『October Sky』のミュージカル化を手掛けたコンビが贈る、心温まる感動のオリジナルミュージカル『ヒーロー』が、2025年2月からシアタークリエで日本初上演される。過去にトラウマを持ちながらアメコミ漫画家を目指す主人公、ヒーロー・バトウスキー。「アメリカン・コミック」に登場する憧れのHERO達のような並外れたパワーは無くとも、家族や仲間達との別れや交流を通して自分の中にこそスーパーヒーローがいることに気づいていく物語。主人公の“ヒーロー”を演じるのは、『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』にて、ジョナサン・ジョースター役で主演を務めた有澤樟太郎さん。近年、ミュージカル『グリース』、『ジャージー・ボーイズ』、『のだめカンタービレ』など数々の話題作に出演し大きな注目を集める有澤さんが見せる、新たなヒーロー像が楽しみだ。勢いに乗っている有澤さんに、作品への熱い思いをたっぷり語っていただきました。
――主演ミュージカル『ヒーロー』の公演に向けて、今、率直にどんな気持ちですか?
歌稽古がスタートしたのですが、本番がすごく楽しみです。台本をいただいて、自宅で『ヒーロー』の音源を聞きながらひとりで読んだのですが、自分と重なる部分もあり共感できるお話だなと思いました。曲も本当に素晴らしくて、すごくモチベーションが高い状態で稽古に入れています。
――具体的にはどういうところがお気に入りポイントなんですか?
登場人物がみんな素晴らしい人間ドラマなんです。僕が演じる主人公のヒーロー・バトウスキーの人生だけでなく、家族の話や友人の話、友人の恋愛模様もしっかり描かれている。みんな何かしら問題を抱えているんですけど、彼らがだんだん前向きになっていく姿っていうのが、すごく共感できるなと。アメリカの地方都市ミルウォーキーが舞台の話なんですけど、街の規模観もいい感じでこじんまりしていて、これはミュージカルで観たいなって思いました。
――日本初演ということにはどんな思いがありますか?
よく、この題材を見つけてきてくださった、プロデューサーさんに感謝です。主役として素でヒーローをできるという嬉しさもすごくあります。そして、演出は『リース』や『のだめカンタービレ』でご一緒した、信頼する上田一豪さんですし。もう、楽しみなことばっかりです!!
――今回演じるヒーロー・バトウスキーという人物に共感するのはどういうところですか?
まず、普通の人っていうところです。ヒーローは28歳で、僕も今29歳なのですごく身近に感じますし、等身大です。物語の中で好きだなって思うところがあって。ヒーローが働いている実家のコミックショップによく来る、ネイトという12歳の男の子が出てくるのですが、ヒーローとネイトの関係性にすごく共感したんです。僕が10歳くらいの頃に住んでいたマンションは、住人の仲が良くて、夏の暑いときはみんな玄関のドアを開けっぱなしにしていたんですね。夏休みに家にいると、5歳くらいの男の子が「遊ぼう~」って、よく勝手に上がり込んできて。その子が僕とすっごい対等だったんですよ。だから、ネイトの役を見たときに、すぐその男の子が思い浮かんだんです。僕も、年下の子でも向こうから遠慮なく来る子だと、対等に話せたんですよね。28歳のヒーローが12歳の男の子と仲がいいって、人柄がそこに出ているなって思って。そこの関係性は、物語のキーポイントになっていますし、役作りでも大事にしたいなと思っています。
――有澤さんが子どもの頃に憧れていたヒーローは?
戦隊ヒーローと仮面ライダーが大好きでした。子どもの頃になりたかった夢を見返してみても、ヒーロー的なポジションの消防士や警察官とか、全部スーパー戦隊ヒーローを見て憧れていたんですけど。芸能界を目指したきっかけのひとつも、そういうヒーローにあるので。ヒーローショーに連れて行ってもらって撮影したいろんなヒーローとの写真が、今も実家にあります(笑)。
――今作は「アメリカン・コミック」を題材にした作品ですが、有澤さんが好きなアメコミのヒーローは?
アメコミも大好きですよ。僕が一番好きなのは、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」。ミュージカル『ヒーロー』は2008年が舞台なんですけど、ちょうどアメコミがどんどん実写化になっていった時期の話なので、僕的にはすごくテンション上がりました。
――台詞や歌詞に、ヒーローの名前が出てきますよね。
たくさん出てきます。台本に出てくる全部のヒーローを調べて見ているのですが、「グリーン・ランタン」っていうのは初めて知りました(笑)。やっぱり、ヒーローっていいですよね。台本の台詞や歌詞にフレーズとして入っているワードもすごくいいです。台詞を言ったり、歌うのが楽しいですね。
――歌詞に「スーパーヒーローライフ」というワードがありますが、有澤さんにとってのヒーロー人生とは?
舞台を観に来てくださるお客様やファンの方に、「私のヒーローです」みたいなことを言ってもらえることがあって。それはめちゃくちゃ嬉しいですね。20代前半の頃は単純に子どもの憧れになりたいとか、そういう夢はあったんですけど。今、僕が舞台に立って演じることや何気ない僕の一言で、救われたと言ってくれる人がいるんだって考えたら、すごく責任ある仕事だなと感じます。
――近年、多くのミュージカル、ストレートプレイの舞台で主演を務められ、ご活躍されています。有澤さんが舞台俳優として大切にしていることは?
19歳のときに初舞台を経験してから、それは変わらないのですが、舞台は、初日にお客さんの前に出して完成するといわれますけど、本当にその通りです。お客さんが入るだけで、劇場の空気がとんでもないエネルギーに変わりますし、背中から感じるものがすごくあるんです。その感覚は舞台俳優にしか味わえない経験だなと思って、大切にしています。それは、どんな舞台でも同じようにあるので、だから毎回、新鮮に演じることができるんだと思います。
――俳優を目指されたときに、舞台はやりたいことのひとつだったのですか?
もともと映画が好きで俳優を目指すようになり、テレビっ子でもあったので、映像をやりたいと思っていました。でも、養成所に入って舞台の世界を知って。小さい学生だけで主催している舞台に出たりして、演劇に触れていって“ああ~演劇も素晴らしいな”と、どんどん演劇の世界にハマっていきました。
――ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』の主演として、帝国劇場の舞台に立たれたときは、どのように感じましたか?
とても特別な時間でした。日本初演で、ジョナサン・ジョースターをやりたい人が、この世の中にどれだけいるかわからない中で、自分がジョナサンとして舞台に立って、ひとつの物語を全うして、最後にカーテンコールに立つというのは、忘れられない経験になりました。
――改めて、読者へ意気込みとメッセージをお願いいたします
本当に素晴らしいキャストの皆さんが集まったと思いますし、何といっても、登場するキャラクターも音楽が素晴らしくて、そして上田一豪さんの演出で…、もう完全に僕の好みにハマった作品です。熱のある稽古をしっかりとして、日本初演としていいものを作り上げて、皆さまにお届けしたいと思っていますので、ぜひ劇場でライブ感を楽しみながら観ていただけたらと思います。
――最後に、2025年の抱負を教えていただけますか?
2024年はすごく変化の年で、環境も変わりましたし、わりと激動の1年だったんですけど、本番は2年目からだなと思っています。2025年は20代最後の1年なので、30代に向けてのちゃんと架け橋になる1年にしたいですね。来年は大きなことが動く1年になるよう、過ごしたいと思います。
取材・文:井ノ口裕子