藤山直美が熱演!「南座錦秋公演 松竹上方喜劇まつり」初日開幕レポート!!

2025.11.10

藤山直美(『お祭り提灯』より) Ⓒ松竹

上方喜劇の名作二本立て!

11月1日(土)京都・南座で「南座錦秋公演 松竹上方喜劇まつり」が開幕した。本公演は、家族の絆が心に響くあたたかい物語『一姫二太郎三かぼちゃ』と、藤山直美が14年振りに勤める丁稚にも注目の『お祭り提灯』を二本立てにて上演。出演は、上方喜劇を最前線で牽引している藤山直美、林与一、三林京子をはじめ、歌舞伎界から中村亀鶴、そして大津嶺子、いま寛大と、関西ゆかりの実力派俳優陣が顔を揃えた。
以下、初日公演より、見どころ&レポートが到着した。

舞台の見どころ&初日レポート

一、一姫二太郎三かぼちゃ

左から)前田絵美、伊賀健二、川奈美弥生、藤吉みか、中村亀鶴、大原ゆう、瀬川菊之丞、藤山直美、大津嶺子、林与一
©松竹

田舎の旧家、西田家では、母の喜寿祝いの準備が進められている。畑帰りの次女・留代(藤山直美)が両手に大根を抱えながら登場すると、それだけで客席からは笑みがこぼれた。そこに都会で暮らすきょうだいたちが久しぶりに帰省すると、実家で両親の面倒を見ながら暮らす留代をのけ者扱いし、言い争いに。小さい頃からわんぱくだった留代と、次男の浩二(中村亀鶴)らきょうだいたちとの軽快なやりとりはアドリブを交え、度々会場の爆笑をさらった。

藤山直美 ©松竹

都会での成功話や自慢話で盛り上がるきょうだいたちだが、留代はそんな輪に入っていけず、母・ひさ江(大津嶺子)のお祝いの日だから辛抱してくれと父・甚太郎(林与一)にまでも懇願され、一人台所でじっと我慢する。近所に住む小山(いま寛大)らもそんな留代を心配する様子を見せる。

留代が気丈にふるまう姿に、客席も真剣な眼差しで展開を見守る。ひさ江が心の内を留代に吐露する場面では、ハンカチを片手に目元をぬぐうお客様の姿も。そんなお祝いの最中に西田家を訪ねて来たのは、長男の共同事業者の五十嵐(三林京子)。インパクト大なスーツを着こなす姿に、客席は釘付けの様子。

三林京子 ©松竹

実は、長男の経営する会社は業績不振で、長男は、いくばくかのまとまったお金が必要だと父に相談を持ち掛けるのだが……。留代が親やきょうだいを救う展開に、客席は留代の真っすぐで優しい心に胸を打たれた様子で幕となった。

二、お祭り提灯

左から)林与一、中村亀鶴 ©松竹

お祭りで賑わうある日のこと。提灯屋の徳兵衛(林与一)の元に、お祭りの寄付金を集めていた世話役の佐助と勘太が、うっかり二十五両が入った財布を落としていった。

林与一 ©松竹

そこに居合わせたのは、高利貸しで嫌われ者の山路屋幸兵衛(中村亀鶴)。金の為なら鬼にもなる幸兵衛の嫌味な姿は、客席を物語に引き込む。幸兵衛は、なんとか財布を横取りしようと言葉巧みに持ちかけるが、正直者の徳兵衛は甘言には乗らず。幸兵衛が仕方なく引き下がった後、何を思ったのかその財布を店先に吊った赤い提灯に隠す徳兵衛。そっと財布の中をのぞく徳兵衛に、観客もひやりと手に汗を握る。それを偶然見つけたの女房のおすみ(三林京子)は、亭主のヘソクリだと早合点し、財布を上総屋の提灯に入れ替えてしまう。それぞれの思惑であちらこちらへと財布が移動する様子に、客席からも笑いがこぼれた。その後、店番を任された妹のお近は、赤い提灯を幸兵衛に、上総屋の提灯を万吉(いま寛大)にそれぞれ引き渡してしまい……。

財布の行方を追って、徳兵衛、おすみ、佐助と勘太、幸兵衛に丁稚の三太郎(藤山直美)までもが絡んで、行ったり来たりの追いかけ合い。大金に翻弄される個性豊かな人物たちが駆け回る度、劇場に響く笑い声もだんだんと大きくなっていく。軽快なお囃子に乗ってドタバタと花道を往復する様子に、自然に手拍子がうまれ、劇場が一体となって大盛り上がり。最後には思わぬ場所から財布が見つかり、会場が爆笑に包まれる中で幕となった。

左から)伊賀健二、いちえ、藤山直美 Ⓒ松竹

泣き笑いの名作を一度に二本も楽しめる本公演。毛色の違った二本の芝居に劇場は充実感に包まれ、初日の舞台は終演となった。
公演は11月24日(月・休)まで。チケットは好評販売中!詳細は下記公演概要欄内「チケット情報はこちら」よりご確認ください。