藤原竜也と柄本明が親子役で共演し、高杉真宙、佐久間由衣という魅力的な若手俳優を加えた4人で繰り広げる濃密な会話劇「てにあまる」。脚本は、岸田戯曲賞受賞作家・松井周が手掛け、柄本が演出も担う。父である老人と暮らし始めた男、男を畏れつつも慕う部下、心が男から離れつつある妻、妻と部下の関係を訝しむ男――。4人の人間の、魂をぶつけ合うような応酬の果ては、どこに向かうのか。部下役に挑む高杉に、話を聞いた。
――今回は4人でのお芝居とのことですが、出演が決まった時はどんなお気持ちでしたか?
一番最初に話を頂いた時に、4人芝居のひとりとして出演させていただけることがまず嬉しかったですし、さらに、柄本明さんの演出と聞いてものすごく嬉しかったです。柄本さんとは、以前ドラマで本当に少しだけ共演させていただいたんですけど、もっとご一緒したかったっていう悔しさがあったんです。だから、今回こうやって、舞台でがっつりとご一緒できる、お芝居をつけていただけることが本当に嬉しい。4人しかいない中で自分がどんなふうにお芝居ができるのか、緊張感もありますけどね。
――短い時間だったとのことですが、柄本さんと以前共演したときの印象はどのようなものだったんでしょうか
そのドラマでの共演シーンは、かなりテンションが高まっている瞬間のお芝居でした。ずっと関係性がある役どころなんですけど、それまで実際にはお会いしたことが無く…。ただ、印象に残っているシーンがあって、柄本さんはただただ廊下を歩いているだけなのですが、そのお芝居にすごく驚かされました。僕は現場にいなくて映像だけを見ただけだったので、もっと目の前でお芝居を見たかった、という悔しさがありました。だから今回は、間近で柄本さんのお芝居を見られて、共演できて、さらに演出もつけていただけるとのことで、色々と楽しみですね。
――続けて、そのほかのキャストの印象についてもお聞きしたいと思います。藤原竜也さんについてはどのようなイメージをお持ちですか?
僕にとっては、舞台と言えば藤原竜也さん、というイメージがあるんです。それは多分、たくさんの方から藤原さんの舞台のお話を聞いていたからだと思うんですけど。そんな方と共演するというのは、ある意味自分にとってひとつの目標だったんです。だから今回、濃密にお芝居ができる環境でご一緒させていただけるのが幸せです。舞台の上もそうですし、映像でもそうだと思うんですけど、”そこにいる”って意外と難しいと思うんです。でも藤原さんは、熱量を持ったまま、即”そこにいる”んですね。違和感なく。そういうふうに演じている印象があるので、その熱量に負けないような熱量を僕も発していかなければならないなと思っています。そこがひとつ、課題ですね。そういう熱量って、映像作品でももちろんあると思いますが、でも見ている人が一番、直に感じられるのはやっぱり舞台なんじゃないかなと思います。
――では、佐久間さんについてはいかがでしょうか。
年齢が上なので、先輩というイメージはあるんですが、この中では年齢が近い。大先輩2人が居る中で、佐久間さんがいらっしゃることがある意味で安心ですね。…安心って言うと、変な感じかな(笑)。でも、いろいろお話できたらいいなぁ、と思っています。4人の中で自分がどれだけ出せるか、わからないけど、頑張りたいです。
――この4人だけでお芝居することになります。少人数の作品は初挑戦とのことですが、現時点ではどのおように捉えていますか?
4人芝居って、多分今までで最少人数なんですよ。そういう少ない人数のお芝居をいつかは出来たらいいなと思っていました。やっぱり人数が少なくなれば、負担が大きくなっていくけど、その分、面白さもある。そういう気持ちもあって、去年は結構4人芝居とか2人芝居とかの作品を観て、大変そうだな、と思っていました。でもだからこそ、自分の成長にもつながるはず。だから今、4人芝居の経験ができることにありがたいと思います。人数が減るごとに、使う空間っていうのは大きくなっていく気がするので、その空間をちゃんと意識できればいいなと思います。
――役づくりについては台本が出来上がってからかとは思いますが、現時点での役の手触りはどんな感じ?
まだ現時点では、僕もそんなに内容についての情報がないんですけど、自分が思っている以上に出さなきゃいけないものがたくさんあるんじゃないかなと思っています。どんなお芝居で、どんなふうに絡んでいくのかまだ全然わからない中ですけど、これまでやってきたものをストレートに表現できたらいいな、と思います。藤原さんが演じる男の部下で、藤原さんを畏れつつも尊敬しているという役どころで、ある意味で自分と被ってる。畏れる、っていうとちょっと違うけど、緊張している部分はありますから。だから、自分と近しい役なんじゃないかなと思っています。脚本も今、執筆中とのことで、僕が演じると分かって書いてくださっている。誰が演じるかわからないで書くのとは、またちょっと違うと思うので、そういう意味でも近い存在になっていくのかな?と楽しみにしています。
――舞台は約1年ぶりです。高杉さんが感じている舞台の面白さはどのようなところでしょうか
またやりたいなと思うのも、1番大変だなと思うのも、舞台なんですよ。すごく勉強になるし、自分の容量よりも大きいものが求められるのが舞台。別のお仕事でもそれはそうなんですけど、それ以上に分からないことが多いのが舞台なので。何度体験しても、経験値としてひとつも同じものにはならないと思います。だから楽しいですね。発見がすごく多いんです。「あぁ、そういうことか」っていう感覚がすごくあって、自分の感覚では収まらないもの…”それ以上”にならないといけない。“それ以上”って、気付かされないとなれないので、毎回”それ以上”に気付けることが、楽しいです。自分自身で、自分の変化に気付くっていう感じでもないんですけど、自信にはなります。…でもそれが全部その後に活かされるか、というと違うんですよね。毎回、作品ごとにリセットされる感覚があって、同じものが通じないのが現場だと思います。それを乗り越えたからこそ、見えるものがあると思うので、そういうところが舞台の面白いところですね。
――舞台と映像で、何か違いはある? カチッとスイッチが切り替わるような感覚はあるのでしょうか
あんまり、そういうスイッチみたいなものってないんですよ。そもそもの見せ方と構成が違うので、僕が何かをしなくても勝手に変わらなきゃいけない部分がたくさんあるんだと思います。舞台でやったことが、映像にも活かされることってあると思うし、逆にできなくて変わらなきゃいけないこともある。そういう意味ではスイッチがあるのかもしれないけれど、僕自身が意識する部分ではないかもしれないですね。声量くらいかな(笑)
――俳優として着実にキャリアを重ねていらっしゃいますが、この先のビジョンやなりたい理想像などはある?
そうですね…余裕があればな、と思います。自分のいっぱいいっぱいの範囲じゃなくて、もう少し大きい範囲の中で、自分を出せる人であれたらいいな。がむしゃらに発揮するんじゃなくて、少し余裕のある発揮の仕方ができるようになっていればと思います。
インタビュー・文/宮崎新之
※構成/月刊ローチケ編集部
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