写真左から)市川染五郎、松本幸四郎
『二月花形歌舞伎』が2月3日(土)、福岡・博多座で開幕した。今回は松本幸四郎と、博多座初出演となる市川染五郎の親子共演。さらに伝説の“乱歩歌舞伎”の再演が注目を集める興行だ。また初日当日の朝に行われた櫛田神社での豆まき神事は入場規制がかかるほどの盛り上がりをみせ、博多の地で高麗屋親子の活躍への期待の高さがうかがえた。その博多が熱狂した豆まき神事の模様と初日公演の様子をお届けする。
博多が熱狂!豆まき神事レポート
2024年2月3日(土)午前10時頃、博多座『二月花形歌舞伎』の出演者が、博多の総鎮守である櫛田神社にて、成功祈願と節分の「豆まき神事」に参加した。
正午からの公演を前に参加したのは、松本幸四郎、市川染五郎、河合雪之丞、大谷廣太郎、澤村宗之助、松本錦吾、市川高麗蔵の7名。神社の境内は入場規制がかかるほどの観衆で埋め尽くされ、出演者が登場すると大きな歓声と拍手で迎えられた。
幸四郎は「江戸川乱歩の小説を歌舞伎化した「江戸宵闇妖鉤爪」と「鵜の殿様」はまだ歴史の浅い作品。博多を発信として長い歴史を作る始まりだと思って、劇場に足をお運びください」と呼びかけ、さらに「私は博多への強い想いがあります。私の母であり、染五郎にとっての祖母は、福岡出身の…え~きれいな女性でございます(笑)。第二の故郷として、特別な博多の地で精一杯、熱い熱い舞台を勤めさせていただきます」とユーモアを交えつつ特別な気持ちを話すと観衆からはたくさんの声援が贈られた。
「鬼は外、福は内」という声に合わせて出演者たちが豆をまき、大きな歓声と興奮に包まれる境内。最後は、博多座社長(貞刈厚仁)による“博多手一本”という博多ならではの締めで終了した。
『二月花形歌舞伎』初日レポート
豆まき神事の熱気も冷めやらぬ中、2月3日(土)に初日の幕が開いた。一つ目の演目「江戸宵闇妖鉤爪」は、松本幸四郎の発案で松本白鸚が九代琴松の名で演出し2008年に初演された伝説の乱歩歌舞伎。
2011年の再演から13年ぶりの上演となった今回、松本幸四郎が明智小五郎を、市川染五郎が殺人鬼・恩田と色男・神谷の2役を勤める。染五郎は3歳のときに見た初演の記憶が鮮烈に残っておりずっと憧れ続けた作品で、ついにその夢が現実となる。
冒頭、色男の下級武士・神谷芳之助の市川染五郎が花道から登場すると、端正な容姿に客席からはため息が漏れる。
そこから一転、早替りでの恩田になると最初の殺人で緊張感が高まり、続けて染五郎が書いた題字がデザインされた幕が振り被せられると、客席は一気に乱歩歌舞伎の妖しい世界へ。
一方、松本幸四郎演じる明智小五郎は、ウズメ舞の一座で潜入捜査中。明智の意外な登場と、笑いと緊張の混じる客席を使った演出など、観客を巻き込みながら目まぐるしくストーリーが展開。そして明智と恩田の対決へと突き進んでいく。
原作小説を歌舞伎に落とし込み、見事に表現される演出の数々。中でもフライングや宙乗りなどのスペクタクルは博多の客席も大いに沸き、クライマックスの大凧を使った宙乗りで興奮は最高潮に。
さらに今回の宙乗りは客席を斜めに横断する「筋交い(すじかい)」と呼ばれるもの。人間豹が客席上空を大胆不敵に逃げ去って行く妖しい最後に、大きな拍手が送られた。
続いての演目は初めて歌舞伎として上演される舞踊劇「鵜の殿様」。家来の太郎冠者を松本幸四郎が、大名を息子の市川染五郎が勤めた。
鵜飼の真似事をマイムのような動きを取り入れて表現し、客席は何度も大きな笑いが起きる。「江戸宵闇~」とは対照的なユーモラスな演目に客席も笑顔に包まれた。
公演は今月18日(日)まで、絶賛上演中。ただいまチケット販売中。詳細は下記公演概要欄「チケット情報はこちら」よりご確認ください。