『ヘッダ・ガブラー』 寺島しのぶ インタビュー

強烈な女性像と人間模様が炸裂するイプセン戯曲

『人形の家』で知られるヘンリック・イプセンのもうひとつの代表作『ヘッダ・ガブラー』。主人公のヘッダは、近代的女性像の象徴として、『人形の家』のノラと並んで幾度も演じられてきたヒロインだ。環境や美貌、才気に恵まれながら、生きる目的を持てず焦燥感にかられるヘッダ。現代社会を生きる私たちにも身近に感じられるようなその女性像を演じるのは寺島しのぶである。

寺島「翻訳劇には、文化や宗教の違いから、物語の背景がわかりづらいものもあるんですけど、この作品はもう、題名の通りヘッダ・ガブラーという女性のお話。しっかりと人間が描かれているのでわかりやすいと思います。ただ、だからこそ、役者の力が問われるとも思うんです。ヘッダにしても、自分の現状が不満だから、と生きがいを見つけた人の邪魔をしちゃうような困ったちゃん(笑)。そこを、人間だから間違えることもあるよねと、面白がっていただけるのが芝居の楽しさでもあると思うので。この人間像をどう立ち上げていけるのか、私自身も楽しみなんです」

 

演出は、最近『アルカディア』で組んだ栗山民也。

寺島「余白が多いホンなので、正解は山ほどあると思うんです。そのなかで男性である栗山さんがこのヘッダ・ガブラーをどう解釈してどう料理されるのか。そして、私は私で読み込んで自分の解釈も提示しながら、どう表現するのか演技を選択していく。もしかしたら戦うところも出てくるかもしれないですけど(笑)、役者としては楽しい作業になると思います」

 

おまけに、小日向文世、池田成志、水野美紀、段田安則など、共演者もパワフルだ。

寺島「小日向さん以外は初共演で、小日向さんとも久しぶり。しかも、普通のお芝居をする人たちではないので(笑)、こういう方たちとお芝居できるのは非常に幸せなことですよね。役としても、ヘッダの周りもへんてこな人たちばかりなんです。それをこの味のある役者さんたちがどう演じられるか。19世紀末に書かれたものですけど、強さや弱さや、人間が持っているいろんな面が出せて、人間模様を巧みに見せていけば、『なんて滑稽な人たちなんだろう』と、今の方たちにも楽しんでもらえるはずだと思っています」

 

インタビュー・文/大内弓子
Photo /篠塚ようこ
ヘアメイク/片桐直樹(EFFECTOR)
スタイリング/中井綾子(crepe)

 

※構成/月刊ローチケ編集部 3月15日号より転載
※写真は本誌とは異なります

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【プロフィール】
寺島しのぶ
■テラジマ シノブ ’72年生まれ。映画『オー・ルーシー!』(4/28[土])、『のみとり侍』(5/18[金])が公開予定。