岩田陽葵、伊藤純奈 インタビュー|少女文學演劇(2)「王妃の帰還」

少女の繊細な気持ちを描いた小説を舞台化するプロジェクト「少女文學演劇」の第二弾となる「王妃の帰還」が3月20日より銀座・博品館劇場で上演される。原作は柚木麻子の同名小説で、演出・脚本を児玉明子が務める。教室の中という人間関係に惑う少女たちを、岩田陽葵、上西恵、佐藤日向、伊藤純奈らが熱演する。本作に挑む、岩田と伊藤の2人に話を聞いた。

――実は今日の取材の場が初対面だそうですが、お互いの印象はいかがですか?

岩田 出演されている舞台を昨年の12月に観させていただいて、本当にお姫様みたいな役だったんです。すごく気品があって、オーラがありました。私にとってはそれこそ王妃みたいな印象です。役になりきっていらっしゃったからこそ、そういう印象になっているのかな。

伊藤 それはもう、衣装とヘアメイクの力です(笑)。私からの印象は…もう、すごくかわいい!とにかくかわいいです。

岩田 いやいや…ちなみに、おいくつなんですか?

伊藤 23歳です。

岩田 えっ!私、26歳なんですけど、童顔でだいたい年齢が下にみられてしまうんですよ…(笑)。すごく大人っぽい方だと思っていたので、ちょっと私も頑張らないとですね。


――今回のお話は、中学校のあるクラスが舞台になっていますが、物語の印象はいかがですか?

岩田 原作は、私が演じるノリスケ(前原範子)視点で描かれていて、中学生の時って目まぐるしく毎日が変わっていく頃ですよね。ノリスケはその環境に中学生なりについていこうとしている。その繊細な心の動きとか、すぐに関係が壊れてしまうんじゃないかと思っている危うさ、脆さもあって、女の子として共感できるところはありましたね。あと、言葉のひとつひとつがすごく美しかったのが印象的でした。

伊藤 私は、演出の児玉明子さんに「純奈ちゃんにぴったりの役があるよ」って言っていただいたんです。だから、読んでみてほしいってお話をいただいて、それで読んでみました。まずは、私は児玉さんにこんなふうに観られているんだな、って思いました(笑)。私が演じるチヨジは、誰からも嫌われずにうまく立ち回っていて、確かに、私もそこには共感できるところもあります。だから、そうみられていて嬉しい気落ちでした。中学時代、本当にチヨジみたいな感じで、はっきりモノも言うし、でも誰からも嫌われないようにしていたな、って。だから、読みやすかったです。一番共感できるのが、私の役のチヨジでした。

岩田 私が演じるノリスケはすごく歴史が好きで、この教室内で起こる派閥争いをフランス革命に例えて言ったりしているんです。私自身はそんなに歴史に詳しくはないんですけど(笑)、それでも、ノリスケの例えはピッタリだな、と思いました。そういうことなんだ!って。冒頭で滝沢さん(演:上西恵)が立たされているところを、マリー・アントワネットが断頭台に立って群衆に囲まれているところに例えたりもしているんです。私ももうちょっと歴史を学んだら、お話の魅力をもっと伝えられるかな?と思うので、頑張って勉強します!

伊藤 でも、本当に女の子ならではだな、ってお話ですよね。私も女の子のグループに居たので…もちろん、このお話みたいに立たされたりみたいなことはなかったですけど(笑)、その空気感はわかる。中学生なのに、女の子はここまでいろいろなことを考えて毎日学校生活を過ごさないといけないんですよ。小説ですけど、8割くらいの女の子は経験したことがある感覚になるんじゃないかな。男性が見ても、こんなふうに考えているんだ!って思えるだろうし、女性から見たら、あったなぁ…って感じていただけると思います。


――ご自身が14歳くらいの中学生だったころを振り返ってみると、どんな子でしたか?

伊藤 私は、14歳で仕事をはじめたのでバタバタしていましたね。私がそうだった、ってわけじゃないですけど、女の子同士で好きな芸能人が一緒だったりすると、ちょっと何よ…みたいな感じってありましたよね。今となってはくだらないな、と思いますけど(笑)

岩田 しょうがないけど、まぁ、わかるよ…みたいなね(笑)

伊藤 私の方が好きだし!みたいな(笑)

岩田 あるある(笑)。14歳かぁ…なんか、このお話を読んで、登場人物のみんなはすごくしっかりしているな、って思いました。私は中学生の時にこんなに物事を考えられてなかったです。給食を毎日AかBか選択できる学校だったんですけど、ずっと「明日、どっちにしよう…」って考えていました(笑)。髪切りすぎた、とかそういうことばかり気にしていました。中学生って、本当に学校がすべて。小中学校で培ってきた友達がすべてみたいなところがあるので、その中の人間関係がすべてだったな、とは思います。だから、本当にちょっとしたいざこざがあったりしても、もう終わりだ、みたいになっちゃっていましたね。


――今回、お2人は親友同士の役ですが、女同士の友情の繊細さも物語では描かれますが、女の友情についてはどんなふうに考えていますか?

岩田 私は結構、ノリスケに似た部分があって、教室の中では目立たないように、あまり波風立てないように、誰にも嫌われないように生きている子なんですけど、私おそういうタイプ。「今のひと言、良くなかったかな」「イヤな想いさせちゃったかな」みたいなことは、けっこう繊細に感じちゃいますね。

伊藤 私は結構、中心にいる方ではありました。上グループ、下グループみたいなのをやめよう、と思って、まんべんなくみんなに声をかけているタイプでしたね。みんなからどう思われていたかは別として、とりあえず「おはよう」って言ってみるとか。いわゆる1軍グループに入るのはちょっと嫌なんだけど、でも1軍とも仲良くしておこう、とか。高校時代は、それこそ端っこと端っこで話したりしていました(笑)。やっぱりグループ分けされちゃうと、このお話みたいになっちゃうじゃないですか? 私はそれが面倒くさいと思んですよ。グループで対立したら、めちゃくちゃ面倒くさい。中学の時に、隣のクラスがそういう感じですごく揉めていて、それを見ていたので余計にそう思うようになりましたね。すごく無駄な労力がかかるじゃないですか。なら、まんべんなく話せるようにしよう!って立ち回っていました。


――結果として、そう立ち回っているのがラク、っていうことですよね。

伊藤 やっぱり「あのクラスってみんな仲がいいよね」ってなるのが、一番平和じゃないですか。平和に生きたかったんです。

岩田 波風立てずにね(笑)


――こうすると人間関係や友情がうまく行く、みたいな個人的なコツってありますか?

伊藤 なんだろうな…。束縛しすぎないとか? それこそ、途中のノリスケとかそういう感じですよね。あれはすごく中学生っぽいな、って思いました。この人が居なくなったら、ハブられてしまうかもしれないって、そういう心配を与えてしまっているのが、まずミスかな、と。別にどこに行こうが平和だよ、って空気を出すのがベストですよね。

岩田 確かに。嫉妬心ってあまりいいものは生まれないんですよね。私も自分に自信がないところがあるので、周りを見て「あの人すごいな」「あの人は素敵だな」って思うことはたくさんあるんです。それがプラスに働くこともあれば、どんどん負の連鎖に入ってしまうこともあって。そういう時は、一度立ち止まって、自分の周りにいてくれる人たちに感謝するんです。私はこんなに周りに人が居てくれて、こんなに恵まれているのに、そんなことを考えているんじゃなくて、今周りにいてくれる人に愛情を注ごう、って思うようにしています。そう簡単にいかないときもありますけどね。でも、マイナスな気持ちになっているときは、そういう感謝とかを忘れちゃっている時だな、って思います。


――いいものが見えなくなっていると自分で気づけるように、ってことですね。稽古はこれからですが、楽しみにしていることは?

伊藤 ミュージカルで歌もあるんですけど、私はちょっと久しぶりなのですごく楽しみにしています!

岩田 女の子ばかりで、女の子だけだからこそ出せるパワーがあると思うので、それをみんなで作り上げていきたいですね。それこそ学校のように、派閥のない平和なクラスで頑張りたいです。


――稽古場に臨むとき、いつも心がけていることはありますか?

岩田 …ケータリングを食べ過ぎないこと?

一同笑

岩田 今はご時世的にあまりケータリングって出ないんですけど、以前は気が付いたら休憩の時にずっとケータリングの前に居て、何か食べているんですよ。やばいやばい、またケータリングの主になっている、っていつも思います。


――よくケータリングの前で「これ、おいしいよ」とか教えてくれる方っていますけど、岩田さんはそのタイプ?

岩田 まさにそうです(笑)。ササっと取っておいて「とっといたよ」って渡すタイプです

伊藤 いるいる、そういう人(笑)。面白すぎる(笑)。私は、あんまり人見知りしないタイプなので、人見知りなのかな?っていう方にもガツガツ話しかけに行く、って感じですかね。今回は、以前ご一緒した方だったり、児玉さんにもいつもお世話になっていたり…ほかの皆さんもそれぞれで共演している方が多いみたいなので、和気あいあいとした雰囲気になるんじゃないかな。その懸け橋になれたらいいな、と思います。

岩田 リアルチヨジだ(笑)


――いろいろお仕事が忙しいかと思いますが、そんな中でのマイブームは?

岩田 あります!今、「ピクミン ブルーム」にすごくハマっているんですよ。1万歩とか歩くと、ピクミンが苗から生まれるんです。いろいろな種類がいて、それをコンプリートしていくんです。周りの人がやっていて、おもしろそうだなと思ってアプリを入れてみたら、めちゃくちゃかわいくて…。走って転んだり、日曜日の父ちゃんみたいに寝転がってお尻をポリポリかいていたり、すごい愛おしくて。冬場は寒くて、ついバスに乗っちゃおうとか思ってしまうんですけど、「ピクミン ブルーム」のおかげで歩くのが楽しくて!稽古の帰りも一駅分多く歩いてみたり、道に迷っても”多く歩けた!”って思えたり、ピクミンのおかげで前向きな気持ちになれています。

伊藤 私も入れようかな。

岩田 私のピクミン、みる?(スマホを見せる)これは今、お花のエキスを集めているんです。


――稽古場のみんなにも流行りそうですね(笑)

岩田 そうなるといいな。ハマっています!

伊藤 私は最近、自分で自分を甘やかすのにハマっています。バタバタと忙しくて、ちょっと疲れてきたときに、自分の好きなものを一度考え直そうと思ったんです。1日1個、自分に好きなものをひとつだけ与えようと思って、少し高い入浴剤を買ってみたり、いただいていたキャンドルを使ってみたり、紙のお香を買って見たり…そしたら、なんか楽しくなっちゃって。やっぱ、疲れているんですかね(笑)。最近の”甘やかし”は、今、別の作品の本番直前で劇場に入っているんですけど、入る前にちょっとだけ甘いものを食べようと、ドーナツ屋さんで1個だけ買うつもりだったんです。気付いたら、2個買っちゃっていました(笑)


――甘やかした分、頑張れそうですね(笑)。最後に、公演を楽しみにしているみなさんに意気込みをお願いします!

伊藤 このようなご時世ですが、みなさんにパワーを感じていただきたいですね。女性ならではのキャピキャピっとした空気を感じていただけたら。以前、演出の児玉さんとご一緒したときも、女性だけのお芝居だったんですが、とても女性のパワーを活かすのが上手な方だと思ったので、ぜひそこをご覧いただけたらと思います。

岩田 児玉さんは、今ちょうどやっている作品でもお世話になっていて、またこうやってご一緒できるのがすごく嬉しいです。伊藤さんは今回が始めましてなんですけど、共演のみんなは今まで一緒に作品を作ってきたことのある仲間も何人かいるんですね。伊藤さんも今日お会いしてすごく楽しくて素敵な方だったので、絶対に素敵なチームで作品をお届けできると思っています。作品の中にある、繊細な中学生の少女たちの想いを、みんなで一生懸命、舞台上で表現できるよう、頑張りたいと思います!ぜひ、劇場に来ていただけたら嬉しいです!



ライター:宮崎新之