相性抜群の天海&古田で“男と女の愛憎劇”を
東京・豊洲に誕生したIHIステージアラウンド東京で現在も上演中の劇団☆新感線『髑髏城の七人』。その“Season花・鳥・風・月”に続けて、このロングラン企画の締め“Season極”として上演されるのが『修羅天魔』だ。これは『髑髏城~』の世界観、登場人物を活かしつつも“完全新作”の“大人の男と女の愛憎劇”として中島かずきが書き下ろしたもの。演出はもちろん、引き続き新感線主宰のいのうえひでのりが手がける。
“織田信長に愛された凄腕のスナイパー”で“渡り遊女”という新設定の主人公〈極楽太夫〉を演じるのは新感線に4回目の出演となる天海祐希。そして信長とある繋がりがあり、関東の一大勢力“髑髏党”党首として君臨している〈第六天魔王〉には劇団の看板俳優・古田新太が扮する。長きにわたる公演のトリを務めるわけだが「もう髑髏城には飽きてるから」と言い放ちニヤリとする古田に合わせるように、天海も「最初に聞いたのが何年も前で、その時はこんな大きな企画の最終作になるとは思っていなくて。ただ生誕半世紀公演をやらなきゃねーと言われて喜んでいたら、こんなおそろしいことになりました」と笑う。既に“Season花”〈贋鉄斎〉役でこの新劇場を経験している古田からだけでなく、さまざまな情報が天海の耳には入っているらしい。
天海「みんな脅してくる(笑)。特にお客様から見えないところでの移動量がすごいとかで」
古田「出トチったら最後。ゲネプロの時、間違えてセットの真反対に行ってしまい、150mくらいダッシュしましたからね」
それを聞き「こわいこわい!」と苦笑しつつも「だけど本番では古田さんは大きな失敗、しないものね」と言う天海、全幅の信頼を古田においている様子だ。古田にとっては過去に何度も演じてきた『髑髏城~』だが、これまでの主人公〈捨之介〉が今回登場しないこともあって、多少は新鮮な気持ちで臨めそうだともいう。
古田「最近は(森山)未來や成河がエキセントリックな天魔王を演じていて。でも、今のところ自分の解釈としてはやっぱり天魔王はこれまで同様クールなイメージでやるつもりですけどね」
共演陣には新感線、いのうえ演出作品に馴染みのある面々が顔を揃える。「(三宅)弘城と(梶原)善と(山本)亨さんと、古くから新感線に出ている友達みたいな人たちが多いですから」という古田の言葉に、天海も深く頷く。「福士(誠治)くん、竜星(涼)くんとはドラマでご一緒したことがありますが舞台では初共演で、とても楽しみです。何よりもふるちん先輩(笑)が横にいてくれるだけでホッとします。本人はそんなに気にしていないんでしょうけど、新感線の看板を背負うってすごいプレッシャーで。『蒼の乱』の時、私、号泣しようかと思ったくらい(笑)。宝塚のトップになった初日に『こんな大変なことをあの方たちは毎日やっていたのか』と、すべてのトップスターさんを尊敬したのと同じ感覚です。だけど今回は古田さんが一緒に立ってくれるので、安心感がものすごくあります」と絶賛しきりの天海だが、当の古田は相変わらず「オイラはキャパ100人の時代からセンターに立っているからね。それが2000人でも別に変わらないんで」と余裕綽々。
新たな流れ、解釈で書き下ろした中島脚本がどう展開するかも楽しみだが、この観客席が回転する新劇場でさまざまなアイデアを出し続けてきたいのうえ演出の進化も見逃せない。「中島さんもいのうえさんも、出る方たちに愛情を持って各自に見せ場を作ってくださいますからね。いのうえさんは『アイデアまだ出るかなあ?』なんておっしゃっていましたけど、私たちにはそうそう無茶は言わないと思うの。事前に『本当に、お願いしますよ…!』と念押ししてありますしね」と微笑む天海に「この二人なら、できないことはできませんってきちんと言えるから大丈夫」と、古田。
髑髏城の歴史に新たな1ページを刻むこの公演。二人の士気も高まっている。
天海「IHIステージアラウンド東京という劇場はやっぱりすごいので、ここの舞台でナマで新感線に触れてみてほしいです。舞台を観てくださるお客様ひとりひとりが、その日の舞台を一緒に作る仲間でもあります。ぜひ私たちと一緒に、この舞台を作っていただきたいです!」
古田「チケットは決して安くはないですが、観て損するようなものは絶対に作らないつもりなので。“からあげクン”と同じくらいに(笑)“美味しい”作品になるはずですから、ぜひ劇場まで観に来てください」
インタビュー・文/田中里津子
Photo/村上宗一郎
※構成/月刊ローチケ編集部 1月15日号より転載
掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
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【プロフィール】
古田新太
■フルタ アラタ ’65年、兵庫県出身。’84年『宇宙防衛軍ヒデマロ』で劇団☆新感線に参加、以降看板俳優に
天海祐希
■アマミ ユウキ ’67年、東京都出身。宝塚歌劇団月組のトップスターを経て、現在は映