「未練の幽霊と怪物」の演出家・岡田利規の初日コメント、舞台写真到着!

2021.06.07

能のフォーマットを応用し、ついえた「夢」を幻視する、レクイエムとしての音楽劇。
本作は2020年4月、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて、6月~7月に予定していた全公演を中止し、延期の機会をさぐることとなった。中止から1年、6/5(土)にオリジナルキャスト・スタッフで待望の劇場上演初日を果たした。

ザハ・ハディドをシテに描く演目『挫波(ザハ)』、高速増殖炉「もんじゅ」をめぐる演目『敦賀(つるが)』の2演目で構成されている。
『挫波』 東京五輪招致のため、2012年新国立競技場の設計者としてコンペで選ばれた天才建築家「ザハ・ハディド」。その圧倒的なデザインで脚光を浴びながら、後にその採用を白紙撤回され、ほどなくして没した彼女をシテとして描く。
『敦賀』―夢のエネルギー計画の期待を担い、1985年の着工以来一兆円を超す巨額の資金が投じられたものの、一度も正式稼動することなく、廃炉の道をたどる高速増殖炉もんじゅ。もんじゅを臨む敦賀の浜を訪れた旅行者が出会うのは――。

作・演出には、従来の演劇の概念を覆すと評され、手がけた作品は世界90都市以上で上演をかさねるなど、国内外での活躍が目覚しい、作家・演出家・チェルフィッチュ主宰の岡田利規。

音楽は32年にわたって音楽監督として維新派に携わり、『NŌ THEATER』を始め、岡田のミュンヘン・カンマーシュピーレで発表した4作品の音楽を手掛けた内橋和久が担当。内橋は即興演奏家としての活動と並行してUA、Salyu、細野晴臣、カルメンマキ等と歌にも積極的に取り組んでいる。 本作ではダクソフォン3重奏を軸に、能の囃子方の役を担う。

出演者には、個性的で才能あふれる俳優・アーティストが集った。俳優、そしてダンサーとしても常にその活動が注目される森山未來をはじめ、無二の存在感を放つ片桐はいり、独自の個性で俳優としても活躍目覚しい栗原類、若手実力派女優でダンサーでもある石橋静河、チェルフィッチュ作品にも多数出演し、映画監督としても話題を集める太田信吾が名を連ねる。さらに、シンガー・ソングライターの七尾旅人が出演。
類まれな歌い手の七尾が、劇中では謡をつとめ、内橋率いる演奏家とともに音楽劇としての能の根幹を担う。

 

岡田利規[作・演出]初日コメント

もうしぶんないチームで、もうしぶんないプロセスを経て、心から納得のいく作品をつくることができました。観客のみなさんが上演の時間・空間の中で、現実のそれとは異なる、というかほとんどそれとパラレルな世界を幻視する、そのための媒介物となるためのパフォーマンスです。それを体験してもらえる機会を今日からはじめられて、とてもハッピーです。

 

撮影:高野ユリカ/ Yurika Kono