ミュージカル『Dear my パパ』インタビュー

男だけが住んでいるシェアハウスに見覚えのない赤ちゃんがやってきて、男たちが試行錯誤しながら子育てに奮闘していくミュージカル『Dear my パパ』。2019年に上演された同名舞台をミュージカル化し、神永圭佑、佐奈宏紀がW主演を果たす。共演には、福島海太、皆木一舞、川﨑優作、鎌苅健太、藤重政孝と個性的な面々がそろった。開幕迫る某日、稽古終わりの彼らを直撃。作品への想いなど、たっぷりと語ってもらった。

――今日はメインキャスト7人に勢ぞろいしていただきました! まずは役どころを教えてください。

神永 まったく売れていない自称役者の平野秀作をやらせていただきます。後に出てくる森口とは親友で、最近彼女と別れたばかり、という男です。

佐奈 今が楽しければなんでもOKという精神で生きている水嶋風斗を演じます。売れないYouTuberで、なんとかなるさ、の精神で生きているチャランポランな男ですね。

福島 僕が演じる矢部興毅は日野(ゆうや)や(水嶋)風斗とYouTubeをやっていて、編集者ですね。水嶋たちとは親友って感じです。

皆木 日野ゆうやはYouTuber3人組の中での良心。割と3人の中でバランスを取っていくような立ち位置になっています。

川﨑 40歳手前のお酒大好きおじさん、森口茂雄を演じます。でも、熱いところがあったりもして、このシェアハウスの中ではバランサー的なところもあるんじゃないかな?

鎌苅 僕の役の高宮きみゆきは、シェアハウスのオーナー。みんなのお兄さんだったり、お母さんだったり、お父さんだったりを担いつつ、この子たちから”きみちゃん”と呼ばれながらワチャワチャと頑張っております。

藤重 観音崎はじめを演じますが…、役については、どこまで言っていいのかな? あの、まぁ1番のおじさんです(笑)

――今、稽古を終えたばかりとお聞きしましたが、稽古場の雰囲気はいかがですか?

佐奈 みんなお芝居が大好きですね。特に今回の作品は割とナチュラルな感じで自然にやっていくような作品なので、そこを楽しみながらやっているのはスゴイなって思います。見ていても楽しいし、何かしら毎日みんなが持ち込んでくるんですよ。それを貰って、自分も何を返せるのか…ってやっている雰囲気は、もう向上心しかないし、本当に素敵な稽古場になっていると思いますね。

福島 本当にシェアハウスみたいな雰囲気なんですよ。役柄通りに日常生活がある感じなんじゃないかな。

川﨑 そうそう。YouTuberの3人は、3人で固まってしゃべっていて、相談とかしたりしているもんね。で、俺は稽古場で毎日、酒を飲んでるもんね(笑)

佐奈 いや、飲んでません、飲んでません(笑)

川﨑 (笑)。まぁそれは冗談としても、ケンケン(鎌苅)さんにはかわいがってもらっていて、一緒にシーンを作ったりとか、圭祐(神永)ともよく一緒に話し合ったりとかしてるし。重さん(藤重)のお歌を聞いたりね。重さんは、ストーリー上、どこのグループにも属していないんですけど、本当に優しい方なので、みんなを受け止めてくれているんですよ。

藤重 いやいや…僕は初対面の方ばかりでしたし、すごく緊張するタイプなんですよ。でも、みんなが優しいから、受け入れてくれました。内心どう思っているか分かんないけどね…って、今、目そらした?

鎌苅 いやいや(笑)。

藤重 (笑)。みんなが優しく打ち解けてくれて、感謝しています。

――もう、このやり取りで皆さんが打ち解けているのが良く伝わってきます。本作はシェアハウスが舞台になっていますが、シェアハウスでの暮らしについて作品を通して気づいたことなどはありますか?

神永 やっぱり、リーダーは必要なんじゃないかと思いましたね。大人数で暮らしていくには、なんとなくでも、引っ張っていく人がいた方が上手くいくと思います。今回だとオーナーがそうですよね。そういうポジションの人がいてくれた方が、いろいろと円滑に過ごせるんじゃないかと思います。

鎌苅 シェアハウスって、きっと家賃とかも普通よりも安くて、節約目的で住んでいる人もいるでしょうし、オーナーも一軒家でたくさんの人を住まわせたら儲かるとか、そういう想いもあるかもしれない。これは台本とかに出ていることではないんですけど、僕なりの設定として、きみゆきはきっといろんな苦しみの多い人生を歩んだんじゃないかと思っているんです。それで、若いこれからの子たちに頑張ってほしいという気持ちでオーナーをやっているんですね。だからこそ、口うるさくなる瞬間があったり、逆にイジられてもそれが心地よかったり。割とみんなに、一緒に遊んでもらっているような感じですけどね(笑)

皆木 やっぱりいろいろな考え、いろいろな性格の人がシェアハウスに集まっていて、お互いに助け合うけど、干渉しすぎない関係というか。いろんな距離感があって、ある意味、どうでもいいと思っているところもあるけれど、本当に困ったときは団結できるような繋がりが生まれるんじゃないかと思いますね。

――物語では、そんなシェアハウスに突然赤ちゃんがやってきて、戸惑いながらも各々が父性に目覚めていきます。父性について、それぞれのお考えをお聞かせください。

皆木 赤ちゃんって、存在するだけでかわいいと以前から思っていたんですけど、でも赤ちゃんって、放っておいたら生きていけない。みんなが大丈夫?って赤ちゃんを心配していて、日野という役を通して、僕自身も赤ちゃんを放っておけない存在と思うようになって…こう、単にかわいいだけじゃなく、責任感のようなものを感じるようになりました。

佐奈 父性と同じにしていいか分からないんですけど、実家では犬が13匹いて、ハムスターもたくさんいたんですよ。でも、世話は親がしていたんですね。それで東京に出てきたから、ハリネズミを飼い始めて、そのあとに猫も飼うようになって…もう、めちゃくちゃ可愛いんですよ。家に自分以外の命がいる、それがもう愛おしいんです。自分でお世話をすることで、生き物に対する愛情を実感できたので、それに近い感情なのかなと思っています。

川﨑 稽古で、赤ちゃんを想定しやすいように人形を使っているんですけど、最初はやっぱり人形なのでちょっと顔つきが怖いな、とか、これを愛せるのかな、って茶化したりもしたんですよ。でも、抱っこの練習とかしているうちに、どんどんその人形にも愛着が湧いてきて…。抱っこも最初は全然うまくできなかったんですけど、だんだんできるようになってきて、赤ちゃんへの愛情がリアルに稽古場でも生まれてきている感じがしますね。

福島 お父さんになった人の話を聞いたり、子どもができてから会ったりすると、雰囲気が柔らかくなっていたりする時があるんですよね。その感じが、今回のお芝居を通してわかったような気がします。実際にはまだ子どもはいないので、きちんと理解出来てはいないかもしれないけど…こういうことなのかもな、というものは感じられました。

鎌苅 僕は娘がいるので、やっぱり抱っことかは見ていて気になりますね(笑)。でも直しすぎるのも、この作品に関してはちょっと違うな、とも思って。とはいえ、どんどんみんな上手くなっていて、最初の頃の下手な感じに戻れ~って思う時もあります。僕は娘がいるので、その経験があることはラッキーだと思いますが、この役においてはそこに近づきすぎないようにしないと、って思っていますね。

神永 物語の核心に近い部分で、僕のセリフを読んだとき、まだ自分は感じたことのない感情かもしれない、と正直に思いました。何かに置き換えようとしたけれど、まだ自分はそこに行けていない気がします。でも、すごく新しい発見でしたし、こういう感情を抱くのか、と学ぶことができました。

藤重 僕も子どもがいて、赤ちゃんを抱っこしてきたわけですが、父性が芽生えたかどうかって言われると…どうなんでしょうね(笑)。子どもって、日に日に離れていくものなんですよ。どんどん大きくなっていって、親の元から離れていく日が近づいていくものなので、切なくはあります。でも、これはパパの感覚で、ママの中にはお腹から生まれ出た瞬間が寂しい、と感じる人もいるそうなんです。だからこそ子どもが愛おしいそうなんですね。男性にはそれが無い。赤ちゃんの抱っこだって男性には格闘です。なかなか寝てくれなくて、そーっと置く苦悩(笑)。でも、今思い返すとそれも幸せな時間でしたね。

鎌苅 離れていく…それを聞くと怖いなぁ(笑)

藤重 たぶん、男性目線と女性目線で見え方が全然違う作品になっていると思うんだよね。男性は子育てをやってるつもりでも、女性から見たら「甘いなー」って思ったりするんじゃないかな。

鎌苅 パパたちにも観てほしいね。すごく感情移入できるところがたくさんあると思います。

佐奈 親が見に来たら、どう思うんだろう。僕が子どもをあやしている姿を見て、どう感じるのか…

鎌苅 そりゃ、想像するでしょ。宏紀(佐奈)に子どもが出来たら…って想像して泣くんじゃないかな。それを想像して、今もう俺が泣きそうだもん(笑)

――作品に期待しているファンの皆さんも、この舞台でどんな姿が見られるのか楽しみにしていると思います。ぜひ、見どころをお聞かせください。

川﨑 本当に、キャストのみんながそれぞれに作っている役作りが素敵で。十人十色のキャラクターなので、そのキャラが赤ちゃんに出会ったときにどんな反応をするのか、どういう関わり方をするのかが、人それぞれでとても面白いと思います。赤ちゃんが主軸の話ですが、シェアハウスに住んでいる男たちの関係性もすごく面白くて、男だけの空間ってそうなるよね、みたいな感じも楽しんでもらいたいと思います!

藤重 僕の役はこのシェアハウスに唯一住んでいなくて、客観的にシェアハウスを見ている人間ですが、ひと言で言うと、住んでみたい、と思う家ですね。個人的には、すごくエグいセリフもあるんですけど、ミュージカルの要素に助けられて、メロディーに乗せてネガティブな要素もポジティブに持っていける。そういうミュージカルの良さも感じています。そして、みんなが良くしゃべる作品なので、みなさんぜひそんなシェアハウスに住みに来てください!

鎌苅 見どころというか、やっぱり僕は、僕というよりも、他の子たちの変化をみてほしい。男の子たちが1つの命と向き合ったときに変わっていく姿…赤ちゃんと向き合いながら、自分とも向き合う。その変わっていく様は美しいし、でもどこかで甘くもある。でも、その時は一生懸命で、その年齢ならではの本気の向き合い方なんですね。赤ちゃんという絶対的な存在があって、この子たちの顔もいつもと違う表情を見せてくれると思うんですよ。そして、赤ちゃんと音楽も切り離せないものだと感じていて、そのあたりも五感で感じてもらえる作品になっていると思います。

福島 シェアハウス組の中では僕らは若い世代で、何も考えられてないところがあるんですね。それを赤ちゃんを通していろいろと考えるようになって、ベクトルが変わって、そこも純粋に前に進んでいくようなところがあります。そういう若さ溢れるパッションのようなものは感じていただきたいですね。

皆木 始まりから終わりまで目の離せない展開というか、コメディ要素もサスペンス的な要素もあります。そしてミュージカルとしても目が離せなくて、全体的に見どころがたくさんなんですね。赤ちゃんが来ることで、シェアハウスが1つになって、みんなで同じ困難を乗り越えようとすることになって、結果としてそれぞれの成長につながる。赤ちゃんが一番未熟というよりは、シェアハウスのメンバーが赤ちゃんに教えてもらうような感じなんですね。そういう成長していく面々を楽しんでもらえたらと思います。

佐奈 この舞台は2019年にストレートプレイで上演されていて、今回でミュージカルにリニューアルされました。そこも今回ならではの魅力だと思っていて、その中でキャラクター設定もちょこちょこと変わっています。ミュージカルなので曲もたくさんあるし、振付や演出の効果もあって、芝居の延長線上からの曲、というグラデーションがすごくきれいに作られているんです。そういうところもぜひお楽しみいただければと思います。

神永 僕自身、パパになったことはないですし、すべてが初体験。演劇というものの中ではありますが、赤ちゃんと格闘して自分なりにまっすぐ進んだ結果を見ていただきたいです。ちょっとダサかったり、笑っちゃうような部分があったりしても、そこも含めて愛してもらえたら。それぞれに一生懸命に向き合っているさまを、ご覧いただけたらと思います!

インタビュー・文:宮崎 新之

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