創業150周年を迎えた東京・明治座のアニバーサリーイヤーファイナル公演として、2024年2月・3月に舞台『メイジ・ザ・キャッツアイ』が上演される。物語の舞台を明治座が創業された明治時代に移し、怪盗キャッツアイの3姉妹が鮮やかな盗みの大一番を披露するオリジナルストーリーとなっている。
その中で、3姉妹の営む喫茶店に現れる執事という舞台オリジナルキャラクターを演じる美弥るりかに、意気込みや役について伺った。
――まずはオファーを受けた時の思いを教えてください
キャスティングを知らず、『CAT‘S♥EYE』ですと言われて「あの3姉妹に入るのかな?」と一瞬思いました(笑)。ボディスーツのイメージもあるので「いやいやいや」と思ったら全然違う役でしたね。まだ性別もわからない謎の役です。
――ビジュアル撮影をするときに何かディレクションはありましたか?
執事役をやったことはありますし、宝塚時代にも燕尾服は毎回のように着ていたので、こちらから「ここをもう少し詰めたいです」「ここはあと1cm長いと手が長く見えます」「カフスボタンはこれくらい出たほうがかっこいい」と提案して、何度も直していただきながら形を作りました。白手袋で執事っぽさを出してほしいと言われて、自分でディレクションしましたね。ポーズや格好良い角度は自分の中でも研究していましたし。4年ぶりくらいに燕尾服を着るので不安もありましたが、着た瞬間に男役スイッチが入った感じがしました。ファンの方がこの扮装を見て喜んでくださったら嬉しいなと思っています。
――台本を読んだ感想を教えてください
もちろんキャッツアイの3姉妹の活躍がありつつ、私が演じる藤堂と(新谷姫加演じる)栞という舞台オリジナルキャラクターの関係性も重要になってきます。ネタバレになってしまうので詳しくは言えませんが、藤堂の生い立ちや背景も描かれている部分があり、意外と重要なところを任されている印象です。そしてミュージカルではないですが、私も歌うシーンがあります。ダンスはまだ不明ですが、男役経験を活かせる部分もあるんだろうなと感じました。
――役作りについて、栞役の新谷さんと何かお話しされましたか?
今日初めてお会いしたのでまだちゃんとお話しできていませんが、記者会見での姿を見るとすごく初々しくて可愛らしい方だと思いました。舞台に立った経験は私の方が多いと思うので伝えられることがあればいいなと思っています。役作りについては二人で手探りしながらになると思います。もちろん寄せる大変さもあるけど、原作があると入りやすいじゃないですか。個人的には2次元のものを3次元にする方が演じやすい印象があります。今回は原作にいないキャラで、自分で色をつけられるけどそれが面白いか面白くないかの責任も発生する。台本を読むと、(藤堂は)ミステリアスな部分が多い印象でした。その中にも『CAT‘S♥EYE』らしいコメディもあります。カッコつけることで笑いをとるというか、格好良いけどちょっと笑っちゃうみたいな部分があるのかなと。あとは共演する女性陣に「素敵!」と思っていただくシーンがありです。宝塚を卒業して4年経ちますが、今でも女性に囲まれてキャーキャー言われる役が多くて、いつになったら男性にキャーキャー言われるようになるのかなと(笑)。それは自分の中で結構面白く感じたところですね。
――藤堂は意外とコミカルと言うことですが、美弥さんがこれまでに出演した作品はシリアスなものが多かった印象です
そうですね。結構普通だし意外と陽気な人間なんですが、見た目はそういう印象があるみたいです(笑)。
――カッコいいのに面白いというキャラは、ファンの方も新鮮に見られそうですね
多分、カッコつけているのが滑稽に見えるシーンが必要なのかなと思っています。今まではナチュラルに素敵な部分を求められることが多かったんですが、藤堂は誇張して作っていく必要があるのかな。まだ台本を読んだだけなので「どうやろう」と考えているところです。台本に「ここでポーズ」と書いてあったりして(笑)。ポーズってなんのポーズをしたらいいんだろうとか、決めポーズを作ってそのポーズをする度にだんだん面白くなっていったらいいのかとか。河原さんのことだから「自分で考えてよ」って絶対言う(笑)。今からネタ集めをしたり、宝塚のときにどんなポーズをしていたか思い出したりしようと思っています。あと、高島礼子さん演じる長女の泪は原作で男装の麗人という設定もあってカッコいいシーンがあるそうなんです。先ほど高島さんに「ぜひ色々教えてください」という畏れ多い言葉をもらいました。私もカッコよさを取り戻さないといけないので、高島さんと一緒にカッコよさを追求できたらと思っています。
――美弥さんもa new musical『ヴァグラント』で明治座に立たれていました。150周年ということで、明治座の魅力や好きな部分があれば知りたいです
10年くらい前までは、伝統的な作品や演歌歌手の方のコンサート、お芝居とショーの2本立てのイメージがありました。でも、近年は『ヴァグラント』のような新しいミュージカルだったり、色々なアーティストさんとのコラボだったり、すごく新しいことに挑戦されている劇場だという印象になっています。150周年ファイナルとして『CAT‘S♥EYE』を選ばれたことが意外だったと同時に素敵だと思いましたね。実際に明治座の舞台に立って感じたのは、すごく歴史がある劇場だということ。楽屋などにも歴史を感じて、今までたくさんのすごい方がいらっしゃった場所で演じられることを光栄に感じましたし、2023年に『ヴァグラント』をやってから、短いスパンで次の機会をいただけたのが嬉しいです。
――カンパニーの皆さんの印象はいかがですか?
演出の河原さんは3回目ですが、キャストの皆さんは、上山(竜治)くん以外初めましてです。製作発表記者会見では3姉妹の迫力と華やかなオーラがすごかったですね。着ているものが衣装に見えてくるような華やかさで、「稽古中は毎日この方々にお会いするんだ、慣れる日が来るのかな」と思いました。でも、お話ししてみると皆さん気さくでフラットだったので、勇気を出して話しかけにいきたいと思います。
――最後に、楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします
明治座150周年を締めくくるこの作品、『CAT‘S♥EYE』の設定を明治時代に移し、皆さんがワクワクするようなエンタメ要素がギュッと詰まっています。私自身は男役時代を思い出していただけるような役どころでもありますし、「謎の人物」ということできっとどのキャラクターより情報がないと思います。この役がどんな重要人物なのか、ぜひ劇場で確かめていただけたらと思います。
取材・文/吉田沙奈
撮影/山口真由子