舞台「文豪とアルケミスト 旗手達ノ協奏(デュエット)」谷佳樹×杉江大志×泰江和明 インタビュー

人々の記憶から文学が奪われる前に、文豪と共に敵である“侵蝕者”から文学書を守りぬくことを目指すシミュレーションゲーム『文豪とアルケミスト』。2019年に舞台化されて、2024年6月6日よりシリーズ7作目となる舞台「文豪とアルケミスト 旗手達ノ協奏(デュエット)」が上演される。

今回は、志賀直哉がかつての友・小林多喜二と大きな危機に瀕した世界に抗う姿が描かれる。第一作目から引き続き志賀直哉役を谷佳樹、武者小路実篤役を杉江大志が演じるほか、有島武郎役の杉咲真広、里見とん役の澤邊寧央の続投が決定。本作のキーとなる小林多喜二役を泰江和明が演じる。また、石川啄木役を櫻井圭登、高村光太郎役を松井勇歩、広津和郎役を新正俊が務め、白樺派が全員揃っての出演となる。
谷佳樹、杉江大志、泰江和明に、今回の見どころや意気込みを伺った。

わかりやすい物語だからこそ、思いが重要

――台本を読んだ感想を教えてください

杉江 感想は、わかりやすくて難しくない。今回のお話は目的がすごくシンプルなので、志賀(直哉)と(小林)多喜二がどこまで思いを乗せてくれるかで雰囲気が変わる作品じゃないかと思いました。

 (杉江)大志が言うように、志賀と多喜二によって厚みも色も変わってくるでしょうし、僕らが出し切らないと「あっさり終わっちゃった」と思われそう。諸刃の剣でもあるので、セリフの裏にある思いをしっかり乗せていかないと。志賀と多喜二の関係性もそうだし、志賀にとっては白樺派という守るべきものもあるし。志賀と武者(武者小路実篤)の信頼も素敵に描かれていてお互いのつながりが濃く感じられます。シンプルイズベストみたいな。

泰江 お二人の感想を聞いて、思いがひしひしと伝わってきました。内容はシンプルに面白いし、わかりやすいと思いました。実在した人々のバックボーンがありつつ、本当は出会わなかった人たちも出会う世界線を素直に「面白い!」と感じましたね。いろいろなキャラクターにたくさんの思いを乗せられるし探れるのが「文劇」の魅力だし、頑張らないといけないと感じました。

――シンプルでわかりやすい、キャラクター同士の関係性が魅力というお話が出ましたが、他に今回の見どころになりそうなポイントはどこでしょう?

杉江 白樺派が全員揃って、お客さんも関係性やチーム感を楽しみにしていると思います。僕らもそこを見どころにできるようにしっかり作っていきたいですね。今回は志賀と多喜二が軸になっていますが、谷やんも言っていたように、志賀と武者の関係性は立ち位置が変わっても変わらない。いいバランスが取れていると思いました。

 白樺派にキュンとさせられますよね。ピンチの時とか「待ってました!」という時に来てくれる。王子集団だと感じます。脚本でも書いていただいているので、カッコよく決めないと。ただ、それだけだと面白くないですし、大志がいろいろとぶちこんでくると思います。

杉江 そんなこと言うなら、ありとあらゆるシーンに入れるからね!

 無茶ぶりされないように、一番遠く、目につかないところに隠れてるから(笑)。

杉江 わかった。じゃあ舞台を広く使ってボケていこう。お客さんに感動する暇なんて与えないよ!(笑)。お客さんが「泣きそう……」ってなったら爆笑に変えてやるから。笑いながら泣いちゃうような作品を目指したいですね。

泰江 お二人が「文劇」で築き上げてきた絆がありつつ、僕が新たに参加させていただいて、どう作り上げていけるか。お二人がこれまでとは違う立ち位置になるのも、新しく参加するキャラクターとの関係性も、シリーズだから見せられるものだと思いますし。すごいですよね、「文劇」って。

 小林多喜二はキーになってくる大事な役。カッコいい見せ場もたくさんあるから楽しみだよね。周りも刺激を受けて乗っていくと思うし。そこは泰江くんに託して。

杉江 軸を担わなきゃいけない役だから、ボケるのは1回でいいよ。

 ボケられるとこある?

杉江 さっき決めた。志賀と一緒のシーンは絶対に何かやる。先日舞台「文豪とアルケミスト 異端者ノ円舞(ワルツ)」を久しぶりに見たら、台詞とアドリブが混ざり合って、笑って真面目なシーンもあってバランスがいいなと思ったので、今回もそういう形を目指したいです。

それぞれのキャラクターでバトンを繋いでいけたら

――初参加の泰江さんから、谷さんと杉江さんに聞きたいことはありますか?

泰江 1作目、2作目とシリーズの土台を作ったお二人なのでいろいろあるんですが、シンプルに「文劇」って何が一番大変ですか?

杉江 殺陣じゃない?

 あと、吉谷さんの演出を初めて受けた時に、すごく細かい指示が無限にあって驚いた。まず段取りを追わないといけない。

杉江 シーンの絵作りをすごく大事にする方だよね。あと、喋りながら戦うのが大変だよね。

 お互いの手数を合わせながらセリフも言うから、今は何手目?って確認しながら。

杉江 殺陣をして、止まってセリフじゃなくて喋りながら戦うことが多かったイメージ。いやだな……。

一同 (笑)。

 本当に、そう思うくらいしんどいと思う(笑)。逆に経験してないほうが「やってやるぞ!」って気持ちだけで入れるからいいかも。

杉江 中心にいる時は殺陣が大変だからね。

泰江 でも、さっきお話ししていたように、もう一回見て「やっぱり面白い」と思えるくらい全力を注げたんだなって思いました。

 順番としては、白樺派が頑張って、志賀が頑張って、多喜二が頑張って。バトンを繋いでいけたらいいよね。

杉江 多分だけど、白樺派、志賀、志賀と多喜二が頑張るから(笑)。

 ずっと頑張ります。見応えはあると思います!

――初出演のキャラクターも多いですが、気になるキャラ、キャストはいますか?

杉江 有島(武郎)(演:杉咲真広)とは会ってるけど、他のみんなはやっと会えるなというところですかね。

泰江 第一弾のキービジュアルで白樺派を見た時はすごくワクワクしました。エモさもあるし、シンプルに「見たい!」って思いました。

 (櫻井)圭登とは共演したことがあるけど、今回どんな役作りでくるのか興味がありますし、(松井)勇歩くんもどんな感じだろう。キャラというよりは、みんながどうアプローチしてくるか興味があります。みんな素敵だから楽しみだよね。

――それぞれが演じる文豪の印象、魅力を教えてください

泰江 多喜二は言いたいことが言えない時代にずっと言い続け、捕まり、それでもなお言い続ける。今の時代でも難しいことですが、その熱量はすごいなと思います。単に耐えるんじゃなく、原動力があってのことだと思うと、めちゃくちゃ熱い人だなと思います。それが「文アル」における強さになっているのかなと。舞台でどう表現できるかは、稽古を通して皆さんと一緒に作っていけたら。あとはなんと言ってもビジュアルはカッコいい!

 志賀は、まっすぐで仲間思い、仲間と認めたら誰より熱く守るのが志賀直哉だと思いますし、貴族階級と言われながらもそれに疑問を持つのが人間らしいと感じます。口調は強いと言うか冷たい印象を持たれるけど、仲間と会話する中で緩くなる瞬間もある。今回は白樺派がたくさんいるので、そういった表情も自分の中で発見していきたいと思います。色々な一面を見せられたら。

杉江 今の流れでいくと、志賀は人間臭くて、武者はちょっと人間離れしているのかも。根幹にあるのは意志の強さで、ブレない部分が人間離れしている。でも、何があっても自分の意思で進む道を選んで、まっすぐ進んでいく。ちょっと神々しさを感じますね。

 逆だよね。志賀は見た目強そうで繊細。いつも武者に助けられてる。

杉江 いつも悩んでて、それを武者が支えている。やっぱりこの二人で白樺派の筆頭だと思いますね。

想像を超える作品を全力で作り上げたい

――これまで二作に参加している谷さん・杉江さん、初参加の泰江さん、それぞれから見た舞台「文豪とアルケミスト」の魅力とは

杉江 いろいろあると思うけど、作り方が無限大ってところが一つです。軸に持ってくる文豪が変われば作風も作品もガラッと変わる。文豪の数だけドラマがあるのが良さであり、人気の理由だと思いますね。毎回雰囲気が全然違う。あとは自由さですね。

 僕が思う良さは、どこをとっても美味しいところ。アンサンブルのみんなのパフォーマンスも含め、派手さもあるし聞き入っちゃうところもあるし、文豪が持っている闇にも触れられる。総合エンターテインメントとして仕上がっているので何度見ても楽しいし、目が足りない。お客様から「近くでも見たいし引きでも定点でも見たい」と言っていただくことが多くて、「文劇」の魔法だと思います。

泰江 本来出会わなかった人たちが出会うこともあるし、メッセージ性の強さもあって、今の時代の人たちにも響くものがある。あと、本来の文豪は戦わないけど、「文劇」では戦うし、踊る。それが面白いと思います。 そして、お二人の話を聞いていて、自由度がとても高いと感じました。僕に見えている範囲だけじゃないんだろうなとひしひしと伝わります。そういう質問になった時の二人の雰囲気が引き締まるのをすごく感じる。それが「文劇」なんだと思いました。

――楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします

泰江 ここまで話したことが全てですが、7作目でシリーズ1作目・2作目を作ったお二人が帰ってくるのもそうだし、小林多喜二が登場するし、楽しみにしてほしいです。ここまで愛されている作品を大事に僕らも突き進んでいきますし、皆さんの想像を越えられるように頑張っていきたいです。

杉江 皆さん待っていましたよね。1作目・2作目をやって7作目です。僕も待っていました。やっと帰って来ることができて嬉しいですし気合いも入っています。ちゃんとやらないと次は12作目まで出られないかも。“「文劇」に白樺派あり”、“「文劇」に武者小路実篤あり”と知らしめないと。真面目な話でいくと、武者として志賀を支えて、杉江大志としても谷佳樹を支えたいなと思います。あとは、いっても1作目・2作目を作ったのは僕らなので。

 あんまり言うなって(笑)。

杉江 他の作品に対する対抗意識みたいなものもあります。お客さんも「「文劇」ってそうだった」と感じる、笑って泣けるジェットコースターみたいな作品を目指すので楽しみにしていてください。気合い入ってます!

 僕も気合が入っていますし、二人の並々ならぬ気合も感じます。ぶっ倒れる覚悟で向かっていくので、ぜひ見にきてください!

杉江 壊れちゃうと出られないから、ギリギリ手前を目指して。

一同 (笑)。

※里見とんの「とん」は「弓へんに享」が正式表記
撮影・文/吉田 沙奈
ヘアメイク/太田夢子(earch)、神田愛美(earch)
スタイリスト/小林洋治郎
衣装協力/
【谷佳樹】
シャツ/Casper John/Sian PR
【杉江大志】
メッシュロンT/AIVER/Sian PR
【泰江和明】
シャツ/wizzard/TEENY RANCH
ブルゾン/CULLNI/CULLNI FLAGSHIP STORE
パンツ/CULLNI/CULLNI FLAGSHIP STORE
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