全ミュージカルファンが注目する
＜愛の悲劇＞の幕が再び開く―！

　1995年のトニー賞で、主演女優賞、作品賞など７部門を受賞したミュージカル『サンセット大通り』が待望の再演。2012年の日本初演で高い評価を得た演出家・鈴木裕美が、再び濃密な人間ドラマを描き出す。

　主人公・ノーマ役は初演の成功を率いた安蘭けいと、新たに濱田めぐみを迎えてのＷキャスト。アンドリュー・ロイド＝ウェバー楽曲に臨むふたりの歌姫の競演が話題だ。

　ノーマを取り巻く登場人物たちにも豪華な顔ぶれが揃った。運命に翻弄されていく売れない脚本家のジョー・ギリス役に平方元基と柿澤勇人。ジョーの親友・アーティ役に水田航生。ミュージカル界を担う若手実力派俳優の３人に話を聞いた。

水田「観終えた時の、最初の感想は“息苦しい”。サスペンス要素があるので、温かい空気より寒い空気が流れている感じがしました。始まり方が衝撃的だったので、どうなるんだろうってずっとドキドキしていました」

柿澤「自分のデビュー作が『ジーザス・クライスト・スーパースター』だったので、同じロイド・ウェバーの作曲ということで映画を観ていました。曲が難しいなという印象と、登場人物が女優と劇作家を始めとしていて僕ら側に近い世界なので、身近に感じたところもあります」

平方「華やかなミュージカルとして扱っていますけど、どちらかというとストレートプレイ寄りの芝居の要素が強いなと感じました。ショービジネス界の話ではあるけど、ただの好奇心で覗いたところから何かに飲み込まれていって、気付いたら抜けられなくなるみたいなことは、どこにでも起こる可能性がある話だなとも思いました」

　芸術を愛しながらも、己の栄光が過ぎ去ったことを認められず、自らの屋敷に閉じこもる大女優・ノーマ。そこへ偶然転がり込むことになった、売れない脚本家のジョー・ギリス。二人の関係は愛憎を孕み、息もつかせないスリリングな展開で衝撃のラストシーンへと転がっていく……。

平方「俳優も劇作家も、これはイケる、これはダメだと思う出来事が目まぐるしくやってくる。そこはすごく共感出来ましたね」

水田「ノーマの姿は見ていて切ないなと思いました。キャリアを重ねて大女優になった人が、落ちぶれていってそれが信じられなくて…哀しい人だと思ってしまった」

平方「でも女性としてはカワイイ…じゃないですか？　守りたくなるというか」

水田「ええ～…」

柿澤「俺は、絶対ムリ！　でもノーマはピュアな人だったんだろうと思います。もともと狂気を持っていた人ではなくて、彼女を押し上げた周りの環境があったんだろうなと」

平方「ジョーが屋敷を覗いてしまう気持ちも分かる。もし同じ立場に置かれたら覗き見たいと思うし、気になっちゃう」

柿澤「俺は覗き見るのもムリ（笑）」

水田「僕も引いてしまうと思う（笑）。でもわりとジョーは現代っ子ですよね。現代の人に当てはまる心の流れなのかなと思いました」

　3人は2013年に再演されたミュージカル『ロミオ＆ジュリエット』で共演している。柿澤はロミオ、平方はベンヴォーリオ、水田はマーキューシオと、全員“モンタギュー家”の一員だった。座談会中も気のおけない雰囲気が漂う３人に、お互いの印象を聞いてみた。

平方「（水田を指し）良い子と、（柿澤を指し）悪い子！」

全員「（笑）」

柿澤「航生は共通の友達がいて“すげーイイ奴だよ！”と聞いていた。会ってみたら本当にその友達が言った通りの人間で。すごく真面目だし、出来ないところを必死にやれるようになるまで練習している姿とかを見て、すごいなとも思っていた。元基は…なんだろうね」

平方「何言うんだよ（笑）」

柿澤「口では“もうムリ～”とか言うけど、ちゃんとやれるまでやる。ちょっと自分と似ているような感じがする。文句を言いながら本当はやる努力家」

水田「カッキー（柿澤）とは『ロミジュリ』の時に２人でご飯とかも行きましたし、話していて楽しい人。熱いし、お芝居が本当に好きな人なんだなとすごく思います。元基くんはふざけていることの方が多いけど（笑）、しっかりやるところはガツンとやる」

平方「なんかね、恥ずかしいの。“やってます！頑張ってます！”っていう自分は“寒っ”と思ってしまう。キツい時はいくらでもやってくるから、自分は自分なりのエンジンのかけ方で底上げしていようと思って」

柿澤「なんで俺は悪い子？」

平方「見た目が…怖いから」

柿澤「そうだね（笑）！」

平方「簡単に人を信じないところとかは、似ているなって（笑）。今では全然大丈夫だけど、そうなるまでが大変だった。中身はとても人間くさい人だよね」

水田「“漢（おとこ）”って感じ」

柿澤「航生とは『ロミ＆ジュリ』での共演がすごく楽しかったし、全く違う役だけどまた親友役をやれるのが嬉しい。元基とはＷキャストなので一緒の舞台に立つことはないけど、役について話し合いも出来ると思うし、今から稽古が楽しみ」

　キャスティングの難しさや壮大なセットにより“上演は不可能”とされていた『サンセット大通り』。初演の成功を経て、さらに深められるであろう再演の開幕に期待が高まる。

水田「全体的にサスペンスもあって重みが強い分、明るいシーンを担う役をいただいたと思うので、しっかりその役割を果たして、対比になるシーンを作れたらいいなと思っています」

平方「ダンスナンバーがあったり華やかなシーンもありながら、すごく繊細な内容だと思うので、人物たちの微妙な揺れ動き方に注目して頂ければ。登場人物の誰の目線で見るかによって作品の見方が変わってくると思います。ぜひ何度も劇場へ足をお運びいただき、いろいろな見方を楽しんでください。」

柿澤「人間ドラマとして深い作品ですし、ロイド＝ウェバーのトニー賞受賞作品という名作に出演出来るのは幸せなことだと思っています。ぜひ楽しみにしていてください」

 【プロフィール】

平方元基
■ヒラカタ ゲンキ　’85年、福岡県出身。ＴＶ・ドラマで活躍後、『ロミオ＆ジュリエット』ティボルト役でミュージカルデビュー。その後、『エリザベート』、『マイ・フェア・レディ』、『レディ・ベス』、『アリス・イン・ワンダーランド』等、数々の大作ミュージカルに出演。

柿澤勇人
■カキザワ ハヤト　’87年、神奈川県出身。劇団四季にて『春のめざめ』の主役に抜擢される。退団後はTVドラマ、映画、ミュージカルと活躍。主な出演作に大河ドラマ『軍師官兵衛』、映画『カイジ２』、舞台『海辺のカフカ』ミュージカル『ロミオ＆ジュリエット』、『デスノート The Musical』等。

水田航生
■ミズタ コウキ　’90年、大阪府出身。近年の舞台出演作はミュージカル『ロミオ＆ジュリエット』、『金閣寺』、『オーシャンズ11』、『マーキュリー・ファー』など多数。TVドラマ『となりの美男＜イケメン＞』、映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』等、映像でも活躍している。

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