エイベックスが所属俳優を起用していく公演プロジェクト「ACTORS STAND」が始動。その第一弾となる舞台「無垢ども」が、4月17日~21日に東京・赤坂レッドシアターにて上演されることになった。脚本・演出を手掛けるのは大野大輔 (AOI biotope)。主演は、舞台初出演となる平美乃理が務める。初めての舞台を目前に控えた平に、その心境など話を聞いた。
――今回が初舞台となるそうですが、率直なお気持ちをお聞かせください
舞台に立たせていただくと聞いたときは、私で大丈夫なのかな、とまずは素直に不安な気持ちがありました。さらにプラスして主演という大きな役割をいただいていたので、より不安になりましたね。でも、事務所のエイベックスの先輩方と一緒にお芝居ができることは、すごく嬉しかったです。先輩たちと一緒にお仕事するのは大きな夢のひとつだったので、頑張ろうという気持ちになれました。今は、じわじわと一緒に舞台に立てる実感が湧いてきています。
――ドラマなど映像のお芝居はご経験されていますが、お芝居することそのものについてはどんなお気持ちですか
楽しいと思う時も、難しいと思う時も、両方あります。私自身、お芝居の経験がまだまだすごく浅いので、悩むことの方が多いですね。でも、悩むこと自体もそれはそれで楽しいというか…。役によって、いろいろな性格や考え方があって、それを考えているときはすごく楽しいし、役が自分に入ってきて、思うようにお芝居できた瞬間は、ものすごく嬉しさや楽しさを感じます。
――今回は主演という立場で、座長として現場を引っ張っていくようなことも考えなければならないと思いますが、いかがですか
正直、みんなを引っ張っていくような気持ちはないです。先輩方や演出の大野大輔さんのお力をたくさん借りることになると思うので、逆に支えてもらうようなことになってしまうかも。たくさんの先輩方の力を借りて、日々勉強していきたいです。そして初日までに自信をもって、主演としてみなさんの前に立てるよう、努力します!
――ドラマとは違って、長期間の稽古の時間も舞台ならではだと思いますが、何か楽しみにしていることはありますか?
稽古自体も初めてなので、どんなふうになるのか想像もできていないんですよ。まだお会いしたことのない先輩もいらっしゃいますから。でも、今まで作品などで見てきた先輩と一緒に稽古ができるって、すごく勉強になるはずだし、いい経験ができると思うので、早く仲良くなっていろんなことを教えていただきたいです。
――ちなみに、稽古場で着る洋服とか買いました?
そういえば、何も考えていなかった!
――モデルでも活躍されているので、ぜひ稽古場ファッションも考えてみてください
まだそこまで頭が追い付いてなかったです(笑)。動きやすくて、それでいておしゃれなファッションを見つけたいと思います。
――今回の役は、熟成肉にハマってしまった女子高生・一華とお聞きしました。現時点での役の印象は?
一華は高校1年生で、YouTubeで熟成肉を見て魅力を感じて、熟成肉づくりに没頭していく女の子です。すごく個性的だし、そもそも熟成肉っていうワードにパンチがありますよね(笑)。いろいろなことに巻き込まれて行って、最終的にジェンダーレス制服の問題に関わっていくんですけど、一華はずっと熟成肉のことしか考えていないんです。そこにしか興味がない。多様性についても考えているのかもしれないけど、基本は熟成肉なんです。そして、一華以外のキャラクターもみんな個性が強くて、そういう人たちが討論というか話し合っていくのがすごく面白いんですよ。みんな仲良く、と言うよりは、ちゃんと言い合って、私はこれが欲しい、私はコレがやりたい、って主張し合っていくような物語ですね。
――それぞれの役に主張や個性があって、しっかりと意見や考えをぶつけあっていくんですね。ジェンダーレスについても考えていくお話かと思いますが、平さん自身はジェンダーレスについてどういうお考えですか?
ジェンダーレス制服については、私が通っていた高校にもあったんです。在学中に変わって、着ている子もいたんですけど、そんなに身近なことでもなかったんですね。でも今回の役をいただいて目をむけるようにもなりましたし、seventeenのお仕事でも、制服企画でジェンダーレス制服を提案して撮影したこともありました。着たい制服ありますか?ってアンケートがあったので、ジェンダーレス制服を着てみたいって言ったんです。だから、今すごく興味は持っています。
――実際にジェンダーレス制服を着てみたり、考えてみたりして、どう思われましたか?
うまく言えないんですけど、ジェンダーレス制服を着ていたら、ジェンダーレスとして見られてしまうのも、何か違う感じがするんですよね。そもそも高校に行っているとき、冬のスカートが寒すぎてズボンじゃダメなの?とか思っていたんですよ。そしたら途中からジェンダーレス制服としてスラックスがOKになったんですよね。だから、男性だからとか女性だから、とかじゃなく、何も関係なく好きなように着れたらいいんじゃないかな。普段の服装なら、パンツスタイルなんて普通のことじゃないですか? それくらい馴染みのあるものになっていくといいな、と思います。
――大野さんとは今回の作品についてどんなお話をされているんですか?
舞台が決まった時に、キャラクターについてとか、裏設定とかについて話す機会がありました。舞台の下見にも一緒に行かせていただいたんです。そんなに長くお話したわけじゃないんですけど、すごく面白そうな方で、優しそうでした。「今回、すごくセリフ量が多いんだけど大丈夫? 心配なら少し減らしたりも考えられるけど」って言ってくださったんですけど、私はチャレンジしてみたいです、ってお伝えしました。
――セリフが多くて大変な役どころなんですね。大野さんの言葉で、作品や役を掴むヒントになったものはありますか?
私は最初、一華について勝手にコミュニケーションが苦手で、ちょっと暗い性格なのかな?って思ったんです。熟成肉を作ること以外に何も興味が無くて、それだけに集中している子だったので。でも大野さんは、そういう感じの子じゃなくて、何なら他の子にも積極的にコミュニケーションを取っていく子だし、どちらかと言うと明るめの子だよ、って聞いて。それで一華の印象がすごく変わりましたね。学校生活は普通に過ごしているんです。でもとにかく、熟成肉が好き!っていう感じが伝わるように演じたいですね。最初から最後まで、すべての考えていることや行動が、熟成肉のことに繋がっている子なので。
――一華のキャラクターを聞いて、ますます物語が興味深くなってきました(笑)。一華と平さん自身は似ていると思いますか?
私自身とかけ離れているとは思わないですね。一華は熟成肉ですけど、私も絵を描くことがすごく好きで、描いているときは絵だけに集中していますから。ひとつのことに集中して、力を注げるところは似ていると思います。
――SNSやバラエティ番組でも絵の才能を発揮していらっしゃいますもんね。平さんにとって絵を描く時間ってどういうものですか
例えば悩み事があったり、どうすればいいんだろう、もう無理かもしれないとか思ったりしているときに、そこから気持ちを逸らすために絵を描くこともあります。ただただ景色がキレイだったからとか、この景色が好きだったから、でも書きますし。自分の気持ちを上手く消化できる時間かも知れないですね。
――いつごろから絵はお好きだったんですか?
幼稚園の頃にはもう、絵を描くのが好きだったみたいです。その頃はただの落書きでしたけど、小学生や中学生になって、先生から褒めてもらえることも多くなって、私って絵が描けるんだ、って自覚したような感じですね。そこから、いろいろ描いてみようと思って、アニメとか水彩画とか、油絵とか、いろいろ描いてみるようになりました。
――でも、部活は美術部じゃなく、吹奏楽部でサックスを吹いていたんですよね
そう、吹奏楽部でした。私、結構直感で動くタイプなので、別に絵は家で描けるしな、って思ったんですよ。お姉ちゃんが吹奏楽部で、定期演奏会で演奏しているのを見てメチャクチャかっこよかったんですよね。それを見て、私も絶対に吹奏楽部入るんだ!って決めてました。
――現在もモデル、俳優、絵画とたくさんのことにチャレンジされていますが、やってみたいことはどんどんチャレンジしていくタイプでしょうか
割とそうだと思います。その3つの中で、どれか1つを頑張りたいとかじゃないんですよね。モデルはモデルで、お芝居はお芝居で、アートはアートで叶えたい目標があるんです。それを達成するために、例えば画だったら月に何枚を描き上げるとか、そういう小さな目標をそれぞれに立てて、少しずつそれを達成していけたらと思っています。
――今後、挑戦してみたいことはありますか?
アートに関しては、展示会をやってみたいです。だから今はたくさん絵を描いて、自分らしさというか、絵を見て私の絵だとわかってもらえるような、そういう絵を描けるように頑張りたいです。やっぱり自分のクセってあると思うんですよね。この色を使いがちとかに気付いたら、そこを強調して描けば個性は強くなっていく。そういう気付きをたくさん得るためにも、たくさん描いていきたいと思います。最近、青が好きなんだなって気付きました。
――では、お芝居でやってみたいことは?
「時をかける少女」のヒロインみたいな役はやってみたいです! めちゃくちゃ素敵なお話じゃないですか? ファンタジックだし、私自身がタイムリープ系の話がめちゃくちゃ好きなんです。宇宙が関係している話も大好きですね。そういうジャンルの作品に挑戦してみたいです。
――最後に、作品を楽しみにしている人にメッセージをお願いします!
重ねてお話してしまいますが、本当にキャラクターが個性豊かなんです! そんなキャラクターが、ジェンダーレス問題に対していろいろな討論をしていくという物語が、とっても面白いと思っていますし、若い方はもちろん、どんな世代の人にも刺さるような、心に残るような作品になるんじゃないかと感じています。たくさんの方に見に来ていただきたいです!
取材・文/宮崎新之
撮影/木下昴一