PARCO劇場お披露目&オープニング・シリーズ記者会見レポート

2020.01.15

豪華にもほどがある!俳優・演出家・作家、総勢20人が贅沢登壇&コメント。
PARCO劇場お披露目&オープニング・シリーズ記者会見

2016年夏より休館していたPARCO劇場が、2020年1月24日にいよいよ開場する。2020年 3月13日からスタートするオープニング・シリーズ14作品から、豪華すぎる顔ぶれが一堂に会し記者会見が行われた。

ポスターはアート。ポスターはヒストリー。「西武劇場」から「PARCO劇場」へ43年間で上演してきた約1,200作品の中から、さまざまなジャンルのポスター約50枚が披露されて会見の幕が上がった。ステージの中央に立つのは、深々とお辞儀をする司会進行役の藤井隆。あたかも“司会役”を与えられたように、場をイジリ倒しながらも20人の登壇者を見事に回した。

登壇は、上演順。まずは、2020 年 3 月 13 日(金)~4 月 20 日(月)『ピサロ』から、渡辺謙と宮沢氷魚が現れた。

渡辺「西武劇場時代から出ていたのは、今日の中では僕だけじゃないかな。演劇の1も2もわからない時代、蜷川幸雄さんや唐十郎さんに鍛えていただきました。14年ぶりに舞台(2013年『ホロヴィッツとの対話』)に戻ったのもPARCO劇場。そして、新生PARCOのトップバッターを飾ることになり、まさに僕の演劇人生のエポックです。僕らは万全の準備でお客様をお迎えし、一つ一つの客席に命を吹き込んでいかなければと思っています」

宮沢「プロデュース公演を初めて経験したのが、2018年のPARCO劇場でした。その時は東出昌大さんと共演し、2019年は杏さんと共演、いよいよ本丸の渡辺謙さんと共演できます。トップバッターにプレッシャーもありますが、体当たりで芝居と向き合いたく思います」

続いて、2020 年 5 月『佐渡島他吉の生涯』より、演出の森新太郎と、石田明(NON STYLE)が登場。

森「森繫久彌さんをはじめ歴代の東宝の演劇人が愛した作品。熱くて、お馬鹿で、まっすぐで、露骨な男の40年の一代記を、主演の佐々木蔵之介さんが演じてくれます。大いに笑って、泣いてください。全編関西弁なのでキャスティングにはネイティブにこだわりました」

石田「出演者のスケールダウンがいかつくてすみません…いまだけは僕を蔵之介さんとして見てください(笑)。PARCO劇場の顔に泥を塗らないようにがんばります」

2020 年 6 月からは、三谷幸喜 三作品連続公演だ。現れた三谷は、客席のシステムについて(すべて三谷流の冗談)を語りだした。

三谷「全客席にニクロム線を張っていて、携帯電話が鳴ると8万ボルトの電流が流れる仕掛けになっています。後方にはレーザー銃が2基。ご招待にもかかわらず眠るマスコミ関係者を狙い撃ちします。また、緞帳は、不必要なカーテンコール3回以上で上がらなくなります」

ざわめく会場を尻目に、広報担当と称して助っ人を呼び込む三谷。三谷文楽で“三谷くん”という前説人形と、操る吉田一輔。ときおり“三谷くん”のツッコミを受けながら作品の紹介をした。三谷「うれしいニュースが一つあります。一つ目の新作『大地』の台本はできています、僕の頭の中に。あとは書くだけ。そして、二つ目はPARCO MUSIC STAGE『三谷幸喜のショーガール』。ニューヨークの川平慈英からメッセージが届きました(手紙を開くが)、英語です。はい、読めません。次に、三つ目の三谷文楽は『其礼成心中』です。東京オリンピック・パラリンピックと丸かぶりのスケジュールですが、スポーツに興味がない方は、ぜひ新しいPARCO劇場にお越しください」

三谷幸喜 三作品三ヶ月公演の第一弾『大地』より、大泉洋、山本耕史、竜星涼が登壇。大泉「PARCO劇場に出るのは初めてです。北海道で20歳で演劇を始めてから憧れのPARCO劇場に、ついに出られる。非常に感慨深いです。ただ、昔のPARCOをまったく知らないので、その点は感慨がありません(笑)。三谷さんは頭の中に台本があるとおっしゃいましたが、何も知らされていません。どんな舞台になるのかわかりません!先ほど袖で、なんで今日いるの?という目で三谷さんに見られたんですが、今日が僕の最終面接なんでしょうか」山本「僕が初めてPARCO劇場の舞台に立ったのは1993年。次が1999年で、20年ほど空いてのPARCO劇場3作品目になります。20年ぶり、しかも新しい舞台から、皆様にいいエネルギーをお届けできるようにしたいです」竜星「自分が生まれる前からある劇場に初参戦、そして初三谷作品です。オリンピックで日本中が沸いている時期ですが、負けない熱で挑みます。僕ら若い世代がこれからの日本の演劇を背負っていけるよう挑戦したいと思います」2020 年 9 月は栗山民也演出の新作『ゲルニカ』。脚本担当の長田育恵が登壇。

長田「栗山さんから大変なお題をもらってしまいました。暴力の連鎖を訴える絵画からの着想ですが、暴力を連鎖させるのも人間、打ち勝つのも人間しかいない。と、暴力の連鎖のその先まで考え、執筆に挑みます」2020 年 10 月 は、宮藤官九郎のねずみの三銃士の最新作『獣道一直線!!!』。宮藤、演出の河原雅彦、“ねずみの三銃士”こと、生瀬勝久、池田成志、古田新太が、揃い踏みした。

宮藤「獣(じゅう)が付いていたらなんでもいいかなと(笑)。内容は、この後にみんなでミーティングして決めたいと思います」河原「この企画きっかけでPARCO劇場に関われたんですが、新しくなってまた戻ってこられてうれしいです」生瀬「獣道一直線のタイトルをいま検索しても、AVしか出てきません。その舞台化だと思ってください(笑)」池田「西武劇場時代に渡辺謙さんの舞台を見て、PARCO劇場でとんでもない作品をやっている!と衝撃でした。僕らは、そっちの、ふざけたほうを広げていきたいと思います」古田「この新しいPARCO劇場で、どれだけ下品にできるのか、企んでいます」2020 年 11 月は、気鋭の劇作家・演出家の前川知大の作品。着物姿で登場した。

前川「3回目のPARCOですが、その新生オープニング・シリーズに呼んでもらえてうれしいです。2005年の作品に再度取り組みたいと考えており、タイトルも一新します。面白いキャスティングを考えていますが、今日はまだ言えません」オープニング・シリーズは1年2ヶ月に及ぶ。年を越え2021 年 2 月は『藪原検校』だ。演出の杉原邦生と、出演の市川猿之助が登壇した。

杉原「数ある井上ひさし作品の中でも演出したかった『藪原検校』。猿之助さんとは歌舞伎で何度かご一緒しているので、息はぴったりです。ですよね?(と、市川を見る)」市川「演劇業界で2月は客が入らないと言われます。そこに杉原というまだ有名でない演出家でやるんですから、貧乏くじを引かされたなあと。招待者がなくても、せめて客席半分は埋めていただければ。僕も三谷作品に出たかったですよ(爆)」2021 年 3月は、天海祐希主演の『レディ・マクベス』。

天海「PARCO劇場に出るのは21年ぶり。宝塚退団後の初めての舞台もPARCO劇場でしたから、私にとって大きなターニングポイントになるのではないかと、今から期待しています。マクベス夫人がなぜそのような人生を歩んだのか、夫人にフォーカスした新作です」最後の登壇は、2021 年 4月の『月とシネマ』。演出家のG2はiPadを持って出てきた。

G2「オープニング・シリーズのトリなので、今日も主演の中井貴一さんに出てほしかったんですが、残念ながらお仕事で。半年前から中井さんとミーティングを重ね、タイトルが決まりました。お話は、ちょっと疲れた名プロデューサーが、地方の映画館の再建に関わるというもので、わかりやすく、笑えて、どこか心に染みるものにしたいと思います。作品を代表して僕が来ましたが、やっぱり心もとないので、急きょ中井さんからビデオメッセージをもらってきました」

iPadにどアップで映る中井「わたしの愛するPARCO劇場の完成を心からうれしく思っています。ストレートプレイを初めて観たのがPARCO劇場でした。宝箱の中にいるような不思議な気持ちになったことを覚えています。ここから新しい歴史を作るんだなと、PARCO劇場と一緒の時間が増えればいいなと期待しています」演劇界の有名どころがここまで揃うのは、新生PARCO劇場のお披露目だからこそ。芸術監督をおかず、さまざまなジャンルのプロデュース公演に特化してきた軌跡が、豪華20人の会見を実現させたのだ。こういう機会はほかにない、ということで、いままで聞きたくて聞けなかったことを思い切って聞いてみよう、となると、三谷から宮藤にぶっちゃけ質問が投げられた。三谷「宮藤くんに聞きたいんだけど、台本っていつから書く?」

宮藤「(10月公演だから……)3月くらいですかね」

大泉「頭の中にあるとおっしゃいましたが、ないですね」

三谷「あるんだよ、あとは書くだけ。稽古は5月からなんだけど、今ないのはダメなのかな?」

宮藤「いや、常識の範囲内じゃないですか」

三谷「よかった!」

大泉「よくないですよ!」

藤井「ところで、大泉さんの出演は決定したんですよね?」

三谷「うーん、……あ、猿之助さん、出ます?」

市川「えっ、いいんですか!?」

大泉「僕が出ます!」脚本家同士の話から、大泉の出演如何と飛び火したフリートーク。一つの枠に縛られない、プロデュース公演特化の醍醐味が垣間見られる会見であった。

PARCO劇場は面白いことをやる。この伝統は、新生PARCO劇場となった今後も、受け継がれることだろう。

 

文/丸古玲子
撮影/ローソンチケット劇場内写真 撮影/尾嶝太