“今月の”優先順位高めです【2022年11 月号】

2022.11.01

今年も残すところあと2ヶ月となりました。そろそろ「今年何が良かったかなー」なんて振り返りつつある時期ではありますが、まだまだ新しい出会いを求めて劇場に行きたいと思います。めっきり寒くなってきましたので、防寒のことも考えながら、今月の「優先順位高めです」です。
※まだまだ公演直前に中止になったりするニュースが多々流れてきます。上演の実施可否はご来場前に公式HP、SNS等でご確認をお願いいたします。

俳優・田代明の優先順位高め!

先月初めてNYのブロードウェイを観てきた田代明です!観劇欲増し増しです!

ミュージカル『ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~』来ました。演者人数少なめ韓国ミュージカル。この手の作品大好きです。主演の中村倫也さんと木下晴香さんといえば日本語版のアラジンとジャスミン。時を変え人を変え、今度は舞台上でベートーベンの人生と音楽を紡ぐみたいです。音楽家にとって大切な「聴力」を失うこととなるベートーベン。その生涯を、マリーという架空の女性との交流を軸に、史実とフィクションを織り交ぜて上演します。中村倫也さんと演出・河原雅彦さんの7年ぶりのタッグ、楽しみです!

2022年劇団☆新感線42周年秋興行 SHINKANSEN☆RX『薔薇とサムライ2-海賊女王の帰還-』地方公演を経て新橋演舞場にアンヌ達が凱旋します。劇団☆新感線さんの中で大好きなシリーズ五右衛門ロックの!最も大好きな薔薇とサムライの!2!!めちゃくちゃ楽しみです。天海祐希さんの美しさとかっこよさと人間的な魅力を存分に楽しめるのがアンヌだと思ってます。あと、私の大好きなシャルル(浦井健治さん)は出ないけど、弟役として神尾楓珠さんが出演されるらしい。兄あれで、弟どんな性格なんだろ。新幹線さんのド派手な光と生バンドの音に包まれて、明日の活力もらいに行きましょう。

だめだ、まだまだある…KERA・MAP #010『しびれ雲』『夏の砂の上』ミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』舞台『ジパング!』シス・カンパニー『ショウ・マスト・ゴー・オン』どれも気になってます!

観劇欲大爆発!!

田代明
女優・歌手
北海道札幌市出身。東京藝術大学声楽科卒業。演劇、ミュージカル等、舞台を中心に幅広く活動中。
Twitter:@akkarindays

俳優・ 東野良平の優先順位高め!

木枯らし1号が吹きすさび、襲い来る寒波にどのタイミングで切り札のコートをぶつけるか吟味しております。
こたつに潜りながら、待ち遠しい11月の舞台はこちら!

ジョンソン&ジャクソン「どうやらビターソウル」
ブルー&スカイさんと大倉孝二さんによる4年ぶりの新作公演はザ・スズナリ!
“役にたたない演劇”って最高の響き。実際、本当にまったく人生に必要ないです。ただ、虜になるほど面白い。徹頭徹尾意味がわからないまま、どうしようもない笑いに溺れるのがジョンソン&ジャクソン。
前回公演『ニューレッスン』で初観劇し、あまりの意味のなさに戦慄しました。内容は何も覚えてません。気づけば小一時間ぼーっと渋谷の交差点を眺めてました。
あ、今、池谷のぶえさんが書き割りの巨大な熊の尻に手を突っ込んでたなぁ、って思い出しました。思い出してもこれです。役に立ちません。つまり、最高です。

KAAT×城山羊の会『温暖化の秋 -hot autumn-』
初観劇は2018年ザ・スズナリでの『埋める女』。妖しく奇妙な不条理に心奪われて以来すべての公演を堪能していますが、今回満を持してのKAAT進出。期待が最高潮に膨らんでいます。
そして、なんと言ってもシソンヌじろうさんの出演!想像するだけでワクワクが止まりません。これこそ絶対ハマるキャスティングだと唸りました。岩谷健司さん、岡部たかしさんとの絡みが楽しみなのは僕だけじゃないはず…!
余談ですが、前回公演『ワクチンの夜』で父役の岩谷さんが、情事を終えたままの姿でリビングに現れるシーン、そのあまりにガチな輪郭を目の当たりにして、生で観劇する喜びに打ち震えたのですが誰にも共感してもらえません。誰か同じ人いませんか?

『ツダマンの世界』
松尾さん2年ぶりの新作は、昭和初期から戦後を舞台に、小説家ツダマンこと津田万治を取り巻く愛憎劇を描く”狂気のメロドラマ”。
「もともと阿部を主人公に新作を書きたいという思いが常々あった」という松尾さんが、井伏鱒二と太宰治の師弟関係に着想を得て、師匠であるツダマンに阿部サダヲさん、弟子の長谷川葉蔵に間宮祥太朗さんを据えた本作。
つかみどころがなく「不気味な空洞のような」ツダマンはまさに「死刑にいたる病」や「空白を満たしなさい」で圧倒的な怪演を見せた阿部サダヲさんの真骨頂となりそうです。
今回、松尾さんが劇中音楽全編の作曲も手掛けるとのことで、作・演出のみならず劇場空間を包む音までも松尾さんの世界観に染まるのが楽しみでなりません。
同じく11月に上演されるKERAさんのKERA・MAP #010『しびれ雲』も奇しくも昭和10年前後が舞台とのことで、ここにきてお二人が描く「時代」というものにも興味がそそられます。

コンプソンズ#10『われらの狂気を生き延びる道を教えてください』
こちら、僕も出演させて頂くこととなり、ただ今稽古の真っ只中です!
1年7ヶ月ぶりに主宰の金子鈴幸君が書き下ろす新作本公演。コンプソンズの大きな魅力のひとつは金子君の「今」を観れるということ。
彼の2022年11月現在の頭の中(社会やカルチャー、ジェンダーへの興味であり・プライベートな生活のあれこれであり・世界との繋がりである)を覗く演劇体験。
サブカルチャーの速射砲を直感的に楽しむもよし、その着弾点を論理的に読み解くもよし。稽古場で僕自身が実感しています。楽しいですよ、これ。
コンプソンズの変遷を止めない「今」をぜひ浅草九劇でご堪能ください!

東野良平
俳優。劇団「地蔵中毒」所属。次回出演→記事中のコンプソンズ公演は11/10(木)〜20(日)に浅草九劇にて上演。12月は劇団「地蔵中毒」無教訓意味なし演劇vol.16「つちふまず返却観音2022〜テトラポッドの着払い〜」12/14(水)〜18(日)@ザ・スズナリ
Twitter:@lycoris1210

ライター・古内かほの優先順位高め!

有名なヒット映画『天使にラブ・ソングを…』をミュージカル化した『天使にラブ・ソングを ~シスター・アクト~』は今秋ぜひおすすめしたい一作。日本版の上演は今回で4度目になる人気作です。主人公であるクラブ歌手のデロリスの天真爛漫なキャラクターとハートのあたたかさ、デロリスが歌の特訓をすることになる、個性豊かな修道女たちの弾ける魅力に虜になること間違いなし! 彼女たちのエネルギーとパワーに勇気付けられ、「なんだか、なんでもできそうな気がする!」と気分も上がるし、描かれるシスターフッドにほろりとさせられもする。アラン・メンケンのノリのいい楽曲も最高。一体感を味わえるカーテンコールの時間もぜひ思いっき楽しんでほしいです。

もう一本気になるミュージカルは、『東京ラブストーリー』。30年前の人気ドラマがミュージカルになってどんなふうに描かれるのか、予測できないぶん興味が湧きます。「東京」という街で交差する人間模様、ジェイソン・ハウランドによる全編書き下ろしの楽曲を劇場でたのしみたいです。

ハロルド・ピンターの不条理劇『管理人 / THE CARETAKER』は、小川絵梨子さんの演出と魅力的なキャスト陣のトライアングルをぜひ堪能したいところ。不条理劇といえば「トラム、二人芝居」シリーズの 『建築家とアッシリア皇帝』も話題作ですね。孤島が舞台の、岡本健一さんと成河さんの競演は見応えしかなさそうですし、演出の生田みゆきさんの新たな才能にも注目したいです。そして前作を観て心震えた中林舞さんのソロ企画の第二弾『ゴーストの友人』も期待の演目。FAIFAIの北川陽子さんの脚本と身ひとつで魅せる中林さんのパフォーマンスが今からたのしみです!

古内かほ
ライター。観劇の入り口は小劇場から。近年はミュージカルと宝塚歌劇団を中心に観劇しています。今年はミュージカルのZINEを制作してみたいと思っています。
Twitter:@kahonfuu

ライター・中川實穗の優先順位高め!

11月。優先順位の高い作品が目白押しで長文になってしまいました。よろしくお願いします。
「もうわかった」と言われるくらいここに書いてますが、何度でも書きます、梅棒。15th “RE”PLAY『シン・クロス ジンジャー ハリケーン』は、7年前の第4回公演の再演、メンバーだけの公演です。今回はタイトルに加えられた『シン』がポイントなんだろうなと思っています。取材で聞いた話によると、初演の頃の梅棒は「面白さ第一」でパワーで貫いていたそうです。いまの梅棒はお話としての面白さや深みもある作品をつくっているので、そこのところがどうなるのか期待してます。

ウキウキしているのは、KAAT×城山羊の会『温暖化の秋 -hot autumn-』。「城山羊の会」山内ケンジさんの新作書き下ろしで、キャスト(趣里、橋本淳、岡部たかし、岩谷健司、東野絢香、笠島智、じろう(シソンヌ))も魅力的。「城山羊の会」の作品をKAATのような大きなところで観るのも楽しみですし、KAATのwebサイトでは「失恋の話」と山内さんのコメントに書かれていましたが、最近読んだ山内さんのインタビュー記事で「そんなこと書いたっけ」とおっしゃっていたので、もはやなにもわかりませんがとにかく楽しみです。

ペヤンヌマキさんによる 第8回ブス会*『The VOICE』 。わたしは、ペヤンヌさんのツイッターで杉並区の都市計画道路の問題が起きていることを知り、その中で、住民の方々の思いや、杉並区長の選挙にまつわる出来事など、さまざまな(ときに驚くような)ことを知っていきました。社会や政治の話って無機質な印象もありますが、個人的には、社会も政治も経済も、人の気持ちで動いているのだと思います。だからこそ、この作品が気になりますし、ペヤンヌさんのつくられるものには毎度打ちのめされて劇場を出るので、どう描かれるのかとても観たいです。

KERA・MAP #010『しびれ雲』は、KERAさんの新作が楽しみなのは言わずもがなですが、出演者を見て「やったー!またKERAさんの作品に井上芳雄さんが出るー!」と喜び、先行予約を待ち構えまくっていました。KERAさんの『陥没』に出演した井上芳雄さんが好きだったのです。ともさかりえさんも『命、ギガ長スW』で素敵だったのですごく楽しみにしています。

「範宙遊泳」山本卓卓さんとダンサー北尾亘さんによる『となり街の知らない踊り子』、小川絵梨子さん演出、イッセー尾形さん・木村達成さん・入野自由さん出演の舞台『管理人/THE CARETAKER』、松尾スズキさんの書き下ろしCOCOON PRODUCTION 2022『ツダマンの世界』、岡本健一さんと成河さんの二人芝居『建築家とアッシリア皇帝』も楽しみにしています!

中川實穗
ライター。日本の戯曲が多めですが、ジャンル問わずに観ます!
Twitter:@miho_sgt

ライター・河野桃子の優先順位高め!

まず戯曲から、観劇作品を選ぶことが多い。そこに「この演出家がこんな作品を手がけるんだ!」「この俳優さんのこういう作品観てみたいな」というふうに選択肢が決まっていく。その意味でも注目したいのが、須貝英さんが書かれた『私の一ヶ月』(新国立劇場 小劇場)。劇作家育成に定評のある英国ロンドンのロイヤルコート劇場と新国立劇場の共同プログラムで、14名の35歳以下の劇作家たちが参加し、2年間をかけて創作にとりくんだ作品が、やっと上演される!練られた戯曲が、カンパニーメンバーと対話を重ねながら演出されていく稲葉賀恵さんにより、村岡希美さんや藤野涼子さんらといった出演者らとさらに練られていくでしょうから、たくさんの方の手が重なることで広がる景色が楽しみです。

もう一作。あまりに好きすぎて、上演が決まったときに「同名の別作品だったらどうしよう?!」と手が震えた、三谷幸喜さん作の『ショウ・マスト・ゴー・オン』。なんと28年ぶり再演。演劇のバックステージ&一幕もので、ご存じない方には映画『ラジオの時間』の演劇バージョンと思ってもらえるとわかりやすいかも。令和版とのことで、どうやら舞台スタッフ役に女性が増えていることが嬉しい。個人的には三谷作品マイベストです。

ほか、岡本健一さんと成河さんの二人芝居という演劇愛あふれまくるお二人が出演する『建築家とアッシリア皇帝』や、地域密着(!?)杉並区の道路問題をどっぷりとりあげ杉並区で上演する伝承スタイルの音楽劇、第8回ブス会*『The VOICE』も気になります。

河野桃子
ライター。翻訳戯曲と小劇場を中心に、ミュージカルやコンテンポラリーダンスなど「舞台」と名がつくものはなんでも観に行きます!
Twitter:@momo_com

ライター・岩村美佳の優先順位高め!

2022年もあと2ヶ月。せわしない季節がやってきます。

今月は10月に開幕した作品を観に行く機会が多いのですが、今月開幕する作品はミュージカル『東京ラブストーリー』を楽しみにしています。上演の発表があった時、「東京ラブストーリー? あの? 今ミュージカルで新作上演?」と、ハテナがいくつも浮かんだのですが、製作発表や取材を通して見えてきた世界に、興味津々です。豊かな表現力で魅せられそうな“空キャスト”、若さが眩しく新鮮な“海キャスト”、きっと違う世界が広がるのだろうと期待しつつ、両キャスト拝見しようと思います。

そして、シアタートラム二人芝居企画第二弾、『建築家とアッシリア皇帝』に超期待。
岡本健一さんと成河さんが、小劇場で二人芝居。もう企画だけで飛びついてしまいましたが、現実と非現実が混在する孤島を舞台に二人が対峙する不条理劇とのこと。初めて拝見する生田みゆきさんの演出、ビビッドで不可思議なビジュアルにも、期待をそそられています。

ほぼ同じ時期に上演されますが、おそらく両極の作品。演劇作品の幅を体感する経験になりそうです。

岩村美佳
ライター。フォトグラファー・ライター。初観劇は小学生の時に観た宝塚。ミュージカルを中心に色々と観劇しています。配信観劇も存分に楽しめるようになりました。超絶猫好き。
Twitter:@nyanyaseri

批評家・山﨑健太の優先順位高め!

気づけば冬の気配の気配の11月(秋はどこいった……?)。しかし芸術の秋はまだまだ続きます。今月も「ストレートプレイ枠」「実験的作品」「自由枠」の3本の優先順位高めをご紹介。

まずは「自由枠」で芸劇オータムセレクション『となり街の知らない踊り子』。東京芸術祭2022のプログラムの一つでもある本作は今年『バナナの花は食べられる』で岸田國士戯曲賞を受賞した山本卓卓がダンサー・俳優の北尾亘とタッグを組んだ一人芝居で、これまでにも繰り返し再演されている山本の代表作のひとつ。個人的にはこの作品で岸田賞を獲っていてもよかったと思っているくらいの傑作です。久々の再演での進化も楽しみ。

「ストレートプレイ枠」は新国立劇場『私の一ヶ月』。「劇作家の劇場」と呼ばれるロイヤルコート劇場(ロンドン)と新国立劇場がタッグを組んで2019年から2021年にかけて実施した「劇作家ワークショップ」。このWSを通して書かれた戯曲を上演するシリーズ「未来につなぐもの」の第一弾として須貝英の戯曲が稲葉賀恵の演出で上演される。劇作家や戯曲を育てる仕組みが残念ながらほとんどない日本の演劇界において、このような取り組みを新国立劇場が行なうことの意味は大きい。その成果と今後の展開にも注目したい。
同時期には同じくこのWSを通して書かれた宮崎玲奈の戯曲によるムニ『ことばにない』の公演も。こちらは「レズビアンの女性を中心とした4人の女性の物語」で今回は前編のみの上演ですが4時間半の大作とのこと。

「実験的作品枠」は円盤に乗る派extra 『MORAL』。如月小春の主宰する集団「NOISE」が1984年から1986年にかけて上演した作品をカゲヤマ気象台の演出で上演する。如月自身が「消費社会の身体」を追求したと語る戯曲の言葉は2022年現在の日本を生きる俳優たちの身体を通してどのように響くだろうか

山﨑健太
批評家・ドラマトゥルク。演出家・俳優の橋本清とともにy/nとして舞台作品も発表しています。
Twitter: @yamakenta

ローチケ演劇部_白の優先順位高め!

11月やばい。ちょっと書き出してみたら、いろいろと大変そう。

まずはやっぱり梅棒ですよね、梅棒15th “RE”PLAY『シン・クロス ジンジャー ハリケーン』。梅棒観ると毎回幸せな気持ちになります。観終わった後のお酒、おいしいです。

そして、『歌妖曲~中川大志之丞変化~』。明治座、東宝、ヴィレッヂの若手プロデューサーによる三銃士企画の第2弾。第1弾の『両国花錦闘士』楽しかったなー。今回は「リチャードⅢ世」と昭和歌謡界の掛け合わせですって、期待ですね。観劇後のお酒もおいしそうです。

玉田企画とゆうめいの合同公演「おたのしみセット」。それぞれの団体が2本ずつの短編4本という上演形式は、とても好みなので楽しみです。

大好きなKERAさんの、KERA・MAP #010『しびれ雲』に、わたしが天才だと信じて疑わないブルー&スカイさんと大倉さんのユニット、ジョンソン&ジャクソン『どうやらビターソウル』も。劇団☆新感線『薔薇とサムライ2-海賊女王の帰還-』も外せないし、『ショウ・マスト・ゴー・オン』も。

他にもあって書ききれない。
11月やばい。