シェイクスピアのローマ史劇の名作を、女性キャストだけで上演「ジュリアス・シーザー」時代も性別も超えて、人間の本質を炙り出す舞台が開幕!

2021.10.11

10月10日(日)よりPARCO劇場にて、森 新太郎演出、吉田 羊主演の舞台『ジュリアス・シーザー』が開幕した。本公演は、10月31日(日)までの東京公演を皮切りに、大阪、山形、福島、宮城、富山、愛知にて上演する。

その演出力の確かさから俳優たちから最も信頼されている演出家・森 新太郎が、今年二作目のシェイクスピア劇に女性だけで挑む!

この男たちの陰謀と策略の渦巻く古代ローマの政治闘争を女優のみで描く本作。演出には、今年3月に上演された『Romeo and Juliet ―ロミオとジュリエット―』に続いて、今年二本目のシェイクスピア劇となる。今や演劇界の重鎮と言える森 新太郎を配し、女性が持っている、したたかさ、強欲さ、そして圧倒的な強さで鮮烈に炙り出す。
朋友たちとの友情、師と仰ぐ人物への信頼と憧れ、正義ゆえの裏切りなど、女性が持つパワフルさを存分に生かして、ローマ史実を基にした壮大な政治劇を描き出す。

主演には、『国民の映画』以来、7年ぶりのPARCO劇場出演となる吉田 羊、さらに松井玲奈、松本紀保、シルビア・グラブほか硬軟取り混ぜた女優陣が集結。

映像での活躍も華々しく、近年コンスタントに舞台での出演を重ね、2016年には三谷幸喜演出の『エノケソ一代記』で読売演劇大賞優秀女優賞も受賞している吉田 羊が、本作の主人公・ブルータス役を演じる。彼女としては初めてのシェイクスピア劇、PARCO劇場では初主演、そして森 新太郎演出初参加となる。

また、俳優業に専心して以来、着実にその実力を高めてきた俳優の松井玲奈がシーザーの腹心の部下アントニー役を、そして主に舞台で活動をし、読売演劇大賞優秀女優賞を受賞した実力派松本紀保がブルータスの同僚で友人のキャシアス役を、ミュージカル女優として地位を確立しつつ、ストレートプレイでの評価も高いシルビア・グラブが、ブルータスらに暗殺を謀られる古代ローマ王政の独裁官、ジュリアス・シーザー役で参加する。

さらに藤野涼子や久保田磨希、中別府葵ほか、映像、舞台で活躍するベテランから若手まで硬軟取り混ぜた女優たちが大集結。もともとは男性による政争劇ですが、森 新太郎は性別を意識させるセリフをあえて排除し、オールフィメールキャストたちが「男性」を演じるのではなく、「人間」を演じるよう演出。人の業や欲望、正義や信念といったものをつまびらかにしながら、よりリアルな人間たちのドラマを浮き彫りにしていく。
様々なシェイクスピア劇を手掛けてきた演出の森 新太郎としても、女性キャストだけで挑むのは初めて。シェイクスピアによる壮大なローマ悲劇を、森 新太郎と実力派女優陣がどのように織り上げていくのか、注目だ。

 

演出家&キャスト代表 コメント

森 新太郎(演出)
権力闘争劇の金字塔ともいうべき本作が、これほどまでに様々な感情の渦巻く人間ドラマであるとは知りませんでした。オールフィメールで臨んだことによって、この作品の新たな魅力に出会えたような気がします。歴史劇や政治劇の類い、そして何よりもシェイクスピア劇といったものに普段まったく食指が動かぬ方にこそ、是非観ていただきたく思います。18名の女性キャストによる熱気と心意気で、この息苦しい日常に少しでも風穴を開けられるとよいのですが。
劇場にてお待ちしております。 

 

吉田 羊(ブルータス 役)
初日が終わってとりあえずほっとしています。お客様の反応が、このご時勢でとりにくいところはありますけれども、逆に身じろぎをせずに観ていただいているということは、しっかりと物語世界に入ってくださっているのかなと感じられ、お客様が入って、この作品の最後のピースが埋まったというか、物語が完成したなという感じがしました。
稽古場は、この企画を面白がって参加したメンバーならではの、熱気とアイデアに満ちたものでした。シリアスな物語にも関わらず笑いが絶えず、毎日、演出をつけられた役者が目に見えて変わっていく様がとても面白かったです。森さんは例え上手、かつ言葉選びも本当に上手い。また俳優によって演出の言葉も手法も変えるので、難解なシェイクスピアをみな同じレベルで理解し、共有出来ていたように思います。稽古中印象的だったのは、「芝居は、体に触ったら終わり。それ以上、手がないってことだから。」という森さんの言葉。舞台は特に大きく空間を使うので、覚えておこうと。今作の見どころは、「言葉」によって突き動かされていく人々の物語を、かくもドラマティックかつパワフルに仕上げた森新太郎氏の手腕!そう来たか!と唸って頂きたいです! 

 

松井玲奈(アントニー 役)
最初はどんな雰囲気になるのか緊張して構えていましたが、稽古が始まって日を追う毎にそれぞれが役に馴染み、稽古場の空気も柔らかく結束感のあるものになっていきました。どうしたらシーンが円滑に進むか、立ち位置、所作、細かな引っ掛かりにお互いの役の立場として意見を出し合い、より良い芝居環境を作るために協力し解決していく事が多く、とても印象的でした。稽古中の「芝居は呼吸。息を吸ったときに感情が生まれる」という森さんの言葉が強く印象に残っています。今まで感じていたことがハッキリとした言葉で表された時、ハッとするものがあり、この現場での大きな学びの言葉となりました。
アントニーを演じる上では、生まれた感情を殺さないようにしたいと考えています。ブルータスとアントニーの演説場面は大きな見どころのひとつです。民衆の心が動かされていくように、客席の皆様の心までも動かす演説ができるよう、ひとりひとりの心に強く訴えかけていきたいと思います。
初日の幕が開いて、沢山のお客様がいらっしゃって、一つ一つのシーンやセリフを息を飲むように受け取ってくださっていて。その事実がとても感激したのと、こうして幕を開けることはうれしさとともに、奇跡のようなことだと思うので、千穐楽まで頑張って完走したいと思います。

 

松本紀保(キャシアス 役)
キャストが女性だけなので、稽古場でのリラックスした時間は女子校の休み時間の様な雰囲気で、笑顔のたえない時間でした。演出の森さんとは2回目ですが、とにかく容赦ないダメ出しの嵐は2回目も健在でした。役者の心に火をつけるのがとても上手な演出家だと思います。今回は歌手、スポーツ選手、芸人さんなど、〇〇さんのようにという例えを使われていてそこがとてもわかりやすく面白かったです。この作品は全てが見せ場なので、1シーンたりとも見逃せない!なかでも民衆達が扇動されていく姿は、現代にも通じるものがあるのではないでしょうか。
緊急事態宣言が解除されたとはいえ、エンターテインメントには厳しい状況の中、こうして客席にお客様がたくさんいらっしゃるということに感動してしまい、このお客様の期待に応えなければという気持ちがひとしおでした。誰一人欠けてもできなかったとことだと思いますので、すべてに感謝しています。

 

シルビア・グラブ(ジュリアス・シーザー 役)
稽古場は基本的に物凄く気の張った緊張感のある空間でしたが、そんな中でも空気を和らげてくれるムードメーカー的な人がいて、笑いも溢れる時も多かったです。ベテラン揃いのキャストが歯を食いしばりながら森さんのスパルタ演出に応えようとする姿は本当に美しかった。私が演じるシーザーは、どんな時でも強い!というイメージがあったのですが、今回森さんの演出では妻のキャルパーニアの前では弱みをかなり見せてます。もちろん夫婦2人きりの時だけですけどね。本作の見どころは男たちのドラマであるのはもちろん、今回、森さんはキャラクターのヒントとしていろんな俳優や有名人の名前を持ち出し、そのキャラクターに近づけていくキャストの皆さんを見るのが楽しかった。「古畑任三郎」をはじめ、松岡修造さんからオードリーの春日さんまで、バラエティに飛んだキャラクターたちがステージ上に隠れています。
初日が開いて、無茶苦茶ホッとしています。これは森さんの現場特有だと思うのですが、また絶対稽古があるので、初日が開いたからと言ってそこまで喜んでいられず、すでに初日公演の反省中です(笑)。とにかく最後まで頑張って、無事に乗り切りたいと思います。

 

あらすじ

共和制末期のローマ、紀元前44年3月15日のジュリアス・シーザー暗殺とその後をめぐる物語。
宿敵を破ったシーザーが民衆の歓呼を浴びながら堂々とローマへ凱旋するところから芝居は始まる。
護民官や貴族のなかには、今や対抗勢力のなくなったシーザーに危険な野心を感じるものがいた。キャシアスも、その権力が益々強大になり共和制の伝統を破壊することを危ぶんでいた。そして、市民から厚い信望を得ていたブルータスを仲間に引き入れ、シーザーの暗殺を決行する。
英雄の死に一度は混乱した市民たちも、直後に行われたブルータスの演説に納得するが、シーザーの腹心だったアントニーが弔辞を述べると、今度は逆に反ブルータスへと翻ってしまい……。

 

撮影:加藤幸広