宝塚歌劇 雪組公演 ミュージカル『ONCE UPON A TIME IN AMERICA(ワンス アポン ア タイム イン アメリカ)』制作発表レポートが到着!

宝塚歌劇 雪組公演 ミュージカル 『ONCE UPON A TIME IN AMERICA(ワンス アポン ア タイム イン アメリカ)』の制作発表会の模様をお届けします。

制作発表会ではまず、望海風斗(ヌードルス役)、真彩希帆(デボラ役)、彩風咲奈(マックス役)、彩凪翔(ジミー役)、朝美絢(キャロル役)によるパフォーマンスが披露された。

1984年に公開された、セルジオ・レオーネ監督によるギャング映画『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』は20世紀のアメリカ社会を背景に、主人公の少年期、青年期、初老期という3つの時間軸を交差させる緻密な構成、サスペンス的な要素も織り交ぜたドラマティックな展開が熱狂的ファンを生んだ傑作。

ニューヨークの貧民街で暮らす移民の少年達が、ギャングとして成りあがって行く過程で育む友情と絆、恋を中心に、その後の悲劇的顛末までをノスタルジックな情感で描き上げる本作の世界初のミュージカル化に、望海風斗を中心とした雪組が挑む。

―どういった経緯でこの作品が宝塚でミュージカルとして上演されることになったのでしょうか?

小池修一郎(脚本・演出)「この映画が凄く好きで、私の作品の中にも、この映画の中のいくつかのシチュエーションにインスパイアされた、というかある意味参考にさせて頂いた作品が何個かございます。移民の話、という意味では『ヴァレンチノ』もそうですし、ラスベガスを作った人をモデルにして『カステル・ミラージュ』を作ったりもしました。それから、“悪い道に走ってしまった人たちの少年時代”というところをオマージュして、舞台をフランスのマルセイユにした『アデュー・マルセイユ』ですとか。それらはこの作品に出て来るものと、『ゴッドファーザー』に出て来るものへの思い入れを反映させたものをやって来ています。」

小池「この話のロバート・デ・ニーロの演技、というか出すものがとても魅力的なんですけれども、今回は、望海風斗さんが主演ということで、作品の候補をいくつか考えたんですが、中でもこれが一番見てみたいかな、と思いました。似たキャラクターを描く、ということも考えたんですけれども、願わくば『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』という題材そのものを使えないかな、ということで権利を交渉して頂きました。中々多岐に渡っていて複雑だったんですけれども、最終的に許可を頂けましたので実現の運びになりました。」

―ミュージカルで、というのはどういったところからでしょうか?

小池「宝塚歌劇ですから、何をやってもミュージカルなんですけれども、何より望海風斗の歌唱力、そして真彩希帆もですし、雪組全体がとてもレベルが高い組ですから、そこを活かせたらと思っています。」

―映画は4時間近くと長く、少年期から初老期までという一生ものですよね?どのように舞台化するのでしょうか?

小池「上演時間としましてはフィナーレを除きまして二時間十何分となりますので、色々と圧縮をしていきますし、映画にはないものもありますので、見てのお楽しみですね。」

―1番ここをポイントにと思っていらっしゃるのはどういった点でしょうか?

小池「今、望海風斗はかなり完成された男役だと思っているので“人生のアイロニー”ですね。男役の精神や、華やかでエネルギーに満ちた部分、というのも良いんだけれど、経験を積んできたからこそ出せる“哀愁”みたいなものもあると思うし、難しい所だとは思うんですけれども、そこが凄く魅力的であろうと期待しています。」

―少年時代から大人時代までずっとお一人で…?

小池「そうですね。やって頂きたいと思っています。」

―望海さんいかがですか?

望海「宝塚では少年時代を違う人が演じて、そこから大人になって出て来る、というパターンが多いと思うので、やはり少年時代から自分たちで演じることが出来ると、その分、関係性というか、“絆”っていうんですかね。お互いの積み重ねて来たものというのも表現しやすいと思うので、見た目はどうか分からないですけれども(笑)、演じる側としてはとてもやりやすいんではないかなと思っております。」

―ヌードルスという人物についてはどのように考えていらっしゃいますか?

望海「一言で言うと、静かな人だな、と。哀愁が漂っていて、自分の中できちんと消化していく人のように見えて、彼の背負っているものが色んな人との関係性によってにじみ出ている所が魅力に繋がるのではないかなと思っています。ヌードルスをどう演じるか、というよりも、デボラとの関係性、マックスとの関係性、周りの人との関係性というものをきちんとお互い話しながら作っていくことで、ヌードルスという人間が出来ていくんではないかなと思います。」

望海「上手くいかない関係性、ではないですけれども、こういった間柄を演じることに関しては、やはり今まで様々な関係性を演じて来た信頼感が物凄くあるので、きっと上手く行くのではないかなと思っています。周りの人に頼って、助けてもらいながら、ヌードルスという人間を作り上げていきたいと思います。」

―みんなに慕われる役ですよね?

望海「そうですね。若干憧れみたいなものもあるんじゃないかな、と。宝塚に入って17年経っておりますので、“普通に見えて普通じゃない大物感”みたいなものを、積み重ねて来たものを活かして出せたらいいなと思います。」

―真彩さんはいかがでしょうか?

真彩「最初にこの映画を観た時に、デボラ役を演じている女優さんが、幼少期の女優さんも、成人した後の女優さんも、瞳がとても綺麗なのが印象的でした。ミステリアスで、何を思っているんだろう…というような不思議な瞳をした女性、大人と少女の狭間のような魅力が上手く表現出来たらいいなと思っております。」

小池「舞台版のデボラは、彼女の歌唱力も活かしたいので、元々ブロードウェイのスターになっている、という設定なんですけれども、映画で描かれているよりも自己主張の強い女性として描きつつあります。」

―映画では2人が出会う場面で名曲「アマポーラ」が流れますよね。

小池「どこかでは入れたいなと思っていますが、最終的な検討はこれからしたいと思っています。」

―彩風さんはいかがですか?

彩風「何の予備知識もなく映画を観たので、最初はギャングもの、ということで少し構えて観ていたんですけれども、自分が思っていた以上に、人と人との友情、愛情といったものがたっぷり詰まっていて、美しい世界観に本当に見入ってしまう作品だったので、この作品を宝塚で、しかも小池先生の演出で上演、それに出演させて頂けるということをとても幸せに思います。」

彩風「マックス役は私にとっても新しい挑戦だなと思うので、お稽古に入ってから沢山考えて行きたいと思うんですけれども、映画を観ていて何よりも印象的だったのが、マックスがヌードルスをただ見ている、というシーンが何シーンもあることです。その表情の中に、その心の中に、その瞳の中に、憧れであるとか、嫉妬であるとか、一体どんな気持ちが込められているんだろうと思わせられる場面が沢山あったので、その心を大切に演じられたらと思います。望海さんは“ギャング先輩”なので、しっかりとお稽古の時から先輩のレベルに合わせていけるように頑張りたいと思います。」

望海「悪役がやりたいって、言ってたもんね?」

彩風「そうなんですよ。楽しみです。」

―彩凪さんはいかがですか?

彩凪「私は、この作品が決まってから映画を拝見させて頂いたんですけれども、この時代の男性のダンディーで渋い感じや、女性が凄く色っぽくて、でもどこかかっこいい所もある、みたいな世界観が凄く好きで、今回この世界に入れることをとても嬉しく思っています。ジミーは映画ではエクステンデッド版の方にちょっと多めに出ているみたいなんですけれども、色んな人と出会って、時代の流れの中で野心に駆られて、のし上がっていくその過程で、どんどん心の中が移り変わっていく感じが、とても魅力的な人だなと思いました。大きな力にも屈しない強い意志を持って、みんなを先導していく人なので、自分が話す言葉にもしっかりと説得力を出していかなければいけないなと感じています。」

小池「ジミーは映画ではあまり描かれていない役で、普通に観ると、殴られまくって半殺しの目に合うような「ん?…え?」という感じの役なんです。あまり描かれてはいないんですけれども、この映画が企画され、制作されていた当時、非常に社会的な話題になっていた人物として、ジミー・ホッファというトラック業界の組合のボスだった人がいて、ジミーはその人の存在をイメージに入れて作られている役だと私は見ています。まともな組合運動をやって出世していた人が、一方でラスベガスを建設するイタリアンマフィアに投資していたという大変面白い所がありまして、ケネディ大統領が彼をなんとかして刑務所に入れたんですが、後にニクソン大統領が出してしまうというようなこともあり、その後、彼は70年代の後半に失踪して消えてしまいました。ジミーのそういった裏話については映画ではちょっと触れられているだけなので、そこをもっとクリアに出していけると、この話の最後のオチ、みんなが大人になった後の出来事の謎の一つが解ける所でもあります。彼女は『るろうに剣心』の時も武田観柳という役を大変面白くやってくれまして、『ひかりふる路』の時の役も大変面白かったので、そういう屈折していたり、変わっている、個性的な役をやって欲しいなと思って、このジミーという役を膨らませようと思っております。」

―キャロル役の朝美さん、今回は娘役ですね。

朝美「このような素敵なドレスを着せて頂き、皆様の前に立って、そしてパフォーマンスで彩風さんと踊る、ということが初めてだったので、とても緊張しましたし、今も足が震えております。私はこの映画を、この作品を雪組で上演すると聞いてから初めて観たんですけれども、もちろんその時は自分が男役をやると思っていたので、男性中心に観ていたところがありまして、でも娘役をさせて頂くと聞いてからもう一度見直した時に、先ほど彩凪さんも仰っていたんですけれども、1920年代から60年代に至るまでのダンディーな男性たちの中で、素敵なドレスを着ている女性という存在も、凄く華やかに、色気たっぷりに強く生きているなという印象があったので、1月の公演までに、小池先生のご指導のもと、色気たっぷりに演じられたらいいなと思っております。」

小池「キャロルは映画ではちょっと色気過剰な女性のように描かれているんですけれども、舞台ではスピークイージー、もぐり酒場の歌姫という設定にしようと思っております。彼女は『グランドホテル』の時のラファエラという役が非常に良かったのでそこを活かしたいなと。もちろん男役としても魅力的だと思っておりますし、男役で出る所もありますので…」

朝美「そうなんですか…!?今、初めて聞きました…!」

小池「あ、と言っても踊りですよ。まだ香盤表も出していないですからね。あまり言っちゃうと面白くないじゃないですか(笑)。初日が開いて、パンフレットを見てからご覧になる時には、あ、ここ出るんだ、次は出てないんだ、とか分かってご覧になるんでしょうけれども、それまではね、そこは楽しみにして頂きたいので。」

朝美「はい、でもちょっとホッとしました(笑)。ありがとうございます。」

―いろんな所にサプライズが隠されているんですね。

小池「二度目にご覧になった時には何とも思わないかもしれないですけれども、一度目はちょっとくらい、あっ!と思われるかもしれません。でもこれでもう、一個、サプライズなくなっちゃいましたね…(笑)」

―この時代のファッションも楽しみなんですけれども、特に娘役さんたちのお衣装はどのような感じでしょうか?

小池「娘役に関しては本当にこのような(真彩と朝美を指して)感じのものとか、ステージの時の衣装に関してはブロードウェイのスターのものとスピークイージーの歌姫のものはちょっと違うので色々なバリエーションがあると思います。男役に関しては、スーツものと呼ばれるものなので、タキシードが一番の正装ですし、スーツを着ていたりもします。この映画における現代みたいな場面では、ビートルズの「イエスタデイ」が流れる1968年まで行くのですが、少し進み過ぎてしまうと思いますので、舞台では25年後の1958年までにしようと思っています。」

―望海さん、この作品が来年の元旦に幕開けのお正月作品となりますがどのようなお気持ちでしょうか?

望海「雪組は東京宝塚劇場でお正月公演を迎えるのが2年続きまして、来年は本拠地、宝塚大劇場で元旦から公演出来るということが凄く楽しみですし、1年のスタートにこのような作品に挑戦させて頂けるということで良い1年のスタートが切れるんじゃないかなと思っております。娘役は派手に、華やかに、男役は、美学や細かいこだわりをそれぞれ詰め込んで、1月1日を迎えたいと思います。」

―今、充実期を迎えている雪組生に向けて、メッセージをお願い致します。

小池「雪組は100周年からずっと、どんどん好調に快進撃を続けていると思います。先代の早霧さんもそうでしたけれども、望海さんも、非常に勤勉実直、と言いますか、こんなに真面目によく働く人もいないんじゃないか、という所があります。今もそうですが、組子たちもその背中を見て、とても真面目にやると思うんですけれども、同時にそこから何か一つはじけてくるといいかなと思っています。ただ、作品が、はじけるタイプの内容ではないので、スタイリッシュになっていたら良いな、と思います。正月早々暗い話ね…なんて言われるかな、とも思ったんですけれども、東京のお正月公演だったのはそれこそ…」

望海「『ひかりふる路』と…『ファントム』ですね。だから全部暗いです!」

小池「だけれども華やかですよね。だから、そこをこの作品では、味わいで、と思っております。今この場で突然ふと思ったんですけれども、このテーブルクロス。リハーサルの時は、茶色っぽいなぁ、なんて思ったりもしたんですけれども、中々良いですよね。渋くて、味わいがあって、光沢感がある。そんな風に、望海風斗17年の風合いの中に出て来る輝きが、この作品の一つの味わいのポイントになるのではないかと思います。」

公演は兵庫県・宝塚大劇場で2020/1/1(水・祝)~2/3(月)、東京宝塚劇場で2020/2/21(金)~3/22(日)上演される。

撮影・文/ローチケ演劇部(ミ)