2010年に大胆な着想で、江戸時代に生きた芸術家たちの姿を描き好評を得たミュージカル『戯伝写楽』。
2018年新春、演出を河原雅彦、作詞を森雪之丞が担当し、Japanese Musical『戯伝写楽 2018』として生まれ変わる。12月某日熱気の熱気が高まる稽古場に潜入した。
『戯伝写楽』は「写楽は女だった…?!」という着想のもと脚本を「劇団☆新感線」座付き作家でもある中島かずきが手がけ、2010年に初演。写楽の謎に迫りながら、喜多川歌麿、葛飾北斎、十返舎一九、大田南畝(別号・蜀山人)など、寛政の時代に、熱く自由に生きる芸術家たちの姿を、等身大の人間として描いた。
初演に引き続き主役の斎藤十郎兵衛役に橋本さとし。ヒロインのおせい役は近年、話題の舞台に続々と出演し実力を発揮している中川翔子が演じる。ほか、小西遼生、壮一帆、東山義久(Wキャスト)、栗山航(Wキャスト)、池下重大、山崎樹範、吉野圭吾、村井國夫など、魅力的なキャストが揃った。2018年版は演出を河原雅彦、作詞を森雪之丞が手掛けることも注目を集めている。
稽古場に入ると稽古前に村井と栗山がお互いのセリフを合わせる。中川は所作の確認を行うなど、各々自主練を行っており、稽古に対する入念な準備を感じることができた。
稽古は一幕の十郎兵衛がおせいに用意した住まいを訪ねる場面から一幕終盤の歌唱シーンまで行われた。
稽古開始は十郎兵衛が小屋の扉に手をかけようとしたとき与七が「今はやめた方がいい」と声をかけたシーンだった。
おせいは前日、芝居見物をしてから休むことなく一心不乱に絵を描いているようで、おせいの身体を心配した与七は煮込みうどんを作っていたところだった。
おせい役の中川翔子が稽古前とは明らかに雰囲気が変わり絵に対してストイックになる絵師としての一面と愛くるしさ、冷徹さを併せ持つ女性としての一面を見事に演じ分ける姿が印象的だった。
十郎兵衛が小屋から立ち去り、与七が小屋の外に出るとおせいは再び絵を描き出す。
そこを見計らったかのように小屋へ男がやってくる。山崎樹範が演じる鉄蔵だ。
鉄蔵は絵師でありおせいと一緒に暮らしたこともあったが、彼女は、理由も告げず鉄蔵の元を去っていた。それがひょんな切っ掛けでおせいの手掛かりを知り、その所在を突き止めた。
鉄蔵はビクビクとどこか怯えたような表情で話しかけていたが、おせいの冷たい態度に段々とイラついていく。何をするかわからない不安定な鉄蔵にとてもハラハラさせられたと同時に話へ引き込まれた。
おせいの身の回りの世話をする与七は東山義久と栗山航がWキャストで演じる。
与七は普段は飄々としているが裏では野望に燃える役である。今回の稽古の与七は栗山が演じていた。おせいと鉄蔵の話を与七が物陰に隠れながら聞いているシーンで与七の裏の顔を自然に表現するために細かい仕草を一つ一つ説明する演出の河原と必死に考え表現する栗山のやり取りに舞台に対する情熱を感じた。
おせいが十郎兵衛を呼びに行き、与七が鉄蔵を脅すシーンで新たな訪問者がやってくる。
村井國夫が演じる版元の主人である蔦屋重三郎だ。村井の存在感は圧倒的であり、たった一言のセリフでも舞台上の空気を引き締める。
蔦屋は十郎兵衛が写楽ではないことを薄々感じており、ごまかそうとする与七を威圧し黙らせてしまう。そこに戻ってくる十郎兵衛とおせい。全てばれてしまったと伝える与七。「ばれちまったら仕方ねえや。」と開き直る十郎兵衛。
文字だけを見ると緊張するシーンであると共に十郎兵衛がおせいを利用する嫌な奴に感じるシーンでもあるが、橋本さとしが持つ堂々とした雰囲気で演じることによって台本を読んだ時に想像していたものと全く違ったシーンとなっていた。橋本の俳優としての魅力を感じずにはいられなかった。
そして一幕を締めくくるメインの登場人物達が揃う歌唱シーン。
個性豊かで魅力たっぷりなキャストたちの歌声と歌唱後に壮一帆が演じる花魁「浮雲」の登場シーンに二幕への期待が一気に高まった。
ミュージカル『戯伝写楽 2018』は2018年1月12日(金)より東京芸術劇場 プレイハウスで開幕。その後、久留米公演:久留米シティプラザ ザ・グランドホール、名古屋公演:日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール、兵庫公演:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて上演。個性豊かなキャストが織りなす江戸の芸術家たちの物語を是非劇場で味わっていただきたい。
ローチケ演劇部員(か)