演したことはないけど、歌も作品も大好き。特にこの歌は私にとって大切なんです。もし『コーラスライン』に出るならどの役か?演出家のザックかな(笑)。ダンサーとして出ることもできるけど、私はトニーみたいなザ・ダンサーじゃないしね」

ダニエル「『ドリームガールズ』の「アイ・アム・チェンジング」。私はこの役を演じる機会はないでしょう。エフィを演じるには、もっと太らなきゃ(笑)。個人的にこの歌にはとても通じるところがあって。人生で自分が何者か、他の人に自分がどう見られているか、気にしていた時期もあったわ。何をやるにしても批判されがちな仕事でもあるし。そんな時、自分に自信を持つことは大事だと教えてもらった曲です」

トニー「「雨に歌えば」ですね。ジーン・ケリーへの敬意を込めて。彼へのオマージュでありつつ、自分独自のステップを入れて構成しました。全く新しいパフォーマンスになっているよ」

アダム「『ウエスト・サイド・ストーリー』は僕が6歳の時、父に連れて行ってもらった初めてのミュージカル。俳優になろうと決めた特別な作品です。トニー役を演じるのは僕の夢。オーケストラの伴奏で「マリア」を歌えることがとても嬉しい。一生に一回はトニーを演じたいと思っているけど、今は全くの新作を作ることに興味があって…」

トニー「アダムは、あと15年はトニーやれるよ!」

アダム「(笑)。『ブロンクス物語』は17歳の役を演じていたし」

ロベール「「蜘蛛女のキス」は1996年に『ブロードウェイ・モントリオール』というカナダで開催した自分のコンサートで歌って以来。今日、23年ぶりにオーケストラと合わせたよ(笑)。いい思い出が詰まった曲です」


――リハーサルをしてみて、他の人の曲、もしくは誰かと一緒に歌う曲で楽しみな曲は?

アリス「「シャル・ウィ・ダンス」をトニーと歌って踊ること。初挑戦なのよ。『王様と私』のアンナはすごく演じたい役でした。トニー・ヤズベックと踊れるなんて、最高でしょ!本当はくるくる回った時に広がるドレスを着たかったけど、次のチャンスにとっておくわ」

ダニエル「アダムと『ブロンクス物語』の「イン・ザ・ワールド・ライク・ディス」をデュエットすること。言葉にできないくらい美しい曲で、グルーヴもあり、頭から離れない。実際にブロードウェイで演じていたアダムと歌えるのは本当に嬉しいです。歌ってみたら、相性も良かったと思うな」

トニー「僕は「アイ・ガット・リズム」。皆が知っている曲で、ガーシュインらしさに溢れている。世界が混沌としている今こそ、誰もが喜びを感じ、幸せになれる曲がいいよね」

アダム「2年前のこのコンサートでも歌った『天使にラブ・ソングを…(シスター・アクト)』の「スプレッド・ザ・ラブ・アラウンド」。歌うのが難しくて大変だったけど、その後2年間、頭にこびりついたまま(笑)」

ロベール「あの時のキャストは全員そう」

アダム「最高だったよね!リハで歌ったら、観客の皆さんと歌って踊って手拍子して、その熱気と興奮が蘇ってきました。愛を広めようというテーマも素敵。2年前のキャストたちがSNSのグループを作っているんだけど、グループ名が「スプレッド・ザ・ラブ・アラウンド・トウキョウ」(笑)」


――『天使に〜』といえば、ダニエルはデロリス演じていましたね。

ダニエル「私は2016年に3つのプロダクションでデロリスを演じました。デロリスは今までで一番難しい役。他にも難しい役はあったけど、デロリスの歌は非常に難しい。公演後は一切喋らないように努めたくらい。もちろん楽しかったけど!」

ロベール「僕はトニーの「雨に唄えば」を見るのが楽しみだよ。母がジーン・ケリーの大ファンでね。子供の頃、テレビで白黒映画を見せてくれた。フランス語の家庭だったから理解できなかったけど、映画は鮮明に覚えている。観客として座って見たいなぁ!」


――トニーさん、今まで「雨に唄えば」をパフォーマンスしたことは?

トニー「2回だけ。妻とはその時に出会ったんだ」

アリス「まあ、ロマンチック!」


――ロベールとアダムは2年前の『ニューイヤー・ミュージカル・コンサート  2017』で共演。アリスとトニーは仕事で知り合い同士。他は初顔合わせと、まさに一期一会のメンバーですが、リハーサルで一緒に歌ってみた感想は?

アリス「ハーモニーの響きが綺麗で、良かったわよ。私はダニエルと『サイド・ショウ』の双子の曲「アイ・ウィル・ネバー・リーブ・ユー」をデュエットしました。よく歌って!とリクエストされる曲だけど、普段はエミリー・スキナー(アリスと共演した双子デイジー役)と一緒じゃないと歌わないと断っているの。おかしな話だけど、今日歌ってみてわかったのは、ダニエルはエミリーと似ていること。外見は違うけど、持っている精神と魂が似ている。一緒に歌っていると、エミリーを思い出して、心地良かったです」

ロベール「そうそう!僕がブロードウェイで『レ・ミゼラブル』にバルジャン役で出演していた同じ時期に、アリスは『サイド・ショウ』をやっていて」

アリス「ロベールはインペリアル・シアターで私はリチャード・ロジャース・シアター。ちょうど楽屋口が真横だったのよね。『サイド・ショウ』は2カ月しか上演しなかったのよ。私はよく『ネクスト・トゥ・ノーマル』のダイアナだって言われるけど違うの。ヴァイオレットこそ私。『サイド・ショウ』がクローズになった時、私、すごくガッカリしちゃった。その翌年、私はファンテーヌとして『レ・ミゼラブル』に参加したんです」

ロベール「 僕が『レ・ミゼラブル』を離れた直後に、アリスが入った。ちょうど入れ違いだったけど、やっと会えた!」

アダム「「サンタフェ」は僕がブロードウェイデビューした『ニュージーズ』の曲。「ソウル・オブ・ア・マン」は『キンキーブーツ』の曲で、2年前にこのコンサートの大阪公演で歌って以来。トニーの『オン・ザ・タウン』はブロードウェイで見たし、大学生の時に『ネクスト・トゥ・ノーマル』でアリスを見て、うわぁ!ってなった。ロベールが『レ・ミゼラブル』の曲を歌い、ダニエルが「ディファイング・グラヴィティ」を歌っているのも印象深い。どの曲も僕にとって重要です」


――最後に、日本の観客の皆さんへメッセージを一言ずつどうぞ。

アリス「コンサートで一緒に最高の時間を過ごしましょう!」

ダニエル「声をあげて、お祭り騒ぎを楽しんで!」

ロベール「白血病の友達が来られないのが残念だけど、その友達のためにも歌いたい。音楽は世界共通の言葉。(日本語で)オンガク、バンザイ!」

アダム「再来日が決まった時、皆さんがSNS上でも喜んでくださったのが嬉しかったです。呼んでくれてありがとう!」

トニー「日本は3回目。僕は日本のファンが大好き。皆さん親切で礼儀正しくて、人間のお手本です。楽しんでください!」

 

インタビュー/三浦真紀