劇団☆新感線の人気作『髑髏城の七人』連続上演の2シーズン目となる“Season 鳥”。劇中の「兵庫」役を担う福田転球は、1990年の『髑髏城〜』初演に出演経験があるらしい。それ以降二度目の新感線作品参加となる福田に、現在の心境や、出演に関する思いを聞いた。
──会場のIHIステージアラウンド東京は特殊な劇場機構を有していますが、福田さんご自身がこのステージに立つイメージは?
福田「“花”に出ているキャストの皆さんから聞いたお話によると、役者はとにかく「走る」必要があるらしいんです。やはり、自分が実際に演じてみて、どれくらいの距離を走るのだとか、そういう体験をして初めて知ることが沢山出てくる劇場だと思います。「とにかく大変だ」という噂はよく耳にしますね。客席が動いている間に自分はどうなるのか、お客さんが離れていく、遠ざかっていくということはどういう感覚なのか、そういったことは全て未経験ですから。すごく面白そうだし、興味はあります。」
──“鳥”の公演資料によると、福田さんはなんと、『髑髏城の七人』初演にご出演されているとか。
福田「はい、そうです。でも僕がやったのは、ローラースケートを履いて鉄仮面を被って出たのと、あと髑髏のお面を被って古田(新太)さんをはけさせたという、それだけなんですよ。」
──アンサンブルとして全編に出るというよりも、限定的な役割を担われた?
福田「おそらく怪我かなんかで、どなたかの代役として出ました。ですから、いのうえさんの演出を直接受けたことはなかったはず。」
──その出演の後、『髑髏城〜』を観劇される機会があったと思うのですが、作品をご覧になった感想というのは?
福田「普通の感想で申し訳ないですが……、格好良くて、華やかで、そんな感じです。一般論として、非常に格好いいなと。」
──「もう一度この作品に出演したい!」というお気持ちはありました?
福田「それはもう、ずっと長いことありました。今回お声掛け頂き本当に嬉しいです。「ホントかな?」みたいな気持ちにもなりました。子供みたいなことを言いますけど、夢なんじゃないかと。驚きました。自分が大学生の頃、新感線と関わりのある同級生が結構いて、「新感線に出ると有名になれる」みたいなイメージが勝手にありました。いつか新感線に声を掛けてもらいたい。僕が学生の頃はそういう人が沢山いた。今回はそれが叶ったという、そんな思いでいっぱいです。」
──福田さんが演じる役は「兵庫」。荒々しい一面を持ちながら、情に厚くて一途。庶民派ヒーロー然とした見せ場の多い名キャラクターですね。
福田「好きな人を愛して、仲間を愛して、家族を愛して……という人なので、仲間や家族を真剣に愛することと全力で向き合おうと思っています。荒っぽさもあるけれど、情とか愛に対して真っ直ぐな人。演技もそうだし、皆さんとの交流もそうですけど、とにかく全部真っ直ぐぶつかっていきたいです。それが兵庫へ近づくことになるのかなと。やっぱり、格好いいですよね。極楽太夫が「……一緒にいてもいいかな」と思えるような、そういう存在になれたらいいですね。」
──“鳥”には歌やダンスが挿入されるそうですし、それに加えて『髑髏城〜』元来の殺陣シーンなどもありますから、華々しい上演になりそうですね。そういった「“鳥”ならではの個性」について、福田さん自身はどうお考えですか?
福田「振り付けて頂けて踊るシーンがあるのなら、すごく楽しみです。まあ、覚えるのは大変でしょうけど(笑)。立ち回りも、男子は大好きですからね。足を引っ張ってしまうと思いますが、やったことがないことに積極的にトライしたいと思っています。“鳥”は、やはりエンターテインメント性が強くなると思うんですよ。笑いの要素なんかもあるでしょうし。」
──笑いの要素といえば、福田さんの十八番では?
福田「いやいやいや。今回は面白い人が沢山いますから。皆さんについて行きながら、自分もちょっとは出せたらなと。」
──“鳥”の上演は“花・鳥・風・月”の二番目という流れになりますが、この「二番目である」ということは意識されますか? 例えば、四コマ漫画の二コマ目とか、起承転結とか、野球で言う二番バッターとか、二番という順番には様々な意味合いが含まれるのでは? と想像しました。
福田「野球で言うところの「技巧派」みたいなことでしょうか。(“鳥”の座組を見ると)ちょっと技巧派感ありますもんね。正に二番バッターじゃないですけど、細かいところをついて、お客さんの気付かない細部まできっちりやれたらいいなと思います。」
──では最後に、福田さんがこの公演で「楽しみにしていること」を教えて下さい。
福田「体力の限界に挑戦するというか、ただひたすらやってみて、自分の中の「演劇の限界」を知りたい。自分はどこまで走れるのか? みたいなね。どこまで行けるか分からないですけど、限界を体験出来る予感もしているので、それはすごく楽しみです。怖いですけど(笑)、でも楽しみ。今回はほんと、未経験のことばかりですので。」
──6月に始まって千秋楽は9月ですものね。一年で最も暑い時期をまるごと含んでいますし、新しい劇場で、新しい機構で。未知数であるということは、イコール魅力的であるという意味も含んでいると思います。
福田「そうですよね。体力面はかなり未知数ですけど、ほんと、試してみたいです。自分自身を試してみたい。」
■プロフィール■
福田転球 フクダ テンキュウ
1968年9月10日生まれ。大阪府出身。俳優。1993年に「転球劇場」を旗揚げ、座長を務める。13年間、31作品という全公演に出演。現在は歌喜劇ユニット「マサ子の間男」を立ち上げ、16年『歌喜劇/市場三郎~温泉宿の恋』では脚本も務め、精力的に活動中。
取材・文/園田喬し
撮影/村上宗一郎