アメリカン・ドリームを歌う市村正親「絶対アメリカ行くぞ!」ミュージカル『ミス・サイゴン』製作発表記者会見レポート

2/26(水)、都内にてミュージカル『ミス・サイゴン』の製作発表記者会見が実施された。『ミス・サイゴン』は、『レ・ミゼラブル』を世に送り出したチーム(プロデューサー:キャメロン・マッキントッシュ/作:アラン・ブーブリル/作曲:クロード=ミッシェル・シェーンベルク)が製作したことでも知られる大ヒットミュージカル。ベトナム戦争の最末期、陥落直前のサイゴン(現在のホーチミン市)のキャバレーで出会ったアメリカ兵・クリスと17歳のベトナム人少女・キムを軸に、戦争という極限状態の中で生きた人々のドラマ、そして親子の“究極の愛”が描かれた作品である。

4年振りとなる2020年の日本公演には、1992年の日本初演時からエンジニア(キャバレーを経営するフランス系ベトナム人)役で本作に出演し続ける“ミスター・サイゴン”市村正親をはじめ、映画・ドラマ・舞台で広く活躍する高畑充希ら、人気・実力共に兼ね備えたキャストが揃った。製作発表当日は、報道陣と抽選で当選した一般オーディエンス200名の前にプリンシパル・アンサンブルキャストが登場。それぞれの言葉で公演への意気込みが語られたほか、約20分間に及ぶ楽曲メドレーが披露された。全キャストによる「♪火が付いたサイゴン」の歌唱の後、プリンシパルキャストの挨拶が行われた。そのコメントを挨拶順に紹介する。


【ジジ役】

■青山郁代
4度目の出演となりますが、今回夢だったジジ役を演じられることがとっても嬉しいです。誠心誠意、新たな気持ちで挑みたいと思います。■則松亜海
このような大役を頂くのも初めてで、すごく緊張しています。全身全霊をかけてジジ役を演じたいと思います。【トゥイ役】

■神田恭兵
今回で4度目のトゥイ役となります。僕の俳優人生全てを注ぎ込むつもりです。■西川大貴
本作には6年振りの参加になります。6年の間で自分が成長した部分もありますし、演出が変わった部分もあると思うので、全力で稽古・本番に挑みたいと思います。【エレン役】

■知念里奈
私は2004年から(キムからエレンへと)役を変えて出演させて頂いています。色々な『ミス・サイゴン』を舞台上から観ているのですが、今回は新しいキャストの皆さんがたくさんいらっしゃいます。ですので自分の大好きな作品をどんな風に作っていけるのか、とても楽しみです。

■仙名彩世
2008年に初めて本作を拝見してから、「いつか絶対この作品に携わりたい」と思っていたので、今回このような機会を頂いて大変嬉しく思います。全身全霊で務めてまいります。■松原凜子
オーディションのとき、「エレンは“希望の光”であってほしい」ということを教えて頂きました。戦争・人種差別などを取り扱った本作は、今の時代に上演する意味がある作品だと思っています。真摯に向き合っていきたいです。【ジョン役】

■上原理生
4度目の出演となりますが、キャストも大きく変わり、また新しい景色が見られるのだと思うと、また今回はどんな課題が待っているのかと想像すると、ワクワクとドキドキでいっぱいです。この役を務めるというのは、同時に戦争の歴史などを伝える使命を担うことだとも思うので、毎回責任感を持ちながら演じられればと思います。■上野哲也
前回はクリスを演じて、今回はジョン役で本作に再び関われること、心から光栄に思います。ジョンを演じるため、自分自身の新しい引き出しを見つけていかなければな、と思っています。ドリームランド(エンジニアが経営しているキャバレー)では、ジョンは誰よりもノリノリなんですよね…俺、できるのかな?(笑)。また0からの出発だと思ってチャレンジしていきたいと思います。【クリス役】

■小野田龍之介
再びこの作品・この役に携われること、とても嬉しく思います。4年振りだからこそ感じ取れるキムとのやり取りやエレン・ジョンとの関係性などを大切にしながら、お稽古に挑んでまいりたいと思います。

■海宝直人
僕は2008年にアンサンブルとして本作に出演させて頂きました。当時19歳だったのですが、様々なことを勉強させて頂いた『ミス・サイゴン』という作品に今回このような形で戻ってくることが出来て心から嬉しく思い、感謝しております。クリスという役を、繊細に、そして大胆に演じていきたいと思います。

■チョ・サンウン
日本の舞台に立つのは約10年前の劇団四季の公演が最後だったので、今はドキドキしています。『ミス・サイゴン』には2015年にイギリス公演でトゥイ役として出演させて頂いたことがありますが、今回また違う役なので、お友達と仲良くなって(笑)、皆と一緒に頑張りたいと思います。【キム役】

■高畑充希
小さい頃から何度も観て、憧れていた『ミス・サイゴン』のカンパニーに入ることができて、最高に嬉しいです。初めての帝劇ですし、ミュージカルは約7年振りなので、楽しくお稽古できたらと思います。■昆夏美
2016年公演の際、声帯結節という喉の病気を患って、名古屋公演以外は全て休演させて頂くという事態となってしまいました。楽しみにして頂いた皆さんに残念な思いをさせてしまいましたし、自分自身もとっても悔しい思いをしました。ですので、今回こうやって戻ってこられてとても嬉しいです。今年もキムを1から作っていきたいと思います。■大原櫻子
まだ稽古が始まっていないので、自分がどんなキムを演じられるかはわからないのですが、テーマ性を持っている本作に携われてとても嬉しく思います。■屋比久知奈
この作品に憧れていたので、出演できることが嬉しいのと同時に、とても責任を感じています。責任やプレッシャーをパワーに変え、真摯に挑みたいと思います。

【エンジニア役】

■東山義久
多くのキャストやスタッフの皆さんの情熱が、2020年の上演に繋がっているのだなと思います。その感謝と、この舞台に立てる誇りを持って、初日から千秋楽まで誠心誠意努めてまいります。

■伊礼彼方
フランス人のDNA多めのエンジニアを務めさせて頂きます(笑)。まずこの場にたたた…(噛)あー、緊張する!市村さんの隣に座るのはこんなにも緊張するものなのかと、昨日寝る前には想像していなかったです(苦笑)。市村さんが作ってきた歴史を背負いながら、僕自身で新しいエンジニアを作っていきたいと思います。■駒田一
今回で3度目ですが、初出演の時はひたすらに動いていただけで、記憶がございません。前回から少しずつ地に足をつけて出来たかなと思いますので、今回はもっと地に足をつけて、いろんなところを見渡しながら、9月のゴールまで皆で走り続けたいと思います。

■市村正親
初演からずっとやっていまーす!初演の頃に生まれた方いる?(大原挙手)いくつ?(大原「24歳です」)初演は確か28年前だよね?その頃からずーっとやっています!前回卒業宣言をしましたが、また戻ってきました!頑張りまーす!!挨拶後の質疑応答で今回の意気込みを聞かれた市村は、「前までやっていたことは一度捨てて、0からやってみたい。新しい方向から役を作っていけたら」と力強くコメント。また、キム役の昆から質問された「開演前にどんなことを思っていますか?」に対しては、野心むき出しのエンジニアらしく「『絶対アメリカ行くぞ!』ってこと」と即答。市村は「よく“同じ役を何度もやって飽きませんか?”って聞かれることがあるんだけど、飽きるどころかむしろ、素敵な旅を毎回毎回できるので嬉しいです」と心境を語った。また市村とクワトロキャストでエンジニア役を演じる駒田・伊礼・東山の3名が“どのように役を作っていくか”を聞かれると、

駒田「初演の市村さんを観て憧れたわけだけど、どっかで共通点を持ちながらも、自分は自分なりのエンジニアを作っていけたら。濃いメンバーなので、4回観て頂ければ皆さん幸せになると思います(笑)」

伊礼「初演から演じられている方と一緒の役をやらせて頂くなんて、今後もきっとない経験。言い方が悪いですが、盗めるものはどんどん盗んで、自分のものにして、市村さんにはできないような新しい役を作っていきたい、そういうギラギラした気持ちがあります」

東山「足を高くあげるようなエンジニアとか…柔軟性を活かしたエンジニアとか…(笑)。それは冗談ですが、お三方にできないようなエンジニアを作っていけたらと思います」

それぞれユーモア溢れる回答で会場を笑いに包みつつ、4者4様のエンジニアに期待が高まるようなコメントを残した。質疑応答の後は、劇中歌計7曲のメドレーが披露された。

「♪世界が終わる夜のように」
キム役 4名+クリス役 3名

「♪トゥイの死」
トゥイ役 2名+アンサンブルキャスト「♪今も信じてるわ」
エレン役 3名「♪生き延びたけりゃ」
エンジニア役 4名

「♪命をあげよう」
キム役 4名「♪ブイドイ」
ジョン役 2名+男性アンサンブルキャスト「♪アメリカン・ドリーム」
エンジニア役 4名+他キャスト全員

舞台上では観ることのできない貴重且つ豪華な共演。曲が終わるとキャストには割れんばかりの拍手が贈られた。

高畑は歌唱を振り返り「激緊張しました」と心境を露わにしたものの、「お尻に火が点きました。今、燃えています」と気合を見せる。市村が「オリンピックのミュージカル部門『ミス・サイゴン』、旅公演も行くので、皆さん待っていてください!」と締め、会見は終了。これから稽古に入るということだが、本番ではどのようなステージが繰り広げられるのか――
2020年、令和初の『ミス・サイゴン』がいよいよ始動する。公演は5/23(土)にプレビューを迎える東京公演を皮切りに、北海道、長野、大阪、静岡、富山、愛知、福岡、埼玉と、8大都市での全国ツアーを予定。

 

【会見中の様子】

取材・文・撮影/ローソンチケット