段田安則がシェイクスピア四大悲劇『リア王』に挑む
2022年に上演された『セールスマンの死』で第30回読売演劇大賞最優秀男優賞などの演劇賞に輝いた段田安則が、再びショーン・ホームズ演出の舞台に立つ。今回挑むことになったのは、シェイクスピア四大悲劇のひとつ『リア王』だ。1991年に蜷川幸雄演出版で『リア王』には出演経験があるというが「まさか、自分がリア王を演じる日が来るなんて考えたこともありませんでした」と、段田は笑う。
「蜷川さんの演出版ではエドガー役をやらせていただいたのですが、とても面白い芝居だなと思った記憶が今も残っています。でも改めて戯曲を読み返すと、はてさて自分がどういう風にリアを演じられるんだろう?と思ってしまって…。もちろん楽しみは楽しみですし、またショーンと一緒に芝居が出来るのは嬉しいんですけど、今は楽しみな気持ちと不安とが半々です。ちなみに『セールスマンの死』では原作よりも現代に時代を近づけた設定になっていましたが、今回の『リア王』も今、僕が聞いている情報では現代風になりそう、とのこと。衣裳も背広を着ている時代になるようですから、きっとショーンが演出することで、日本人の僕でも成立する『リア王』を創り出してくれるのではと頼りにしているところです」
さらに、自身が年齢を重ねたことで昔よりも「リア王が感じる“老い”に共感を覚えることが多くなった」とも。
「僕には子供がいないので、正直言ってリアの娘たちへの想いはわからないままですし、家族で殺し合いはしたことがないので(笑)その点ではまったく共感できるところがないですけど。でも最近、テレビを見ていても何かとブツブツ文句を言ってしまったりするんです。若いときはそんなことしなかったのに。…って、別にリア王は常に文句を言っている人というわけではないですけどね。たぶん年齢を重ねると昨日できたことができなくなったり、見えていたものが見えなくなったりしてくるから、その影響もあってさまざまなことが腹立たしく思えてしまうのかもしれない。そんな風に考えると、きっとリアも辛かったんだろうなあ……と思えるようになってきました」
段田とショーン・ホームズが取り組むことで、これまで日本で上演されてきた『リア王』とは一味も二味も違う空気を纏った舞台になることは想像に難くない。
「僕はまだ今回のリア王像についてショーンから具体的なことは聞いていないのですが、最初の頃、雨はしっかり降らせたいということは仰っていました。だから今回は嵐が吹く中でずぶ濡れになるのかもと覚悟していたら、先日は話が違ってきていて、水道のホースから水がチョロチョロ~なんて言っていて(笑)。あれは冗談だったのかもしれませんが。もちろん演出プランは最終的に着地するまで変容していくものですから、この先どうなるかはまだわかりません。果たしてドバーッと滝のような雨が降るのか、水なんか出さずにそれでも激しい嵐を感じさせるのか……。それも含めて、先々の稽古が今から大変楽しみです。ショーンは日本ではこれまで『セールスマンの死』だけでなく『桜の園』も演出していて、世界的な名作が、演出でここまで変わるのか!と驚くほどに面白い舞台に作り上げて来た方ですから。今回もどのような『リア王』になるのか、ぜひとも注目していただきたいです」
インタビュー&文/田中里津子
※構成/月刊ローチケ編集部 1月15日号より転載
※写真は誌面と異なります
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【プロフィール】
段田安則
■ダンダ ヤスノリ
シリアスもコミカルも巧みにこなす実力派俳優として、舞台や数多くの映像作品に出演する。