マリー・アントワネットの母親としての内面も表現したい
数々のウィーンミュージカルの傑作の生みの親、脚本家ミヒャエル・クンツェ&作曲家シルヴェスター・リーヴァイ。
彼らが遠藤周作の小説をベースに製作した日本発のミュージカルが『マリー・アントワネット』だ。’06年初演のこの舞台が新演出バージョンで蘇る。今回、花總まりとWキャストでマリー・アントワネットに扮するのは笹本玲奈。初演時にはもうひとりの“M.A”、マルグリット・アルノーを演じて高評価を得ていた彼女は、今回の王妃マリー役としてのオファーには「まさか!と驚きました」と笑う。
笹本「最初はマルグリットの方だと思っていたんですけど、日本でマリー・アントワネットと言ったら一番に名前が挙がる花總さんとのWキャストだなんて、本当にびっくりしました。ドレスさばきや扇子の持ち方など、基礎的なところを、しっかり花總さんのお芝居から学ばせていただきたいなと思っています」
稽古に入るのもまだまだ先の段階ではあるが、現時点でどんなマリー像を描いているのだろう。
笹本「せっかくなら今までのマリーのイメージを、ちょっと崩したいなという気持ちがあって。日本ではマリー・アントワネットと言えば『ベルサイユのばら』の印象が圧倒的に強いと思うんですね。美しくて気高いという印象ばかりが先に立ち、実際はどんな女性だったのかを描いた作品って実は少ないように思います。でもマリーも私たちと同じ、ひとりの女性。そう考えると共感できる部分も多いですし、それほど現代女性とかけ離れてはいないのではないかと思うんです。見た目の華やかさだけではなく、人としての弱さや愚かさと言った内面の部分も、繊細に表現できるようにしたいと思っています」
昨年、マリーと同じ“母”の立場になったことで、以前とは違う目線で役と向き合っている様子もあり、「韓国版の舞台を映像で拝見した時に一番苦しかったのが、マリーが子供たちと引き離されるシーンでした。その後の運命を思うと辛くて辛くて…」と、思わず目を潤ませる。母としてのマリーの想いというものも自然と伝わる、渾身の演技が期待できそうだ。
インタビュー・文/田中里津子
Photo/山本倫子
※構成/月刊ローチケ編集部 7月15日号より転載
※写真は本誌とは異なります
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【プロフィール】
笹本玲奈
■ササモト レナ ’85年生まれ。ミュージカル『ピーターパン』の5代目主演に抜擢され、以降舞台を中心に活動。代表作に『レ・ミゼラブル』など。