永田崇人、阿久津仁愛、ウォーリー木下 インタビュー|音楽劇「プラネタリウムのふたご」

左:阿久津仁愛 中:永田崇人 右:ウォーリー木下
 

永田崇人と阿久津仁愛がW主演を務める音楽劇「プラネタリウムのふたご」が2021年2月に上演される。心の救済と絶望を描いたいしいしんじの原作を、ウォーリー木下による演出・脚本で舞台化。
星の見えない村のプラネタリウムで拾われたふたごの物語を、丁寧に紡ぎあげていく。新型コロナウイルスの影響で延期になっていた本作の上演決定を喜ぶ、永田崇人、阿久津仁愛、ウォーリー木下の3人に、作品への想いを聞いた。


――延期を経て、公演日が決定しましたが、今はどんなお気持ちですか。

阿久津「やれることに嬉しさがありますね。延期という形になって、一瞬不安な気持ちにはなりましたし、できるのかな、と思ったこともあったんですけど、安心しましたね。延期になった分、準備もしっかりとできるので、自分の中でいろいろ読んだり、広げたりもできる。そういうメリットもたくさんある、と思うようにしました。」

永田「ありがたいな、と思いましたね。あの時期に日の目を見ることが無くなってしまった舞台もたくさん出てきた中で、延期という形でも上演できる。やれることに感謝しています。」

ウォーリー「今、崇人が言ったみたいに、あの頃は片っ端から公演中止だったので。それで言えば、僕らの公演だけじゃなく、あらゆる作品が日の目を見られなかった。もしかしたら、その中に歴史を変える作品があったかもしれないのに、無くなっちゃったわけで。スゴイことでしたよね。実はこの作品は、もう10年くらい前からやりたくて、プロデューサーにもやりたいっていう話をずっとしていたものなんです。だから、言っていればいつかできると思ってはいました。夢は、頑張れば…ね。そういう気持ちでいつも舞台は作っていたいと思っています。」


――幕を上げることができない時期を経験して、何か気持ちに変化はあった?

永田「僕はこの間、ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」で舞台に立ったのが1年半ぶりくらいだったんですよ。稽古をして、本番を迎えて…。生きててよかったなぁ、って思うくらい、舞台が好きだって実感しました。本当に、舞台が好きです。」

阿久津「僕はその「ハイキュー!!」のゲネプロを観て、観るとやっぱり舞台をやりたくなる。キラキラ輝いてる姿だったり、音楽や照明や…すごく心を動かされますね。とにかく感動しっぱなしでした。ミュージカル『テニスの王子様』を終えてから、舞台をやりたい!という欲は…もう、恋しくなるんです。めちゃくちゃ。今、まさに感じています。コロナのことがあって、お客さんを入れないでDVD収録した作品もあったんですが、お客さんが居ないと、まったく違うんですよね。舞台に居るのに、カメラの1点を見つめて演技するのは、ちょっと違和感がありましたね。」

永田「やっぱり、お客さんが居ないと舞台じゃないよね。」

阿久津「お客さんが居ると響きも変わるし、何もかもが変わる。だから、余計に「ハイキュー!!」を観て、舞台をやりたい!って思いました。動きたいです! ウズウズしてます。」

――延期になって、何か変更などは想定していますか。

ウォーリー「特に変わったことはないですね。これから稽古場で、こういう時期だからできないこと、変えた方がいいことは出てくるかもしれないけど、作品のテーマを変えるとか、戯曲をいじるみたいなことは考えていないです。正直に言うと…今、一生懸命思い出している感じ(笑)。本当に、恐ろしいなと思います、人間の記憶って。この間、久しぶりに細かい音楽打ち合わせをしたんですけど、「あの時は、こう言っていましたよ」みたいなのが…。逆に、もっとこうできるじゃん!とか、その当時はぼんやりしていた場面も作りこんだりとかできそうだな、とは思っています。まぁ、いい方に捉えて(笑)」


――マジックとかも取り入れるんですよね。

ウォーリー「マジックの打ち合わせも何回もしていて…でも、まったく覚えていないんですよね(笑)。だから、新鮮に驚けるの。毎回。え、そんなマジックあるの!?って。得な性格だな、と思います。」


――小説から演劇にするにあたって、意識されたことは?

ウォーリー「小説自体は、総合小説と呼ばれるようないろんなアプローチがあって、一個のテーマだけに括られないような作品。人間のドラマもあれば、人間じゃないドラマもあって、複雑に絡み合ってる。それがいしいしんじさんの作品の面白さだと思います。演劇にするにあたって、僕らの職業に近い部分があって“人をだます”お話なんですね。僕らは、どうやって嘘を嘘として受け止めて生きていくのか、みたいなところがテーマとしてちょっとあるんですけど、その部分は舞台人としてとても興味があるところ。そこはかなり深く掘って戯曲にしたつもりです。例えば、プラネタリウムも、本当にそこに星があるワケじゃなくて、ただの光の点々。だけど、それを星だと頭の中で勝手に思うわけです。その原理はすごく演劇と似ているんです。舞台上でそういうトリックを使いながら、お客さんがその世界に入っていってそのモチーフを楽しむ、みたいな二重三重の遊びがあるんじゃないかな。あえて今の時期だから、みたいなことを言うと、舞台表現が無くならないだろうな、と最近つくづく思うのは、やっぱりそこでしか得られない体験があるから。自分が勝手に頭の中に作り上げた世界を、たくさんの人と一緒に観るみたいなことって、なかなか無い。演劇賛歌というわけじゃないんですけど、奇しくもそういうふうになるんじゃないか、と思っています。」


――主演のお2人は、作品についてどのような印象ですか?

永田「騙されること…そういう才能があるから幸せに生きていけるよね、みたいなことは、僕自身も思うことなんです。それは、舞台をやりながらもそれを感じるし、舞台を観ていても感じること。だから、本当に舞台にぴったりな作品だな、と思いながら読んでいました。あとは、ウォーリーさんだなぁ…って思いますね。ずっと、ウォーリーさんが読み聞かせてくれているような感覚でした。…まぁ、ちょっと嫌ですけど(笑)、めっちゃ共感がありました。書かれていることのひとつをピックアップして考えていると、あれ、これも嘘? どれが嘘じゃないの?ってなってきて。でも、それがだんだん面白くなっていくんです。」

阿久津「嘘がちょっと好きになったというか、嘘とか騙すっていうことのイメージが、原作や台本を読んで変わりました。でも、台本を読んだだけじゃ、どうなるのか分からない部分もたくさんあって。この一冊の中に、いろんなものが詰め込まれていて、いろんな感情になる。そのひとつひとつのシーンを大事に、生きられるように頑張ろうと思っています。セリフもたくさんあって、星の知識ももっともっと必要なので、そういうプレッシャーもあります。この作品に出会ってから、星を見ることも多くなったし、プラネタリウムも好きになったので、自分の世界も広がりました。」


――テンペルとタットルというふたごを演じられますが、今のところそれぞれどんなふうに役を捉えてる?

永田「時間が経ったからかもしれないですけど、僕の中では僕と仁愛でしか再生されなくなっているんですよ。逆に、一度フラットにしないと、大事なところを忘れちゃっている感じもしています。テンペルのイメージは…お調子者なんだろうな、と。だんだん地に足がついてきて、自分以外の人に対して、優しさのようなものをもった青年になっていく。成長期だな、って。でも、もっと大まかに捉えてます。ウォーリーさんの舞台って、みんなと一緒にやっていく中で役が出来上がっていく感じがあるので、あんまり自分で作っていかないというか。稽古場で、これから探していきます。」

阿久津「僕はむしろ、崇人くんと僕で再生できるの、いいなーって思います。でも、正解は無いから、一回フラットに読んだらまた印象が変わるかも知れないですね。年齢的にも割と近いので、素直にできているんじゃないかな。けっこうカワイくて。普段の生活で、あんまり可愛げはないから…」

永田「いや、カワイイよ? カワイイしかないですよ。」

ウォーリー「確かに。今のところはカワイイしかない(笑)」

永田「なんか、バランス取ってカワイくないこともして欲しいもん。」

ウォーリー「でも、自分ではあんまりカワイイとは思っていないってことだよね? つまり、何か嫌なことを考えてたり、小憎たらしいことを考えてたりするってこと?」

阿久津「そうですね。純粋じゃない自分もいます。」

ウォーリー「へぇ。そんな感じには見えないな。外から見てると、純粋そうに見えるのに。」

阿久津「ネコ被ってます(笑)。僕が演じるタットルは、純粋な子だな、と思ったので、そこをうまく表現できるように、私生活でも何かを信じてみたり、ちょっと意識しています。自分にはあんまりないから…」

ウォーリー「でも、この役をやるにあたって星空を見たり、プラネタリウムが好きになったりするのって、めちゃくちゃ純粋だよ?」

永田「そうですよね、純粋だよ。いい人だから、ちょっとそういう部分があることにコンプレックスになっちゃう。それって純粋なんだよ。」

阿久津「なら、良かった(笑)」


――演出プランについて、今のところどんなふうに考えていますか?

ウォーリー「いっぱい用意してますよ。基本的には稽古場で作っていくことが大事だと思っていますけど、映像とか音楽とか、いろいろなエンターテインメントの要素がたくさんあるので、そこは事前に準備をして。でも、この2人のやる役は、けっこうよくわからない登場人物なんですよ。そのよくわからない感じが重要だと思っているので、この2人に関しては、決めつけずに出てくるものを見ながらやっていこうと思っています。原作でも戯曲でも、分かりやすさ、というところからはちょっと離れている作品。でも、その“わかりにくい”ことが、意外と肝な気がしています。そこをヘンに分かりやすくせずに、10秒後に何が起こるかわからないで物語がドライブしていくので、そうなるといいな、と思っています。」


――音楽劇ということなので、音楽の魅力の部分も教えてください。

ウォーリー「トクマルシューゴさんは以前、同じくいしいしんじさん原作の「つながる音楽劇「麦ふみクーツェ」~everything is shymphony!~」で一緒にやったことがあって、その時からの縁。今回は、ミュージカルというよりは、言葉を音楽的にしていく、みたいなアプローチがたくさんあるんです。例えば、プラネタリウムの解説員の言葉で、途中から星の世界に入っていってメロディがついてくるとか、淡々と言葉にしているんだけど、その後ろのメロディが別のことを表現しているとか。そういう部分が普通のミュージカルと全然違う。そこで重要になるのが、役者さんの言葉とか、セリフ。それをいかに音楽的に使っていくか、というのが重要になると思います。もちろん、歌もありますけどね。」


――今回の舞台で、楽しみにしていることは?

永田「僕は、トクマルさんが初めてなので、どんな音楽なのか楽しみにしてます。「麦ふみクーツェ」を観た時に、すごく感動したのを覚えていて、物語に感動したとかだけじゃない、何か不思議な感覚で涙が流れたんですよね。それが初めての体験だったので、楽しみにしています。」

阿久津「僕は、ずっと崇人くんと共演したかったので…あとはもう、「ハイキュー!!」を観てきたばかりなので、ウォーリーさんの演出がすごく楽しみ! 最近、ちょうど余韻に浸ってたところで、すごい感動したんで。」

ウォーリー「じゃあ、エア・プラネタリウムの準備しておいて?」

阿久津「エアですか!?」

永田「そこはちょっと用意してあげた方が…(笑)」

ウォーリー「でも、出演者がすごく面白そう。よくこれだけ集まったな、と。飲みに行ったりはできないけど、それでも稽古場がにぎやかになりそうだな、と思ってます。」


――楽しみにしています! 本日はありがとうございました

 

インタビュー・文/宮崎新之