廣野凌大、大崎捺希 インタビュー|舞台「錦田警部はどろぼうがお好き」


かんばまゆこ原作のコミック「錦田警部はどろぼうがお好き」が、初めてメディアミックス化され、舞台で上演されることになった。怪盗ジャック(=アンリ巡査)役には、廣野凌大、大崎捺希、錦田警部(=死んだ目の錦田)役には、藤田玲、髙木俊が挑み、怪盗と警部のコミカルな追いかけっこを、W主演かつWキャストでお届けする。怪盗ジャック(=アンリ巡査)に扮する廣野と大崎は、どのように本作に飛び込んでいくのか、話を聞いた。

 

――出演が決まった時は、どんなお気持ちでしたか

廣野 僕は出演が決まってからコミックを読ませていただいたんですけど、やたらカオスだな、と(笑)。でも、気が付いたら作品の持つハートフルさに心を打たれて、大好きになっていました。なんか惹かれてしまう魔力があるんですよね。扱っているのは、警察とか犯罪のことなのに、なんでこんなにハートフルで、キュンキュンする気持ちになるんだろう、って思います。そんな物語のアンリくん、怪盗ジャックを演じさせてもらえるということで、とてもワクワクしましたよ。

大崎 もう全部、言われちゃった(笑)。やっぱりこの作品って、怪盗ジャックと錦田警部の二本柱になるじゃないですか。そのうちの一本、怪盗ジャックを演じさせてもらえることに、責任感と緊張感はありましたね。でもそれ以上に、このお話を舞台にしたらどうなるだろうっていうワクワクがありました。コメディなので、今の大変なご時世の中で届けるということは、たくさんの人に笑ってもらえること。そこに意義も感じています。キュンキュンしたり、ホンワカしたり、終始ハッピーな世界観なんですよ。コミックもあっという間に読み終えましたし、まだまだ続いてほしい!っていう気持ちになりました。だから、怪盗ジャック=アンリ巡査を演じられることがすごく嬉しいです。

 

――お2人はダブルキャストで、怪盗ジャック(=アンリ巡査)を演じられますが、どのように演じていきたい?

大崎 コミックでは結構クールな感じなので原作の空気感を大切にしつつ、舞台の臨場感や生の感情をお客さんに届けたいと思っています。僕がどう演じるかも大切ですけど、この作品はみんなで世界観を作っていくようなところがあるので、家族のようにひとつのチームになって、全公演を駆け抜けられたらと思います。

廣野 稽古場ではアンリくんとして過ごしているはずなんですけど、廣野凌大としての気持ちも強すぎて、キャラクターを好きになりすぎちゃっているんですよ。だからすごくデレデレしちゃっていて(笑)。錦田警部にも塩対応しなきゃいけないのに、そこはすごく反省しています。今回はキャストも少なめだから、全員が舞台上にいる時間が多い。題材もハッピーだから、シリアスな作品をやるときよりも、パワーを全面に出していかないと伝わらないと思うんです。ずっとパワーを放出し続けなければいけない。その世界観を全員で作っていかないといけないですね。僕、人見知りなんでそんなに人をすぐ好きになったりしないんですけど、今回の座組はすごく楽しくて好きですね。

 

――稽古場の雰囲気はどうですか

廣野 もう、フルスピードですね。早いんですよ……。今日もダンスの振付があったんですけど、もう無理かも(笑)。すごく楽しい振付なんですけど、パワーが持っていかれますね。稽古場はいつも笑い声が絶えなくて、毎日、刺激的で楽しいなと思いながら通っています。

大崎 ホント、楽しいけどスピーディだよね。でも、ここでダブルキャストの強みが出てくるんです。稽古場に行けなかったとき、凌大がめちゃくちゃ教えてくれるんですよ。本当にありがたいですね。

廣野 ハードル上げないでください(笑)。

 

 

――役についてお互いに話したりもする?

廣野 ダブルキャストだから、稽古も入れ替えで同じシーンをやったりするんですよ。でも、同じ芝居はしないじゃないですか。お互いの芝居を見て、盗んでるな、意識してるな、というのは感じますよ。あ、こういうアプローチなんだ、とかね。でも、言葉にして話し合ったりはしていないです。コイツ下手だな、とか思われてたらヤダな(笑)

大崎 思ってないよ(笑)。確かに、お芝居に関して、話したりはしてないよね。

廣野 2人で話すときは、なんか他愛もない話ばかりしてる気がする

 

――ちなみにどんな話をしているんですか?

廣野 僕らの共通の趣味が音楽で、捺希くんはギターができるんですよ。僕もギターとかバンドをやっているので、そういう話をしますね。あとは男子校みたいな話です。どういう子がタイプなの、とか(笑)。

大崎 (笑)。そういう話して、仲が深まってきたよね。

廣野 なんかそういうことも言い合えるんで、すごく良い関係だと思います。藤田玲さんも、髙木俊さんも、そんな感じなんですよ。あと、本当に大先輩で、大ベテランの大御所さんに向かってこういうのもアレなんですけど……(宝ノ持クサレ役の)酒井敏也さんがめちゃくちゃカワイイんです。すごく魅力的な方。妖精さんです。

大崎 この座組に酒井さんがいてくださって本当によかったです。

廣野 僕らはダブルキャストだけど、酒井さんはひとりだから、ずっと僕らに付き合ってくださるんです。すごく一生懸命で、見習うことがたくさんなんですけど、すごくカワイイんです。

 

――酒井さんは、どこかちょっと、マスコット感がありますよね

廣野 でも、舞台上で見ると、ワーッと圧倒されるんです。それは、ほかの皆さんにももちろんあるんですけど、酒井さんは特に雰囲気を纏っているので……その話も捺希くんとしたよね。

大崎 酒井さんは本当にすごいです。見習わなきゃな、と思います。

廣野 今回は酒井さん以外にも見習いたいキャストさんばかりなので、勉強させていただいています。僕も負けないように頑張らないと。

 

――錦田警部役も藤田玲さん、髙木俊さんのダブルキャストですが、相手が変わるとこちらの演技も変わってきちゃったりする?

大崎 変わりますね。シーンによっても突っ込んでくるネタが違ったりとか。すごく面白いですよ。

廣野 勝手なイメージですけど、しゅんりーさんはコミカルで、カートゥーン系の感じ。玲さんはちょっとスタイリッシュだよね。

大崎 うん、スタイリッシュ。死んだ目の錦田になると、余計に変わるよね。

廣野 そうそう! だから絡んでてすごく面白いんだよね。決められた台本のはずなのに、ツッコミが毎回変わっちゃうんですよ(笑)

 

 

――キャストの組み合わせの違いで、何度でも楽しめそうですね。現場の雰囲気でどんどん変わって行っちゃうのも、生の舞台の面白さかもしれません

廣野 演出の川尻恵太さんも、その日によって演出を変える方なので、正直今は、台本に書いてないことばかりなんです。

大崎 1日稽古に行けなかったとき、いつの間にか知らないセリフがめっちゃ増えてるんだよ(笑)

廣野 しかも、シュールすぎて説明しづらいやつね(笑)。

 

――川尻さんからは、今回のお芝居についてどういうことを言われましたか

廣野 好き勝手やっていいよ、って。新鮮味っていうのは、大事にやっていこうっていうのもあると思います。なんというか、演出家としてやれ!って言う感じじゃなくて、川尻さんもキャストのひとりとして、これどう思う?って言う感じで一緒に作っている感じがありますね。すごく刺激を受けています。

大崎 本当に稽古場で、川尻さんからいろいろなものが出てくるんです。ポロッと出てきたような言葉が採用されていったり。川尻さんが言ったセリフはめちゃくちゃ面白いんですけど、川尻さんが言っているから面白くて、セリフとして言うのは難しかったりもするんですよね。僕は個人的に、川尻さんと一緒にやるはずだった舞台が中止になってしまって、その時に「絶対また一緒にやるぞ」という話をしていたんです。だから今回、こういうお話をいただけて、再会することができたので、本当に嬉しいです。

 

――今、稽古がすごくスピーディでハードな状況ですが、これがあるから頑張れる!というような、オフの時間にやっていることはありますか

大崎 さっき凌大とも話していましたけど、僕は音楽ですね。曲を作ったりするのが楽しいです。あとは、カレーを食べるために日々頑張っているところはありますね(笑)。カレーがエネルギーなんですよ、もう、ガソリンみたいな感じで。カレーだけは、生まれてから今まで、一度も嫌いになったことが無い食べ物なんです。カレーには一途です。カレーの新たな味に出会いたいんです。

廣野 僕も休みの日は音楽をやっていますね。最近は、捺希くんと作った曲をお互い送りあったりしているんですよ。

大崎 凌大の曲、すげーカッコいいんですよ!

廣野 もう、カンベンしてくださいよ(笑)。そこは、お互いにカッコいいってことで。でも曲って人によって違うじゃないですか。演技って、キャラクターが固定されているじゃないですか。そのキャラクターの範疇で表現しますけど、音楽って自分の内面でしかない。だから、人の音楽を聴くと、こういう人生なんだな、っていうのが見えてきて好きなんですよね。あとは……アプリにめっちゃ課金しちゃうんですよ。ガチャが好きです。いいヤツが出たら報われた気持ちになりますし、悪いのが出たら仕事頑張ってまた稼ごう!って思える。で、またガチャしちゃう。ダメですよね(笑)

 

――あたりでもはずれでも、モチベーションになるならOKだと思います(笑)。

廣野 こんなご時世だからこそ、僕らのパワーを全面に押し出して、お客さんには心の底から楽しんでいただきたいです! ネガティブをすべて払拭するような、抱えているストレスを持ってきていただいたら僕らがすべて浄化しちゃうような勢いでやります。心の底からハートフルな作品をお届けしますので、期待していてください!

大崎 今回の座組の一体感を見てほしいですし、アンリくん、怪盗ジャックと錦田警部の関係性がちょっと変わっていくところも注目してほしいですね。こういうご時世で、大変なことや辛いことが誰しも何かしらあると思います。でも、この劇場の2時間は、そのすべてのしがらみから解放されるような時間にします。ぜひ、楽しみに劇場に来てください!

 

インタビュー・文/宮崎新之