【開幕&取材会レポート】ミュージカル「WITHOUT YOU」来日公演│主演のアンソニー・ラップからメッセージが到着!

3月3日(日)〜10日(日)東京・IMM THEATERにて、ミュージカル「WITHOUT YOU」来日公演が開幕した。
ミュージカル『RENT』オリジナルキャストであるアンソニー・ラップによる自伝『WITHOUT YOU』を舞台化した本作は、『RENT』の作者ジョナサン・ラーソンとの出会いから『RENT』が大成功を収めるまでの道のり、また大切な家族との別れと愛を描いた感動の物語を「Seasons of Love」をはじめとする『RENT』の名曲の数々とオリジナルの楽曲にのせてノンストップでお届けするワンマンミュージカル。

これまでアメリカ各地、ロンドン、カナダ、韓国で公演を重ね、2023年1月25日に満を持して物語誕生の地であるオフ・ブロードウェイで開幕。同年の4月30日までの期間限定公演でスタートした後、2023年6月11日までの延長が発表された話題作が、2024年3月には日本に初上陸を果たし、ただいま東京公演が絶賛上演中。
この公演の開幕記念として初日に行われた取材会と公演レポート、主演のアンソニー・ラップからのメッセージをお届けする!

開幕記念取材会レポート!

3月3日(日)、来日公演の初日を前にアンソニー・ラップの会見が行われた。パートナーと3カ月と15カ月の子供二人と一緒に、一昨日来日したばかりのアンソニー。時差ボケもなんのその、朗らかに記者たちの質問に答えてくれた。

――『WITHOUT YOU』は2006年に「WITHOUT YOU:A Memoir of Love, Loss, and the Musical Rent」が出版されて、舞台化。あちこちで上演されました。途中、空白期間があって、またこうして上演されるようになった経緯を教えてください

2011年頃にもう一度『WITHOUT YOU』に携わり始めましたが、イディナ・メンゼルの「If/Then」に関わったこと、またディスカバリーチャンネル「スタートレック」の撮影もあり、しばらくできませんでした。2022年の末から2023年の初頭くらいに『WITHOUT YOU』をやりましょうと、素晴らしいプロデューサーの方々に恵まれたこともあり、再開することができました。

――以前のものと変更点はありますか?

はい。脚本を見直し、原作をより忠実に再現するために細かい要素を加えました。映像をより鮮明にしたり、演出面でも進化しています。またジョナサン・ラーソンが亡くなってから、自分の人生はもう半分以上経過し、振り返ると考え方も物事の見方も変わってきました。今回、感情の部分でもまた新たに表現できるのではないかと思います。新曲も1曲入っています。

――初演の際にはブロードウェイのお仲間たちがご覧になられたことと思います。その方たちから言われた、印象に残っている感想はありますか?

親友であり『RENT』のオリジナル演出家マイケル・グライフ、劇中に登場するサイ・オニール、オリジナルキャストのミミ役ダフニ・ルービン=ヴェガ、ジョアンナ役のフレディ・ウォーカー、エンジェル役のウィルソン・ジャーメイン・ヘレディア、ロジャー役のアダム・パスカル、モーリーン役のイディナ・メンゼルなど来てくれました。僕は母を亡くしたことをうちに秘めて、ほとんど人に言わなかったんです。イディナはこの作品を通して僕の性格や状況を知り、とても感動したと言ってくれました。舞台の仲間として、距離感、絆がより深まりましたね。

――アンソニーさんにとって、『RENT』という作品はどんな存在ですか?

自分の人生を良い方向へと変えてくれた作品です。物語の中にもあるように、『RENT』の仲間たちには困った時や大変な時に人が集まりお互いに支え合い、面倒を見るコミュニティがあります。コミュニティの中の一人が亡くなってもその人を尊重し愛する、そんな強い絆があります。

――『WITHOUT YOU』は『RENT』のナンバーの一つからとられていますが、なぜこのタイトルに?

母の葬式の時にはまだ本を書いている最中でタイトルも決めていませんでした。その時にコリンズ役のジェシー・L・マーティンが『WITHOUT YOU』にしたら?と提案してくれたんです。「YOU」って奇妙かな?とも思いましたが、気持ちは伝わると思いました。僕にとってYOUとは母とジョナサン・ラーソンのこと。誰かが亡くなっても人生は止まらない。時は進み続け、残念ながらそのうち僕も死ぬ。生きて時間が進むことも、死があることもどちらも真実です。太陽はのぼり、いろいろとひどいこともあるけど、人生は続く。誰か身近な人を亡くした人にもこの作品が伝わるようにと、僕はパフォーマンスしています。

――ファンの皆さんへメッセージをどうぞ!

日本で上演できて、本当にラッキーだと思います。今回、来日は4回目。日本のファンの皆さんの愛に僕はいつも驚き、感謝しています。『RENT』は僕だけではなく、ファンの方々にも大きな意味を持つすごい作品だと実感します。皆さんがこの作品を楽しんでいただけることが本当に嬉しいです。

本公演は、3月10日(日)までの東京公演後、3月16日(土)〜3月17日(日)に大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティでの公演も控えている。

公演レポート

いやはや、すごいものを目撃した!としか言いようがない。一人芝居とは思えない奥行きと広がり。アンソニー・ラップの役者力の凄まじさ。
まだ売れない役者だったアンソニーが新作ミュージカルのオーディションを受ける。そこで出会ったジョナサン・ラーソンやマイケル・グライフ、アダム・パスカルなど、『RENT』を知る人にはたまらないエピソードが満載。『RENT』のミュージカルナンバーもたびたび登場し、音楽と共に物語は綴られていく。仲間たちとの創作、初日前夜、そしてジョナサンの死。ドキュメンタリーを見るように『RENT』の世界に浸っていると、話は徐々に彼の母の死へと移行する。幼い頃から役者の夢を応援していた母親との絆、具合が悪くなっていく母への率直な気持ち。母の死を受け入れられない、でも受け入れなければならないという揺れ動く心の内。

クライマックスで感じたのは、アンソニー・ラップ=マークなんだな、ということ。それは決して過去ではない、ということも。物事を簡単に受け流さず、常に葛藤し、諦めず、心に正直に生きる。役が人を作るというより、人が役を作るのだと改めて実感。パワフルで疾走感たっぷりの歌声には驚き、感動しかないし、豊かな表現力にもすっかり魅せられた。「Seasons of Love」をはじめ、『RENT』の名曲群はもちろん、それ以外の曲も印象に残る。
終演後の万雷の拍手、帰らない観客たちが全てを物語っている。アンソニー・ラップの今、絶対に観る価値があり!