舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』スコーピウス・マルフォイ役 門田宗大、斉藤莉生 インタビュー

世界中で人気のファンタジー大作「ハリー・ポッター」シリーズの舞台版、『ハリー・ポッターと呪いの子』が間もなく上演を迎える。映画最終作から19年後、父親になったハリーたちの姿を描いていくこの物語。ドラコ・マルフォイの息子、スコーピウス・マルフォイをダブルキャストで演じる門田宗大、斉藤莉生の2人はどのように作品に臨むのだろうか。話を聞いた。

 

――今回の出演が決まった時のお気持ちは?

門田「本当にうれしかったです。そのころ、挫折に似たような気持ちがあったんですよ。コロナ禍で舞台がのきなみ中止になって、僕ぐらいの境遇になるとオーディションの数が減ってしまう時期がありました。その中でも何とか得たチャンスがあったのですが、それらも僕が思うような結果がついてこなくなったんです。本当に絶望感に近かったです。どうやったら変われるんだろうという気持ちがずっとあって、しんどかった時期に舞い込んできたオーディションだったので不思議でした。こういう巡り合わせがあるんだなと」

斉藤「現実感がない、夢のような感じでした。オーディションに受かった連絡を電話で頂いたんですけど、僕で合ってますよね、と思いました。「ハリー・ポッター」は小さいころから好きな作品で、人生で初めてのオーディションだったんです。試しに受けた感覚だったのが、徐々に進んでいって、一体どうなるんだろうという緊張感がありました。ワクワクはそんなに無くて、受からないだろうと思っていたところ、決まったので本当に驚きました。本当に、現実に気持ちが追いつきませんでした。何か壮大なドッキリをかけられているのかと思っていました(笑)」

 

――斉藤さんは今回がプロデビュー作となります。役者としてやっていきたいと思われたのは、いつぐらいからですか?

斉藤「大学4年間で役者として舞台を学んでいたんですけど、3年生の前半のときに、同じ舞台でやっていた仲間が25歳から30歳ぐらいまで、オーディションなど受けてみようかなと言っていたんです。それ、いいなと思って、僕も30歳ぐらいまではたくさんオーディションを受けて、やっていこうかなと思っていたところに、偶然このオーディションと出会ったんです。なので、すごくふわふわした状態で決まった感じです。絶対役者をやるというわけでもなく、うまくいけば役者をやりたいなという気持ちでいました。例えばオーディションに落ちたら、大学で音響を学んでいたので、その方面も考えていました。でも、小さいころからコンサートなどで表舞台に立つ楽しさを知っていましたし、大学でもその気持ちに変わりはなかったので、表舞台に立ちたいなと思っていました」

 

――門田さんは、どういったきっかけで役者になろうと思いましたか?

門田「高校2年生ぐらいまで、日々どう楽しく生きるかしか考えていなかったんです。初めて進路相談室に行ったときに、せっかく大学に行くのなら好きなこと学びたいと思って、将来何になろうかなと、初めてそこで真剣に将来のことを考えました。そしたら、俳優しか思いつかなくて。理由のひとつは、映画が好きで、四六時中、映画を見ていたということと。もうひとつは、会話が得意ではなく、クラスでイケイケの部類に所属していたわけでもない僕のコミュニケーションツールのひとつが、人前でパフォーマンスをするということだったから。学芸会が小学生のころにあって、そのときに、いろんな子の母親から「よかったよ!」って評判が良くて。自分にとって、それが初めてぐらいの成功体験になりました。侍役で、いまだに台詞を覚えています。「良き景色でござる」って言ってました(笑)」

 

――それが原風景として残っていたんですね。

門田「きっと、あの成功体験は僕の中ですごく大きくて、喜びでした。そこから派生して、僕は何かを届けることや、人のリアクションを見ることが、すごく自分にとって好きな生き方だと思って、俳優しか思いつかなかったんです」

斉藤「小さいころ、人に見られることに喜びがあったところは僕と似ていますね」

――『ハリー・ポッター』という作品は世界中で愛されている作品だと思いますが『ハリー・ポッター』が愛される理由はなんだと思いますか。

門田「最近思ったのが「スター・ウォーズ」に似ているんですよ! 特に似ていると思ったのが「スター・ウォーズ」のエピソード3で、最後、味方で一番上のヨーダと敵で一番上のダース・シディアスが戦うシーンがあって。同じことが「ハリー・ポッター」でもありますよね。ダンブルドアという校長先生とヴォルデモートという悪の親玉が戦ったら、どっちが勝つんだという夢の対決です。「スター・ウォーズ」でフォースを悪用すると悪の道に行ってしまうのと同じように、ハリーも心の中にヴォルデモートの侵入があるんです。戦いがあって、一番強い者と者が戦う、主人公に闇があるという、世界中で愛されるエンタメにはそういう方程式があるんじゃないかなと最近、思います」

斉藤「僕はそれこそ大学とかで演劇をやるようになってから改めて「ハリー・ポッター」の映画や本を見たときに、一人一人のキャラクターがすごく人間らしいなと思いました。世界はマグルと魔法使いということで分かれていて、自分たちの日常の裏に、実は魔法界があるという、少しファンタスティックな設定ではあるんですけど、その中で過ごしている人たちには全部リアリティがあります。ハリーも完璧じゃないし、ほかの誰も完璧な人がいないし、常に間違いを犯したり、過去に闇があったり。ヴォルデモートでさえ、昔、こういうことがあったから今、闇の帝王になってしまったという、ただの悪、ただの善として片づけられないような、複雑な人間模様が、本だとより描かれているんです。それぞれに共感するキャラクター、共感するシーンがあって、ファンタジーなんですけどリアリティがあるという世界観が愛されるのかなと思います」

 

――では今回の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』という作品では、どんなところが魅力になりそうでしょうか。

門田「あのハリーが成長したら、どうなるのか、というところはとても魅力だと思います。ハリーは両親を早くに亡くしてしまったので、両親の愛を知らないんですね。逆にドラコの両親は縛ってはいたけど、愛を知った上で育てていて、その上でスコーピウスはどんな人間なのか。そういう人間模様がうまく描かれていると思います。宣伝的には演出とか華やかで魔法がすごいという部分が取り上げられると思いますが、そこももちろんあるんですけど、その中に隠れた人間模様のストレートな芝居も、やはり見てほしいなと思います」

斉藤「原作ファンの方は、映画や小説のラストシーンから始まるので、まずその時点で必見だと思います。主人公が2人いるようなお話なんですよね。まずは大人たちのお話。そこに子どもたちの話があって、その二つの線が同時に走っていく。その中で原作ファンも喜ぶような展開、映画や小説に出てきたアイテムとか、いろんなものを使って、冒険していく魅力があります。そしてこの作品のテーマは様々な愛のカタチ。家族、恋人、友達に対する愛のカタチを是非観ていただきたいなと思っています」

門田「「ハリー・ポッター」自体、シリーズ通してテーマにしているのが愛だと思うので、僕たちも稽古場で演出の方や、いろんな方に愛について言われているので、愛には注目してほしいですね」

 

――演じられるスコーピウス・マルフォイはどういう人物だと捉えていますか?

門田「作品を通して、かき乱すキャラクターなんだろうと。主軸にいて引っ張っていくのがアルバスとハリーで、スコーピウスは、そんな彼らとともに冒険しながら一緒に巻き込まれていくんです。物語としてかき乱すということではないんですけど、でもキャラとして、芝居として、この世界観をかき乱していくような、ぶっ壊していくような子だと思います。雰囲気の変化をもたらしてくれたり、いいスパイスになっている感じ。いなきゃ駄目というか…うどんにネギが乗っている、乗ってないで大違いじゃないですか? ネギラーメンにネギがないとただのラーメンじゃないですか。そういうネギみたいな存在感だと思います」

斉藤「なくてはならない存在ではありますし「ハリー・ポッター」シリーズの中に、今までこんなキャラいたかなという感じです。「ハリー・ポッター」の世界でハリーの子ども世代は描かれていなかったですし、しかもあのドラコから生まれた子ども。そのギャップはあると思います。「ハリー・ポッター」を観たことある人とない人では、捉え方が全く異なるところが一つの魅力かなと思います。スコーピウスという人間は、器の広さと、人に対する優しさが半端ないです。稽古をやればやるほどそれを感じられて、もし僕がそれを言われたら、絶対嫌だと思う部分でも許しちゃうんですうよね。その優しさは多分お母さんからもらった優しさと愛だと思います。それを舞台上で実際に観ていただいて、皆様にスコーピウスを好きになっていただけたらと思います」

――稽古も忙しい最中だと思いますが、そんな中でも自分らしい時間や大切にしている時間はありますか?

斉藤「まず、この稽古をキツイ、辛いと思ったことがありません。「ハリー・ポッター」が大好きなので(笑)。だから逆に休みの日は、ただ寝るだけとか。それこそ「ハリー・ポッター」のマホウドコロのお店に行ってみたり。日常が最近「ハリー・ポッター」で染まっています。休みの日はグッズを買いに行きたいです(笑)」

門田「動画編集です。趣味で動画を作って、それをSNSなどに、たまにあげています。本当に寂しがり屋で、僕のことをみんなに知ってほしいし、みんなの価値観に入り込みたいんです。表面だけのやり取りじゃなくて、ちゃんと心に触れて泣かしたいし、基本的に笑わせたりとか、ハッピーにさせたりとか、その人の価値観が変わる瞬間が見ていて好きなんですね。映画とか一緒に見たいんです。価値観が変わるような、すごくいい体験をした映画を、わざと見たことないって言って一緒に見たりします(笑)。その感覚を共有したくて、彼はどう思うんだろう、どう感じるんだろうと、他者に入り込むのが好きですね。その瞬間を作るための動画編集で、芝居もたぶんそこなんだと思います」

 

――最後に、公演を楽しみにしている方に見どころを含めてメッセージをお願いします!

門田「やってられないという気持ちを、全力で体現します。スコーピウスがどうというより、皆さんもそうだと思いますが、日々ここまで本当にやってられない思いでやってきたものがあると思います。でもマイナスの意味で捉えてもらいたくなくて、どっちかというと、やり切っているという感じ。やってやったぞ!というような、舞台上で、そのまま息を引き取ってもいいぐらいの気持ちでやるという、その生き様を見ていただけたらと思います」

斉藤「このお芝居、手を抜いたら、自分が置いていかれるんです。常に全力でスコーピウスとして、舞台上でいろんなことをやっています。全力で一生懸命なスコーピウスを観ていただけたらと思います。注目ポイントは全部です!(笑)是非劇場にお越しください!」

門田「エンジンと言われていたもんね」

斉藤「そう!スコーピウスとアルバスの2人が止まらずに走りつづけないと、物語が先に進まないので。劇場に見に来てくださる方々も、ホグワーツ特急に乗った感覚で、途中下車せず最後まで走り抜ける僕たちを見届けていただけたらと思います!」

 

取材・文/宮崎新之

 

<スタッフ>

ヘアーメイク(門田宗大)/松村南奈

ヘアーメイク(斉藤莉生)/森本愛梨

スタイリスト/西脇智代

 

<衣裳クレジット>

門田宗大

・パンツ ブランド:FACTOTUM(¥25,300込)

・シャツ、ベスト ブランド:remer(シャツ¥6,600込、ベスト¥4,950込)

問い合わせ:Sian PR 〒150-000 渋谷区渋谷2-2-3ルカビルⅡ2F~4F

 

斉藤莉生

・Tシャツ、ジャケット ブランド:FACTOTUM(Tシャツ¥12,100込、ジャケット¥30,800込)

・パンツ ブランド:1/F(¥26,400込)

問い合わせ:Sian PR 03-6662-5525 〒150-000 渋谷区渋谷2-2-3ルカビルⅡ2F~4F