“今月の”優先順位高めです【2022年9月号】

2022.09.01

9月になりました。今年も残すところ後4ヶ月。早い。やっぱりコロナコロナな毎日ではありますが、生の舞台って最高なので、可能な限り劇場に足を運びたい、そんな風に思ってます。というわけで今月の「優先順位高めです」です。
※記載している公演も中止等になる場合がございます。公演実施を事前にご確認お願いいたします。

俳優・田代明の優先順位高め!

2ヶ月ぶりの復活の田代です。

みなさまこんにちは!
2ヶ月ぶりにこのコラムを書かせていただきます女優・歌手の田代明です!所属していた劇団を先月卒業し、色々模索して頑張っている中、大好きなこのページにカムバックできるなんて夢みたいです…!

さて、私が今月おすすめしたい作品達は!
ミュージカル「ヘアスプレー」
同名映画が元となった作品、そして初演の際にFNS歌謡祭で曲を披露したりと、もう色んな人がその存在を知っているかと思います。曲もキャッチーで名曲揃いすし、渡辺直美さんの主演も見たいしで、幅広い層におすすめしたい作品です!

舞台「きっとこれもリハーサル」
バラバラな方向を見ている家族が、「喪主の練習をしたい」という母の発案で”お葬式のリハーサル”をし始めるというお話。私はシンプルに生・鈴木福くんが見たい!や、もう福さんなのですが!バラエティやニュース番組に出演する福さんのコメントがいつも素敵だなぁと思っていたので、舞台上でどんなお芝居をされるのかすごく見てみたくて!あと、フライヤーの後ろに書いているキャッチコピーにも惹かれました…!

舞台「住所間違い」
あらすじ、読んでください…もうこんなの絶対おもしろいー!!!ってなります。イタリアの現代演劇の翻訳上演で、世界20ヵ国以上で上演されている人気作。白井晃さん演出。からの、出演者の皆さんも確認してみてください…絶対おもしろいーー!!!ってなります。喜劇の中に生き死にや人間の抱える色々な問題が描かれている作品…あーもー絶対おもしろいー!!!
私事ですが、9/7〜9/11まで劇場HOPEにて「音楽朗読劇パレード」に出演します!歌って朗読します、ぜひお越し下さい!

田代明
女優・歌手
北海道札幌市出身。東京藝術大学声楽科卒業。演劇、ミュージカル等、舞台を中心に幅広く活動中。
Twitter:@akkarindays

俳優・ 東野良平の優先順位高め!

劇団「地蔵中毒」第15回公演、お陰様で終演しました。
無事完走できてよかった…ご観劇頂いた皆様ありがとうございました!
〆切に追われながらも楽しみな9月の舞台はこちら!

中野坂上デーモンズ『鬼崎叫子の数奇な一生』
なんといっても、注目は豪華客演陣。池津祥子さん、金子清文さん、河井克夫さん…!
御三方が揃い踏みされるのは25年ぶりとのことで、おそらく大人計画『ファンキー!宇宙は見える所までしかない』(96年)、『愛の罰(再演)』(97年)以来ではないでしょうか。これはもう観るしかないでしょう…!
十周年を迎えさらに勢いを増すデーモンズが聖地ザ・スズナリで放つ「大きな声」!
既に開幕しており9/4(日)が千秋楽。急いでご予約を!

パ萬 第一回公演『同級生』
江原パジャマ、てっぺい右利き、細井じゅんによる定期ユニット。読みは「ぱーまん」。
脚本に小野寺ずるさんを迎えての旗揚げ公演は「29歳。同級生3人は9年ぶり”計画的偶然”の再会を果たす」「発酵臭・腐敗臭・小便臭まで撒き散らす三つ巴」と一筋縄ではいかない因果な三人芝居を楽しめそうな予感。
Pityman『おもいだすまでまっていて』、蓬莱竜太作・演出『広島ジャンゴ2022』にて評価を高める江原パジャマ、東京にこにこちゃん『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・バルコニー!!』での活躍が記憶に新しいてっぺい右利き、細井じゅん。小劇場の若手俳優による化学反応はどんな温度をもたらすのか。

ほりぶん『一度しか』
『ドライブイン カリフォルニア』でご一緒した川上友里さん所属のほりぶん。
MITAKA“Next”Selection 23rdに選出されての最新作。
紀伊國屋ホールでの前回公演『かたとき』で初観劇したのですが、もうとんでもなく面白い。笑いすぎて首を痛めるほど。ケガするくらい面白い。
ナカゴー主宰でもある作演出・鎌田順也さんによる血の通った堂々巡り、川上さんの劇場の空気が震える圧倒的パワー、極上の「今、自分は何を観せられてるだろう?」を堪能できるはず。
前回は又吉直樹さん、猫背椿さん、きたろうさんと豪華メンツでしたが、今回はレギュラーメンバー中心のようで、より原液に近いほりぶんを楽しめるのではないかとワクワクしています。

モチロンプロデュース『阿修羅のごとく』
向田邦子の代表作の舞台化、豪華な四姉妹のキャスティング(小泉今日子さん、小林聡美さん、安藤玉恵さん、夏帆さん)で大注目の作品です。
演出の木野花さんが宮藤官九郎さんのラジオで「まったりした名作芝居ではなく、”おもしろく”したい。阿修羅が見えるとはどういう瞬間なのか狙っていきたい。格闘技のような。けっこう肉体勝負。」と語っていらして俄然期待が膨らみます。
「ステージを四方向から囲む客席」というのも、ドラマ・映画と人々の心を打った傑作を舞台として”立体化”する意志を感じます。
男性キャストも岩井秀人さん、山崎一さんと堪らないメンツ。一人で複数の兼役もあるそうで、純粋に六人芝居としても楽しみでなりません。

東野良平
俳優。劇団「地蔵中毒」所属。次回出演→劇団「地蔵中毒」次回公演は12月に下北沢 ザ ・スズナリ!
Twitter:@lycoris1210

ライター・河野桃子の優先順位高め!

1日には 『わたしは幾つものナラティヴのバトルフィールド』が埼玉で幕をあける9月。 テキスト・演出を担当する岡田利規さんと、ダンサー・振付家の湯浅永麻さん、映画監督・俳優の太田信吾さんが集まり、言葉と身体について新たな試みとなるんだろうなと期待高まる演目です。そのようなさまざまな試みが日々うまれるなか、今回は、“現代に上演するかつての物語”についての2作をご紹介します。
 
モチロンプロデュース『阿修羅のごとく』。向田邦子さんの原作はドラマや舞台でさまざまに上演されてきました。70歳を迎える父の浮気疑惑と、母。それぞれも悩みを抱える4姉妹を、小泉今日子さん、小林聡美さん、安藤玉恵さん、夏帆さんが演じます。ドラマが放映された1979年は、昭和の時代の男の浮気にむけられる目は今の時代とは違いました。お茶の間で流れた母の言葉に、はっとした方も多いでしょう。現在も、依然として男女格差があり、それをめぐるさまざまな声があげられています。そこでわたしたちが抱えている阿修羅は、昭和の時とはまた違うはず。演出の木野花さんは「(令和)の時代にはどういう阿修羅が住み着いているんだろう、阿修羅を令和に引きずり出すことは、やってみる意味があるんじゃないか」と演出を引き受けたとのこと。この作品に集う女性たちがどのような阿修羅を描くのか、同時代のひとりとして共にその深淵を覗いてみたいです。

国立オデオン劇場『ガラスの動物園』は、2020年、2021年の来日延期を経て、やっっっっと上陸するイヴォ・ヴァン・ホーヴェの演出作品です!1944年にテネシー・ウィリアムズによって執筆された今作で描かれるのは、父不在のある家族。閉塞感、どうにもならなさ、息苦しさのなかで幻のような夢を見る家族らの姿は、懐かしく古めかしい。「すべての演劇は現代劇であるべき」と言うヴァン・ホーヴェは、現在の世界に置いてこの作品を描きなおすでしょう。これまで見たヴァン・ホーヴェ作品の登場人物らは、そこまで痛々しくえぐって見せなくても……と脈打つ内臓を眼前にさらされたような感覚がありました。今回もそれを恐れながら期待してしまうのですが、なんと、古典的な幻想の檻にとらわれている母・アマンダを演じるのはイザベル・ユペール(最近だとゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞した『エル ELLE』での女性像は印象的で見ていて内臓をつかまれたみたいだった…!)。来日した彼女の舞台を観られることも楽しみのひとつです。

河野桃子
ライター。翻訳戯曲と小劇場を中心に、ミュージカルやコンテンポラリーダンスなど「舞台」と名がつくものはなんでも観に行きます!
Twitter:@momo_com

ライター・中川實穗の優先順位高め!

優先順位高めの作品が多い9月。今月もよろしくお願いします。

まずはわたしが大好きな舞台「パタリロ!」シリーズの最新作舞台「パタリロ!」~ファントム~。舞台の映像は滅多に見ないのですが、このシリーズはDVDでめっちゃ観て、楽曲はiTunes Storeで購入しめっちゃ聴いています。小林顕作さんの演出、楽曲、池田テツヒロさんの脚本、加藤諒さんのパタリロ殿下をはじめ登場人物たち、魔夜峰央先生の原作、みんな好きです!期待してます!

モチロンプロデュース「阿修羅のごとく」も楽しみで仕方がないです。2022年に「阿修羅のごとく」をどうつくるのか。よかったらこの記事も読んでいただきたいです。脚色は倉持裕さん、演出は木野花さん。出演は小泉今日子さん、小林聡美さん、安藤玉恵さん、夏帆さん、岩井秀人さん、山崎一さんです。興奮しますよね。

個人的に問答無用で優先順位が高いのは、イキウメの「天の敵」た組の「ドードーが落下する」ヨーロッパ企画の「あんなに優しかったゴーレム」。長塚圭史さんが初めて手掛けるオリジナルミュージカル「夜の女たち」も楽しみ。新国立劇場の海外招聘公演「ガラスの動物園」GORCH BROTHERS2.1「MUDLARKS-マッドラークス-」はめちゃくちゃ気になっています。「MUDLARKS-マッドラークス-」は演出が川名幸宏さん、出演が玉置玲央さん、永島敬三さん、田中穂先さんですよ。庭劇団ペニノ「笑顔の砦」りゅーとぴあ×世田谷パブリックシアター「住所まちがい」も惹かれてやまない。文字数がオーバーしすぎている。

どの公演も無事に上演されますように。

中川實穗
ライター。日本の戯曲が多めですが、ジャンル問わずに観ます!
Twitter:@miho_sgt

ライター・岩村美佳の優先順位高め!

毎日のように公演中止が発表され、各カンパニーの皆様が、何とかして舞台を届けようと、代役による上演も相次いだ8月でしたが、暑さとともに様々に和らぐと良いなと思う9月。何とか駆け抜けた夏に消耗した心と体を労わりつつ、今月は、ハッピーな作品や、人間の本質を描く作品が気になっています。

まず楽しみにしているのは、オリジナルミュージカル『COLOR』。坪井優介さんがご自身の体験を綴ったノンフィクション『記憶喪失になったぼくが見た世界』を元に、植村花菜さんの音楽で、新たなミュージカルが誕生します。私は、様々な角度から作品に触れていますが、風通しのよいチームで、実力も経験も豊富な皆さんが全力で作られていて、どんな舞台になるのか楽しみで仕方ありません。浦井健治さん、成河さん、濱田めぐみさん、柚希礼音さんによる、2チーム制ですが、両チーム楽しみですし、オリジナルミュージカルの未来に繋がって行く作品になるのではと期待しています。そして、何より素直な心で観劇したい。観終えた時にどんな想いになるだろうとワクワクしています。

さらに、ミュージカル『モダンミリー』ミュージカル『ヘアスプレー』。どちらもハッピーなブロードウェイミュージカルで、2020年に全公演中止になった作品のリベンジ上演です。『モダンミリー』のタップと『ヘアスプレー』のビートとダンスは、ブロードウェイミュージカルらしい華やかなパフォーマンスで、主人公が元気いっぱいで前向きなところが共通点かと。強力なエネルギーを浴びて、いっぱい笑って、元気をチャージしてきます!

そして、「愛」を熱く熱く描く、通称アタタミュ、ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター〜北斗の拳〜』も楽しみです。新たなキャストが加わり、どんなブラシュアップがされるのか、見届けたいと思います。

岩村美佳
ライター。フォトグラファー・ライター。初観劇は小学生の時に観た宝塚。ミュージカルを中心に色々と観劇しています。配信観劇も存分に楽しめるようになりました。超絶猫好き。
Twitter:@nyanyaseri

批評家・山﨑健太の優先順位高め!

ようやくぼちぼちと寝苦しさのない夜が。今月も「ストレートプレイ枠」「実験的作品枠」「自由枠」で優先順位高めを紹介します。

まずは「実験的作品枠」でTransfield Studio『Lines and Around Lines』。シンガポールでのリサーチレジデンシーから帰ったばかりのユニットがレクチャーパフォーマンスとツアーパフォーマンスの2本立てで「シンガポールの水の流れとともに、人間と土地の間にある想像力を手渡」すことを試みるとのこと。どんなパフォーマンスになるのだろうか。福井裕孝『シアターマテリアル(仮)』も興味深い。公演は一回のみ、しかも京都ということで、残念ながら私は観に行けないのだが「建物/敷地の中にある「もの」を全て記録するというプロジェクト」の一環で舞台上に集まった「もの」を前になされる一度かぎりの上演は今までにない角度から劇場とは何かを考える機会になりそうだ。

「自由枠」の中野成樹+フランケンズ『EP1(ゆめみたい)』はなんと「20年かけて『ハムレット』を最初から最後までゆっくりたどっていく企画」(!)の第一弾。昨年の『Part of it all』ではE・オールビー『動物園物語』を原作に、生活と創作がともにあることを試みたナカフラ。それはたとえば上演のその場にメンバーの子らがいたり、なんらかの事情で抜けなければならない場合には公演の本番からも抜けることが可能だったりという設計により実現していたのだが、今回の企画はそれをよりラディカルに拡大したものと考えられるだろう。もちろんナカフラなので上演それ自体も面白いこと間違いなし。実は9月公演は満席になってしまっているのだが、10月11月にも同内容での公演を予定しているとのこと。

「ストレートプレイ枠」は新国立劇場『ガラスの動物園』。フランスの国立オデオン劇場制作のプロダクションが21年秋の招聘延期を経て待望の来日。世界的演出家イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出&フランスを代表する俳優イザベル・ユペール出演で古典戯曲の上演としては最高レベルのものが観られるはず。

山﨑健太
批評家・ドラマトゥルク。東京芸術祭の一環としてアジアのアーティストとの共同制作のパフォーマンス試作発表『Education (in your language)』を上演します。10/7〜10/9@東京芸術劇場アトリエでお待ちしてます。
Twitter: @yamakenta

ライター・古内かほの優先順位高め!

2020年に惜しくも中止となってしまった『へアスプレー』が復活上演!映画でご存じの方も多い作品だと思いますが、ヒロインのトレイシーを渡辺直美さんが演じる、という時点で勝算はあったも同然、という期待しか持ち合わせておりません。サクセス・コメディでありながら、人種・体型・性別の差別問題も提起する本作。ミュージカル好きを公言している渡辺さんのパワフルなパフォーマンスをはじめ、ダンスに音楽にと見応えたっぷりなはず。

『COLOR』は、草木染作家・坪倉優介さんの実体験をベースにつくられたオリジナルの新作ミュージカル。キャストの皆さまに取材させていただき、お話を聞けば聞くほど「一体どんな作品になるのだろう?劇場で見届けたい!」という気持ちに。『チック』や『ロボット・イン・ザ・ガーデン』で魅了された小山ゆうなさんが演出、というのもたのしみです。少人数、小劇場で上演するからこその濃密さが味わえそうな予感がしています。

メインビジュアルを見たときに「わー、なんか観に行かないといけない気がする……!」と衝撃を受けたのが『女の友情と筋肉 THE MUSICAL』。とにかくなんだか筋肉がすごそう。そして「どんな役でも演じられるだろうな」と観る者に思わせる技量を持った福田悠太(ふぉ~ゆ~)さんのマッスル女子も、きっといい仕上がりになっているのでは。

ストレートプレイの注目作は、作品向田邦子原作の『阿修羅のごとく』。四姉妹役に小泉今日子さん、小林聡美さん、安藤玉恵さん、夏帆さん、演出が木野花さんという座組で上演なんて、贅沢すぎるしもう絶対にいいに決まってる!と、観る前から期待値MAXでたのしみにしている演目です。『血の婚礼』も魅力的な座組に惹かれますが、「今、この作品を上演するのはかなり挑戦的だし難しそうだけれど、だからこそどう魅せるのか気になる…!」という意味でも、ぜひ劇場で確かめてみたいです。

9月、たくさんの舞台が無事に千穐楽を迎えられることを祈っています!

古内かほ
ライター。観劇の入り口は小劇場から。近年はミュージカルと宝塚歌劇団を中心に観劇しています。今年はミュージカルのZINEを制作してみたいと思っています。
Twitter:@kahonfuu

演劇ジャーナリスト・徳永京子の優先順位高め!

 さすが芸術の秋、上演本数が多くて絞りに絞って9本になってしまいました。文章もボリューミー、恐縮です。

 東京芸術劇場プレイハウスでの公演が2ステで中止になってしまったマームとジプシー『cocoon』。東京の仇を与野本町で討つ気持ち、否、埼玉公演があることに感謝して、さい芸に向かいます。かつてなら「あの繊細な作品を大劇場で?」と心配になったけれど、3演目となる今回は大きな会場で上演されることが楽しみ。なぜなら、本来の再々演予定だった2020年の公演準備中、作・演出の藤田貴大が「役の年齢と俳優の年齢が離れることにこだわらない」と話していて、この作品が“生々しい衝撃”から“生々しさを持ち続ける普遍”へと変化しているのだな、と感じたから。彩の国さいたま芸術劇場の大ホールを繊細で満たす強度に期待している。

 期待と同時に「どうやってあれを演劇にするの?」という心配が同時に浮かんだ舞台版『阿修羅のごとく』。改めてNHKのドラマを観たら、向田邦子のせりふは“刺さる”というより、言った本人と言われた相手(とそれを観ている視聴者を)“宙ぶらりん状態”にするような艶かしさがあると発見。しかも和田勉の演出は、玄関に並んだ靴(草履、パンプス、ローファー、ブーツ)でさり気なく四人姉妹の個性を出したりする映像ならではの小技が効いていて、強敵ぶりに心配も増したのだけれど、演出の木野花にインタビューする機会があり、そんな心配は吹き飛んだ。全体を貫くキーワードは“相撲”。詳しくは公演パンフレットのインタビューを読んでほしいのだけれど、このコンセプトにあのキャストが掛け算されたらと思うと、今は期待しかない。

 『cocoon』と同じくコロナによる東京公演中止に泣いた『気づかいルーシー』も、パルテノン多摩で上演されることに大感謝。岸井ゆきのが演じるルーシー、栗原類が演じる王子さま、この目に焼き付けたい。

 昨年の夏、概念ではなく実際の劇団員の人生のあり方として “日常と演劇を両立させる”をコンセプトに『Part of it all』で活動を再開した中野成樹+フランケンズが、20年かけて『ハムレット』を上演していくという『EP1(ゆめみたい)』。戯曲から上演への変容がひと筋縄では行かない、でも観終わってみれば納得しかないナカフラだけれども、20年後にシリーズを全部観終わったら、誰もがきっと「この20年、夢みたいだった」と言うのは約束されている。

 フランスを拠点に活動しながら、近年は市原佐都子作品で、知性に裏打ちされた野性味を発揮している俳優・竹中香子と、映画監督、俳優として刺激的な活動をしている太田信吾のユニット、HydroBlastの『最後の芸者たち』が東京で観られるとは思っていなかった。実際にふたりが城崎温泉で芸者となってリサーチして創作した作品と聞けば、どうしたってこの目で確かめたくなる。

 どんな話かはまったくわからないのだけれど、コトリ会議ファンなので、1年ぶりの新作『全部あったかいものは』は無条件に。「新作をつくったらツアーをする」を個性にしてきたコトリが、前作『スーパーポチ』から「脚本は山本正典が書いて演出はみんなで」というスタイルも継続していて、それも彼らの個性になっていきそう。今回は東京と豊岡をツアーのあと、大阪で1日だけ「ただいま、そして行ってきます試演会」と銘打ち、美術や照明や音響の無いシンプルな上演をするそうで、いろいろと考えているなぁと感心もするし、関心も湧く。

 プッチーニのオペラ『蝶々夫人』を、人種やジェンダーを反転させて描くという、ノイマルクト劇場&市原佐都子/Q 『Madama Butterfly』は、間違いなく市原のキャリアの重要作のひとつになるはずで、場所はロームシアター京都(豊岡演劇祭でも上演)と東京からは少し遠いけれど、観ておかなければの血が騒ぐ。

 前回公演を観てようやく、しあわせ学級崩壊の「EDMに乗せて俳優がマイクでせりふを語る」スタイルが理解でき、そこに必要な技術やそこにしか生まれない快感を実感することが出来た。音楽に乗せて俳優がせりふを喋る、それのどこが特別なのかわからなかったのだが、俳優にものすごく緻密な構成力とタイム感が必要な作業で、通常の朗読とはまったく違うものだった。近いのは、東京事変の『能動的三分間』がライブでぴったり3分で終わるスリルと快感か。『リーディング短編集#2』は、気鋭の劇作家が近代文学作品からインスパイアされたモノローグ短編を書き下ろすシリーズで、今回は細川洋平、松森モヘー、綾門優季、池田亮という魅力的なセレクション。

 名取事務所『別役実メモリアル3部作』は、『やってきたゴドー』『ああ、それなのに、それなのに』『病気』の3作を10日間で一挙に上演する企画。ひとりの劇作家の作品を短期間に連続して観る体験はめったに出来ないし、かつ、気付くことがとても多い貴重な機会になるはず。名取事務所が選ぶ演出家と俳優は、奇をてらわないが、新劇のアップデートが意識されていると感じる。学生1,500円、高校生以下500円などの各種割引もあるが、一般向け3作セット券が10,000円はなかなかお得ではないかと思う。

徳永京子
ひとつの作品についてだらだら考えるのは悪くないと最近は思っていて、上演期間が終わった公演でも感想をつぶやくことに前向きです。
Twitter:@k_tokunaga

ローチケ演劇部_白の優先順位高め!

まだまだ残暑厳しいですね。今月のわたしの優先順位高め公演は、東葛スポーツ『パチンコ(上)』。前回の『保健所番号13221』で初めて観た東葛スポーツなんですが、ちょっと演劇観が揺さぶられるくらい面白くって、かっこよくって。観終わった後「あ、ワシはこういうのが好きだったんだ」と気づかさせるという感覚でした。こりゃずっと追いかけないといけない、と思ってます。チケットは確保済み。楽しみ。

そしてもう一つは、作風は真逆な、た組『ドードーが落下する』。加藤さんの描く世界は、心臓をグワシと掴まれる感覚になり、気づけばその物語の中にどんどん引き込まれていきます。楽しみ。

あとは、東京で観られなかったマームとジプシー『cocoon』、お久しぶりです快快『コーリングユー』も観ます。楽しみ。