7/31(金)の公演初日の前に行われた、ゲネプロの様子が到着!
原作の『憂国のモリアーティ』は、集英社「ジャンプSQ.」で2016年8月から連載されている、構成/竹内良輔氏、漫画/三好 輝氏による人気漫画。コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」を原案に、ホームズ最大の宿敵であるモリアーティ教授視点で再構築された物語。
上流階級の人間達に支配され差別が蔓延している19世紀末の「大英帝国」を舞台に、階級制度による悪を取り除き、理想の国を作ろうとするモリアーティと、宿敵シャーロック・ホームズの戦いを中心に描かれます。
脚本・演出にはダイナミックな物語創りと繊細な心理描写を得意とし、幅広い物語作りの技巧に定評がある劇団「InnocentSphere」(イノセントスフィア)の西森英行氏を迎え、音楽は多数の企業CMを手がけ、演奏家としても多くのアーティストの作品に参加している、ただすけ氏が担当。ピアノとヴァイオリンの生演奏を交えた舞台作品という、ライブエンターテイメントならではの魅力を楽しめるミュージカルに仕上げている。
7/31(金)に天王洲 銀河劇場にて東京公演が開幕。公演にかけるキャストの思いと、ゲネプロの様子のレポートと舞台写真が届いた。
オフィシャルゲネプロレポート
静かなピアノの音色に始まり、登場人物が歌い継いでいく力強いオープニング楽曲でミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.2は幕を開けた。全てを震わせるような歌声が劇場を包み込み、19世紀末のロンドンへ観客を導いていく。前作より大幅に曲数が増し、各キャラクターの見せ場も増えた印象。ピアノは境田桃子、ヴァイオリンは林周雅が続投しており、場面の情緒や緊迫感を盛り上げる。役者陣との呼吸もピッタリだ。第1楽章《バスカヴィル家の狩り》では、貧民街の子どもを狩りの獲物に使う悪の貴族たちを討伐する「モリアーティ・チーム」を描く。
「犯罪卿」の頭脳であるウィリアム(鈴木勝吾)を中心として、彼に忠誠を誓うフレッド(赤澤遼太郎)とモラン(井澤勇貴)、そしてウィリアムの弟・ルイス(山本一慶)による華麗なアクションシーンが繰り広げられる。前作では封じていたウィリアムの仕込み杖も登場。身のこなしや言動に各々の性格が滲む。モリアーティ3兄弟とその仲間たちが歌い上げる哀しくも美しい楽曲が、後には引けない彼らの正義感を印象付けていた。一方、「ホームズ・チーム」の近況から始まるのが第2楽章《二人の探偵》。今や名探偵として知られるようになったシャーロック・ホームズ(平野良)だが、「犯罪卿」に仕掛けられた事件の後は鬱々とした日々を過ごしていた。前作で描かれた最初の事件(※原作「シャーロック・ホームズの研究」)を相棒・ワトソン(鎌苅健太)が解説する一節は、彼が『緋色の研究』を執筆した作者である、という設定を上手く引用している。西森英行の脚本・演出は細部まで抜かりない。
第2楽章では、急行列車の中で再会したウィリアムとシャーロックが、車内で起こった殺人事件を解き明かす。登場人物を原作から増やし、ダンスとリズミカルな楽曲で賑やかなイメージに。レストレード警部(髙木俊)のコメディセンスも効いている。本来、敵同士である「犯罪卿」ウィリアムと「探偵」シャーロックのふたりが、目を輝かせてデュエットするシーンは胸躍る仕上がりだ。
続く第3楽章と第4楽章は、公演サブタイトルでもある《大英帝国の醜聞》。「The Woman」と呼ばれる美女、アイリーン・アドラー(大湖せしる)が、英国王室の秘密文書を盗み出したことに端を発する大騒動である。秘密情報部・MI6を率いるアルバート家の長男・アルバート(久保田秀敏)と、陸軍情報部の長官であるマイクロフト・ホームズ(根本正勝)の大人の色香が漂う駆け引き、兄・マイクロフトやアイリーンに振り回されるシャーロック、アイリーンと221Bの大家であるハドソン(七木奏音)が火花を散らすコミカルなバトルなど、見どころが盛り沢山。「The Woman」が「犯罪卿」と「探偵」の双方を巻き込んでいく怒涛の展開から目が離せない。
仮面舞踏会やオペラといった華やかな群舞や歌唱シーンは、まさに“ミュージカル”ならでは。犯罪を巡るダークな雰囲気と重厚な楽曲が混ざり合い、独特の魅力を放っている。主演の鈴木勝吾と平野良の個性、歌唱力を生かした見せ場はもちろん、歌唱を“効かせる”、あるいは台詞で“聴かせる”場面がバランス良く織り交ぜられており、物語の行方に引き込まれていく。特に一幕ラスト、アンサンブルを含めたキャスト全員による楽曲の迫力は圧巻だ。
これは“Obvious(明白/明らかに)”、極上のミュージカルである。
キャストコメント
ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ役:鈴木勝吾
なにより劇場でまたお客様と一緒に舞台を共有できるという喜びに尽きます。ここまで作品作りとはまた別に、このご時世独特の対応を全員が真摯に取り組み今日まで歩んできました。生の空間で仲間とお客様と演劇をすることができる感謝しかありません。見どころは難しいですが、演出・脚本の西森英行さんの頭の中にあるのだと思います。お客様が観たい見方で各シーン、この作品を楽しんで頂けたら幸いです。“憂国”のモリアーティ。サブタイトルが大英帝国の“醜聞”ということで、今このご時世とも不思議とつながる無視できないテーマがたくさん織り込まれています。演劇という小さな革命をこの場所から感じとってもらえたら幸いです。そして「今この瞬間」を楽しむという演劇ならではの空間にどっぷりと浸かってください。
シャーロック・ホームズ役:平野良
約半年ぶりにステージ上でお芝居することに奇跡と感謝を感じています。私もエンタメに救われた1人の人間として、大切に愛しく毎公演を生きたいと思います。前作を超える歌唱パートは見どころのひとつです。そして新しいキャラクターであるマイクロフトとアイリーン、この2人が新しく勢いのある風を持ち込んでくれています。なによりキャスト、スタッフ全員の演劇への情熱が、そこかしこに散らばっていますのでお楽しみに。信じて待っていてくれたファンの皆様、まずは心より感謝申し上げます。私自身、またシャーロックとして生きられることがたまらなく嬉しいです。『この時代にやる意義』をみんなで話し合って大切に大胆に作品作りしました。ピアノとヴァイオリンの旋律と我々のパッションとのセッションを楽しんでいただけたら幸いです。
アルバート・ジェームズ・モリアーティ役:久保田秀敏
こういうご時世ではありますが、舞台を上演できる有り難さと幸せを噛み締めています。キャスト・スタッフ含め、引き続き感染症拡大防止対策に万全を期して最後まで極上の謎をお届けしたいと思います。前回にも増してウィリアムとシャーロックの駆け引き合戦が繰り広げられる今作。僕が演じるアルバートも最大の駆け引きに打って出ます。「モリアーティ陣営」と「ホームズ陣営」のスピード感溢れる謎解き合戦は、心地良ささえ感じます。お楽しみに。不安な気持ちが渦巻く中ですが、こうして皆様に作品をお届けすることができて本当に嬉しいです。 “モリミュ”の何重にも折り重なる音と謎の共鳴をぜひその身で体感してください。
アイリーン・アドラー役:大湖せしる
舞台に立てる事のありがたさを噛み締めています。今まで当たり前のように迎えていた初日も“奇跡”なのだなとあらためて感じております。この作品ではセットや照明や音響、ウィッグやお衣裳なども隈無く見ていただきたいのですが、その中でも「ミュージカルの素晴らしさ」を感じていただけたらと。歌とお芝居の融合により奏でる美しさ。一番の見どころだと思います。このような状況の中でもエンターテイメントを必要とし、観てくださる皆様方の熱い想いがあるからこそ私達は存在できるのだなと強く感じています。皆様の心に焼き付くような作品としてお届けできるよう、努めて参りたいと思っております。
マイクロフト・ホームズ役:根本正勝
このような状況の中、開幕まで来ることができたこと、今まで以上に特別な気持ちです。舞台の素晴らしさを感じつつ、最後まで生きていこうと思います。歌にアクション、華やかさと残酷さ、腹の探り合い、各人物の背負っているものにご注目ください。今日まで真摯に作品と向き合ってきました。このような状況でも劇場へ足を運んでくださる皆様に心より感謝です。最後まで『憂国のモリアーティ』の世界をお楽しみください。
舞台写真
(C)竹内良輔・三好 輝/集英社 (C)ミュージカル『憂国のモリアーティ』プロジェクト