左から町田水城、川上友里、ノゾエ征爾
人気演出家が個性派俳優たちと進む、演劇のラフロード
約700人の高齢者を2チームに分け、古典戯曲をエンターテインメント作品のように仕立てた10月の『病は気から』で、演出家としての手腕を広く示したノゾエ征爾。彼が率いるはえぎわが、2年半ぶりに劇団公演をおこなう。旗揚げメンバーの町田水城、他劇団への客演が途切れない川上友里とノゾエの3人に話を聞いた。
ノゾエ「前回公演からこんなに空いたのはたまたまなんです。メンバーがいろいろなところに呼ばれるようになって、とにかく誰かが外の公演に出演している状況が続いたという」
川上「外のお仕事も好きなことをさせていただいてありがたいんですけど、私がそれができているのは、はえぎわがあるから。劇団公演で意気込みが高まっていますが、まず久々に会う劇団員と仲良くしたいです(笑)」
もともと個性的な俳優が集まっているはえぎわ。ただ、出た途端に目を引くタイプではなく、ジワジワと味が広がって後を引く俳優が多い。その分、時間はかかったが、劇団として地道に公演を続けてきた中で、メンバーの魅力が外に伝わったと言えるだろう。
ノゾエ「少しずつ歪いびつな俳優が集まって、全然違う形の歯車が噛み合って動いているのが僕らなんですよね。だから良い意味で、新しいとがりがさらにできているといいなと思うんです。それをはえぎわに合わせて戻すんじゃなく、とがった状態をどう新たに噛み合わせるかを見つけたいです」
この公演は劇団20周年記念公演でもあり、タイトルは出演者全員の名前を取り込んだもの。チェーホフの『桜の園』の、家族が集ってまた離れていく構造をほんのり下敷きに、劇団員13人が活躍する作品にすると言う。
ノゾエ「代表作をやる手もありましたが、僕はやっぱりそっちじゃない。劇団員と次の景色が見たい、それが新鮮であればあるほどうれしいんです」
町田「昔は“はえぎわってどんな劇団?”と聞かれたら“アングラ”と答えていたんですけど、少しずつノゾエくんが変わってきて、今は毎回、稽古場でゼロからアイデアを試していくつくり方ですね。でもそれは苦じゃなくて、だから僕も飽きないでここまでやってこられたと思います」
声高ではないが新しいことを続ける彼らの滋味を味わってほしい。
インタビュー・文/徳永京子
Photo/篠塚ようこ
※構成/月刊ローチケ編集部 12月15日号より転載
※写真は本誌とは異なります
掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
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【プロフィール】
川上友里
■カワカミ ユリ ’06年の『スカタン、或いは』からはえぎわに参加。ナカゴー鎌田順也らとのほりぶんの一員でもある。
町田水城
■マチダ ミズキ ’99年、はえぎわの第1回公演に客演したのち劇団員に。シアターコクーンの松尾スズキ作品などにも出演。
ノゾエ征爾
■ノゾエ セイジ ’75年生まれ。’99年、はえぎわ結成。12年、『◯◯トアル風景』で岸田國士戯曲賞受賞。