南座「三月花形歌舞伎」初日開幕!中村壱太郎、尾上右近、中村隼人ら次代を担う平成世代の俳優陣が熱演!

中村壱太郎、尾上右近、中村隼人と活躍著しい花形俳優陣が競演する「三月花形歌舞伎」の初日が賑々しく開幕した!

3月2日(土)初日開幕を心待ちにしている多くのお客様が集まる中、公演に先駆け、劇場前に中村壱太郎、尾上右近、中村隼人が登場し、挨拶が行われた。

中村壱太郎「今日から三月花形歌舞伎が初日を迎えます。私たち平成世代の歌舞伎俳優が、3月24日(日)まで熱い熱い舞台を繰り広げます。お芝居はもちろん、劇場内でお楽しみいただける要素もたくさんご用意しています。ぜひ何度も何度も、ご観劇いただければと思います!」

尾上右近「尾上右近でございます!壱太郎さんが申し上げたいことを言ってくださったので、僕はマイクパフォーマンスをさせていただきます!とにかく見に来てください!見に来てねー!!」

中村隼人「三月花形歌舞伎に出演させていただけること、本当に嬉しく思っております。『女殺油地獄』、『河庄』、『将門』、素晴らしい作品が並んでおります。命がけで臨んでまいりますので、ぜひよろしくお願いいたします!」

そして最後には、公演の成功を願って壱太郎の発声で一本締めを行い、劇場前につめかけたお客様は大盛り上がり。大きな拍手の中、イベントは終了した。

【松プログラム】では近松門左衛門の名作のうち、『心中天網島』より、人情味あふれる上方和事の代表作『河庄』、【桜プログラム】では親子の情や若者の刹那的な激情を描く『女殺油地獄』、錦絵のような美しさと迫力に満ちた舞踊劇『将門』と、歌舞伎の醍醐味を味わうことができる三演目が上演される。プログラム毎に演目や演出替えをし、さらに出演者三名がそれぞれの演目で初役に臨む、必見の舞台だ。

午前の部

乍憚手引き口上【松プログラム】
大きな拍手に迎えられ、舞台の解説を勤める中村壱太郎が登場。
「ようこそお越しくださいました!多くのお客様にご来場いただきまして、誠にありがとうございます。少しでもお客様との距離を縮めたいという思いと、平成世代で古典の演目に挑ませていただくこの公演へ意気込みをお伝えしたく、登場いたしました。」という挨拶から始まり、午前の部で上演する『河庄』、『将門』の魅力や注目ポイントを解説。
客席の期待感も膨らむ。南座の公式キャラクター・みなみーなも登場しての撮影タイムも設けられ、壱太郎は大勢のお客様を前に「千穐楽24日まで、精一杯勤めますので、皆様の温かいご声援をよろしくお願いいたします!」と呼びかけ、幕となった。

一、『心中天網島 河庄』【松プログラム】
妻がいながらも遊女に入れあげる紙屋治兵衛を、中村鴈治郎指導の下、尾上右近が初役で挑む。右近扮する治兵衛は、中村壱太郎扮する小春と心中の約束までしていたが、小春が客の侍に「死なずに済むようにしてほしい」と頼んでいるところを見てしまい、激昂する。実はその侍は中村隼人扮する治兵衛の兄・粉屋孫右衛門。小春を心から愛する一方で、裏切られたと感じ激しい怒りの炎を燃やす治兵衛の様子を右近が力演。一方で諭そうとする兄・孫右衛門と、小春に手をあげようとする治兵衛のやりとりにはおかしさがにじみ、客席からはたびたび笑い声が起こった。男女の別れという深刻な状況ながらも面白さが介在する上方歌舞伎らしい場面を、三人が見事に表現。幕切れでは客席から、三人へ賞賛の拍手が送られた。

二、『忍夜恋曲者 将門』【松プログラム】
常磐津の名曲のひとつであり、華やかな踊りと、派手な立廻り、スペクタクルな仕掛けと見どころ満載の『将門』は、壱太郎が初役で傾城如月実は滝夜叉姫を演じる。滝夜叉姫に相対する大宅太郎光圀を演じるのは隼人。壱太郎は冒頭、傾城如月として色気と品格を堂々と表現し、艶やかな踊りに観客はうっとりした様子で舞台を見つめる。しかし、光圀に問い詰められ、滝夜叉姫の「無念、口惜しや」の台詞から雰囲気は一転。おどろおどろしい雰囲気が劇場を包み込む。滝夜叉姫は、光圀とともに迫力満点の立廻りをみせ、客席を圧倒。客席からは時折感嘆の声がもれた。そして終盤、大蝦蟇(おおがま)を従えての「屋体崩し」と呼ばれる歌舞伎ならではのスペクタクルな仕掛けののち、滝夜叉姫と光圀の見得で幕となり、万雷の拍手が響いた。

午後の部

乍憚手引き口上【桜プログラム】
解説役に尾上右近が扮装で登場。
右近は「かくも賑々しくご来場賜りまして誠にありがとうございます。」とご挨拶。
「私はこの平成世代の三月花形歌舞伎の初回から出演させていただいております。はじめて古典の作品の主役を勤めさせていただいたのがこの三月花形歌舞伎でございました。毎日高校球児のような思いで勤めた、大変思い入れのある公演でございます」と公演への思いを語った。
続いて桜プログラムで上演する『女殺油地獄』と『将門』の見どころを話すと、右近は「役者も演じ方が様々ございますように、ご覧いただき方も様々でございます。ご自由に楽しくご覧くださいませ」と案内した。最後に南座の公式キャラスター・みなみーなも登場し、撮影タイムが設けられ、右近も花道から客席へアピールしながら幕となった。

一、『女殺油地獄』【桜プログラム】
片岡仁左衛門監修で、衝動的に殺人を犯してしまう若者・河内屋与兵衛を中村隼人が勤める。与兵衛は放蕩三昧で喧嘩ばかり。通りかかった壱太郎扮する近所の豊嶋屋お吉に手助けされるが、帰ってきた右近扮する豊嶋屋七左衛門に不義を疑われ、すごすごと帰っていく。さらに与兵衛は金の無心のため家族に手を上げる始末で、とうとう勘当を言い渡されてしまう。やりたい放題の与兵衛ではあるが、名残惜しそうに実家を振り返り、若者らしい弱さがにじませる。そして、借金しようと豊嶋屋にやってきた与兵衛は、お吉から両親の与兵衛を思う慈愛あふれる心を知る。事実を知った与兵衛はもう親に迷惑はかけられないと、心揺れ動くさまを真に迫った表情で魅せ、観客を引き込んでいく。そして終盤、与兵衛が油まみれになりながらお吉を手にかける場面では、鬼気迫る様子で、客席を圧倒。若者の刹那的な激情、そして取り返しのつかないことをしてしまったという動揺といった、感情の変化を巧みに演じ、万雷の拍手が劇場を包み込んだ。

二、『忍夜恋曲者 将門』【桜プログラム】
常磐津の名曲のひとつであり、華やかな踊りと、派手な立廻り、スペクタクルな仕掛けと見どころ満載の『将門』は、壱太郎が初役で傾城如月実は滝夜叉姫を演じる。滝夜叉姫に相対する大宅太郎光圀を演じるのは右近。傾城如月は色気と風格たっぷりに光圀を口説くクドキの場面では、壱太郎の舞踊の技量が光る。続いて光圀が将門の合戦の様子を語り、こちらも武将らしい貫録で観客に魅了する。二人による華やかな踊りののち、滝夜叉姫が正体を顕し、いよいよ目の離せない立廻りの場面となる。現れた大蝦蟇と大立廻りを見せる右近。大蝦蟇を退けると、松プログラムとは異なり、滝夜叉姫がスッポンより現れ、花道から悠々と去っていく趣向で、滝夜叉姫の妖しげな美しさが客席を魅了する。それぞれの演出の違いも楽しめる演目で、割れんばかりの拍手の中、初日の舞台は終演となった。

花形俳優による清新な配役で熱気あふれる「三月花形歌舞伎」を観にぜひ京都・南座へ!
公演は3月24日(土)まで。(3月7日(木)・3月14日(木)は休演日)