8/20(火)に行われた宝塚歌劇 月組公演 日本オーストリア友好150周年記念 UCCミュージカル 『I AM FROM AUSTRIA-故郷(ふるさと)は甘き調(しら)べ-』の制作発表会の模様をお届けします!
制作発表会ではまず、珠城りょう、美園さくらによるパフォーマンスが披露された。
『I AM FROM AUSTRIA』は「エリザベート」、「モーツァルト!」など数々の大ヒットミュージカルを生み出したウィーン劇場協会が、オーストリアそのものを題材として2017年9月に制作した最新作。オーストリア中に旋風を巻き起こし、2019年6月まで異例のロングランを果たした本作は、オーストリアの国民的シンガーソングライターが手掛けた名曲の数々とコメディー要素を散りばめて描かれた、華やかなレビュー満載のミュージカル。今回の月組公演が日本初演となる。
舞台はウィーンにある老舗ホテル・エードラー。オーストリア出身の人気ハリウッド女優エマ・カーター(美園さくら)のお忍びの来訪を従業員がツイートしてしまったことで、ホテルは大混乱に陥ってしまう。ホテルの跡継ぎであるジョージ(珠城りょう)が不手際を詫びにエマの部屋を訪ねたところ、ふとしたことから二人は意気投合するが…。
「故郷」や「家族」をテーマに、オーストリアの美しい街並みや自然の中で、惹かれ合い、自分の居場所を見つけて行く人々の姿を珠玉のナンバーにのせて描く、心温まるミュージカル。
■ウィーン劇場協会 CEO フランツ・パタイ
ウィーン劇場協会ではオペラハウスを2つ、ミュージカル用の劇場を2つ所有しており、1年に約100回のオペラ公演、約500回のミュージカル公演を上演しています。オリジナル作品としては、日本でもお馴染みの『エリザベート』『モーツァルト!』『ダンス オブ ヴァンパイア』『貴婦人の訪問』などがあり、今まで21ヶ国6,200万人の方々にご観劇頂きました。23年前、『エリザベート』を国外で初めて日本の宝塚歌劇団が上演して下さったときから数えて、我々の間には既に1/4世紀にわたる友情関係があります。『I AM FROM AUSTRIA』によって関係がもっと深まることを祈っています。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートで最後に演奏される「ドナウ川のさざなみ」という曲を日本の皆さまもご存じかと思います。『I AM FROM AUSTRIA』はオーストリア人であれば誰もが知っている作品です。今回の宝塚のプロダクションで、この作品の楽曲が日本でも「ドナウ川のさざなみ」と同じように有名になることを願っております。皆様のご成功をお祈りしております。
■ウィーン劇場協会 ミュージカル芸術監督・脚本・クリエイティブデベロップメント
クリスティアン・シュトゥルペック
我々がウィーンで制作したミュージカルの中で最も成功したミュージカルの1つに数えられる『I AM FROM AUSTRIA』は、オーストリアという国に対する愛情あふれるオマージュであり、ユーモアと強いエモーションに溢れた作品です。オーストリアの伝説的なシンガーソングライター ラインハルト・フェンドリッヒによる輝かしく薫り高い歌詞と、ゴージャスで感動的なメロディを持つ力強い楽曲の数々で構成された本作は、2年間にわたり毎日満席の劇場で上演され、合計50万人以上の方にご観劇頂きました。宝塚歌劇団が私たちに大いなる信頼をお寄せ下さり、本作を日本で初めて舞台にかけて下さることは大変な名誉であります。宝塚歌劇団の皆さま、そして我々が心より敬愛する日本の観客の皆さまに、本作のニュープロダクションで多くの喜びを見出して頂けますよう、また、大いにお楽しみいただけますよう、心より祈念致します。
―パフォーマンスをご覧になっていかがでしたか?
お二人が役の要求する非常に重要な部分をパーフェクトに演じられているのを拝見して本当に感動しました。今日披露して頂いた楽曲はウィーンでは“ウィーン訛り”で歌われる楽曲なのですが、それが日本語の楽曲としてなんの抵抗もなく聴こえて来たことに私たちはとても感動しました。お二人はきっと、本当に素晴らしく公演を支えてくれるだろうと思っています。
■脚本・アイディア ティトゥス・ホフマン
『I AM FROM AUSTRIA』は最初のアイディア段階から、軽快でユーモアに溢れ、エモーショナル、かつ、深く心に触れるウィーンオペレッタの伝統的な要素と、モダンな要素を併せ持つ作品として、3年半という歳月を費やして制作されました。楽曲を先に決め、いわば後付けで話の筋を練り上げて構築するというプロセスは特殊ではありましたが非常にエキサイティングなものでした。国際的なクリエイティブチームと選り抜かれた俳優たちと共に2回のワークショップを通して推敲を重ね、9週間のリハーサル期間を経て、2017年9月、ついにその陶酔的ともいえる初日を祝うに至りました。「存在」と「見せかけの世界」を明確に見分けることがますます困難になっていく世の中で、独自のアイデンティティを探求し、発見する『I AM FROM AUSTRIA』の物語が、世界的にも有名な宝塚歌劇団で描かれることを、私は大変嬉しく名誉に思います。全ての宝塚歌劇団の関係者の皆様の「成功を祈ります(日本語で)」。
■潤色・演出 齋藤吉正
宝塚歌劇105周年、そして、日本とオーストリアの国交が結ばれて150年という年に、『I AM FROM AUSTRIA』という新作ミュージカルの日本初演を担当させて頂けることの誇りと責任を痛感しております。昨年の秋、小川理事長からこのお話を頂きまして、台湾公演の数日後にウィーンへ渡らせて頂き、観劇、ウィーン劇場協会の皆さまと打ち合わせをさせて頂きました。大変人気がある新作公演ということで、元々この作品の存在自体は知っておりましたが、まさかこの作品が宝塚歌劇105周年の公演として上演されることになるとは夢にも思っておりませんでした。本作は月組で日本初演された『1789 -バスティーユの恋人たち-』以来の宝塚歌劇での海外ミュージカルの新作になるかと思われますが、月組はとても“ミュージカルに強い組”という印象を持っております。
珠城りょうは若くはありますがトップスターとしてのキャリアは充分、日々ベテランの風格を増してリーダーシップを発揮してくれている頼もしいトップスターです。美園さくらもトップ娘役として、先日の『ON THE TOWN』でも、また成長の跡を残してくれています。とてもチームワークが良い月組のあたたかさは『I AM FROM AUSTRIA』という作品が持つアットホームさや、あたたかさと共通するものがあります。我々は作品に込められたメッセージ、そして、オーストリアの文化や歴史を、この作品を通じて伝える義務があると思っております。内容について詳しくはご覧頂いてのお楽しみ、ということになりますが、先ほど披露させて頂いた楽曲の他にも、とても素敵な楽曲の数々が、心温まるストーリーの中に挿入されていきます。今週からお稽古が始まりますが『I AM FROM AUSTRIA』は素晴らしい楽曲とウィットに富んだセリフ回しがミックスされた、老若男女にお楽しみいただける作品だと確信しております。どうぞご期待下さい。
―宝塚歌劇で上演するにあたっての見どころは?また、(UCC上島珈琲にちなんで)劇中にコーヒーは出てきますか?
コーヒーはもちろん出てきますよ!(笑) この作品が宝塚に合うなと思うポイントとしては、そのストーリーもさることながら、ふんだんに盛り込まれたミュージカルナンバーです。レビューのシーンが大変多く、楽しいナンバーや抒情的なナンバー、様々なバラエティ豊かなナンバーが用意されています。今、香盤表を作成しているのですが、それぞれの出演シーンがとても多いミュージカルになってくるかと思います。そして、色とりどりの舞台美術や衣装を皆様にご覧いただけるかと思います。ウィーン版はLEDを駆使した大きなケーキ型のセットがベースになっておりますが、宝塚歌劇は盆が回り、大きなセリもあります。それらを使った宝塚の正攻法の転換方法で、ウィーンでご覧になった方にも「あ、宝塚レビューだな」と思って頂けるような流麗な流れを意識して作らせて頂きたいなと思いますし、楽しいお話をご覧いただいた後には、宝塚歌劇ならではの華やかなフィナーレも予定しておりますので、そちらもどうぞお楽しみに。
■珠城りょう
ウィーン劇場協会制作のミュージカルを宝塚歌劇で上演するのは『エリザベート』に次いで2作目ということで、とても身の引き締まる思いでおります。月組では先日『エリザベート』も上演させて頂きましたが、今回は『I AM FROM AUSTRIA』という『エリザベート』とは世界観も雰囲気も楽曲の毛色も180度違う作品となっておりますので、そういった作品にまた新たな月組で挑戦出来ることをとても光栄に思っております。先日、ウィーンの劇場で実際に舞台を拝見し、この作品がウィーンの皆さまから非常に愛されている作品であるということを肌で感じてまいりました。そういった作品を日本で上演させて頂くということで非常にプレッシャーも感じているんですけれども、ウィーンのキャストの皆さまや、パタイさんをはじめとした関係者の皆さま、観客の皆さまが、現地でとてもあたたかく迎えて下さったことは自分にとっても忘れられない思い出ですし、今日またこうやって日本でウィーンの皆様に再会できたことを非常に嬉しく思います。
私の演じるジョージは“ホテルの御曹司”という役どころではあるんですけれども、両親との確執に悩むごく普通の青年です。両親からの成長や独立が彼の中の大きなテーマなのかなと感じています。『I AM FROM AUSTRIA』は、恋愛だけでは無く、家族愛、友情、そして祖国愛が、美しい音楽にのせて紡がれていて、観終わった後に本当にあたたかいものが心に残る作品だと感じました。きっと日本でも多くの方に共感して頂ける物語だと思いますので、大人の方だけではなく、SNSが普及している現代に生きる若い世代の方々にも、ぜひ観て頂きたいです。家族の大切さ、友人の大切さ、そして、自分自身が将来どうなっていきたいのか、ということを一人一人が考えることがいかに大事かということを、きっと作品から感じとって頂けるのではないかなと思います。月組のみんなと一緒に大切に、丁寧に、齋藤先生とも色々話し合い、ぶつかり合いながら、良い作品に仕上げていきたいと思います。
―「故郷」を想う気持ちと「宝塚」について
宝塚はもちろん私にとっても「故郷」であり、第2の故郷ともいえる所です。宝塚は組を超えて「宝塚歌劇の劇団員はみんな家族」と私たちもよく言っているんですけれども、月組は、一人一人が個性を発揮していてあたたかく、自分のことだけではなく、他人のことも思いやれる、そういう組だと思っています。そういった点でも、この作品を宝塚歌劇の月組で上演するということが意味のあることであったらいいなと思いますし、作品から感じ取ったメッセージを普段の自分たちの生活や環境に照らし合わせながら作っていけたらと思います。
■美園さくら
日本とオーストリアの友好150周年という記念すべき年にこのような素晴らしい作品に携われることを大変光栄に思っておりますし、今回が日本初演ということで身の引き締まる思いでございます。ウィーンで実際に観劇させて頂き、今まで体感したことのないような、華やかで、それでいてスタイリッシュなパフォーマンスに圧倒されました。その感動を余すことなく日本の皆様にもお届け出来るようにこれから精一杯お稽古していきたいと思います。
演じさせて頂くエマ・カーターという人物はハリウッド女優として華やかな世界で生きている分、孤独や苦悩を抱えております。そんな彼女が、美しい故郷に戻って来た時に感じた心の解放感を、素晴らしい音楽にのせて繊細に表現することが出来るように精一杯頑張りたいと思っております。また今回は『夢現無双 -吉川英治原作「宮本武蔵」より-』に続き、齋藤先生に演出して頂けるということで、先生には私の性格や様々なことを全て分かって頂いておりますので、とても心強いです。先生にしっかりとついて、お稽古を頑張って行きたいと思います。
公演は兵庫県・宝塚大劇場で2019/10/4(金)~11/11(月)、東京宝塚劇場で11/29(金)~12/28(土)上演される。
撮影・文/ローチケ演劇部(ミ)