とある映画のワンシーンを形に
TEAM NACSの5人それぞれが表現したい世界を形にする「TEAM NACS Solo Project 5D2 -FIVE DIMENSIONS Ⅱ-」から、戸次重幸のソロプロジェクトによる舞台が東京・大阪・札幌にて開催される。
「『幾つの大罪』は、実は5D2企画以前から考えていたんです。とある映画のワンシーンをどうしても再現したくて、そのためにはどう話を作ったらいいか……と、自分の中では変わった着眼点から作っていきました。昔、映画を劇場で観たときから、いつか形にしたいと思っていたんです」
メンバーの中でも、定期的にソロプロジェクトを実施している戸次。そのモチベーションの源をこう語る。
「誤解を恐れずに言うと“僕が一番楽しみたい”からです。仕事として芝居をさせていただいていると、いろいろと制約があったりするので、初めて芝居をしたときのような楽しさを感じづらくなるんです。それは、どんな職業でもきっとそうだと思いますが、ソロプロジェクトなら、あの頃の感情を味わえる、という非常に利己的な理由がモチベーションです。だからこそ、定期的にやりたいことの一つになっています」
今回は須賀健太、馬場ふみか、波岡一喜ら魅力的な7名のキャストが名を連ねるが、彼らにも芝居を楽しんでもらいたいと話す。
「“僕が一番楽しみたい”という意義でやっていますから、キャストの皆さんにも同じように感じてもらえたら嬉しいです。稽古場で少しでもストレスを感じたのなら、気兼ねなく挙手で申告してもらいたいと思っています(笑)。先日、スチール撮影があったのですが、『それが僕のモットーなので、ぜひ皆さんも存分に楽しんでください』とお伝えしました。こんなに豪華な方々が賛同してくれたこと、本当に感謝しています。集まってくださった皆さんにも、お芝居本来の“演じる楽しさ”を感じてもらえたら幸いです」
今回の物語は、あるゴシップ誌の記者が死刑囚らへ取材していく中で、囚人たちが謎の死を遂げ、予測不能の結末へと向かっていくという重厚なストーリー。戸次は本作で、作、演出、出演を務めるが、自分の役割は“案内係”だという。
「確かに演出はしますが、自分のことを演出家だとは思っていなくて、ただ脚本を書いた人。僕が書いたものなので、演出というよりも書いたときのイメージを正確に伝える作業だと思っています。この作品の案内係ですね。僕は、人間の汚いところをセリフに乗せて言うのが好きで、赤裸々な欲望とかを、お芝居の力を借りて世に放ちたいんです。今回は、誰もが思っているであろうマイナスな要素を、大切に出し尽くしたつもりです」
人の暗部に切り込んでいく一方で、戸次らしい笑える場面もふんだんに用意されている。
「テーマとしては非常に重いですが、僕が作るものですから笑えるシーンもたくさんありますので、ぜひ気軽な気持ちで劇場に足を運んでください。鬱陶しいくらいのカタルシスを感じてもらえるはずです」
インタビュー&文/宮崎新之
Photo/植田真紗美
※構成/月刊ローチケ編集部 3月15日号より転載
掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
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【プロフィール】
戸次重幸
■トツギ シゲユキ
演劇ユニット「TEAM NACS」メンバー。「おにぎりあたためますか」(HTB)や「ハナタレナックス」(HTB)などにレギュラー出演している他、「SONGS」(NHK総合)ではナレーションも担当している。現在、ドラマ「スタンドUPスタート」(CX)に出演中。