写真左から) 今村圭佑、 成井豊
Mrs.fictions presents『15 Minutes Made in 本多劇場』が2月22日(水)に東京・本多劇場にて開幕する。
『15 Minutes Made(フィフティーン・ミニッツ・メイド)』とは、Mrs.fictionsが2007年の旗揚げ当初から継続的に開催しているオムニバスイベント。Mrs.fictionsを含む6つの団体がそれぞれ15分ずつの短編作品を一挙に上演することで、多様な舞台表現をより身近に、手軽に楽しんでもらいたいというコンセプトの元、これまで延べ17回開催されている。
およそ5年半ぶりの開催となる今回参加するのは、演劇集団キャラメルボックス、ブリーズアーツ、オイスターズ、ロロ、ZURULABO、Mrs.fictions。
Mrs.fictionsの今村圭佑と、前回に続いての参加となる演劇集団キャラメルボックスの成井豊に行った、【前編(イベントについて)】、【後編(今作について)】に渡るインタビューをお届けする。今回はその【前編】。
前回出演して「また声をかけてくださいね」と頼みました(成井)
――『15 Minutes Made』とはどうやって始まったイベントなのでしょうか?
今村 「2007年に始まったイベントなのですが、当時、同世代におもしろい団体がたくさんいるのに、どうもシーンとして盛り上がっていかないなという感触があって。それは、それぞれが点々としているからなのではないか、じゃあ“点”というより“面”として打ち出せないかと考えたのがきっかけです。続けていくうちに出演団体の幅が広がって、今に至ります。上演時間は、毎回6つの劇団に参加していただいているのですが、20分の芝居だと6つ並ぶと重たくてお客さんが疲れちゃうというところから15分になりました。演劇集団キャラメルボックス(以下、キャラメルボックス)さんには前回の『15 Minutes Made Anniversary』(2017年)にもご参加いただきましたが、成井さん、上演時間15分っていかがでしたか?」
成井 「まさに20分と15分の間で大きな差があるというのは、前回この企画に参加して感じたことでした。20分あれば見応えが出せるんですけど、15分でそれを出すのがすごく難しかったですね。この5分って大きいですよ。最初にできあがったときは20分になってしまったので、泣く泣くカットしました」
――そうなると、どう削るのでしょうか?
成井 「もはや20分の作品には余分な部分なんてないですから(笑)。ここは削っても伝わるかなというところを探して探して削っていく作業でしたね」
今村 「長編の作品ならその団体の魅力がしっかり出せますが、やはり15分となると、削ぎ落して削ぎ落して、『ここが見せたいんだ』を突き詰めた作品になっていくんですよね。そのぶんお客さんは、団体の見せたいものが凝縮された作品を6つ並べて観ることでの満足感が得られるのかなと思っています」
――そんな『15 Minutes Made』に再び参加することになり、成井さんはどう思われましたか?
成井 「よしきた!ですね。前回、『また声かけてくださいね』と頼みましたから。待ってました!でした」
――15分という上演時間に苦労はされたけれども、また出たいと思われたのはどうしてですか?
成井 「公演全体が非常におもしろかったんですね。その中でも一番大きかったのは、梅棒との出会いでした。梅棒のあの15分のお芝居は圧倒的におもしろかった。『こんなおもしろいことが15分でできるんだ!?』って。負けたなと思いました。もちろんほかの皆さんの作品もおもしろかった。だからまた参加したいと思いました」
今村 「そう言っていただけてとてもありがたいです。お客様にいろんな作品を観てもらうという企画ですが、出演団体にとっても、ここでの交流や出会いがあったらいいなと思っているので。それを聞けてうれしいです」
――交流という点では、その後、成井さんは『成井豊と梅棒のマリアージュ』(2020年)で梅棒と一緒に創作を行われましたね。そのときに『15 Minutes Made Anniversary』でのキャラメルボックスの作品『ラスト・フィフティーン・ミニッツ』から始まる物語を上演されていました
成井 「そうですね。そこでは15分×7本を上演しました」
今村 「それは“15分”を意識されたのですか?」
成井 「そうですよ、全部15分。7話中6話は二人芝居に統一しました。実はそこには我々の別のコンセプトがあって、なるべく2人でできる15分の作品をストックしたいという思いがあるんですね」
――どうして15分の二人芝居をストックしたいのでしょうか?
成井 「どんな場所でもできるし、稽古時間も通常の芝居よりは短くて済むからです。そのきっかけは阪神・淡路大震災(1995年)でした。私たちは被災地で、過去の上演作品のビデオ上映会をしました。本当は芝居がやりたかったけれど、私たちには被災地ですぐにやれる芝居がなかったんですね。装置も音楽も照明も必要だし、ひと月練習しなければできないし。だけどそのときに演歌歌手の方が軽トラの荷台をステージにして歌っていて、身ひとつで被災地の方の心を和ませることができることが羨ましくてね。僕らもそういう芝居を持ちたいと思っていました。それで前回、今村さんに声をかけていただいた時に『これだ』と思ったんですね。だから、路上でもできるような、装置も照明もいらないものをつくりました。今回もそのコンセプトでつくります」
今村 「僕らも出演団体の方に、『どこにでも持っていける作品になります』とお話しすることがあるんです。だからこそ自分たちの名刺代わりになるような作品を…って」
こちらからお客さんに会いにいきたい(今村)
――6団体の作品が上演されますが、間に休憩時間も入りますよね
今村 「3団体上演して、10分休憩して、3団体上演する、という流れです。上演の順番は、全ての作品が揃った段階で観やすい流れを組ませていただきます。団体には必ずカーテンコールやっていただいて、お客様に『作品を観たな』と思っていただいて、その後、転換も兼ねて1分くらい間をあけます。その間に少しだけ客電をつけて、当日パンフレットで次の団体はこういう団体なのかを確認していただける時間を設けています。各団体の作品を集中して見られる環境を作る、という事が主催としては一番やりたいことですので、作品ひとつひとつの終わりと始まりの環境は整えたいと思っています」
――15分は絶対なのですか?
今村 「それがこの企画の唯一のルールですから大事にしています。皆さん大体15分でまとめてくださいますね。さっきもお話にあったように15分にまとめるって本当に難しいですが」
――大変さの一方で、制約があるおもしろさもあるのではと想像しますが、そこはいかがですか?
成井 「もちろんですよ。ただ時代は変わったなとも思います。キャラメルボックスは1989年にハーフタイムシアター(上演時間が1時間前後の公演)を始めたのですが、最初に1時間のお芝居をやると言ったときは、劇団員からも『時間を先に決めて作品をつくるなんてナンセンスだ』と言われましたね。それで劇団を辞めた人もいますから。そんな時代でした。でも僕は時間を先に決めて作品をつくるのも当たり前だと思っています。だって絵を描くのだってキャンバスのサイズは先に決まっているわけですし、歌謡曲だって20分なんて長さはないわけで。だけど80年代の演劇人はそれを嫌っていたんですよね。時代は変わりました」
今村 「たしかに僕らがこの企画を始めた2007年頃でもまだあまりこういう短編の公演はなかったと記憶しています。ただ当時僕が思っていたのは、バンドって対バン(複数のバンドが参加するライブ)を重ねてワンマンに辿り着くじゃないですか。でも僕らはワンマンばかりやっている。これ、いいのかな?って。もっとお客さんにこちらから会いに行くようなことをしていかないと、立ちゆかないんじゃないかなと思って始めました」
――観客にとっては、観たことのないジャンルに触れることになるので、いい出会いになりますよね
今村 「そう、出会ってほしいんです。こんな団体がいるよ、こんな作品があるよ、って知ってほしいと思いますし」
――これだけ観られてチケット代が前売4500円(当日5000円/高校生以下1500円※枚数限定・要学生証)というのもうれしいです
今村 「なるべく来やすく、間口を広げたいなと思ってのチケット料金なので、そう言ってもらえるとうれしいです」
本多劇場で上演するということ
――今回、シリーズとしては初の本多劇場での上演です。タイトルにも「本多劇場」と入っていますが、どのような思いがありますか?
今村 「そこに関しては個人的な思い入れが強くて。僕が大学生でお芝居を始めた頃に、『ここに行けばおもしろいものが観られるから』と目指した場所にようやくたどり着けた、というような感覚です」
――キャラメルボックスは過去に本多劇場で一度、上演経験があるそうですね
成井 「そうですね。90年代に一度だけあります。キャラメルボックスは37年目なんですけど、基本的に新宿や池袋の劇場で上演してきたので、下北沢に思い入れはないんですよ」
今村 「(笑)」
成井 「うちのお客さんも下北沢に行く習慣がないんですね。だからって嫌っているわけじゃないですよ?(笑)」
今村 「僕は『本多劇場でキャラメルボックスを観る機会なんてなかなかないぞ、いいぞいいぞ』と思っているんですけど(笑)」
▶▶インタビューは【後編】に続く。後編では、今回の作品についてや出演団体についてお話をうかがった。
インタビュー・文/中川實穗