Venus of TOKYO 長谷川達也 インタビュー

日本初の常設イマーシブシアター『Venus of TOKYO』誕生

 

ストリートダンスとコンテンポラリーダンスを融合させたパフォーマンスと、物語性の強い作品で、新しいエンターテインメントに挑戦し続けているダンスカンパニーDAZZLE。近年は体験型公演と言われるイマーシブシアターの制作に挑戦し、話題作を次々と上演している。

長谷川「DAZZLEのダンスには常に物語があります。人によってはダンスに言葉を使うのはナンセンスだとも言われましたが、僕は観ている人が感動すればその手法はなんでもいいと思っているので、これまでも映像やテキストを舞台上に表示したり、いろいろなことを試してきました。イマーシブシアターとの出会いは数年前。当時、ニューヨークで100ドル払う価値のある芝居に選ばれていた『Sleep no more』を観たのが最初。作品形態や美術の面白さに感銘を受け、DAZZLEだったらより緻密で奥深い作品にできるんじゃないかと思い、すぐに日本で開催することを決めました」


イマーシブシアターは2000年代にロンドンから始まった“体験型公演”の総称。まさにDAZZLEにピッタリの新しい公演スタイル。

長谷川「舞台として使うのは病院やホテルなど、既存の劇場ではない場所。その全ての場所がパフォーマンス空間になっていて、同時多発的にいろいろなことが起こります。観客は席に座らず、自分が見たいところを選びながら観劇していく。登場人物に興味があればキャラクターを追い、ダンスが見たければ音の鳴るほうに行けばいいというように、作品への関わり方を自分で選べるのが面白さです」


4月には東京・お台場ヴィーナスフォートに常設としては日本初のイマーシブシアター上演施設「Venus of TOKYO」をオープンさせることが決定。

長谷川「空間自体、我々がゼロからデザインをしています。現在、制作の真っ最中ですが、異世界に入っていく不思議な空間ができあがっています」


舞台がお台場というのも作品と大きな関わりがあるという。

長谷川「場所がヴィーナスフォートなので、“ミロのヴィーナス像”にまつわる物語になります。みなさんが知っているヴィーナス像には両腕がありませんが、本来は両腕があり、左手には不死の林檎が握られていたそうです。今回は、その林檎が『Venus of TOKYO』で開催するオークションに出品されるという噂から物語が始まります」


初めてイマーシブシアターを知る人にとっては、驚異的な観劇体験になるのは間違いない。

長谷川「今回はイマーシブシアターに馴染みのない方も入りやすいように、事前に物語の概要を説明する時間を設けています。登場人物の数だけストーリーがあるので、体験する人によって違う話が出来上がっていく。観る人によってはミステリーでもあり、ヒューマンドラマでもあり、サイエンスフィクションにもなる。観劇後にSNSで情報交換して答え合わせをしていくのも『Venus of TOKYO』、イマーシブシアターの面白さかなと思っています」


リアルな観劇だけでなく、オンラインでの配信も予定されている。DAZZLEの仕掛けは二重三重に張り巡らされ、興味は尽きない。

長谷川「配信は、会場内を見て回るだけではなく、視聴者の選択によって物語が変化するマルチストーリーのオンラインコンテンツにしたいと思っています。なので、リアル空間で楽しんだ人も配信で再び楽しめる仕掛けになっています。とにかく印象深い、忘れられない体験になると思いますのでぜひ会場に遊びにきてください」

 

インタビュー・文/高畠正人

 

※構成/月刊ローチケ編集部 4月15日号より転載

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【プロフィール】
長谷川達也
■ハセガワ タツヤ ダンスカンパニーDAZZLE主宰者。演出家、振付家、ダンサーとして多くのアーティストの作品へも参加している。