岡本健一×成河の二人芝居、『建築家とアッシリア皇帝』のビジュアル公開&コメント到着!!

2022.08.18

宣伝美術:秋澤一彰、宣伝写真:山崎伸康

二人芝居の決定版、演劇界を震撼させた衝撃の問題作

2022年11・12 月、東京・シアタートラムで上演される二人芝居『建築家とアッシリア皇帝』。本作は8・9月に上演の『毛皮のヴィーナス』に続き、「トラム、二人芝居」と称し、新進の演出家と、魅力あふれる実力派のキャスト陣とのタッグで、二人芝居企画の第二弾。
演出はシアタートラム初登場となる生田みゆき。不条理劇と評される本作を、残酷で倒錯的な世界を夢想とユーモアを織り交ぜて描き出した作品であると語り、生田ならではのフレッシュで斬新な視点で演出に挑戦。出演は岡本健一と成河 。演劇界で縦横無尽に鮮烈な活躍を続ける2人の役者の、夢の競演が実現した。このフレッシュかつ強力なコンビの布陣でお届けする『建築家とアッシリア皇帝』にご期待あれ。

劇作家・アラバールと本作『建築家とアッシリア皇帝』について

自らの作品を「テアトル・パニック恐慌の演劇 」と称した 劇作家フェルナンド・アラバールは 、 1960年代 以降 、 世界の演劇界に大きな影響を与え ました。アラバールは1932年、旧スペイン領に生まれ、幼少期はスペイン内戦を 体験。父親は体制派に逮捕されたまま行方不明となり、母親とマドリード へ移住しましたが、1955年、演劇を学ぶためにフランスへ渡り、パリでの留学生活をスタートさせた。以降、母国語ではないフランス語で著作活動を精力的に 続け、1967年、35歳の時に『建築家とアッシリア皇帝』の初演を迎えるにいたった。
また、同年、祖国スペイン旅行時に、彼の作品が時のフランコ政権に対しての反逆行為であるという理由で、突如、逮捕され投獄という事態に遭う。半年後に開かれた裁判で無罪が確定され釈放となるが、こうした自身が体験してき た祖国への複雑な思いや、幼少期の父と母との関係が、彼の作品に大きな 影響を及ぼしていることは否めない。祖国を離れフランスに制作の拠点を移しながらも、彼の作品の背景にはスペインの伝統的グロテスクとエロティシズムが色濃く存在していた。
本作『建築家とアッシリア皇帝』は1967年にパリで初演。以来、55年を経た今でも色褪せない衝撃作として、世界各地で上演され、その時代ごとの社会情勢を内包していくような普遍性も兼ね備えた同時代作品としての輝きを放ち続けている。
日本では1974年に劇団雲で皇帝役・山崎努、建築家役・立川三貴(旧芸名・光貴)の2人による上演が注目を集めた。山崎は退団後も1983年に高橋昌也の演出で再び皇帝役に挑んでいるが、全身全霊で演じる山崎の皇帝役はセンセーショナルな話題を巻き起こしました。その山崎を師と仰ぐ岡本健一が、演劇界の盟友ともいうべき成河と組んで、山崎と同じ皇帝役を演じるのも大きな注目ポイントの一つ。

宣伝美術:秋澤一彰 宣伝写真:山崎伸康

劇は、絶海の孤島に墜落した飛行機から現れた男の「助けてださい!」という叫びからはじまる。その後、この男は自らを皇帝(岡本健一)と名乗り、島に先住する一人の男を建築家(成河)と名付けて、近代文明の洗礼と教育を施そうとするが、その文明と教育は、はたしてこの二人に 本当の幸福をもたらすことができるだろうか。
現実と虚構の世界がまじりあい、 文明以前の人間の根源的な欲望がぶつかりあい、最後にはありのままの自分自身と向き合っていくという、スリリングな皇帝と建築家のやりとりは、やがて衝撃的な結末を迎える。
シアタートラムだからこそ味わえる、刺激的でライブ感あふれる二人芝居の世界に、期待も高まる。

※山崎努の「崎」は(たつさき)が正式表記

田みゆき&岡本健一&成河からのコメント公開!!

生田みゆき(演出家) コメント

『建築家とアッシリア皇帝』を初めて読んだのは数年前のことですが、たくさんの要素が詰め込まれた膨大な台詞に
面喰らったり、母親に対する異常なまでの愛憎に一女性として戸惑ったりしつつも、演劇という表現に託して何かを
しつこく描き出そうとする作家の途轍もないエネルギーにとにかく圧倒されたことを覚えています。このエネルギーが、作家が幼少期に経験したスペイン内戦に深く根差していることは多くの方が指摘されていますが、その悲しみや憤りが少し実感をもって私に迫ってきたのは、今年2月のロシアによるウクライナへの軍事侵攻以降でした 。
連日様々なメディアを通して伝わってくる戦地の惨状と各国の対応。ある日を境に突然日常が崩壊し死が迫る不条理に怒りを覚えつつも、正義と悪という風に極めて単純化された構図の報道や、西側諸国のウクライナに対する手厚い支援から垣間見える無意識の人種差別に対する疑問なども浮かんできました。そんな中で戯曲を改めて読みなおしたときに、演出の道筋がおぼろげながらも見えてきたように思えました。これまで実験精神や開拓心のある作品を数々送り出してきたシアタートラムで、客席と一体感のある空間や、この戯曲の中に散りばめられた遊びの要素を最大限に生かしながら、より良き未来を目指す人類の矛盾と葛藤を、赤裸々に描き出せたらと目論んでいます。
そして岡本健一さんと成河さんは、そんなハードな挑戦にユーモアを忘れずに果敢に飛び込んでくださる素晴らし
い舞台人だと感じています。「皇帝」を名乗る男は、尊大であると同時に卑屈でもあるという振幅の大きなキャラクターです。岡本さんの少年のような自由さと好奇心そして正直さが、どのような表現となって立ち上がるのかとても楽しみです。そしてその皇帝を受け止める「建築家」は、いつも作品の細部まできちんと把握したうえで 相手役のすべてを受け入れて、自分もどんどん飛躍される成河さん。「二人芝居」という、人間同士の関係が最もシンプルな形で構成されている戯曲ですが、「ごっこ遊び」を利用してその関係はどんどん変化します。演出者としては、岡本さんと成河さんが持っていらっしゃる強靭な声と身体を駆使して遊び倒せる空間を準備し、今こそ上演する意義のある作品を創りたいと思います。劇場でしか体感できない生の身体を、是非お楽しみください。


【皇帝 役】岡本健一(おかもと けんいち) コメント

撮影:山崎伸康

この作品を11月・12月に上演するということに、私は心を躍らせています。
躍らせているとともに、感傷的に陥ったり、攻撃的な感情が高鳴ってきたり、支離滅裂な思いをひとつひとつに細か
く細分化したり、そして何よりも成河との二人芝居であることに、全く予想のつかない事件性のある過激で愛に溢れた物語になるのだと思います。
登場人物が、どんな喋り方をするのか、どんな気持ちで時間が進んで行くのか、私自身がどのような姿になっていくのか、何も決められない、決めてはいけないような作品な気がします。
演出の生田さんが、ごく普通のマトモな人間とは言えない私達二人を何処に導いてくれるのかも予想がつきません。
演劇はLIVELIVEなのだと思います。
今までに自分が関わってきた演劇の中で、こんなにも凄まじい戯曲は初めてです。
あらゆる枠を超えてしまっている、今の私達でしか成り得ない自由で演劇ならではの二人芝居。
是非、シアタートラムという冒険心が豊かで濃密な劇場で体感して下さい。要必見です。

■【建築家 役】成河(そんは) コメント

撮影:山崎伸康

ありそうでなさそうな奇妙な設定、色鮮やかな演劇ごっこみたいな楽しさが散りばめられていたかと思ったら、明確な近代文明批判を繰り広げたり、突如としてドロドロの人間心理の闇に落ちていったり。とにかく読み解くのに相当なエネルギーのいる作品です。これを「不条理演劇」とひとことで言い表すのは現代としてはやはりそぐわない、今からおよそ 60 年前の先鋭の娯楽、思想というのはともすれば古びたものに感じてしまう、その難しさも感じています。この戯曲を現代に開いていくのはとても大きな挑戦であり、大冒険です。僕が強く惹かれるのは、アラ バールが筆を打ち付けるようにして書いた、言外の雑多なエネルギーです。言葉で説明出来るものを優に超えたところにある、強い執念のようなもの。それを現代の感覚でどこまで具体的に掴めるか、そういう挑戦になると思います。掴んで、開く。その作業を岡本健一さん、生田みゆきさんと、こだわりにこだわりにこだわり抜いて、やってみようと思います。大冒険です。