『それを言っちゃお終い』│音月 桂×阿久津仁愛×白樹 栞(プロデューサー)インタビュー

左から)音月 桂、阿久津仁愛

フランス・パリで7カ月以上のロングランを記録したサロメ・ルルーシュの原作を、岩切正一郎の翻訳で上演するドラマリーディング「それを言っちゃお終い」が、六本木・トリコロールシアターにて上演される。元宝塚歌劇団雪組トップスターの音月桂が全公演に出演し、2月は大谷亮介、瀬戸利樹、3月は阿久津仁愛、山口森広と組み合わせを変えて上演される。演出を務めるのは水田伸生。アコーディオン奏者の佐藤史朗が彩を添える。果たしてどのような公演となるのか、音月、阿久津の2人と、プロデューサーの白樹に話を聞いた。

――まずは今回のご出演にあたり、キャストのお2人に率直なお気持ちをお聞きしたいと思います

音月 フランスの会話劇ということで、私自身があまり経験したことがない感覚でしたので、難しいんじゃないかと不安はありました。フランスの方のライフスタイルや演劇の仕方なんかが私たち日本人とはやっぱり違うので、本来の面白さの部分を私たちが十分にお伝えできるのか、という気持ちはありましたね。原作者のサロメ・ルルーシュさんは女優さんでもあり、演出や映画監督もされている方でとても多才。私よりも年下の女性なのに、こんなに斬新なお話を描かれていることに驚きましたし、不安はありつつもそこにすごく興味がありました。なので、こうやって縁あってやらせていただけることを、すごく幸せに思っています。

阿久津 僕は2022年、舞台をほぼやっていなかったので、まずステージに立てることがすごく嬉しいです。今回に近い形だと、朗読劇は1回だけやらせていただいたことがあったんですが、オンライン上演でカメラを通してお届けするものだったので、今回のように実際にお客さんの前で本を持ちながらステージの上でお芝居するのは初めてです。なので、ちょっと緊張しているところもありますが、台本を読ませていただいたら、本当に日本にはないようなぶつかり合いが描かれていて…こんなに胸の内を素直に言い合いできることって、なかなか無いと思いました。それを言い合える関係性が素敵だと思いましたし、それをどう表現すればいいか、これからの稽古で面白くしていきたいですね。

――「それを言っちゃお終い」は、昨年のプレビュー公演を経て今回が本公演となります。プロデューサーの白樹さんは、どのような意図で今回の公演を企画されたのでしょうか?

白樹 パルコ劇場さんにとっての「ラヴ・レターズ」のように、ここ六本木トリコロールシアターにも看板となる作品があればという想いがありました。そんな時に、翻訳家の岩切正一郎先生とお話しする機会がありまして、私が「日本では『ロミオとジュリエット』や『ウエストサイド物語』みたいな古い作品ばかりを何度も上演していて…もちろん、その作品も素晴らしいけど、新しいもののなかにも素晴らしい作品が次から次にあるのに、紹介する機会がない。だから、この劇場はそういう作品を紹介できる場にしたい」ってお伝えしたんです。そしたら岩切先生も賛同してくださって、今回の作品を翻訳してくださいました。

このお話は、ケンカばっかりしている話ですか?なんて言われるんですけど、そうじゃないんです。フランスをはじめヨーロッパでは議論をするのが好きなんですね。議論をし合うお話が面白いので、ケンカにはしてほしくないんです。「あなたの言う通りよ」なんて言う相手よりも、「どうしてそんなことを言うの?あなたっておかしな人」って言う相手の方を好きなるような感覚。そこは日本人にはなかなか無いかもしれないけれど、そこを感じてほしいですね。

――そんな想いを受けての本公演ですが、キャストとしてはどんなお気持ちでしょうか?

音月 日本人ってやっぱり同調文化というか、女性は3歩下がって、という文化がかつてあったので、しみついている日本人気質から抜け出すのがなかなか難しいんですよね。それに加えて、今の不安な状況下でコミュニケーションを取ること自体が少なくなっているので、余計にそう感じます。今日、本読みをしていたら会話の中で気持ちをぶつけていくのに、タフなエネルギーが必要なんですよ。きっとフランスの方って、これを日常でやられているんですよね。

白樹 むしろ楽しんでやっているのよ。

音月 私もパリジェンヌになった気持ちでやりたいと思います(笑)。こういうことをお芝居でできることが、役者の醍醐味ですよね。普段の日常ではできそうにないことが、舞台の上でならなんだってできるようになる。正直、私も当初は「ケンカしすぎじゃない?」って感じていて、ちょっと遠慮がちになっていたんです。でもお話を聞いていると、むしろもっと言っていいんだなと思いました。もっとマインドを変えていきたいと思います。

阿久津 フランス人の考え方で僕たちが演じているのをお客さんに見てもらって、そこから何か刺激をもらっていただけるのがベストですよね。今日の読み合わせをしてみて、ちゃんとその物事について考えを出し合っていることの面白さを感じました。議論をするとなると、自分自身もその内容についてある程度理解していないといけないですし、しっかりと作っていかないと。しかも、少しずつ話がズレていくというか、そっちの話に行くの⁉みたいなところもあって。

白樹 そこから、ちゃんと“それを言っちゃお終い”なところに着地するのよね。そこが本当に面白くて。

阿久津 僕も、そこが面白いと思いますし、全力でやっていきたいですね。

――音月さんと阿久津さんは本日の本読みが初対面だとお聞きしました。お互いのファーストインプレッションは?

音月  ハスキーな声色が魅力的な方だなと思いました。

阿久津 風邪をひいているわけではなくて、いつもこうです(笑)。

音月 それに監督からのアドバイスにどんどん反応して、すごく変わっていくから、その柔軟性やエネルギーがやっぱり違うなと感じましたね。若さだけじゃなくて、吸収力がすごくあるんだろうなと思います。すごいですね。

阿久津 僕はもう、すごくリードしてくださったと思っていて、そこにちゃんと乗っかろうと思っているんですけど、なかなかうまく乗っかれなくて…。最初の1発目から、手ごたえの違いを感じました。めちゃくちゃスゴイ!って思いましたよ。

白樹 でも、(阿久津くんは)もうセリフが入っていましたよね?私、尊敬しちゃった。こんなに読み込んできてくれたんだ、って。ピンポン玉みたいにセリフが返ってきていましたよ。

阿久津 それが自然に入れるような雰囲気にしてくださったんだと思います。なんだか気持ちよかったですね。

――プロデューサーとして、白樹さんが2人に期待していることは?

白樹 この本公演が、プレ公演を経ての日本初の「それを言っちゃお終い」になるわけです。やっぱり1回目って大切じゃないですか。この作品はパリで7カ月以上のロングランを昨年から続けていて、今年からはフランス全土を回ることにそして3月からはベルギーで決定しているんです。私はこの作品を、六本木だけじゃなく、いろいろな場所で再演したいと思っていますし、その公演の数をカウントしていきたいと思っています。この先続いていく、大事な1回目にしていただきたいですね。

――その大事な1回目を主演として担うお気持ちはいかがですか?

音月 今回の作品はお話によって共演する方がいろいろ変わっていくので、年齢の設定もいろいろ変わるんです。ドラマリーディングという制限のある中で、そこを変えていくのって、すごくハードルが高いことだと思っているんですね。

白樹 でも、監督は阿久津くんとやっているときは若返ったね、って言っていましたよ。

音月 ありがとうございます。監督の言葉に身を預けていたら、とても安心できて、1人で読んでいた時の不安が少しずつなくなっていきました。

――稽古の中で着実に実感を得ているんですね。今回のお話は、議論の中で“それを言っちゃお終い”という言葉が飛び出してくる物語とのことですが、皆さんが実生活の中で“それを言っちゃお終い”と感じたことはありますか?演出家や先輩の厳しい言葉とか、言われて刺さった言葉のようなことかもしれませんが、いかがでしょうか ?

音月 ええと…どこまで言っていいのかな(笑)。いろいろな挫折もありましたね。

阿久津 僕は逆に、全然何を言われても“お終い”みたいには思わないですね。その瞬間は刺さっているかもしれないけど、すぐ忘れちゃう(笑)。

白樹 女の子から言われてドキッとするようなことは?

阿久津 「老けてるね」とか言われちゃうと、ちょっとショックかも…。

音月 ええっ!?言われないでしょ?

阿久津 なんか趣味とか好みがちょっとそういう感じなんですよ。お酒とかもウイスキーが好きとか。

白樹 渋くていいじゃない?大人の男って素敵だもの。

阿久津 でも、おじさん臭い、とか言われてしまうと、ちょっと嫌ですね…。

音月 イメージとのギャップはあるのかもしれないですね。例えば私も、エレベーターの乗り降りとかで、ちょっと「お先にどうぞ」とか軽いエスコートをしちゃったりしたときに『やっぱり男役なんだね』とか言われてしまうことがあって。

――純粋な親切心でも、様になってしまうんでしょうね

音月 確かに振り返ってみると、植え付けられちゃってるのかもしれないですね。誰かの荷物をもってあげたいとか、差し入れを持っていきたいとかで、当時男役だった私がしゃしゃり出ているのかも。抜けきれてないね、って言われてしまうと、そうなのかもな、と。でも、今回のお話では男性の役もさせていただけるので、バリバリ出していいんですよね?しっかり開花できそうです!

――楽しみにしています!最後に、公演を楽しみにしている方々にメッセージをお願いします!

阿久津 僕にとっては初めての挑戦が多いものになりそうです。そんな中でも自分自身が楽しんで、等身大でお話の中に入り込んでいけたらと思っています。そうすることで、お客さんも自然に笑っていただけたり、面白いと思ってくださるはず。本番のステージでの見え方とか、きっといろいろ変わってきて、きっと千秋楽までどんどん変化していくんじゃないかと思っています。そこを僕も楽しみにしていますし、皆さんにも楽しんでいただきたいと思います。ぜひ、観に来てください!

音月 きっと普通の朗読劇とは違うパフォーマンスになると思っています。今日の本読みの段階でも、自分の実感として今まで経験させていただいたものとは違うと感じています。お客さまにはすごくリラックスして見に来ていただきたいですね。お茶の間で見ているような気持ちで、私たちと同じ空間、同じ空気を共有していただきたいです。観劇に来たというより、同じ時間を共有しに来ちゃった、みたいな。ごく自然に笑って、何かを解放することができる作品になると思っていますので、その感覚を楽しみにお越しいただけたらと思います。

白樹 プレの時に、私はもう声を出してフッフッフ!と笑ってしまいました。フランス人はみんな声を出して笑うんです。日本人は笑いを我慢して、背中でクククと笑いますが、ぜひ我慢せずに笑っていただきたいですね。また、今回の舞台ではセットとしてビザビのラブチェアを音月さん用に使う予定です。ビザビは「見つめ合う」という意味で、S字になっているチェアなんです。愛を語らう時も見つめ合っていますし、議論をするときもお互いを見つめ合っていますからね。

以前、このチェアを舞台で使おうと思ったんですけど、その時の女優さんが「これを置いたら寝ちゃうわ」なんて言って断念したんですよ(笑)。それくらい座り心地がいいものなんです。そういうセットにも注目していただきつつ、音月さんといろいろな組み合わせで上演しますので、何度でも見に来ていただきたいです。同じ組み合わせでも、何度出ていただいてもきっと違うものになると思いますので、音月さんにも阿久津くんにも、これからも何度も出ていただきたいですね。繰り返し、今後も続けていければと思っています。

取材・文/宮崎新之