ローチケ演劇部presents はじめてのミュージカル「今月のあの人の“今キニナル”」 第11回 ミュージカル『アラジン』:海宝直人

■生身の人間が演じる“魔法のような舞台”

はじめての方にオススメするなら『アラジン』ですね。映画も公開されましたし、僕自身も劇団四季の舞台に立たせて頂いた思い入れのある作品です。

『アラジン』を一言で言うと、“THEエンターテイメント”。きっとストーリーは皆さんよくご存じだと思いますが、あの世界観をそのままに、お客様の目の前で展開していく…本当に魔法のような舞台なんです。

 

舞台上の仕掛けもたくさんあるし、セットや衣装もすごく豪華です。アラジンが王子様に変身するのですが、その時の真っ白な衣装には本物のスワロフスキーが縫ってあって!しかも模様は全部刺繍!『アラジン』の衣装一着で、多くの舞台の一本分の衣装が作れると言われるくらい、お金もかかっているんです。そういったこだわりが細部にまで詰まっているのも、この作品の魅力だと思います。

 

実は先日、ドイツで『アラジン』を観劇してきまして。そこで観る側になって改めて♪ホール・ニュー・ワールド (*1)の絨毯のシーンはすごい演出だなと思いました。「本当に飛んでる!」っていう、あの“魔法”にはいつも感動しますね。

*1王子に変身したアラジンと、王女・ジャスミンが“魔法の絨毯”に乗って夜の空を旅する代表的な場面。舞台作品でも、2人を乗せた絨毯が実際に空中を浮遊する。

 

聞いた話によると、“魔法の絨毯”の演出はアメリカのトライアウト(*2)から色々な方法が試されていて、マジシャンの方とブロードウェイ公演の直前まで試行錯誤して作り上げたんだとか。

*2多くのブロードウェイ作品は、ブロードウェイで上演する前に“トライ(お試し)”として、地方の劇場でトライアウトと呼ばれる公演を行う。トライアウト公演で観客の反応を見ながら作品をブラッシュアップし、その後ブロードウェイで上演するのが一般的。

 

今の時代、映像だったらCGを使えばどんな魔法だって表現できるじゃないですか。でもやっぱり、ライブにはライブならではの魅力が絶対ある。生身の人間が目の前で演じ、目の前で展開していくというのは、舞台芸術でしか味わえない世界だと思います。

■“日本人が作り、日本人が観る、日本版のアラジン”

『アラジン』で好きなシーンは、最後のフィナーレですね。インド映画のボリウッドのように全員が歌って踊って、最後はアラジンとジャスミンが魔法の絨毯で飛び立っていく…この一連のシーンが大好きです。ウワーッ!と盛り上がってハッピーエンドを迎える、“これぞミュージカル!”を感じられる場面なんじゃないかな。

 

ただ、もちろんアラジンとジャスミンのラブストーリーも見どころですが、僕としてはアラジンとランプの魔人・ジーニーとの友情といった側面も見てほしいポイントですね。
と言うのも、実際日本版を立ち上げるときには“日本人が作り、日本人が観る、日本版のアラジン”をすごく考えられていて。だから元はブロードウェイ作品ではあるけれど、日本版には日本人的な情感・人情というのも色濃く描かれているんですよね。

 

アラジンは“3つの願い”が残り1つになった局面で、自分の恋の成就ではなく、友達であるジーニーの自由を願うわけですが、ジーニーの魔法が解ける(自由になる)シーンで彼の手かせが外れる演出があるのは日本版だけ。ジーニーの“自由になりたい”という切実さと、自由になることでアラジンと離れ離れになってしまうという寂しさ…なんだかこう、グッとくるものが、あの演出には詰まっている気がします。

 

ですからお客様にはもちろんハッピーな気分で帰って頂きたいのですが、演じる身としては、心動くものがちゃんと届けられるように、と思って努めています。

 

■ミュージカルの魅力

映像作品の場合、キャラクターの目線一つで悲しいとか、何か企んでいるとか、そういった内面の心理を表現していきますよね。
でもミュージカルでは、内面の心理が一曲の音楽として、歌やダンスと共に表現されるんです。映像作品なら一瞬で表現されるところが、2~3分の曲となって言葉としても、音楽としても伝わっていく。だから観る人はキャラクターの心理がすごくダイレクトに感じられるし、舞台に繋がる感覚があるんじゃないでしょうか。そこがミュージカルならではの魅力だと思います。

 

取材・文:ローソンチケット
ヘアメイク:AKANE

 

■海宝直人

1988年7月4日生まれ、千葉県出身。7歳の時、劇団四季『美女と野獣』のチップ役で舞台デビュー。1999年『ライオンキング』初代ヤングシンバ役に抜擢され、同役を3年間つとめる。近年はミュージカル『レ・ミゼラブル』マリウス役、劇団四季『アラジン』主演アラジン役、『ライオンキング』では主人公シンバ役として16年ぶりに同作品へ出演。その他『ジャージー・ボーイズ』ボブ・ゴーディオ役、『ノートルダムの鐘』主演カジモド役など、子役時代から培われた確かな演技力が高い評価を得ている。

 

公式HP:https://kaihonaoto.com/

公式Twitter:https://twitter.com/naotosea

公式ブログ:https://ameblo.jp/naoto-kaiho/

 

★CDリリース情報
シアノタイプ『MONTAGE』(KING RECORDS)
海宝直人がヴォーカルをつとめるバンドのファーストアルバム 2019年10月9日 ON SALE!

海宝直人公式サイト http://kaihonaoto.com

 

 

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