『血の婚礼』木村達成 インタビュー

スペインの劇作家、フェデリコ・ガルシーア・ロルカが実話に着想を得て描き上げた戯曲を原作とした舞台「血の婚礼」が、木村達成、須賀健太、早見あかり、安蘭けいら魅力的なキャストによって上演される。一人の女をめぐり、男二人が命がけで闘いを繰り広げ、言葉にできない愛の衝動を杉原邦生の演出で具現化する。

花婿から花嫁を奪う男・レオナルドを演じる木村に、本作への想いなどを語ってもらった。

 

――本作は1932年に執筆されたスペインの戯曲です。出演にあたり、率直なお気持ちはいかがですか?

昔からある戯曲で、難しいのかと思いきや、とても単純明快でシンプルな作品。それだけに、本当に役者の力にかかっている気がすごくしています。でも、とても信頼できる素晴らしいキャストが揃っているので、絶対に大丈夫だ、という確信はありますね。台本はこれからいただくので、どのようになっているのかすごく楽しみです。

 

――花嫁の昔の恋人・レオナルドを演じられますが、役どころの印象は?

今までにやったことの無い役どころですね。もちろん、同じような役なんてものは存在しないと思うんですけど…傾向として、そういう印象です。レオナルドは、ちょっと男っぽさがあふれるというか、自分の中にある欲望と、常に葛藤しながらも、選択していくのが非常に魅力的な役です。自分の中で出会ってきていない色のような気がしているので、自分が知らなかった色を知ることができるんじゃないかな。

レオナルドは一見、自分勝手なように見えるんです。でも、どこまでが愛なのかを考えたら――本来、本当に愛していたら、その相手の幸せを願うというか相手のことを想うような愛ってあるじゃないですか? でもレオナルドは、何かすべてをわかっているかのような、そういう“愛”を超越しているような感覚があるんです。自分自身の中に生まれてしまった愛で、レオナルド自身も変わっていったと言うか…。

とにかく、今までの経験値を全身全霊、ぶつけていきたいと思いますし、それでも足りない部分は、諦めるのではなく、しっかりと共演者のみなさまに助けていただくつもりです。自分だけ頑張る、というよりも助けてくれる人たちを味方に、頑張っていきたいと思います。舞台を作るのは僕たちだけではありません。舞台に関わるみなさんとお会いして、どんな一体感をもってこの舞台をお客様に届けるのか。それぞれの中にあるものが、稽古で現実になっていくときに、自分がどういう印象を受けるのか、すごく楽しみです。

 

――「ハイキュー!!」で共演したかつてのバディ、須賀健太さんが花婿役で、物語の中では女性を取り合うことになります。須賀さんの魅力はどのようなところだと感じていますか?

彼の持っているパワーはすごく大きいですね。前は、ライバルであり、チームメイトでもあって、彼に助けられることは何度もありました。でも、今回は各々で戦わなきゃいけない。彼の力も利用して、自分の気持ちに着火させるためのトリガーになってくれると思います。そのあたりはまったく心配していないですね。彼の目で訴えかける力は、すごいんですよ。映像もたくさん経験しているからなのかもしれないですが、舞台上で彼と対峙したときの彼の目の演技は本当に素晴らしいんです。

 

――花嫁には早見あかりさんがキャスティングされていますが、彼女の印象はいかがでしょうか。

実は今日、あかりさんにお会いしてちょっとお話する時間があったんですよ。なんとなく、僕と色が似ている気がしました。考え方もすごく理解できるし、フィーリングが合いますね。すごく素直な女性ですし、コミュニケーションを取る中でも、きっとフランクな形でお話できるんじゃないかと思って、ちょっと心がラクになりました。

 

――日々、お仕事でお忙しいかと思いますが、俳優という仕事に向かう原動力はどんなものですか?

舞台でも、映像でも、報われる瞬間って一瞬なんですよ。作品に集中して入っていて、舞台ならカーテンコールでようやく報われるんです。そして本番が全部終わった後に、周りからどう評価を受けているのかが分かったりとか、次の仕事に繋がったりとかで、結果が如実にわかるんですね。

でも、そこはもう頑張るとか、頑張らないとかじゃないのかも、と思って生きています。ただガムシャラにやるのも違うのかな、って。昔は多分、ほんとうに死ぬ気でやっていたんです。それは今もあんまり変わっていないんですけど、頑張ればそれでいいわけじゃない。必要とされていることや、自分の承認欲求のようなものを敏感に感じ取っていかないと、“自分がやる意味”を見出すことができずに、作品と一緒に死んでしまうような気がしたんです。この年に起こる、この出来事は、一瞬しかない。だから、噛み付いたら離さないし、噛み付いたなら作品を嚙みちぎってやるくらいのつもりでいます。自分が今、ここに生きた証を刻み付けたいんです。昔は、自分の代わりはいくらでもいると思っていました。今は、僕にしかできない何かを残すべきだ、と思っています。

 

――“自分にしかできないこと”と感じるほんの一瞬の時間が、大きな原動力になるんですね。若いころとは考え方の変化があったようですが、どのようなきっかけで変化していったんでしょうか。

やっぱり、コロナ禍があったからですね。世界的に今も大きな打撃を受けていて、いい影響を与えられたなんてことはないと思います。でも僕を含め、各々の考え方を変えさせたんじゃないでしょうか。コロナ禍の中で出合った作品たちで、目線や考え方、向き合い方が変わりましたね。…正直、昔の取材とか見ると恥ずかしいです。お前みたいなのが芝居語ってんじゃねぇよ、って思いますし、今話している自分にもそう思う(笑)。だから、あんまり前のめりにそういう話はできないんですけど、当時はまだまだ青かったな、って考えられるようになったのは成長したのかな。

 

――今後、本作を含め役者としていろいろな挑戦をされていくと思います。将来、どのような人間になりたいか、ビジョンをお聞かせください。

昔からそう思っているんですけど、同性からも好かれるような存在になりたいですね。同性からも「あの人、憧れるよな」っていう感じで。そのためには、やっぱり自分というブランドを確立しなきゃいけない…今はブレブレですけど(笑)。猫は被りたくないし、常に自分に自信を持っていたい。自分を持っていてブレず、でも固くならずに周りの声を聞ける柔軟性もある。いろんな視点から物事を見られるような人間でありたいからこそ、作っちゃったら負けなんですよね。等身大のままでカッコイイ、そういう人間になれたら、と思いながら頑張っています。

 

――期待しています! 本日はありがとうございました

 

取材・文/宮崎新之