【ローチケ大衆演劇宣言!】新風プロジェクト|長谷川一馬・京未来 インタビュー

2023.07.21

目の前で繰り広げられる本格演技の時代劇と華やかな舞踊でいま注目を集める大衆演劇。
既に大衆演劇ファンの方にも、そうでない方にも、臨場感あふれる大衆演劇の魅力を存分にお伝えするため、「ローチケ大衆演劇宣言!」と銘打ってインタビューや初心者向けガイドをお送りしていきます!
注目の役者の素顔や、観劇のイロハを知ってぜひ劇場へ!

若い世代の台頭とともに勢いを増している大衆演劇。この夏、浅草木馬館でふたつの若座長昇進記念公演が盛大に開催される。ひとつは長谷川一馬主演の新風プロジェクト第15弾『水滴、石を穿つ』(作:坪田塁)。もうひとつは京未来主演の新風プロジェクト第16弾『白南風に立つ』(作:渡辺和徳)。親から譲り受けた確かな芸とアイドル性を兼ね備えた長谷川一馬と京未来は現在ともに21歳。子ども時代はTVのドキュメンタリー番組で知られていた、といえば思い出す人もいるかもしれない。幼なじみで良きライバルでもある2人に、大衆演劇の未来を担う意気込みや気になるあんなことやこんなこと、聞いてみた。

――この度は若座長昇進記念公演の開催、おめでとうございます。まずは今回の公演が実現にいたった経緯を教えてください

未来 ありがとうございます。今年2月に大阪の梅田呉服座で若座長襲名公演を行ないました。私が『鶴八鶴次郎』、一馬が『下北の弥太郎』。2人とも、私の両親である愛京花総座長と長谷川武弥座長が昔から大事にしてきた大好きなお芝居に挑戦させてもらいました。その後、篠原演劇企画の社長さんからお声をかけていただいて、関東でも若座長昇進記念のお披露目公演をさせていただくことになりました。

――公演地である浅草木馬館は役者さんにとって憧れの劇場ですね

一馬 はい、特別な場所です。今回から総座長と座長と一緒に僕たち2人も木馬館の看板に上げてもらいました。こんなに早く夢が叶うと思わなかったので本当にありがたいです。プレッシャーもありますが頑張ります。

――しかも今回の記念公演は、篠原演劇企画の人気企画、新風プロジェクトとのコラボレーションだとか

一馬 僕と未来が新風プロジェクトに参加させていただくのは今回が5回目です。脚本家の坪田塁先生は昨年の新風プロジェクト革新で初めてお会いしましたが、そのときの作品『円環か螺旋か』が凄かったんです。今回、ゼロからお願いして『水滴、石を穿つ』を書き下ろしていただけてとても嬉しかったです。

――どんなリクエストをしたんですか?

一馬 僕の性格が出せる、僕のお芝居にしたい、とお伝えしました。カッコいいところも優しいところも表現できて、大好きな殺陣もやりたいと。僕が演じる河上彦斎は『人斬り彦斎』と呼ばれた実在の人物で『るろうに剣心』のモチーフにもなっています。僕はもともと新選組やいろんなキャラが出てくる話が好きなので、そのあたりも取り入れてくださいとお願いしました。

――今回は2.5次元の舞台でも活躍されている南圭介さん(サンズエンタテインメント)松岡拓弥さん(えりオフィス)、中根大さん(えりオフィス)も参加されて、それぞれ、土方歳三、沖田総司、斎藤一を演じられますね

一馬 これは篠原演劇企画さんからのアイデアですが、大衆演劇と2.5次元の世界は初めてのコラボだと思います。違うジャンルのお客様にも大衆演劇を知っていただきたいという願いがあります。

――一馬さんは今、大衆演劇界で「爽やか王子」「会いに行けるアイドル」として売り出し中の期待の星。新しいお客さんのハートをゲットできるといいですね!

一馬 うーん、ですね(笑)僕にとっては未知の世界ですからどんな2日間になるか不安もありますが、頑張ります!一見劇団の紅ア太郎君と劇団暁の三咲隼人君という、最近できたお友だちもゲストで来てくれるので楽しみです。

――では次は未来さんから『白南風に立つ』についてお願いします

未来 私も脚本家の渡辺和徳先生と直接お話したときに、まずは自分の希望をお伝えしました。いつも三枚目役が多いんですが、今回はあえて女主人公にして苦手な立ち回りを克服したい、最後は明るく終わるのがいい、と。それで女剣士の物語になりました。出来上がった台本を読んだときは、一発で素敵だな!と思いました。途中に笑いの場面があるのもいいし、読みながらとてもスムーズに配役を思いつくことができました。

――当日は俳優の松井誠さんが舞踊ショーに特別出演されるとか

未来 そうなんです!今年の3月、池田呉服座での公演中に松井誠さんがマネジャーさんと見にいらして。すごく誉めてくださって、今回の公演のことを聞いて「お祝いに行くよー」と言ってくださったんです。相舞踊の予定もあるのでお稽古をつけていただくのが楽しみです。あと、劇団駒三郎の南條友李愛若座長もゲストで来てくれます。この世界で女座長は少ないし同世代なので大事な友だちです。芝居も舞踊も、京未来はこんなこともできるんだ!と思ってもらえるように、いろんな自分を見せていきたいと思います。

――未来さんと一馬さんは同い年の幼なじみですよね

未来 生後3か月から一緒。ベビーカーも一緒に乗ったし、お風呂も一緒に入ったし。兄弟同然に楽屋で大きくなって、今まで離れたことがありません。

――お互いを紹介してください

一馬 強い女の子ですね。強すぎると思います(笑)。でもそこが素敵なところ。いろんな役者さんや女優さんがいますけど、中でも未来がずば抜けてカッコいい!と僕は思っています。愛京花総座長よりもカッコいいかって?もちろん!

未来 (目を丸くして)すごーい!(笑)

一馬 これだけ誉めたんだから僕にもいいこと言ってよ。

未来 近頃はしっかりしてきた?かな?(爆笑)一馬はちょっとぬけてるんですよ(笑)。私たちはニコイチな感じ、お互い足りないところを補い合ってるんです。一馬は最近まで本当にのほほーんとしてました。もちろんいいところもありますよ、優しいし。うーん、一緒にいすぎてて、良いところを言えといわれても急には出てこない(笑)。

一馬 僕から言えるのは最強のライバルだということ。同じ仕事をしているし、同じ劇団でやってる以上は友だちだけどライバルです!

未来 たしかにお互いに負けないぞ!という気持ちで舞台に立っています。男も女も関係ないですね。一馬がお客さんに「キャー!」といわれたらすかさず私もかぶせます!(笑)。これが同性同士だったら上手くいってないと思います。

――未来さんは総座長と座長の娘。一馬さんはそれを支える副座長、長谷川乱之助さんと座員の長谷川舞さんの息子。一緒に育ってきたとはいえ、立場の違いや、それゆえの苦労はあったのでしょうか?

未来 いろんなことがありましたね。私は悪い思い出をとっておかないようにしてるんです。塗り替えて楽しく生きていきたいのでわざと忘れる。でも16歳の頃はつらかったですね。反抗期だったのでそれが舞台にも出てしまい、役者をやめようと何度も思いました。でもそれをすると親も自分もつらい。負けないで頑張ろう!と思いとどまりました。今はつらいことはないですね。忙しくて大変なだけで(笑)

一馬 僕は親がもともと役者ではなくて、父は一般から大衆演劇の世界に入りました。未来とは一緒にいますけど、やっぱり「座長の娘さん」と座員の息子という違いを感じることはありましたね。

未来 私たちの親は4人とも分け隔てなく育ててくれたけど、周りが言うことがどうしても耳に入ってくる。2人とも立場は違うけど悔しい思いはたくさんしてきたと思います。

一馬 僕は踊りも芝居も本格的にやり始めたのは小学5年生のときなんです。未来は幼い頃から物覚えが早くて何をどうしたらいいのか、よくわかってた。未来にできることが僕にはまったくできなくて……「もういいいや!」と自棄になったこともありましたね。

――TV番組ザ・ノンフィクション「負けるな!泣き虫三姉弟」は小学校時代から5年にわたって長谷川劇団を追いかけていましたね

一馬 あの時期、僕も未来も本当に大変だった。学校行きながら舞台に立って、覚えることもたくさんあって。今も関東に帰ってくると「あのTV見てたよ」とよく声をかけられます。

未来 最初は子どもが仕事をしているのが珍しくてメインのはずだったんですが、いつの間にか、別の部分が印象に残る映像になっていて(笑)。だから今の、若座長になった私たちを取材してほしいですね。もう泣き虫じゃないんだけど(爆笑)。大衆演劇の世界もあの頃と比べたらだいぶ変化してきているから、今の大衆演劇にTVが密着したら「面白そう、自分もやってみたい!」と思ってくれる人がきっと増えると思います。

――長谷川劇団は総座長、座長も現役バリバリで大人気ですが、次世代を担う若座長として、これからやっていきたいことは?

未来 長谷川劇団は古きよきものを大切にしながら、新しいものに少しずつ挑戦していきます。なんでも派手なことをすればいい、というのには反対で、昔から見てくれているお客さんを大事にしないといけない、という考えがあって。若いお客さんも年配のお客さんも、新しいお客さんもみんなまとめて元気になってもらえる舞台をしよう、というのがうちの劇団のモットーなんです。若いから若い曲しか踊れないって思われるのもイヤなので、芸を磨いて浪曲も踊ります。座長たちがそういうふうに私たちを育ててくれました。私の夢は総座長の愛京花みたいな女優になること。母以上の役者はいないと思っているから。大好きなんです、お母さんが。今はまだ足元にも及びませんが、超えられるように頑張っていきます。

一馬 僕はまず、先輩たちが僕たちの世代まで大衆演劇を繋げてくださったことに感謝しています。これからは今まで考え付かなかったコラボをやったり、いろんな世界の人たちと一緒に仕事をする機会を増やしたりして、大衆演劇を知らない人たちにも知ってもらえるようにしていきたいです。

――大衆演劇をまだ見たことにないエンタメファンの皆さんにアピールをお願いします

未来 私も初めて歌舞伎や宝塚を見にいったときは緊張しました。大衆演劇はわかりやすいし木戸銭(入場料)も安いです。まずは軽い気持ちで、話せるアイドルに会いに行く的な感じで見に来てもらえたらいいですね。コロナで中止になっていた送り出しも今は復活して、終演後にお話もできるし写真も撮れます。

一馬 大衆演劇は生身の人間が演じる生の舞台の魅力に尽きると思います。毎日演目を変えて舞踊も和洋偏らないようにつねに工夫しています。違う日に見たらまた印象が違うと思うので、せめて2度同じ劇団を見てみてください。長谷川劇団は僕たちの下の世代、17歳の長谷川愁も19歳の京詩音も頑張っています!

――以前は劇団の垣根を越えた交流は珍しかったけれど、新風プロジェクトや若手大会の開催によって、新しい時代が到来しているのを感じます。若い世代が楽しそうなのはいいですね

一馬 そうなんですよ。先月(2023年6月)、健康ランドで若手演劇祭り第2弾『花しらべ』が開催されて、僕と未来を含む9人の若い役者が集まったんですが、みんなで意見を持ち寄って舞踊ショーを作り上げたりして、新しい発見や収穫がたくさんありました。ジャンルが被らないように工夫しながら昼夜替えで10本の舞踊をつくる。その準備はとても大変だったけど終わったときのみんなの達成感が凄かったです。

未来 知らない人とお芝居すると間がまったく違うので感性が磨かれるんです。自分の劇団でやるときとはまったく違う楽しさがあって、勉強にもなるし友だちもできる。私たちはまだ21歳なのに、若座長という肩書をいただいたせいか、周りに若い役者さんがどんどん増えてきて。先輩!と呼ばれると不思議な感じがしますね。

一馬 少し前まで自分たちがどこに行っても一番年下のペーペーだったのに、いつの間にかひっぱっていく立場になっている(笑)。これからもいろんな方に育てていただいて、たくさん学んで。長谷川劇団の若座長たちは違うな、と思ってもらえるように頑張りますので、よろしくお願いいたします!!

インタビュー・文/望月美寿