2017年9月22日、宝塚歌劇団雪組の新トップスター・望海風斗と相手役・真彩希帆のお披露目公演『ひかりふる路〜革命家マクシミリアン・ロベスピエール〜』、レビュー・スペクタキュラー『SUPER VOYAGER!』-希望の海へ-の制作発表が行われた。
ドラマティックな楽曲に酔いしれる!
フランス革命の中心人物マクシミリアン・ロベスピエールの生き様を描く『ひかりふる路』は、フランク・ワイルドホーンが宙組公演『NEVER SAY GOODBYE』以来、11年ぶりに全曲を書き下すことでも話題の新作。会見は、まずワイルドホーンのピアノ演奏による楽曲披露からスタートした。
1曲目、ロベスピエールのソロ「ひかるふる路」はワイルドホーンならではのドラマティックなナンバー。望海の力強く伸びやかな歌唱から、新たな世界を切り拓こうとするロベスピエールの志が伝わってくるよう。続く、真彩演じるマリー=アンヌとのデュエット曲「いま」では一転、望海は優しく語りかけるように歌い、真彩が美しいソプラノで応え、2人の声が重なった瞬間、その美しさに会場中が聴き惚れていた。さらにもう1曲、ワイルドホーンのピアノソロによる楽曲披露がされた後、登壇者6人揃っての会見へ。
望海は「大好きな作曲家であるワイルドホーンさんに全曲書き下ろしていただき、生演奏をしていただくなんて、こんな夢のようなことがあっていいのか。本当に幸せです」、真彩は「こうした会見が初めてで緊張していましたが、ワイルドホーンさんのピアノに乗せて歌えてほっとしています」と語った。以下、それぞれのコメント。
宝塚歌劇団 理事長/小川友次
「今公演は、宝塚歌劇にとって東京では2018年の幕開け公演であり、また小林一三翁が東京(旧帝国劇場)で初めて興行されたのがちょうど100年前になります。そうした公演を担うわけですが…といって望海と演出家にはプレッシャーをかけて申し訳ないですが(笑)。
望海の歌声というのはただ綺麗なだけではなく、魂の歌だと思います。それをイメージして相手役を真彩にしたわけですが、2人の魅力が生かされ、雪組をさらに進化させるためにどうしたらいいかと考えた時、フランク(・ワイルドホーン)にお願いしようと。なぜなら、彼の音楽にハート、魂があるからです。「書いてくれないだろうか」と話したところ、すぐにOKと言ってくれました。こんな素晴らしい楽曲を提供してくれたことに心よりお礼を申し上げます。フランクの音楽は大胆にして細心、心の振動を起こさせるので、私自身、初日が本当に楽しみです」
フランク・ワイルドホーン
「宝塚歌劇団との関係は私にとって特別なものです。『NEVER SAY GOODBYE』の稽古初日、“ハリケーン修”こと小池修一郎先生や生田大和先生と、みんなで始めた日のことが忘れられません。そしてもちろん、私の最愛の妻、たかこ(和央ようか)との出会いも。
今回、初めてご一緒する望海さん、真彩さんは素晴らしい音楽家です。私の音楽は歌いやすいものばかりではなく、私は自分の音楽を素直に、自分をさらけ出して表現することを求めます。その点、今日の稽古の時点からお二人は本当に素直に実直に歌ってくださいました。これからさらに挑戦してほしいと思います。それによって、もっともっとすごいものが生まれるはずですから」
『ひかりふる路』作・演出/生田大和
「私にとって何かと縁の深い望海のトップスター大劇場お披露目公演であり、 11年ぶりにワイルドホーンさんに全楽曲を書いていただくなど特別な公演になると思っています。
望海は役のエモーショルな部分を、内側から表現できるところが武器だと思います。歌唱力という形でもそれは表現されますが、感情を内から外にひっくり返すように出せる。そして2、3番手時代に魅力を発揮したのが、いい人、白い役だけでないんですね。私が演出した『ドン・ジュアン』のタイトルロールは登場してから最後まで悪党でした。また『ラスト・タイクーン-ハリウッドの帝王、不滅の愛-』もそうで、望海さんに「この役(ブロンソン・スミス)は人気が落ちるかもしれないよ」と申し上げたんです。ところがお客様からの反響が思いのほか好評で、そうした役柄の魅力を引き出すことができると知りました。
そしてフランス革命といえば、宝塚歌劇では『ベルサイユのばら』をはじめ、これまでたびたび取り上げてきた題材です。ただ、いずれも1789年7月14日のバスティーユ襲撃がメインになっており、それ以降のことはほとんど描かれていません。ロベスピエールに関していうと『1789 –バスティーユの恋人たち-』では理想に燃える青年ですが、『スカーレット・ピンパーネル』では恐怖政治の独裁者になっている。なぜそうなったのか、どうして白が黒になったのかが今まで描かれていないことに気づきまして。望海さんがトップとして新しい魅力を提示するにふさわしい人物だと思いました。歴史は変えることができません。しかし、最終的に彼が望んでいたのは何かを見出していけたらと思います」
『SUPER VOYAGER!』-希望の海へ- 作・演出/野口幸作
「第二幕の『SUPER VOYAGER!』-希望の海へ- は、待望の新トップスター望海風斗と真彩希帆、 “希望コンビ”の誕生と、新生雪組の船出を盛大に祝福する爽やかで絢爛豪華な作品でございます。 豪華客船の出港をテーマにした豪華なプロローグに始まり、 望海風斗の芸名を4つのシーンに分け「望(HOPE)」「海(OCEAN)」「風(WIND)」の場面と「斗(BIG DIPPER)」北斗七星の場面と、シンプルな主に4つの場面に望海の男役の美学、 宝塚レビュー90周年の美学を詰め込んだ王道宝塚のエンターテインメント作品となっております。
ちなみに、私は家に帰ってもタカラヅカ・スカイ・ステージを見てしまうアラサー演出家でございます(笑)。今公演を手がけるにあたり望海さんの過去の映像を見ておりました時に「Brilliant Dreams+NEXT」という宝塚歌劇の特集番組に衝撃を受けまして。といいますのも、望海さんが歴代の男役さんをものすごく研究していらっしゃるんです。私と同じ匂いを感じました…失礼かもしれませんが(笑)歴代の男役トップさんがただ好きなだけでなく、研究して自分のものにしたからこそ、今の立場に上り詰められたと思うのです。今回はそういった彼女の成果をド直球でお見せしたいと思います。
真彩には何度か私の作品に出てもらっていますが、一番びっくりしたのは『Dear DIAMOND!!-101カラットの永遠の輝き-』でロケットをやった後、みんなが袖にはけたあとに1人で歌うっていう。それをやる藤井大介先生の演出にも驚かされたのですが“これができたらロケットの後に歌うのが恒例になるから頑張って”と言いました。すると本番で汗ひとつかかずに涼しい顔で歌いまして。彼女にはどんなことでもやり遂げてくれる信頼感があります。ですから、多少難しいことにもチャレンジしてもらうつもりです」
望海風斗
「お芝居は、今までにないロベスピエール像が生まれるのではないかと思っております。史実は変えられませんが、そこに至るまでの背景を、資料を参考にしながら、生田先生の思いや、自分自身から生まれ出てくるものにしっかりと耳を傾けて、ワイルドホーンさんの素敵な音楽に支えてもらいながら、 素敵な作品になるように大切に作っていきたいと思います。
生田先生にはこれまでも沢山お世話になっており、先生の作り出す世界感や、 一緒にお芝居を作り上げていく過程というのが、とても好きなので、二人のお披露目公演で先生に担当していただけることがとても嬉しいですし、心強く感じております。
ショーの野口先生とは今回初めてご一緒させていただくのですが、事前に私のことをとてもリサーチしてくださっていて、 今お話にもありましたが、この新生雪組の船出を、絶対にこのショーで盛り上げるんだという先生の熱い思い、 宝塚への愛をすごく感じて嬉しい気持ちでいます。先生からショーの内容のお話を伺った時に、 皆が舞台に乗って、先生の思い描いた世界を表現したら、とてもすごいことになるんじゃないかと予感しているので、 これからしっかりと皆でお稽古して作り上げていきたいと思います。 この“希望コンビ”、新生雪組をどうぞよろしくお願いいたします」
真彩希帆
「生田先生とは、花組の時に1度ご一緒させていただいて、こうしてまたお仕事させていただくこと、とても嬉しく思っております。 『ひかりふる路』のお稽古をしていく中で、フランス革命の中で生きたひとりの女性として、ロベスピエールとの関係や他の皆さんとの関係など、その時代を1つ1つ大切に噛み砕いて生きていけたらいいなと思います。 曲をいただいた時に、私の大好きなワイルドホーンさんのこの曲を望海さんが歌われるのかと、すごく幸せな気持ちになりました。デュエットの曲もメロディーを聴くだけで涙が出てくるような、素晴らしい曲をいただきました。望海さんもおっしゃっていましたが、 全曲となるとどういう風になるのかと今からとても楽しみにしております。
野口先生とはご縁があるのか、花組の時に野口先生のバウホール・デビュー作品 『フォーエバー・ガーシュイン』-五線譜に描く夢-、星組では大劇場お披露目作品の『THE ENTERTAINER!』、 そして、今回またご一緒させていただけることをとても嬉しく思っております。望海さんの文字をメインとした4つの場面、 自分がどのような色で支えていけるのかわからないのですが、楽しみにショーのお稽古も重ねて、 望海さんについてしっかりと色々なものを吸収して楽しんで前進して出航していけたらと思っております」
お互いへの信頼を胸に
「自分たちが信じてきたことをやっていく」
さらに新生雪組を担うコンビとして、2人がお互いへの思いを次のように語った。
望海
「プレお披露目だった『琥珀色の雨にぬれて』の時に、すごいガッツで、前のめりでくるのかなと思ったら、意外に繊細で心から演じる人なのだなと感じました。毎日が本当に新鮮で楽しかったので、これからさまざまな役で心のうちを知っていくことができるのではないかと感じています。どんなコンビに、と言ってしまうとそれ以上にならないので。2人で力を合わせて、自分たちが信じたことをやっていくことが一番いい形につながるのではないかと。すごく力のある娘役なので頼りにしております」
真彩
「私もプレお披露目ではとても濃い日々を過ごさせていただきました。下級生の頃から尊敬している素晴らしい先輩であり、その相手役を務めさせていただくということで、舞台人としてたくさんのことを吸収できたらと常に考えておりますし、私は望海さんからパワーをたくさんいただいているので。理想のコンビ像は望海さんがおっしゃる通り、予め決めるものではなく、その時々で感じたことを嘘なく偽りなく、出していければいいのかなと。ついていくだけでなく同じ舞台に立つ人間として、たくさんお話しして共有していきたいですし、精一杯努めて参りたいと思います」
なお、第二幕では大ブームとなった「恋ダンス」ならぬ、「希望ダンス」が披露されるとのこと。「客席降りをして、 出演者とお客様が一緒に踊って雪組の船出を皆で祝福しようと。 ホームページやCSで事前に振付を公開し、グッズも販売するという企画でございます」(野口)。
それぞれの熱い思いが詰まった公演、新トップコンビに期待が高まる!!
取材・文/宇田夏苗
撮影/ローチケ演劇部(ミ)