『コンボ・イ・ランド』今村ねずみ・瀬下尚人・本⽥礼⽣インタビュー

1986年に今村ねずみが立ち上げたスーパーエンターテインメントバラエティパフォーマンス集団「THE CONVOY SHOW」は、主宰の今村自らが、作・構成・演出を手掛け、出演もしている。“全員が主役で、全員が脇役”として約2時間ノンストップで展開していくエンターテインメントショーは、昭和・平成・令和と時代が変われど、世代を超えて多くの人たちを惹きつけてきた。6月開催の『コンボ・イ・ランド』は、2021年に結成35周年記念公演として上映された演目で、チケットはSOLD OUT。再演を望む声が多く、その声に応えて東京建物 Brillia HALLで待望の再演が決定した。今村ねずみ、創設時からのメンバー瀬下尚人、これまでのTHE CONVOY SHOWに参加している若手メンバーの本⽥礼⽣の3名が、作品への想いやお互いについて熱く語った。

 

―—『コンボ・イ・ランド』はどんな作品でしょうか。

今村「僕らオリジナルメンバーと若者がコンボイショウをやる作品です。これまでの『asiapan』『星屑バンプ』『ONE!』『ATOM』など、若者とコラボしたコンボイショウを、ぎゅっと一つにした集大成のような、いろいろな作品を詰め込みました」

 

―—オムニバスのようなイメージですか?

今村「オムニバスに見えないようにはしています。コンボイショウは、今の僕たちが舞台に存在するので、フィクションとノンフィクションを行ったり来たりしているような形で、自分たちの生き様をコンボイショウにしているようなものなんです。それが、醸し出されるような場面がたくさんあるので、若者と作品を作り上げているところや、化学変化を起こしたところなどが散りばめられて、『コンボ・イ・ランド』という作品になっています。今までの作品の小道具と大道具がある倉庫に、みんなが集まっている設定で、思い出の品々が僕らに語りかけてきたり。ただ思い出に浸っているわけではなく、そこから未来に進んでいく。そこに作品に携わった若者たちがスパイスとして、自分たちにいろいろなことを投げかけてきます」

 

―—2021年の上演では、どんな印象が残っていますか?

今村「僕は作り手側の話をしましたが、やり手側としてはどうでした?」

瀬下「今までの歴史もあったので、自分の中でリンクしちゃったときに、本当に涙が止まらなくなってしまった瞬間があったりしました。お客さんに伝わっているかはわからないですが、今までやってきたことの蓄積があって、出てきたものです。実際に泣いてはダメなんですが、気持ちが入ってきちゃいましたね」

 

―—それは、はじめての感覚だったのでしょうか。

瀬下「わからないですが、ねずみさんが前にいて振り向いて、こっちに来て、僕が前に行く瞬間に、目が合っただけで涙が出てきちゃったりとか。それは作品と関係ないですが、自分の中で、ほかには絶対にない作品でしたね」

 

―—本田さんはいかがでしたか?

本田「僕も経験させていただいている作品達なので、そういう意味では思い出的なこともあったんですが、僕の立ち位置は先輩方と違って、思い出が具現化されて、先輩方にどう問いかけるか、直接的ではなく、その姿をどこまで伝えられるか、というふうなイメージでした」

今村「昔の作品に触れるということが、現在進行形みたいな感じで、過去と思い出に触れている“今”もこうやってここにいるんだと、それしかない。「コンボイショウって何ですか?」と聞かれても、説明しきれないところがあって。40年近くになりますが、演劇界がいろんなふうに変わってきても、自分は作り手として自分のスタイルを貫いてやるしかない、まだ終わりではなく、続いているという作品なんですよね。思い出に浸るわけではなく」

 

―—振り返るというよりは、進むという感じですね。

今村「今年僕は65歳ですし、ジュリ(瀬下)も還暦が近いですが、やはり思い出の方が多いに決まっているんです。それをどういうふうに、力に変えて未来に行くかというだけ。僕の場合は、未来に行くというのが舞台づくりでしかないので、今でもずっと変わらずにやっています。この4月も一人ごもりで、一人コンボイをやっていましたから。ずっと台本を書いて、音楽を作って。今でも「もういいや」と言わない自分がいるんだなというのが、素直な気持ちです。今日やっと初稿が上がってきて、人に渡して少しテンションが高めなんですが(笑)。今は、音楽を作っているので、作詞・作曲者としてやらなければならないことが、まだあるという状態です」

 

―—2021年に上演されたものから、かなりブラッシュアップされますか?

今村「前回はオリジナルソングを使わなかったですが、今回はショータイムもコンボイのオリジナルソングになります。もう、人の曲を使うのは嫌だなと思って」

瀬下「もう再演ではないですよね」

今村「自分が作ったものに対して、もっと自分が愛着を持とうと思ったら、歌や台本を読んだり、書き直したりするじゃないですか。このままで終わらせるのは悔しいなと思ったので、オリジナルソングを作り直しました。ショータイムは全部コンボイのオリジナルソングだから、あえていいますが、本当に『コンボ・イ・ランド』という作品になりました。だから、ショータイムは、前回見た人が驚くくらいにガラッと変わりました。ライブでずっと歌っていたんですが、CDになっていない曲ばかりで。アレンジを変えたので、僕にとっては全部新曲になっています」

瀬下「先ほど待合室で、2、3曲聞かせていただいたんですが、初めて聞いたときは何の曲か分からなくて、表示に出てくる題名を見て驚きました。歌っているところを聞くと、確かにこの歌詞を歌っているなと。だから、やる方もまた新しい気持ちで行かないと。まったく新作ですね」

本田「僕も聞かせていただきましたが、そのデモをCDにしたらいいのに、と思いました。あのまま世に放ってほしい」

今村「ミュージシャンとふたりで自宅で作成しましたが、作品として『コンボ・イ・ランド』とは別に、楽しみが増えたのは事実ですね。シンガーソングライターみたいでおもしろいじゃない?」

 

―—さらに肩書きを増やそうと。

今村「シンガーソングライター、ダンサー、ディレクター、プロデューサーって、嫌なヤツですよね(笑)。落書きしたら「ペインター」と追加するかもしれない。インタビュアーになってもいいよね」

 

 

―—ご自身の役どころについても、お伺いしたいのですが、前回と変わりますか?

今村「ジュリや僕は変わらないですよ。時間軸というか、構成はそのままでやっているので。若者は今回オーディションで3人入ったので変わるかな。『パピプペポ』や『星屑バンプ』にしても、自分で書き直していて、ダメと思う部分が結構ありました」

 

―—どんなところダメなんですか?

今村「コンボイは今の風が吹いているので。前回は、コロナ禍の中でOKでしたが、コロナが明けてマスクを取った瞬間の今って、どうよと。そこから、また始まっているので。僕の作品は今の作品がどこかに吹いていないといけませんし、メンバーも変化していますから。本⽥礼⽣さんなんてスキルアップしているので、前のような役どころでは、多分文句を言われそうなんですよ」

瀬下「周りからね(笑)」

本田「ないない、ないです。どこからもないです(笑)!」

今村「若者の組み合わせになってくると、キャラクターに合うとか、合わないとか前のようにいかないところがたくさんあるんです」

 

―—2年間で、変わったと思うところはありますか。

今村「僕は、ずっとトレーニングを続けていて体が柔らかくなりました。人生で一番柔らかいんじゃないですかね。筋肉や骨は、きちんと鍛えたら老化しないそうです」

瀬下「俺はそんなに変わっていないですよ。体力は落ちているかもしれませんが、冬眠期間が自分の中で長かったんです。芝居は去年もやっていたんですが、やらない時期も結構あったので、冬眠していた感じで、その間に映画などいろいろなものを見たりして研究しました。これまで、とにかくはっちゃけて、その場の瞬発力だけでやらなくてはと思っていたんですが、一歩下がったところで落ち着いた演技をしている人が好きになったり。「ここに入ったら、こういう演技をしなければならないよななど、客観的に引いてみた方がいいのかな、と考えるようになりました」

 

―—本田さんは何かありますか?

本田「変わったところ……。自分の中では特にないと思うんですよね」

瀬下「多分それは周りが決めることだと思うんですよね。本人は一生懸命だから、周りが変わったのと思っているから、すごいよ」

本田「でも、他の作品を経験させていただく中で、常にコンボイショウの稽古場で言われたことだったり、目指していたところは、ずっと自分の中にあります。だから、「ねずみさんが、あのとき言っていたのは、こういうことなんだ」と思ったり、少しずつ育っているところはあるのではないかとは思います。それも今回の『コンボ・イ・ランド』でまた新たに更新されると思いますが、2年分溜まっていたエネルギーは確実にあります(笑)」

 

―—以前別の作品のお話を伺ったときに、「コンボイでは……」とおっしゃっていて、本田さんの中でコンボイはベースになっているんだなと思いました。

本田「それは、そうですね。演劇に限らず座組みで世界を作るから、その作品世界に入って染まらないといけない。ただ、コンボイで学んだことは常に僕の中にあります」

今村「作品の中で生きろというのは、たえず言っていることなので。「役者面するんじゃないよ」と。こんなことを言ったら怒られるな(笑)。最近、僕自身尖っているんですよ。もう少し余裕ができるのかなと思ったのですが、むしろ尖り出しちゃいましたね。多分そんなに時間がないと思ってしまっているんでしょうね。脚本を書いて、演出して、人を集めてなどをしていくと半年がかりになってしまいますから、1年に1本できたら御の字。1年がかりで音楽も作りたい、台本も書いて演出もして、出演しないでミュージカルを作りたいなと思ったり。誰かアラブの王様はいないかな(笑)」

瀬下「石油王? (笑)」

今村「どうせ死ぬんだしと思うと、結構前向きになれます。この歳になって、もっとやりたいなという気持ちになったのは事実ですね。だから、嫌なヤツなんです」

 

―—その尖った力がないと、作品は動かないんじゃないかと思います。

瀬下「僕も本当にそう思います」

今村「ずっとコンボイショウに参加したメンバーが、コラボした若者とリアルにぶつかり、セッションして作り上げる。『コンボ・イ・ランド』に関しては最後だと思うくらいの気持ちでやろうと思っています。コンボイを知らない人も、知っている人も、ぜひこういう奴らがいるんだということを見ていただきたいです」

 

―—演劇界に他にはないグループですよね。

今村「本当にいないと思います。歌って踊って芝居して。ジャニーズやEXILEみたいなのかなと思われるかもしれないですが、そういうのではないんです。劇場でやっていますから」

 

―—「vol.42」ってすごい作品数ですよね。

今村「文学座、青年座、劇団四季、宝塚などは演劇組織ですが、うちは手作りなので、それほど人は入れ替わっていませんし、僕がなかなか手放さないタイプなんです。いつまでできるかという年齢にもなっていますし、今年はいつでも手放すそくらいの覚悟でやっています。今、尖っているから、かなり熱い舞台になると思います」

 

 

―—出演される14人のメンバーについて、特に語っておきたいメンバーがいらっしゃったらお伺いさせてください。

今村「今回新しく入ったメンバーを、どれだけ僕たちが受け入れて、コンボイショウに染めるかが、僕らの作業になってくると思います。とどまることなく、自分たちが彼らに伝えるには、と思ってやりこんでいかないと。自分が選んだ責任がありますから」

瀬下「いい意味で、ヤベェなと思うくらいにね」

 

―—本田さんは、同じ世代がコンボイに出たいと思うことはどう感じていますか?

今村「オーディションでは「礼生さんのコンボイを見て」と言っていた人もいましたよ」

本田「わ〜。嬉しいです。あえて言葉を選ばずに言うと、「出られない」と思っているんじゃないでしょうか。出られるわけがないと思っている人が多いと思います」

 

―—最初に入ったときには、敷居が高いと感じていましたか?

本田「もちろんです」

今村「お前は何も知らないで来たんだろう(笑)」

本田「マネージャーさんから話を聞いた時は、なんとなくしか知らなかったのは事実ですけど。その後マネージャーさんからビデオを借りて見まくりましたから、オーディションは何も知らないで行ったんじゃないです(苦笑)」

今村「オーディションには、コンボショウを見たことがない人ばかりが来ますからね」

瀬下「変な話、事務所に言われてくる人が多いんです。20歳くらいだと、なかなか観ている人はいないじゃないですか。2.5次元作品などは、お互いに観に行っているかもしれませんが」

今村「だから、礼生や(後藤)健流が出ているショウですよね、と興味があって来る人もいます。それでオーディションに来てもらって、「すみませんでした」って」

本田「そうでしょうね。あのオーディションを受けたら……」

今村「でも、最終的にみんな楽しんで帰っていってる」

本田「そもそも、オーディションじゃなければねずみさんに直接みてもらえる機会なんてないじゃないですか。今2.5次元舞台はとても間口が広くて、お客さんの目に触れる機会も、多いと思うんです。ただ、こうやって大先輩方と密に芝居をやる機会は少ないんです。だから、そういう場に参加できること自体がすごく貴重だと思います。ましてや一緒にものづくりをさせていただくことは、もっともっと貴重で。でも、ここに入るには、ダンスも歌もタップも、演劇魂も、立ち振る舞いも、すべてができてないとできないから、みんなは「できない」と思っているんじゃないでしょうか」

 

―—そのハードルを超えてきているんですね。

 

本田「自分で言っておいてなんですが、超えてきてはいません(笑)。こうやって持ち上げてもらって、育ててもらって何とかやっています。僕はタップもジャズダンスも未経験だったので必死に食らいついてきて今があります。まだまだですけど」

 

―—おふたりから本田さんのご活躍をご覧になっていかがですか?

今村「力をつけたなと思います。オーディションの頃から知っていますが、ものづくりに対して真摯な向き合い方をしていたり、根本が最初から違いますね。芝居が好きになったんだろうなという感じがします」

瀬下「礼生の舞台を観に行くこともあるんですが、2.5次元舞台もやっていますが、それ以外にも本当に小さい小屋を借りてお芝居をしたり、ストレートプレイをやったりしていたから、それを観たときにすごいなと思いました。本当に芝居が好きだから、スケジュールの合間を縫って、そういうことをきちんとやっていますから、すごいなと思っています」

本田「5年以上こんなところに、いさせてもらえると、力をつけなければと思います。そうでないと、できないですね」

 

―—本田さんから見て、5年ご一緒したおふたりは、いかがですか?

本田「僕の役者人生の中で、一生の目標です。1年、5年、10年、そしてやめるとき、70、80歳とかになったときに、ずっと頭と心に残っている人たちです」

 

―—同じ職業の「先輩」という感じなのか、「師匠」のようなイメージなのか……。

本田「「師匠」というとすごく軽く感じてしまうんですが、どういう言葉が一番当てはまるかというと、やはり「師匠」です。でも、師匠というのは、おこがましいくらいです」

瀬下「ねずみさんには、いろいろと教えてもらっているからそうだと思います。俺の中では関係なくて、ただ年上のおもしろいおっさんですから(笑)」

今村「俺も教えることがないというか」

瀬下「でも、演出をやったり、礼生も稽古場でそれに食いついて来るんですよね。休憩のところで、「ジュリさんどうしたらいいんですかね?」と僕にまで聞いてくるけれど、知らねえよ、そんなことと思いますが(笑)。もちろんコンボイのなかでは、年上で先輩ですが、共演者ですから、こうしなきゃダメだよということも言いませんし、言えません。ただ、聞かれたら「俺だったらこうやるかな」くらい。それをおもしろがって聞いてくれる礼生も、ありがたいです。ただ、今回は僕が言っても何も聞かないと思います」

本田「もぅ〜。どうしてそこで落とすんですか(笑)」

今村「逆に礼生に言われるんだろ(笑)。「ジュリさん、あそこの芝居、ちょっといいですか?って」

瀬下「言われると思う。だから、絡みがない方がいいなと思います」

本田「いやいや! 絡ませてください(笑)!」

 

―—最後に、皆さんからメッセージを一言ずつお願いいたします。

瀬下「本当に、この記事を見た方は絶対に観にきてください。それだけです。絶対に得しますから。初めての方は新しい扉が開くと思います。今までご覧いただいている方は、もちろん大いに期待してください。再演といっていますが、再演なんてとんでもないです。稽古前ですが、こっちもドキドキです」

今村「何でだよ(笑)」

瀬下「いつもそうなんですが」

本田「ドキドキ(笑)」

本田「僕はお二方と違う目線なんですが、「見た方がいいですよ」と」

 

―—観客側と同じ目線なんですね。

本田「はい。もちろん、出演する側からの、来ていただきたいという気持ちはありますが、「見た方がいいですよ!」という気持ちの方が強いです。見逃してほしくないです」

今村「40年近くやってきて、こんなグループが本当にあるんだと、今のコンボイに触れてほしいですよね。今も走り続けているコンボイショウに、騙されたと思って、ぜひ触れてほしいです。絶対に見にきてほしい、体感してほしいと思います。来年、再来年のことは言っていられないので、自分たちは今のコンボイに『コンボ・イ・ランド』で勝負するので、劇場でお会いするのを楽しみにしております」

 

インタビュー・文/岩村美佳