2011年にモリエール賞の最優秀コメディ賞にノミネートされた戯曲「ル・ゲィ・マリアージュ~愉快な結婚」が、東京・六本木トリコロールシアターにて上演される。フランスのシナリオライター、ジェラール・ビトンとミシェル・マンズによる作品で、翻訳を岩切正一郎、演出を横内謙介が務める。女好きでモテモテの主人公アンリが、亡き叔母の遺産を相続するべく、“今年中に結婚”を達成するために親友と偽装の同性婚をするというストーリーで、主演には今江大地、共演には富本惣昭、緒形敦、清水麻璃亜(AKB48)、岡森 諦が名を連ねた。果たしてどのようなお芝居になるのか、富本、緒形、岡森の3人と、本作のプロデューサー白樹栞の4人に話を聞いた。
――今回のお芝居はどのような経緯で企画されたのでしょうか。
白樹 シェイクスピア作品の様に繰り返し上演される名作と諷刺の利いたコメディー今回は100%後者です。実はこの作品はずっとあたためていたものですが、日本でやらないかと言われていて…。もう、読み始めたら、朝まで読み続けちゃうくらい面白かったんです。それぞれのキャラクターが目に浮かぶように生き生きしていましたし、何度再演しても面白くなる話だと思いました。キャスティングもかなりこだわりましたし、どのキャストもこの人しかいない!と思える方が揃いました。最高のキャスティングになっていると思います。
――今、稽古が進められているところかと思いますが、どんなお気持ちで臨んでいらっしゃいますか。
緒形 海外の戯曲は挑戦したい事の一つだったので、お話を頂いたときは嬉しかったです。コメディ調だけど現代の日本の社会にも重なり合うような問題が描かれていて、シリアスすぎず、ユーモアがたっぷりで、とても面白い台本でした。次々といろいろなことが起こって、すれ違いがどんどんとんでもない方向に進んでいく物語に見入ってしまいました。毎日とても楽しく稽古に励んでいます。稽古初日から横内さんには細かいセリフの言い回しや芝居を指摘して下さり、その上で、次はこう動いてみよう、こういうニュアンスでセリフを言ってみようと遊び心を持って稽古に臨んでいます。
富本 嬉しさとともにプレッシャーも感じていました。まず、今回のような世界の台本に向き合ったことが無かったんです。今は稽古の中で、役に対しての向き合い方を1つ1つ丁寧にやっているところです。毎日稽古をしていく中で、どんどん新しいものが生まれてくるんですよ。台本を読んだときにもそういう感覚はあったのですが、日々、変わって見える作品になっていくような感覚がありますね。常に新鮮さがあるように思います。
岡森 翻訳もののお芝居をやるのが、すごく久しぶりで。今回は、フランス人の役だから「フランス人だよ」ってひとつ“嘘”をついているんだよね。フランス人っていうフィルタがかかっているというか。日本人ならば、それっておかしくない?っていうことも、フランス人なんだから、ってう理由付けがあることで、リアルに嘘をつくことができるんです。より自由に遊べるので、こういうところが翻訳ものの楽しさのひとつだったな、と実感しています。これが僕のフランス人だよ、というものを、もっともっと遊んで出していきたいですね。
――演出は横内謙介さんですが、岡森さんは高校生のころからのお付き合いだそうですね
岡森 40年もやっていますから、今さら彼とやるのが楽しみとかはないですけど(笑)。でも、信頼はしていますよ。フランスのコメディで、うまく洒落になっているのかわからないこともいっぱいあるけど、そこは本当に間違いのない演出をやってくれるからね。彼の作演じゃなく、演出だけを受けるのも久しぶり。それこそ、シェイクスピアとかをやった時以来?だから、何十年ぶりになりますね。
――稽古中に緒形さんや富本さんが感じた、横内さんらしさを感じる演出などはありましたか?
緒形 本当に細かく、的確に演出していただいており、ひとつひとつに妥協がないので、自分にとってもいい経験になっています。あと、とても進むのが早いですね。なんだかあっという間に通し稽古が目の前になっています。横内さんも、僕たちのことを信頼してくれているからこそ、このスピード感でやってくださっている。そういうwin-winな関係になれていることが嬉しいです。稽古中は集中しており、稽古終わりは心底疲れていて、お腹も減るんですよ。この心地よい疲労感も、とても好きです。
富本 これまで自分は、スポーツ系とか動きがたくさんある作品が多かったのですが、この作品その場でどう表現するか、みたいなところが多いですね。表情のことや仕草を横内さんがすごく見てくださっていると感じます。前に向くときはしっかり前を向く、コミュニケーションもしっかりとって会話のキャッチボールをする、とか動作のメリハリも学びがあって、とても楽しく感じています。
――それぞれの役どころについて、今どのようにとらえているのか教えてください。
緒形 僕は弁護士のノルベール役で、主人公のアンリに親友との偽装結婚を薦める役どころです。頭の回転が速くて、自分が友達にどういうメリットがあるのかを提案したり、説明したりして、物語をどんどんと運んでいきます。そういう分岐点になるようなキャラクターなので、うまく立ち回りたいと思いますね。知的でエレガントなんですけど、後半にかけてだんだんと変わっていくので、そこのギャップはしっかりと見せたいです。
富本 ドドは主人公のアンリと偽装結婚する役どころなんですが、やっぱりちょっと変わっていますね。結婚だとかには興味が無くて、パソコンやゲームなど自分の中にある趣味を強く持っているので、周囲に左右されないんです。意外と自分を持っているんですよね。それが、親友と結婚していくうち、どんどん自分の世界以外の楽しさを知っていきます。ドドのちょっと変わっている部分は残しつつも、変化していく部分をぜひ注目してご覧いただきたいですね。
岡森 パパのエドモンは、敬虔なキリスト教徒で、とにかく厳格な、かわいいお父さんです。でも、やっぱり深い悩みを抱えているんですよ。僕は、このお芝居で一番救われるのは、このお父さんだと思っています。一番ハッピーになれるんですね。そこはぜひ、楽しみにしていただきたいと思います。すごく大きく価値観が変わる役だけど、難しいとかはなくて、もう相手役が頼れるから。今江くんもすごく上手いし、彼らを見ていたら自分が作っていかなくても自然と感情が変わってくる。すごく救われていますね。
白樹 キャスティングに関しては、パパのエドモン含めすべて私が決めさせて頂きました。ドドのイメージはかなりこだわっていて、本当に変わってる面白い役なので、カッコよかったり、かわいかったりすればできる役じゃないんです。かといって、芝居が上手いだけでもダメ。そのすべてが揃っていないといけないから、本当に数えきれないほど沢山の方々に会わせて頂きました会いました。主人公のアンリ(今江大地)も、もう当たり前にハンサムで賢くてモテる雰囲気の人をキャスティングできたし、ノルベールも本当はもう少し年齢が高い設定なんだけど、彼しかいないと思える人を選ぶことができました。演出の横内さんには「学芸会は嫌だからね」なんて言われていたんだけど、最高の人を見つけた!って言って、彼らを見せたら、笑顔で大きくうなずいていました。「今度から、僕のお芝居もキャスティングして」なんて言って頂けるくらい、納得のいくキャスティングができました。
――今回の物語に触れたことで、自分の中での価値観の変化や気づきはありましたか?
富本 お話の中で出てくるの食の違いとか、お酒で悩んでいたりすることとか、そういう文化や習慣の違いは感じることができたかなと思います。フランスのジョークも日本の感覚だと分からないものもあるので、そこはちょっと理解するのに時間がかかったかも知れません。フランスっぽさも残しつつ、日本っぽさも出して…っていう、バランスが取れたところを見つけられてるんじゃないかと思ってます。
緒形 今回のお話を読んで思ったのは、みなが自分の欲望に対してとても貪欲で素直。日本人の場合は、どちらかというと自分の本心だったり欲望だったりを隠しがちだと思うのですが、このお話では、欲望に対して率直なんです。登場人物全員のそれぞれの欲や目的がぶつかり合って成り立っている物語でもあるので、そこが良い意味で日本ぽくなくて面白い所でもあるんですけどね。
白樹 やっぱり日本人は欲望や生活感を抑えるような我慢するところがあるけれど、フランス人はきちんと自分の意見を出すし、自分がしたいことをちゃんと要求する。それは親子でもそうなんですね。パパが言ったから我慢しなきゃとか、パパの前ではハイって言っておこう、みたいなことはないんです。そういう国の違いがこの本には結構出ていると思いますね。フランスでは、親子ほど年の離れた親友とか、パートナーシップについてもすごくいろいろありますから。
――多様な関係性がこの物語からも見て取れるかもしれませんね。今回は主演の今江大地さんや、紅一点の清水麻璃亜さんとのご共演となりますが、お2人の印象はいかがですか?
富本 大地くんは本当に明るくて、結構、現場の雰囲気を作ってくれている感じがします。そして、とてもアンリらしいです(笑)。
緒形 大地君は周りのことをよく見ていて、細かい気配りができる方です。麻璃亜ちゃんは、唯一の女性キャストですが、女性の強さを感じられるというか。彼女がいると、なんか引き締まるんですよ。そういうところを引き受けてくれているので、とても感謝しています。
白樹 彼女はAKB48の中でも、お芝居に進みたいという意思表示をしっかりとしている子。迷いなく決めさせていただいた女優さんでした。
岡森 麻璃亜ちゃん、なかなか登場しないんですよね。ずっと男ばかりでお話を持っていくから、本当に彼女が登場した時はホッとします(笑)。今江くんは、本当に現場のペースメーカーで、やっぱり主役ですから。どんどん僕たちを引っ張ってくれるので、乗っかってりゃ大丈夫だな、と思わせてくれます。
白樹 いろいろなところで主役をやっていらっしゃるので、そのあたりは安心していますし、表情もとってもいいんですよ。目で語っているような感じで!
――本当に魅力的なキャストが集結した作品になっているんですね。最後に、公演を楽しみにしていらっしゃる皆さんにメッセージをお願いします。
岡森 本当に、楽しんでいただけるお芝居だと思っています。ぜひ、お越しください! もう、それだけですね。
富本 来ていただいて、楽しかったな、見てよかったな、今日はいい日になったな、という気持ちになっていただける作品になっていると思いますので、ぜひご来場お待ちしています。
緒形 誰もが幸せになる舞台だと思っています。この作品を見てよかった!、面白かった!と素直に言っていただける作品になるようにキャスト皆で力を合わせて作り上げていくので、ぜひ多くの人にご覧いただきたいと思います。
白樹 何度でも再演できる脚本だと思っていて、そこは横内さんも同じことを言って下さいました。この劇場がある限り、再演していきたいと思っているし、難しく考える芝居じゃないんだけど、楽しくウキウキと帰っていただけると思います。思いっきり声を出して笑って、気持ちよくなっていただければ! そして、ありがたいことに追加公演が決まりました。お席が取れない公演も出てきておりますので、ぜひ追加のお日にちでも鑑賞をご検討いただければと思います。どのキャラクターも個性的で、また会いたくなる人々ばかりなので、ぜひ何度もお越しくださったら嬉しいですし、平日は毎日の様にアフター・トークやフォト・セッションそしてスペシャルカーテンコールなどなどプレゼント付き!ぜひお誘いあわせていらしてくださいませ。
取材・文/宮崎新之
【ル・ゲイ・マリアージュ ー愉快な結婚ー】
ついに アフターイベント開催決定!!
公演終了後に休憩挟まず、ご来場いただいたお客様にイベントを開催いたします。
ぜひこの機会に六本木トリコロールシアターへお越しくださいませ!
●4月4日(火)19:00 清水麻璃亜×白樹栞プロデューサー「女性ふたりだけのアフター・トーク」
●4月6日(木)19:00 今江大地×富本惣昭 ふたりのスペシャル・カーテンコール!
●4月7日(金)19:00 今江大地×清水麻璃亜×岡森諦スペシャル・カーテンコール
●4月11日(火)19:00 横内謙介×今江大地「演出家横内謙介氏と今江大地氏が語るアフター・トーク」
●4月13日(木)19:00 富本惣昭×清水麻璃亜×緒形敦のアフター・トーク
●4月15日(土)17:00 今江大地×富本惣昭×緒形敦「親友3人揃いぶみ!」スペシャルカーテンコール
各イベントは、公演終了後約15分の予定です。