安田顕主演「ボーイズ・イン・ザ・バンド~真夜中のパーティー~」製作発表会見

2020.04.04

舞台「ボーイズ・イン・ザ・バンド~真夜中のパーティ~」の制作発表会見が都内にて行われ、主演の安田顕をはじめ、馬場徹、川久保拓司、富田健太郎、浅利陽介、太田基裕、渡部豪太、大谷良平、鈴木浩介らキャストと、演出の白井晃が登壇した。

本作は1968年にオフブロードウェイで初演され、日本では「真夜中のパーティー」の名で知られている傑作会話劇。初演から50年を迎えた2018年にはブロードウェイで上演され、トニー賞の演劇リバイバル作品賞を受賞している。今回はその日本版として、白井晃による新たな演出、上演台本で上演するという。

舞台は真夏のニューヨークで、あるゲイ男性の誕生日パーティが催され、ゲイ仲間たちが集まってくるが、そこに1人だけストレートの男性がやってきたことで、それぞれの感情に変化が訪れていくという物語だ。

演出を手掛ける白井は「環境が大きく変わっているが、変わったもの、変わっていないものがハッキリでるような作品にしたい。パーティー会場の9人の物語ではあるが、見せたいのは外の世界。どうやって社会と共生すればいいか、実は誰もが闇のようなものを抱えている。そういうところまで広げていけたら」と作品への想いを語った。

主演を務める安田は「オリンピックイヤーの夏を、人生の思い出に残る夏になるように、精一杯やっていきたい」と意気込み、「社会に対して我々に潜んでいる部分って何なのかな、と。なんとなく皆さんと一緒に考えていけたら」と呼びかけた。

おもな登壇者のコメントや質疑応答の内容は以下の通り。

 

――まずはひと言ずつ、挨拶をお願いします

白井「50年以上前に書かれた本作が、今の時代に上演される意味を問われる作品。環境が今とでは大きく変わっていると思うんですが、しかしながら変わらないものもあると思っています。変わってきたもの、変わってないものがハッキリできるような、そういう作品になればと思います。」

安田「2020年のオリンピックイヤーの夏を、白井さん演出のもと、このキャストの皆さんとともに過ごしたいと思います。人生の思い出に残る夏になるように精一杯務めていきたいと思います。」

馬場「白井さんの演出のもと、この題材を50年後の今、やる意味はなんなのかをいろいろ考えながら、模索して素晴らしい作品になるように頑張っていきたいです。」

川久保「まず、この豪華メンバーでやらせていただけることに、すごくワクワクしております。オリンピックよりも熱い空間を皆さんにも楽しんでいただけるように頑張ります。」

富田「今回は本当に歴史ある作品に参加できて本当に幸せです。僕個人の夢であったシアターコクーンに立つということも、とても感慨深いですし、この素敵な大人の皆さんと一緒にこの夏を駆け抜けたいと思います。」

浅利「本日はお集まりいただきありがとうございます。LGBTの方々だけじゃなく、すごく生きづらさだったりをどういうところで持っていくのか、そこが共通点なのかなと思っていて、観に来てくれたお客様にそういうテーマをちゃんと受け取ってもらって、明日への糧というか、僕も頑張ろう、私も挑戦してみようという気持ちになってもらえたらと思います。」

太田「僕自身、はじめましてのキャストの方々、スタッフの方々ばかりなんですけど、まずはその出逢いに感謝しながら、素晴らしい作品の一部になれるように努めてまいります。よろしくお願いします。」

渡部「小さいときから、アメリカ人になりたいなと思い続けていたら、アメリカ人の役が来ました。今も思っています(笑)。多様性が叫ばれる昨今…英語で言うとダイバーシティですが、いろいろな人がいろんなことを思って、いろんな場所で生きている。そういうひとつの鏡になるような素晴らしい戯曲だと思うので、このメンバーで素晴らしい作品を作りたいと思います。」

大谷「台本の初稿を読ませていただいて、めちゃくちゃ面白かったです。同時に、会話の内容がすごく衝撃的。自分にとって今回はとても大きなチャレンジになります。ここにいらっしゃる皆様と力を合わせて頑張りたいと思います。」

鈴木「白井さんの演出のもと、安田さんを中心として、全力でいい舞台にできれば。皆さんの足を引っ張らないように、頑張っていきたいと思います。」

――安田さんは白井さんの演出を受けるのは初めてかと思いますが、どんなことを期待しますか?

安田「初めてはやっぱり皆さんもそうだと思いますが、ドキドキもするし、ワクワクもするし。とにかくお稽古が大好きな先輩とうかがっておりますので、ビシビシとご指導いただければと思っています。先ほど、我々は衣装を着ての写真撮影大会…大会?(笑)いやまぁ、撮影をしたんですが、カメラマンさんが「あまり構えないでください、素の状態を撮りましょう」と言ってくださって、1回撮ってみましょう、次本番、よしOK、とスムーズだったんです。稽古中の演出も、それくらいにしていただけると、と思う次第です。(白井さんが)あんまり笑っていらっしゃらない…(笑)。体を預けて、やれることを精一杯やっていこうと思います。」

――白井さんが、今考えている演出の構想をお聞かせください

白井「50年以上前に発表されたときには、非常に衝撃的なものだったと思いますし、ゲイ社会のものを表に出してきたということ自体が大きな反響を呼んだことだったと思います。そして、この作品の中ではまだエイズの問題は全然出てきていません。この後に大きな社会問題となったものなんです。それによってLGBTのお話、世界観ももっともっと知られるようになっていき、もっと共生、共有していこうという社会になっていったと思っているんです。

今は障がいをもっている方に対しても共生していこうという大きな変動や動きがあります。あるけれども、でも本当に?と思っている部分がどこかあって。共生していこうと思いながら、どこかで人間の、動物の本能として自分を守りたいという想いがある。社会的に違う、厄介な部分にかかってきているんじゃないかなと実は思っています。実は、変わっていないんじゃないか。“変わったこと”によって、“実は残ってきているもの”が見えてきたかな、と。

パーティ会場の9人のお芝居ではあるんですが、実は見せたいのは外の世界。会場の中にいる人たちの人間関係が大きくうねっていくんですが、その中で見えてくる外の社会を見せたいなと思っています。ゲイの方々のパーティなんですが、ちょっと視点を変えると誰にでももっているものだったりすると思うんです。もしひきこもり9人の会話だったとしたらとか…社会になじめない人間たちが、どうやってうまく社会と共生していったらいいか悩んでいる。誰にでもそういう闇みたいなものを持っているんですね。

9人はゲイであることをマイナスに考えて苦しんでいるけども、ちょっと置き換えると同様のものが僕たちにもあるんじゃないかと思うので、そういうところまで広がっていければいいなと思っています。」

――“男が男に惚れる”とはよく使われる表現ですが、実際にそういう気持ちになった方は?

安田「男が男に、惚れたっ! っていう奴ね。うん…(笑)」

川久保「僕は安田さんにありますよ。数回、舞台をご一緒させていただいたことがありまして、本当にストイックで舞台に対する準備、トレーニング、セリフの入り方もずば抜けて素晴らしかったんです。見習わなくちゃ、と思っていたんですけど、お酒が入るとだらしないというか、どうしようもないな!…っていうスキを作ってくれる。こんな先輩になりたいです。」

安田「福岡のなじみの屋台で川久保君と飲んでいたんですけど、屋台の柱に寄り掛かったら、屋台ごと壊しちゃったんだよね(笑)。今回は、そういうご時世でもないので。きちんと、わきまえつつ芝居に臨んでいきたいと思います(笑)」

馬場「僕は、大事な場面でミスをしてしまった、みたいなときに、それはしょうがない、解決するためにこうしよう、と、その場で次のアイデアを提案していく人。男らしくてカッコいいですよね。」

富田「僕は小さいときから、尾崎豊さんが家でずっと流れていて。セクシーだし、言葉に感情がこもっていて、こんなふうに心が震えるようなお芝居ができる役者になりたいな、とか考えさせてくれた、すごく好きな人です。」

浅利「桂吉弥さんとか…落語家さんですね。大勢の人の前に一人だけで入って、1時間くらいパーッとしゃべって、そのあと楽屋でも一人で。あのプレッシャーの中で、お客さんの懐をくすぐるのってスゴイなって思っているんです。だから、落語家さんですね。ハートの強さを見習うというか…できないって思っちゃう。」

太田「ついさっきなんですけど、控室で渡部さんに。「太田君、コーヒー飲む?」って声をかけてくださって、優しい方だなと思って、その瞬間に落ちました(笑)」

渡部「先日「男はつらいよ」の50作目を拝見して、とても美しい日本語を喋ってらして、寅さんを思い出すシーンには男が惚れる寅さんがいました。渥美清さんが演じられる、車寅次郎ですね。」

鈴木「安田さんと飲んでいるとき、もう一杯いいですか?って言うと絶対にノーと言わない安田さんは、器が大きいな、と思いますね。だから、来世では結婚しようかと思います(笑)」

安田「同じ墓に入ってください(笑)。僕は…壁ドンとかね。いいんじゃないですかね。壁ドンしていただいて、決めたいと思います。稽古中とか、合間合間でコミュニケーションで一人一人にしていただいて(笑)」

鈴木「めんどくせぇな(笑)」

大谷「安田さんは本当にお酒を飲むと男気が増してめっちゃかっこいいんですけど…隣の鈴木さん。ドラマでご一緒した時に、お酒を飲んで次の日の撮影で苦しまれていたんですけど、本番はバシッと決めるんですよ。直前まですごい休まれてたのに、決めるとこ決めるオンオフ。そこは男として…」

鈴木「とりあえず白井さん、禁酒にしましょう(笑)」

安田「うん、禁酒ですね(笑)」

――役作りについてはどう考えていますか?

安田「これから詰めていくことになると思うんですけど、心っていうのはなかなか難しいこと。女装しないまでも、それぞれの美意識というものは高い気がするんです。価値観とか。それぞれ9人の個性の中で、どんな美意識の持ち方をお客さんに感じさせるか。そういうアプローチができたらいいなと思います。」

 

――唯一のストレート役の大谷さんからみて、ゲイの素養がありそうな人は?

大谷「えー、あの、先に謝っておきます。すいません、…白井さんですね。」

鈴木「千本ノック決定じゃないですか(笑)」

大谷「髪型とか風貌が…すいません、なんかこう、ヨーロッパの音楽家のような感じをまとっていらっしゃるので…。いや、すいません。」

安田「この質問が全然ダメとかじゃなく、本当にいい、ありがたい質問だと思うんですけど、「ボーイズ・イン・ザ・バンド」というものが持っている作品のテーマ性って、(今みたいなやりとりの)ここの奥底に流れているものが何なのかというのを、なんとなくお客さんに提示していきたいという作品じゃないかという気がします。奥底にある社会に対して我々に潜んでいる部分って何なのかな、と。なんとなく皆さんと一緒に考えていけたらと思います。

――この9名だからこそ、期待しているところは?

白井「今日、実はこの9名の皆さんにお集まりいただくのが初めてなんですね。今までご一緒したことがある方もいれば、初めてでぜひ一度お仕事させていただきたいと思っていた方もいます。やってみないと分からない部分も多いんですが、話を聞く中でぼんやり考えていたのは、本を読み解く中でみなさんそれぞれの役割があるわけですが、これだけ個性がある方々なので、その個性を思いっきり文脈とは違う形で出してもらって。無茶苦茶ハレーションしちゃうかもしれないし、話が進まなくなっちゃうかもしれないですけど、そういうことをやってみても面白いな、と思いながら、話を聞いていました。禁酒にしようとは思うんですけど、舞台の中では飲んでいるので、そこらへんをどうしようかな、と(笑)。これからですね。」

――上演台本も手掛けられるとのことで、どのようなところを意識されていますか?

白井「もともとの原作を大きく変えるつもりはありません。場合によっては、言葉遣いですとかそういう部分を留意しながらやりたいなと思っています。どうしてもオネエ言葉的なこととかも、時代によって変わってきますし、安田さんが言っていたように、むしろ精神性のほうをみせたいので。原作を尊重したいと思っていますが、1968年の空間を再現するつもりはないです。むしろ、今の空間にしたいと思っています。」

 

取材・文/宮崎新之

写真/ローチケ演劇部