左:平原テツ 右:村川絵梨
村川絵梨と平原テツが初参加。「劇団た組。」新作公演
公演を重ねるごとに注目の高まる「劇団た組。(以下、た組)」の第20回目公演『誰にも知られず死ぬ朝』が2~3月に上演される。作・演出を手掛けるのは劇団の主宰・加藤拓也。若手演出家コンクール2017では優秀賞を受賞(辞退)し、第7回市川森一脚本賞ノミネート。さらにドラマの監督や脚本など幅広く活躍する注目の20代だ。 今作が「た組」作品初参加となる村川絵梨と平原テツ(ハイバイ)に話を聞いた。
村川「以前劇場で観た「た組」の作品が本当に面白くて。直前まで怖い気持ちにさせられていたのにハハッと笑えたり、いい意味でお客さんに考えさせなかったり、そのポップさがすごく好きでした。自分自身が客席で前のめりで観ていたので、出演できることを光栄に思っています」
平原「僕も参加できて嬉しいです。初めて「た組」の作品を観たときに大興奮しましたから。めちゃめちゃ面白くて。場面転換とか、スマホの着信音まで生演奏する音楽の使い方とか、演劇でしかできない演出をしていたし、物語も前作は最後のどんでん返しに客席で呆然としました。『え、マジかよ』って(笑)。脚本も演出もすごいなと思いました」
書き下ろしの新作である今作で描かれるのは、年も取らないし死ぬこともできない歩美の物語。夫・良嗣は歩美のために一緒に死のうと、殺す努力に精を入れるが――。
村川「脚本を読んでいると、いろんな言葉がじわじわと沁みてきて。『ああ、この台詞、話したい』とすごく思いました。歩美は死なないので、人を愛しても必ず失うことになる。だから好きになるのが怖いんですよね。でもこの感覚って分からなくもないというか。普通に生きて死ぬ私たちの間でも最近は多いように思います。でもそんな歩美の気持ちが、本当の愛のようなものに出会ったときに静かに静かに解きほぐされていく感じが美しかった。加藤さんの脚本なので、激しく描かれているわけではないんですけど、だからこそ素敵だと感じました」
平原「加藤くんの脚本は当事者だけでなく、それをいろんな方向から見る人たちも描かれているので、共感できるところが多い。そういう部分って省かれてしまうことも多いのですが、主人公がある目的に向かって一直線に向かって行く……というような描き方ではなく、そこにいくまでにいろんなことがあるし、それがしっかり積み重なって進んでいくのが、すごくいいなと思います」
ふたりはこの取材が初対面であったが、平原が「ドキドキしちゃう。夫婦役なので劇中でかなり関わりますし、怖い人だったらどうしようかと思ってました」と冗談を言うと、村川が「え!? 怖くないですよ。平原さんと一緒で頼もしいです」と笑い、穏やかな空気が漂う。
平原「今まで演じたことのないような役なので。遂にこの引き出しを開けるか、という感じです。憧れていたような役柄です」
村川「私も久しぶりにこういう役を演じます。舞台でこういう芝居ができるのは嬉しいです」
幸せなときでも、生きているだけで寂しいと感じてしまうこともある。そんな人間の感情を村川は「人間は儚いなと。でも人間の感情はいろいろな可能性を秘めているんだなと脚本を読んで感じました」と語る。 そんな消えない思いを抱えながら生き続けなければいけない歩美の姿にどんな思いを抱くのか。劇場で確かめてほしい。
インタビュー・文/中川實穂
Photo/中田智章
※構成/月刊ローチケ編集部 12月15日号より転載
※写真は本誌とは異なります
掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
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【プロフィール】
村川絵梨
■ムラカワ エリ
’05年、NHK連続テレビ小説「風のハルカ」のヒロイン・水野ハルカ役を演じ注目を集める。ドラマ、映画、舞台で幅広く活躍。
平原テツ
■ヒラハラ テツ
’09年より劇団ハイバイに所属。ハイバイの舞台を中心にテレビドラマや映画などの映像作品にも数多く出演する。