2024年1月6日(土)東京・サンシャイン劇場にて、少年社中25周年記念ファイナル 少年社中 第42回公演「テンペスト」が開幕しました。 本作は、劇団“少年社中”の25周年のフィナーレを飾る新作です。ウィリアム・シェイクスピアの「テンペスト」をモチーフとして、毛利亘宏が少年社中では4度目のシェイクスピア作品に挑みます。少年社中に縁深いキャストから初めましての新たな魅力溢れるキャストまで、最強の布陣で “演劇を浴びる”ような、少年社中の魅力満載の作品をお届けいたします。開幕に先駆けて行われたゲネプロのレポートとあわせて、脚色・演出を務めます毛利亘宏及び出演者のコメントを掲載いたします。
囲み取材コメント
脚色・演出:毛利亘宏(少年社中)
新年明けましておめでとうございます。少年社中は25年前、早稲田大学演劇研究会のアトリエで産声を上げました。当時から大事にしていることが、「観終わった後に駅まで走って帰りたくなる劇団」。それを目指して演劇をやってきております。サンシャイン劇場から池袋まで走ろうとすると、そこそこの距離があるのですが(笑)。その距離を全力で走れるくらいのパワーをお渡しできればと思っております。本作はシェイクスピアの「テンペスト」を下敷きにして、架空の劇団「虎煌遊戯」が織りなす人間模様、群像劇です。我々が25年間、少年社中として活動してきた想いの全て、今出来うるものの全てをこの作品に投じました。「ファイナル」と銘打っておりますが、ここから先のスタートであると考えて本作をお送りしたいと考えております。少年社中はこの先も5年、10年、15年……となると年齢も気になってきますけれども(笑)。命尽きるまで演劇に尽くしていきたい、演劇を作り続けたいという気持ちを新たにする公演となっておりますので、是非とも皆様の目でご覧になっていただきたいと思います。 さらに本作は「虎煌遊戯」という劇団が劇場で「テンペスト」を上演するという設定。お客様全員も登場人物の一人です。我々と一緒に“演劇”を作る気持ちで楽しんでいただければ。是非「テンペスト」に参加してください。僕らと一緒にすごい芝居を作りましょう!ご期待ください。
ラン役:鈴木拡樹
2024年明けましておめでとうございます。皆様にとって明るい話題になるような作品にしたいと思っています。ご覧になった皆様が新年初観劇の感想のポストなどで日本がにぎやかになってくれると、公演をやった意味があるなと思います。そして少年社中の25周年を祝うために我々は集まったと言っても過言ではないので、30周年、40周年、50周年と……というプレッシャーをかけつつ、臨ませていただきます。本作はシェイクスピアの「テンペスト」を題材とした、嵐が起こる物語です。“演劇”で壮大な嵐を劇場いっぱいに起こして、たくさんの刺激を感じてお帰りいただきたいと思います。観終えた後のお客様にダッシュで走っていただけるように、僕も全力で走ります!
カグラ役:矢崎広
新年明けましておめでとうございます。こうして公演が出来ること、お客様に会えることを楽しみにしていました。拡樹くんも言っていた通り、少年社中の25周年を祝うべく集まったメンバーです。稽古中は親睦を深めるシアターゲームなどで少年社中メンバーの意外な一面を見ることもあり、まだまだ知らないところがあるのだと嬉しくなりました。新年が明けて25周年記念のファイナルの幕開け……というダブルおめでたい気持ちで“演劇の力”を皆様にお届けして、たくさんの人にパワーを与えていきたいと思います。
ギン役:井俣太良
日本の悲しいスタートになってしまいましたが、我ら演劇人は真っ直ぐなエンターテイメントをお届けして、悲しみを吹き飛ばすことしか出来ません。堂々と自分たちの信じたエンターテイメントで、皆様の悲しみを少しでも払拭出来るような作品になればいいなと思っています。25年間やってきた中でゆかりある俳優さんたちとこの演劇をお届け出来ることを嬉しく思いますし、また新しい劇団を作るつもりで稽古してきました。そういった空気感も含めて新しい劇団・少年社中をお見せできるのではないかと思っています。ぜひご期待ください。
ゲネプロレポート
嵐に揉まれる難破船。25 周年を迎えた劇団・虎煌遊戯(ここうゆうぎ)による舞台「テンペスト」の幕開けだ。だが客席から現れた一人の男が舞台に向かって怒号を飛ばす。かつて劇団を追われた演出家・ギン(井俣太良)である。ギンは復讐のため、天才役者・ラン(鈴木拡樹)を劇団に送り込み、公演初日をめちゃくちゃにしようとしていた。なんとかして舞台を成立させようと奔走する劇団員・カグラ(矢崎広)やシュン(鈴木勝吾)だが、ギンの企みと劇団員の動揺は収まらない。やがて劇団の過去が明かされ、急逝した人気劇団員・ゲキ(萩谷慧悟)の存在が浮かび上がってくる……。
「テンペスト」の復讐とギンの復讐が重なり、舞台上と舞台裏の物語が絡み合いながら進んでいく。時に過去にまで遡る場面の転換をなめらかにしているのは、役者たちが主体となって動かす大きな舞台セットだ。時には船や島に、時には楽屋や舞台裏と、シンプルに見えて様々なシーンに適応するセットの構造はまさに演劇的。音と光、映像、美しい楽曲と軽やかなダンスシーンがステージを色鮮やかに盛り上げる。ダンスを得意とする萩谷とヒナタ役・本田礼生の競演は見せ場のひとつ。
少年社中の劇団員は芝居の軸を固め、25年の重みを滲ませる。特に井俣演じるギンは、井俣にしか演じられないと思わせる気迫が漲っていた。そんな劇団員に負けじと熱のこもった演技で観客を惹きつけるキャスト陣。鈴木拡樹はラン役と劇中で演じるエアリアルにとどまらず七変化を披露。実に生き生きと演じており、必見の価値。矢崎は劇団存続の重圧を背負ったカグラの人間味を見せ、シュン役の鈴木勝吾は複雑な心情を丁寧に描き出した。なだぎ武、山﨑雅志も個性を活かした役どころで“演劇”を作り上げていく。
それぞれが抱く葛藤と苦悩。だがその裏に流れるのは“演劇”への大きな愛だ。演劇の力を信じる純粋な心と情熱が惜しみなく溢れるステージこそ、少年社中。そして、この熱量を感じられるのは劇場ならではの楽しみだ。その熱き魂がこの先も続いていくことを願わずにはいられない、新春の観劇に相応しい“希望の演劇”を劇場で体感して欲しい。