赤澤燈、陳内将 インタビュー|ワーキング・ステージ「ビジネスライクプレイ」


赤澤燈、陳内将がW主演を務めるコメディ「ビジネスライクプレイ」が11月28日より上演される。演出・脚本を川尻恵太、共演には健人、松井勇歩、山﨑晶吾のほか、お笑い芸人のエハラマサヒロ、今立進ら多彩なキャストが集い、コメディとダンスを融合させたエンターテインメントに仕上げていくという。これまでも度々共演している赤澤と陳内の2人は、今回の書下ろしコメディにどのように臨むのだろうか。

 

――今回の作品への出演が決まった時、どのような印象をお持ちでしたか?

陳内「あ、赤澤だ、って(笑)。燈とW主演か、っていうのは、まず思いました。ほかの舞台でもコメディ担当のチームで、そこでズブズブにやっていたので、またコメディっていう題材で、ストレートプレイで一緒にできるのは嬉しかったですね。ご褒美だな、って。」

赤澤「僕は、陳内か…って(笑)」

陳内「おいおい…そこは喜べよ(笑)」

赤澤「やっぱ付き合いも長いし、先輩なんですけど、今となってはもう先輩に見えなくて。ずっと長いこと一緒に、良き相方としてやっているところがあったので、そういう時にこのお話をいただいたので、楽しみでした。ちょっと照れ臭さも、あるかな…なんて思ったりもしていますね。W主演と銘打たれるとハードルも上がるし。でも、そこはどんどん上げていって、皆さんに楽しんでもらえるように頑張りたいですね。共演の方々も面白い方ばっかりなので、そこも楽しみです。」

――物語は、ちょっと行き詰ってしまっているサラリーマンたちのお話となっていますね。ご自身の役柄についてはどう思いますか?

赤澤「結構、僕はポジション的に好きな役柄かも。なんか振り回されていて、でもピュアな部分や熱い部分も持っている役柄なので、そういうのは好きです。」

陳内「プロットの前段階でオンライン会議をやったんですけど、ずっと日常会話してたんだよね。」

赤澤「そうそう、サラリーマンについてどう思うか、みたいなね。」

陳内「僕は脚本の川尻恵太さんとは初めてご一緒するんですけど、そのオンライン会議をもとに当て書きしていく、っておっしゃっていて…僕のどの辺が伝わったのかなぁ、と思っていたんですけど。プロットを読んでみたら、僕の好きなパターンの役柄でした。前半と後半でちょっとギアが変わる感じで。僕のどのようなところから、このキャラクターを生み出してくださったか、すごい興味があります。」

――確かに、お2人っぽさがあるキャラクターのような気がします。

陳内「でも、僕は「だりい…」なんて口癖じゃないですけどね(笑)」

赤澤「いやいや、ずーっと言ってますよ!偉い人がいないときはずーっと。」

陳内「言ってねーわ! だとしたら、もう注意してくれよ(笑)」

――やはりもう、息がピッタリですね(笑)。役どころについて、こんなふうに演じたいなどのビジョンは浮かんでいる?

陳内「僕が演じる土田万平は無気力な感じ。たまたまかも知れないけど、昔コピーライターとして一発当てていて、それを追ってくれる存在、変化をもたらす存在が現れたから、もう一度やる気を出す男です。会話していくうちに、彼が持っている無気力感が変化していく瞬間に、陳内×赤澤だから出せる妙みたいなものが交わればいいな、と思っていますね。多分、やりながら相談していくんじゃないかな。」

赤澤「僕が演じる日野洋治っていう男の、好きだなと思ったところが、わりと普通なんですよね。性格がシンプルというか。だから、お客さんと同じことを考えている役というか、お客さんにこういうふうに思えばいいんだよ、って誘導できる立ち位置になれる。そうなれば、自分の役もおいしくなるし、周りとの差別化もできるんじゃないかなと思っています。周りはボケばっかりだから、お客さんもツッコミたくなると思うんですよ、絶対に(笑)。今のサラリーマン、そうじゃないだろ!ってね。観客が一番シンパシーを感じられる存在になりたいですね。」

――ちなみに、サラリーマンってどんなイメージ?

陳内「たまに会社のピンチに駆けつけて、後輩からモテる、みたいな…?」

赤澤「いや、いいとこ取りすぎでしょ(笑)。そんな人いないでしょ」

陳内「ドラマの見すぎかな(笑)」

赤澤「でも、会社の帰りに飲みながら愚痴とか言っているのは、本人からすれば大変なのかもしれないけど、ちょっと面白そうだな、と思います。羨ましいというか。平日に朝から忙しいからこそ、っていうか。僕らは稽古もお昼からだし、本番も劇場に入るのは朝かもしれないけど、舞台に立つのは午後からだったりするので、朝のラッシュとかも知らないし。でも、平日に頑張って頑張って、週末の金土日を楽しみにしている姿は、ちょっと羨ましいですね。メリハリがある感じがして。」

陳内「大人になってから、月から金に動いて、土日に休みっていうの経験したことある?」

赤澤「無いかもしれない」

陳内「俺は、養成所がそうだったんだよね。だから金曜日は飲みに行きたいから、バイトは入れなかった(笑)。そういう意味では、ちょっとそういう気持ちが分かるかも知れないな」

――そういう部分は役にいかせるかもしれないですね。さて、共演経験の多いお2人ですが、役者としてお互いのことをどのように見ている?

陳内「めっちゃ器用な奴だな、って思いますね。最初の立ち稽古から役の像をしっかり持っていってるなと。演出家さんとの付き合いとかも、すごくフラットでうまいし、演出家さんが求めることをすぐ体現できちゃうから、本当に器用だと思います。」

赤澤「いや、俺も頑張ってるんだぞ、と言いたいです(笑)。でも、そう見られている方が楽だったりはしますね。苦労しているところを出せないというか、できないって言っているよりは、やってみるっていう感じなので。でも僕は逆に、いい意味で…って言っておけば何でも許されると思っているんですけど(笑)。(陳内さんは)いい意味でめんどくさい役者だな、と思います。」

――それってどういうタイプの面倒くささ?

赤澤「自分のやりたいことを明確に持ってくるんですよ。僕は割と周りとかその時の空気に合わせちゃうタイプ。でも、この人は明確に像があって、それがかみ合わなくなった時に、「これはこう?」『いやいや、こうかも』「なら、こうして…」みたいなやりとりが生まれるんですよ。それ自体は、すごくいいことなんですけどね。で、稽古が終わって、家に帰って、ご飯食べて、風呂にも入って、ちょっとゆっくりしようかな…っていう時に、電話がかかってくるんです。そこから2時間とか、稽古の話をするのがザラにあるんですよ。半分、酔っぱらっているんですけどね(笑)」

陳内「それ、コイツにしかしないかも。ほかの現場とかは、全然そういうことはしないです。」

赤澤「いや、ちょっと休もうよ、って(笑)。中身は愚痴でもあり、相談でもあり、お芝居の話でもあり。」

陳内「まぁ、たわいもない話ね。」

赤澤「そうそう。めんどくせーな、って(笑)」

陳内「お前にだけだわ(笑)」

赤澤「僕が適当に聞くから、話しやすいんだと思いますね」

陳内「確かにそうかもね」

――すごく良い関係性ですね。では役者を離れて、一個人として見た時に、相手の魅力的なところは?

陳内「ちゃんとポンコツなんですよ。」

赤澤「いやいや、この人には言われたくないですよ!」

陳内「俺ができない風なこと言ってますけど、コイツもちゃんとポンコツですよ(笑)。エピソードもいっぱいあるから。結構前、去年のことなんですけど、おすすめのカレー屋さんがあるから、って店の前で待ち合わせしていたんです。僕より5分くらい先に燈が着いていたんですけど、入ろうとしたら店が準備中で。ホント、5分間なんで気付かなかったのか。シャッターは閉まってるし(笑)」

赤澤「だって匂いがしていたから(笑)。まぁ、どっちもどっちですよ。さっきの電話の話もそうですけど、この人は本当にただの寂しがり屋(笑)。人として、誰かに構ってもらっていないと死ぬんです。」

陳内「ウサギかよ!」

赤澤「良いのか悪いのかわかんないですけど、年上だけど、僕ら後輩にも「ねぇねぇ」ってへりくだってくれるから、コミュニケーションも取りやすいんですよね。一見、怖いじゃないですか(笑)。でも、そういう接しやすさがあるのは魅力なんじゃないかなぁ。イジリやすいですから」

陳内「オマエは年上をイジリすぎな(笑)」

赤澤「いや、リスペクトしてるよ?」

――すでにコメディのようなやり取りをしていただいていますが(笑)お2人は仕事でつらいとき、それでもやらなければならないときに、どうやってモチベーションを作っていきますか?

赤澤「なかなか最近は、追い込まれることもあんまり無くなってきたよね。いろいろなことが初めてだった20代前半から、いろいろ経験して、怖い演出家さんや厳しい演出家さんに出会って、心が折れそうだったときもありました。でも、それすらも初めてだと嬉しかったりもしたんです。今考えると、なかなかそこまでしてくれる人も居ない。そう思えるようになったし、そう思うようにしていますね。」

陳内「結局、厳しい監督さんとかが居ても、愛だなって思うこともあるしね。」

赤澤「最終的に、この人のこと大好き!ってなって終わるもんね。辛いっていう表情も現場では出したくないし、これを乗り越えたら、ちゃんと自分の糧になっている。そういうことは、どこかで言い聞かせているかもしれないです。」

陳内「振り返ってみて、しんどかったものって自分にとってすごく良い経験になってるんだよね。役者はどっちかっていうとMだよね(笑)。我を通すっていうよりも、苦しいことも全部、なんでも糧にしていく感じ。」

赤澤「あの時はあんなにキツかったけど、何とか出来たし、何とかなるか!っていうポジティブな気持ちは生まれるようになってきましたね。つながりもどんどん増えてくるから、相談できる人もいるしね。」

陳内「誰も知らない現場、っていうのも少なくなってきた気がする。誰かしら、共演者なりスタッフさんなりに、知り合いがいますね。そういうのは共通言語みたいなものがあって、ちょっと安心できます。」

――つらいこともちゃんと身になっていると信じて頑張る、ということですね。まもなく稽古も始まりますが、楽しみにしていることはありますか?

陳内「公演の頃には、僕の誕生日が近いので、たぶんコイツが祝ってくれると思います。」

赤澤「いや、誕生日はその日を境に1つ歳を重ねるわけだから、早く祝うのは…ねぇ。それまでは、ただの日常ですよ。だから、そういうことは無いです。」

陳内「確かに、誕生日の全然前かも知れないけど、祝えよ(笑)」

赤澤「…えーと、僕はエハラマサヒロさんとの共演が楽しみです。以前から大好きで、インスタライブとかもよく見ているんですよ。一度、イベントでMCをやってくださって、それをきっかけにインスタもフォローさせていただいたんですけど、ご家族とかお子さんと動画上げたりして、すごくハッピーな印象なんですね。それが、どんな感じに稽古場にでるのかが楽しみ。」

陳内「今回の稽古場はずっと笑っていられるんじゃないかな、っていう予感はしていますね。作品のカラーもそうですけど、川尻さんやキャストのみなさん、スタッフの方も含めて、笑って幸せになれそうな気がしています。」

赤澤「絶対に、いろんなことを試している段階も楽しいよね。」

陳内「笑いに対する貪欲さも日に日に強くなっていくような気がします。とはいえ、役柄的に僕は笑いを取りに行くような役じゃないから、稽古で笑わせてもらえるのを楽しみにしています(笑)」

――笑顔になれる作品になることを期待しています! 最後に公演を楽しみにしている方にメッセージをお願いします

赤澤「なかなか僕らも舞台に立つ機会が減っていた時期が続いていましたが、徐々に舞台に立てるようにもなって、ありがたいと思っています。まずは、とにかく皆さんが安全に来ていただけることが第一。そして、安心して楽しんでいただけるように、僕らは全力で頑張っていこうと思っています。今はうっぷんを晴らす機会が減ってしまっている状況じゃないかと思うので、こういうコメディの作品で思いっきり笑って、気持ちよく帰っていただけるような作品にしていきます!」

陳内「燈とは、今みたいな状況になってしまう前から、何か2人でやれたらいいね、って話をしていたんです。それで自粛期間中は、一緒にインスタライブをやったりして。そこからこういう形で2人でできる作品を実現できたことに、本当にありがたい気持ちでいっぱいです。僕らの組み合わせが好きだと言ってくれるファンも居てくれるので、応援しててよかった!って言ってもらえる作品に、絶対にします! ハードルはこっちから上げていくんで、ぜひ楽しみにしていてください!」

 

インタビュー・文/宮崎新之