日本初演!ブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』開幕までの道

“あの日”に起きていた実話をもとにしたブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』、待望の日本版が2024年3月7日、開幕!

2001年9月11日に起きた、アメリカ同時多発テロ事件。世界中の誰もが大きな衝撃を受けたあの日、米国内に入る予定だった38機の飛行機と7000人近い乗客・乗員は事件の煽りを受けて急遽、カナダのニューファンドランド、ラブラドール州にある“ガンダー国際空港”に不時着することになる。わずか1万人前後の住人達が平和に暮らす小さな町に起きた、想像もできない突発的な事態。乗客たちは戸惑い、混乱し、疲弊し、住人たちも困惑し、同情し、動揺しながらも、なんとか人々の力になろうと奮闘する。緊急着陸から時間が進むにつれ膠着していた状況が、ようやく少しずつ動き出し、乗客たちが帰途につくまで。そのわずか5日間に起きた出来事をユニークかつ優しい視点から、丁寧に、それでいてハイレベルなエンターテインメントとして描いていくのが、このミュージカル『カム フロム アウェイ』だ。

2017年2月にブロードウェイで幕を開けた本作は、同年の第71回トニー賞のミュージカル作品賞など7部門にノミネートされ、演出賞をクリストファー・アシュリーが受賞。その後3年に及ぶロングランを果たしているほか、ローレンス・オリヴィエ賞やニューヨーク・タイムズ紙の批評家賞など数々の演劇賞も受賞しており、その面白さ、構成の絶妙さは既に力強く太鼓判が押されている。

しかもこの作品、なんと休憩時間なし、約100分間ノンストップで進行するミュージカルというスタイルであることも実に興味深い。キャストは12人だが彼らは全員がメインの役とは別に複数の役を兼ねることになっており、物語に登場する人物は数にすると100人近く(!)にもなる。その演じ分けも見どころとなりそうな、演技派揃いの出演陣の顔ぶれも今回は大きな話題だ。安蘭けい、石川禅、浦井健治、加藤和樹、咲妃みゆ、シルビア・グラブ、田代万里生、橋本さとし、濱田めぐみ、森公美子、柚希礼音、吉原光夫という日本ミュージカル界を牽引する綺羅星ばかりが12人揃ったビジュアルは、まさに圧巻だ。

ちなみに参考までにここで、各自がメインの役として演じるキャラクターを簡単に紹介しておこう。安蘭はテキサス人の典型的なバツイチ女性<ダイアン>、森は息子がマンハッタンで消防士をしている母親<ハンナ>、咲妃は仕事熱心な地元テレビ局の新人リポーター<ジャニス>、柚希はガンダー学園の教師で消防士の息子がいる<ビューラ>、シルビアは3児を持つ生真面目な母親<ボニー>、濱田はアメリカン航空のパイロットで初の女性機長である<ビバリー>、吉原は2人しかいないガンダー警察署の巡査<オズ>、浦井はLAの環境エネルギー会社の経営者<ケビンT>、田代はケビンTの恋人兼秘書の<ケビンJ>、加藤は筋金入りのニューヨーカー<ボブ>、橋本は社交的で人好きのするニューファンドランド島ガンダーの町長<クロード>、石川は石油エンジニアのイギリス人<ニック>を、それぞれ演じる。彼ら12人のキャストたちは、このメインの役を演じながらストーリーの展開に合わせて役を替えては入れ代わり立ち代わりステージに登場することになるので、その八面六臂の活躍ぶりにもぜひともご注目を。

クリエイティブスタッフとしては脚本・音楽・歌詞にはアイリーン・サンコフとデイビッド・ヘイン、演出にはクリストファー・アシュリー、ミュージカルステージングにはケリー・ディヴァインが名を連ねてブロードウェイ版の舞台を基本的に踏襲しつつ、その上で日本版スタッフとして翻訳に常田景子、訳詞に高橋亜子といったトップクリエイターたちが参加し、日本で上演するにあたりリアリティに違和感が生まれないようにと細部にわたり配慮した盤石な布陣が実現する。舞台自体は非常にシンプルで、ちょっとした椅子をキャスト自身が動かすことで場面はあっという間に空港となり、学校となり、人々が集うバーになったりする。そこにあるのは、演劇という表現だからこそ得られる感動と気づきの数々。観客のイマジネーションを大いに刺激する、稀有な演劇体験が得られることは間違いない。

モチーフになっているのは確かに未曽有の大事故であり、それは現在に至っても世界に不穏な空気感を漂わせ続けている社会的な問題でもあるのだが、この作品で描かれているのは国も人種も宗教も越えた人と人との温かい繋がり、他者を思いやる心の大切さ。きっと日本公演でも観客の方々はブロードウェイと同様に、ほっこりとした心持ちを抱きながら劇場を出られるはずだ。なお、ローチケ演劇宣言!では今後も引き続き『カム フロム アウェイ』の魅力に多角的に迫る特集記事を数回にわたり連載していく予定、どうぞお楽しみに。

取材・文:田中里津子

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