
© 2024 「大逆転~Great Comeback~」製作委員会
撮影/柏井彰太
未来を見つめる子供たちの姿を真っ直ぐに見つめ育て、ステージ上で力を磨く場所を作ることを目的に2023年にスタートしたドラマチックステージプロジェクトの第三弾『大逆転~Great Comeback~』が、2月14日(金)に開幕した。
演出を中江 功が務め、全員が個性を発揮できるように作られたオリジナル新作に挑むのは、寺澤小十侑、平田光寛、安達柊我、石渡大和、大澤龍太郎、岡橋亮汰、高橋曽良、林田 芯、山越源斗、高橋 礼、西原 至、横田大都といったジュニアと河本祐貴だ。
本作の舞台は近未来の日本。武器の代わりにダンスによって生み出されるパワーを用いた戦いが行われ、縄張り争いをしているという世界観だ。
フロンティア25と呼ばれる地域を追われた青年・コウカン(平田光寛)がフロンティア16を支配する伝説的ダンサー・ナオキ(河本祐貴)に助けられたことから今回の物語がスタート。冒頭からアクロバットを交えたダンスパフォーマンスで会場のボルテージをグッと上げ、有無を言わさず観客をSF的な世界観に巻き込んでいく。
エリア16を守るフロンティアαのリーダー・コトウ(寺澤小十侑)、βのリーダー・オオサワ(大澤龍太郎)、γのリーダー・ヤマト(石渡大和)はもちろん、各チームのメンバーもダンススキルを存分に見せてくれ、チームごとのカラーが段々とわかってくるのが楽しい。
チームのセンターを張る面々だけではなく一人ひとりが見せ場を持っており、個々の実力や伸びしろを感じさせる。物語後半にかけてはアクションの要素も多くなってくるが、ダンスバトルとスピード感のある殺陣を両立し、緊張感あるシーンを見事に表現していた。


また、芝居パートにおいてもそれぞれがキャラクターの個性や魅力を丁寧に描き出している。
フロンティアαは、厳しい中に仲間への愛情を感じさせるコトウ、チームを明るく盛り上げるオカハシ(岡橋亮汰)、人懐っこく賢いハヤシダ(林田 芯)、熱い思いで道を切り開いていくコウカンと、チームとしてのバランスの良さとまとまりが随一。よそ者を嫌うコトウがコウカンを認めていく様子、そんな二人を慕うオカハシとハヤシダの友情も熱く、少年漫画のような王道ストーリーを担っている。
フロンティアβは、面倒見が良い兄貴分のオオサワが小さな子供たちをまとめているチーム。喧嘩っ早く、年上相手だろうと臆せずダンスを挑んでいくシュウガ(安達柊我)とレイ(高橋 礼)、引っ込み思案だがダンスではきちんと自分を表現するダイト(横田大都)、辛い境遇でも笑顔を忘れず優しく生きるイタル(西原 至)。シリアスな世界観の中でも家族のような温かい空気を持っており、明るい曲調と元気なダンスが抜群にハマっていた。
そして、戦いを好む実力派揃いのフロンティアγ。圧倒的な力とカリスマ性を誇るヤマトに、ダンスバトルへの強い思いを持つソラ(高橋曽良)と、自信家でチャラいヤマコシ(山越源斗)。強さを感じさせる曲調やアクロバットを駆使したパフォーマンスが多く、それぞれが力を持つ“個”の集合といった様子だが、そのぶん彼らがふとした時に見せる友情や信頼関係に惹きつけられる。
そして、個性豊かな少年たちをまとめるナオキは、佇まいと演技による説得力で実力者らしさを表現していた。日替わりコーナーやアドリブシーンでは若手メンバーたちのボケや賑やかな会話も次々に拾い、和気あいあいとした場面とシリアスな本編のギャップを作り上げている。


魅力的なキャラクターとチームがわかってきたところで、それぞれの思いや事情が交錯し、思わぬ展開へ向かっていく本作。辛いことや困難が立ち塞がっても諦めず前に進む姿、仲間との友情や絆、それぞれの成長……と、熱い物語がスピード感を持って繰り広げられる。
本作は3月2日(日)まで紀伊國屋ホールにて上演。ステージに真剣に向き合い、パフォーマンスにまっすぐに挑む若者たちの姿を、ぜひ劇場で見届けてほしい。
※高橋曽良の「高」は「はしごだか」が正式表記
取材・文/吉田 沙奈
撮影/柏井彰太